照明を入れれば窓は小さくできる
教室の改修で、意外に効いてくるのが採光の規定です。
教室を分割する、廊下側に壁を設ける、庇を延ばす。こうした計画で、採光に有効な面積が基準を割り込むことがあります。
ただし緩和規定があります。照明設備を一定水準で設ければ、必要な窓面積は小さくできます。
この記事では、学校の採光・換気の基準と、改修での注意点を整理します。
目次
原則の基準
建築基準法第28条第1項は、住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室について、採光のための窓その他の開口部を設けることを求めています。
対象となる居室は、居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものです。
必要な面積は、その居室の床面積に対して次のとおりです。
| 用途 | 採光に有効な部分の面積 |
|---|---|
| 住宅 | 床面積の1/7以上 |
| その他の建築物 | 1/5から1/10までの間で政令で定める割合以上 |
学校の教室は、原則として床面積の1/5以上が必要です。住宅より厳しい基準になっています。
ただし、地階もしくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室、または温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでないとされています。
照明を設ければ1/7に緩和される
実務で重要なのがこの規定です。
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校もしくは中等教育学校の教室、幼保連携型認定こども園の教室もしくは保育室、または保育所の保育室については、次のイとロを満たすことで基準が変わります。
イ.床面からの高さが50センチメートルの水平面において200ルクス以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること
ロ.窓その他の開口部で採光に有効な部分のうち、床面からの高さが50センチメートル以上の部分の面積が、当該教室または保育室の床面積の1/7以上であること
つまり、200ルクス以上を確保する照明設備を入れれば、必要な採光面積は1/5から1/7に下がります。
改修での使いどころ
この緩和は、次のような場面で効きます。
- 教室を分割して2室にする(各室の窓面積が減る)
- 廊下側に壁を設けてオープンスペースを閉じる
- 日射遮蔽のため庇やルーバーを設ける
- 隣接して増築し、既存教室の採光条件が悪化する
照明のLED化と教室の改修を同時に行う場合、この緩和を前提に計画を組める可能性があります。
なお床面から50センチメートル以上の部分という条件があるため、腰壁より下の開口は算入されません。低い位置の窓を残しても採光面積にはなりません。
音楽教室・視聴覚教室の扱い
もう一つの緩和があります。
小学校、中学校、義務教育学校、高等学校または中等教育学校の音楽教室または視聴覚教室で、建築基準法施行令第20条の2に規定する技術的基準に適合する換気設備が設けられたものについては、前述のイ(200ルクス以上の照明設備)を満たせばよいとされています。
つまり、適合する換気設備があれば、採光のための開口部の面積要件が適用されません。
音楽教室は防音のため窓を小さくしたい、視聴覚教室は暗くしたいという要求があります。この規定は、その要求に法的な道筋を与えるものです。
音楽室の防音改修や、視聴覚教室の整備を計画する際は、換気設備の仕様とセットで検討してください。
なお、暗室、プラネタリウム等、現像・映写等を行うため自然光を防ぐ必要のある居室についても採光の規定の適用外とされていますが、小学校・中学校・高等学校の視聴覚教室は除くとされています。視聴覚教室は上記の換気設備による扱いで整理されます。
有効採光面積の計算
窓の面積がそのまま採光面積になるわけではありません。
採光に有効な部分の面積は、窓の大きさだけでなく、隣地境界線からの距離や用途地域に応じた採光補正係数が影響します。
同じ大きさの窓でも、前面に建物が迫っていれば有効面積は小さくなります。増築で既存教室の前に新しい棟が建つ場合、既存教室の採光条件が悪化する可能性があります。
増築を計画する際は、新築部分だけでなく既存部分への影響も確認してください。既存部分の扱いは学校の増築と既存不適格(K216)で解説しています。
無窓居室になると別の規制がかかる
採光の基準を満たさない居室は、無窓居室として扱われる場合があります。
無窓居室になると、内装制限の対象になります。学校は施行令第128条の4で内装制限の対象から除外されていますが、無窓居室は例外です。
