この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

充当率と交付税措置率の違いとは?

補助裏の地方債と継ぎ足し単独事業

学校施設の整備で「国から3分の1補助が出る」と聞くと、残り3分の2は自前で用意するように思えます。実際にはそうではありません。補助裏と呼ばれる地方負担分の大半は地方債で起こし、その元利償還の一部は後年度の地方交付税で戻ってきます。この二段構えを組み込むかどうかで、一般財源の持ち出しは倍近く変わります。

混同されやすいのが、充当率と交付税措置率という2つの用語です。どちらも地方債にかかる割合ですが、掛ける対象が違います。ここを取り違えると、実質負担の試算が丸ごとずれます。

この記事では、①2つの用語の意味と計算の順序、②補助裏に地方債をどこまで充てられるか、③起債対象事業費の計算で交付金をどう控除するか、④補助基準を超えた部分を起こす継ぎ足し単独事業、⑤令和8年度に使える主な地方債、の5点に絞って整理します。数値は令和8年総務省告示第161号(令和8年度地方債充当率)ほかの一次情報に拠ります。

なお、学校統廃合を前提とした財源スキーム全体と実質負担の試算例は学校統廃合の財源と起債で詳しく扱っています。この記事は統廃合に限らない一般の施設整備を対象に、用語と計算の順序に絞ります。

この記事の要点

  • 充当率は地方負担分(補助裏)のうち起債できる割合、交付税措置率は起債額の元利償還のうち交付税で戻る割合
  • 掛ける対象が違うため、両者を混同すると実質負担の試算がずれる
  • 補助裏に充てる地方債の割合は事業区分によって90%と75%に分かれる
  • 学校施設環境改善交付金事業その他の国庫補助金を受けて実施する事業は原則75%。ただし公立の義務教育諸学校に係る危険改築事業・不適格改築事業等は90%
  • 起債対象事業費は、交付金対象事業費から交付率相当額または実際の交付金額の多いほうを控除して算出する
  • 補助基準を超えた面積・単価の部分は、継ぎ足し単独事業として起債できる

充当率と交付税措置率とは何か?

充当率とは、国庫補助を除いた地方負担分(補助裏)のうち、地方債を発行できる割合です。

交付税措置率とは、発行した地方債の元利償還金のうち、地方交付税で措置される割合です。

掛ける対象が違います。充当率は補助裏に掛け、交付税措置率は起債額の元利償還に掛けます。いずれも総務省告示等で規定されています。

実質負担はどの順序で計算するか?

まずこの2語を切り分けます。財務省の解説では、充当率は国庫補助を除く地方負担分(補助裏)のうちどの程度起債が可能なのかを示し、交付税措置率は実際の起債額に対する毎年度の元利償還金のうちどの程度交付税措置がなされるかを示すものとされ、いずれも総務省告示等で規定されています。

数式で書くと次の順序になります。

  1. 事業費 − 国庫補助・交付金 = 地方負担分
  2. 地方負担分 × 充当率 = 起債可能額
  3. 事業費 − 国庫補助 − 起債額 = 一般財源の即時負担
  4. 起債額の元利償還 × 交付税措置率 = 後年度に交付税で戻る分

つまり自治体の実質負担は「3の一般財源」+「起債の元利償還のうち交付税措置されない分」です。補助率だけを見て判断すると、この後半が抜け落ちます。

補助裏にはどこまで地方債を充てられるか?

学校施設で中心になる地方債は、学校教育施設等整備事業債です。令和8年度の地方債同意等基準における事業別の割合は次のとおりです。

対象事業充当率
建物(国庫負担事業分)90%
建物(単独事業分)75%
学校施設環境改善交付金事業その他の国庫補助金を受けて実施する事業75%
上記のうち公立の義務教育諸学校に係る危険改築事業、不適格改築事業等90%
義務教育施設・高等学校用地90%
上記以外の施設用地75%

出典は総務省「令和8年度地方債充当率」(令和8年総務省告示第161号)です。

90%と75%を分ける境目

実務上の意味はこうです。

新築・増築で公立学校施設整備費負担金を受ける事業は、国庫負担事業分として90%。一方、学校施設環境改善交付金を使う改修系の事業は原則75%にとどまります。ここで15ポイントの差が出ます。

ただし例外があり、公立の義務教育諸学校に係る危険改築事業・不適格改築事業等は、交付金事業であっても90%です。老朽化して構造上危険な校舎の建て替えは、この枠で扱われます。

同じ1億円の地方負担分でも、充当率90%なら9,000万円起こせて一般財源は1,000万円、75%なら7,500万円で一般財源は2,500万円です。単年度の予算編成では、この差がそのまま他事業を圧迫します。

負担金と交付金それぞれの対象範囲と算定割合は公立学校施設整備費(国庫補助)の基礎知識で扱っています。

起債対象事業費の計算で何を控除するか?

補助金を受けた事業で起債するとき、起債対象事業費の出し方に独特のルールがあります。

学校施設環境改善交付金を受けて実施する事業の起債対象事業費は、当該交付金の対象事業費から、当該事業費に交付金要綱に定める交付率を乗じて得た額、または当該事業に充当した交付金の額のいずれか多い額を控除した額とされています。

ポイントは「いずれか多い額」です。

実際に交付された金額が理論上の交付率相当額を下回った場合でも、控除されるのは理論値のほうになります。つまり交付金が満額つかなかった年度は、その不足分を起債で埋めることができず、一般財源で吸収せざるを得ない構造になります。

交付金は予算の範囲内での交付ですから、内示率が下がる年度はこの現象が起きます。財政計画上は、交付金が満額前提の試算と、内示率を割り引いた試算の両方を持っておくのが安全です。

継ぎ足し単独事業とは何か?