つまり、教室の間仕切り変更で採光基準を割り込むと、内装制限がかかって内装材の仕様も変わることになります。木質化を計画していた場合、使える材料が変わります。
内装制限の考え方は学校の内装制限(K209)をご覧ください。
改修で確認する順序
- 対象となる室を特定する(教室、保育室など)
- 現状の有効採光面積を算定する(採光補正係数を含む)
- 改修後の開口部の状況を想定する
- 1/5を満たすか、200ルクス以上の照明設備で1/7に緩和するかを判断する
- 音楽教室・視聴覚教室は換気設備の仕様を確認する
- 基準を満たさない室が生じる場合、無窓居室としての内装制限を確認する
2が省かれることがあります。既存図面に窓の寸法があっても、実際には後付けの庇や隣接建物で有効面積が変わっていることがあります。現地確認が必要です。
調査の内容と費用は現況調査の費用(K901)で解説しています。
よくある質問
Q. 学校の教室は窓をどれだけ確保する必要がありますか。
A. 原則として床面積の1/5以上です。ただし床面から50センチメートルの水平面において200ルクス以上の照度を確保する照明設備を設ければ、1/7以上に緩和されます。
Q. 200ルクスはどこで測るのですか。
A. 床面からの高さが50センチメートルの水平面です。
Q. 腰窓の下部分も採光面積に入りますか。
A. 緩和規定を使う場合、床面からの高さが50センチメートル以上の部分が対象です。それより低い位置の開口は算入されません。
Q. 音楽室は窓を小さくできますか。
A. 建築基準法施行令第20条の2に規定する技術的基準に適合する換気設備を設けた音楽教室・視聴覚教室については、200ルクス以上の照明設備を設けることで採光の開口部面積の要件が適用されません。
Q. 窓の面積が足りていれば大丈夫ですか。
A. 採光に有効な部分の面積は、隣地境界線からの距離や用途地域に応じた採光補正係数の影響を受けます。窓の実面積とは異なります。
Q. 教室を分割すると問題がありますか。
A. 各室の採光面積が基準を割り込む可能性があります。割り込んだ場合、無窓居室として内装制限の対象になることがあります。
まとめ
- 学校の教室は原則として床面積の1/5以上の有効採光面積が必要(住宅は1/7以上)
- 床面から50センチメートルの水平面で200ルクス以上の照度を確保する照明設備を設ければ、1/7以上に緩和される
- 緩和規定では、床面から50センチメートル以上の部分の開口が対象
- 施行令第20条の2に適合する換気設備を設けた音楽教室・視聴覚教室は、照明設備の要件のみとなる
- 有効採光面積は窓の実面積ではなく、採光補正係数の影響を受ける
- 採光基準を満たさない室は無窓居室として内装制限の対象になり得る
- 教室の分割や増築による日照条件の変化で、既存室が基準を割り込むことがある
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光建舎は教育施設の改修を専門とする建築会社です。グループ内に一級建築士事務所(ウイングスペース)を擁し、調査・設計・施工・工事監理までを一貫して対応しています。
関連記事
- 学校の内装制限(K209)
- 学校の増築と既存不適格(K216)
- 用途変更の確認申請は200㎡から(K204)
- 現況調査の費用(K901)
- 改修の進め方(K296)
参考・出典
- 建築基準法第28条第1項、建築基準法施行令第19条、第20条の2、第128条の4
- 建築基準法第28条(住宅は1/7以上、その他の建築物は1/5から1/10までの間で政令で定める割合以上、地階等の適用除外)
- 建築基準法施行令第19条第3項第一号・第二号(幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校の教室、幼保連携型認定こども園の教室・保育室、保育所の保育室における床面から50cmの水平面で200ルクス以上の照明設備と1/7以上の開口部、音楽教室・視聴覚教室で施行令第20条の2に適合する換気設備を設けた場合の扱い)
- 大阪市「採光・換気の基準について」(法第28条の条文、施行令第19条の対象建築物・対象居室) https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000602674.html
- 建築基準法とらのまき「採光義務とは?法28条の採光規定についてわかりやすく解説」(暗室・プラネタリウム等の扱い、小学校・中学校・高等学校の視聴覚教室を除く旨) https://kijunhou.com/with-the-lighting-duty/
※記載の制度は公表時点のものです。有効採光面積の算定や緩和の適用は個別の条件により異なります。設計に当たっては必ず建築士および所管の特定行政庁にご確認ください。