国の補助基準は面積にも単価にも上限があります。実際の設計がそれを超えたとき、超過分をどう扱うかが問題になります。

ここで使えるのが継ぎ足し単独事業です。学校教育施設等整備事業債では、建物の新増築に係る実施面積が必要面積を上回る場合の面積分や、実施単価が補助単価を上回る場合の上回る額について、起債することができるとされています。

資材価格・労務費が上がっている環境では、実施単価が補助単価を上回る場面が常態化しています。この超過分をすべて一般財源で見るのか、継ぎ足し単独として起債するのかで、単年度の負担感がまったく違います。

設計段階で、補助基準内の部分と超過部分を分けて積算しておくと、この整理がしやすくなります。段階ごとの積算精度の考え方は学校の数量調査と概算工事費にまとめています。

令和8年度に使える地方債は何か?

学校施設に関係する地方債は、学校教育施設等整備事業債だけではありません。工事の目的によっては、より有利な条件の債が使えます。令和8年度の充当率は次のとおりです。

地方債充当率
学校教育施設等整備事業債90%または75%(事業区分による)
公共施設等適正管理推進事業債90%
緊急防災・減災事業債100%
脱炭素化推進事業債90%
高等学校教育改革等推進事業債90%
こども・子育て支援事業債90%
デジタル活用推進事業債90%

出典は同じく令和8年総務省告示第161号です。

交付税措置率は債によって差が大きく、ここが実質負担を決めます。総務省の令和8年度地方財政対策資料から、主なものを挙げます。

  • 緊急防災・減災事業債:充当率100%、交付税措置率70%。対象事業を拡充したうえで、事業期間を令和12年度まで5年間延長
  • 公共施設等適正管理推進事業債:集約化・複合化事業は交付税措置率50%、長寿命化・転用・立地適正化・ユニバーサルデザイン化は財政力に応じて30〜50%、除却事業は交付税措置なし
  • 脱炭素化推進事業債:再生可能エネルギー設備等の整備およびZEB基準適合改修は50%、省エネ基準適合改修およびLED照明導入は30%、公用車の電動車導入等は財政力に応じて30〜50%。令和8年度から令和12年度までの5年間
  • 高等学校教育改革等推進事業債:交付税措置率50%。ただし施設の新増築・建替については30%。令和8年度から令和13年度まで

選び方の順序

同じ工事に複数の債の可能性があるとき、実務では次の順で当たります。

  1. 充当率100%かつ交付税措置率が高いもの(緊急防災・減災事業債など)が使えるか
  2. 使えなければ、交付税措置率50%の枠(集約化・複合化、ZEB改修など)に該当しないか
  3. それも外れる場合に、学校教育施設等整備事業債で組む

ただし、どの債も要件があります。緊急防災・減災事業債であれば地方単独事業として実施する防災・減災の取組であること、公共施設等適正管理推進事業債であれば公共施設等総合管理計画に基づく事業であることなどです。工事の内容を後付けで要件に寄せるのではなく、計画側で位置づけを整えておく必要があります。

避難所機能に関わる整備で使える制度は学校の防災機能強化に使える補助金で扱います。

実質負担はどう試算するか?

数字の並べ方を決めておくと、庁内の議論が早くなります。次の順で1枚にまとめます。

  1. 総事業費を工事区分ごとに分解する(新増築/改修/除却/設備など)
  2. 区分ごとに国庫補助・交付金の見込額を算定割合から出す
  3. 区分ごとに地方負担分を出し、使える地方債と充当率を当てる
  4. 起債可能額と一般財源の即時負担を出す
  5. 起債額に交付税措置率を掛け、後年度に戻る分を出す
  6. 総事業費 −(国費+交付税措置相当)= 実質的な自治体負担

除却は特に注意が必要です。公共施設等適正管理推進事業債の除却事業には交付税措置がありません。同じ解体でも、集約化・複合化に伴う除却として整理できるかどうかで扱いが変わります。廃校の解体費用と財源の考え方は廃校の解体費用はいくら?で扱っています。

よくある質問

Q. 充当率が90%なら、事業費の9割を借りられますか。

A. 借りられません。充当率は事業費全体ではなく、国庫補助を除いた地方負担分に対する割合です。事業費1億円で国庫補助3,000万円なら、地方負担分7,000万円の90%である6,300万円が起債可能額になります。

Q. 交付税措置がある地方債は、実質負担ゼロですか。

A. ゼロにはなりません。措置率70%の債でも、元利償還の30%は自前です。また交付税措置は基準財政需要額への算入であり、不交付団体では実質的な効果が生じません。

Q. 補助金が使えない工事は起債もできませんか。

A. できる場合があります。学校教育施設等整備事業債には建物(単独事業分)という区分があり、充当率75%です。ただし単独事業には交付税措置が付かないか、付いても限定的です。

Q. 交付金の内示が減額されたら、その分を起債で埋められますか。

A. 原則として埋められません。起債対象事業費の算定では、交付率を乗じた理論値と実際の交付金額のいずれか多い額を控除するため、減額分は控除額に反映されないからです。

Q. 継ぎ足し単独事業に交付税措置はありますか。

A. 事業の内容によります。継ぎ足し単独は起債の枠を確保するための仕組みであり、交付税措置の有無は別に確認が必要です。

まとめ

補助金と起債は、順番に効いてくる別々の仕組みです。補助率で国費が決まり、充当率で借入可能額が決まり、交付税措置率で最終的な負担が決まります。

学校施設で覚えておきたいのは、負担金を受ける新増築が90%、交付金を受ける改修が原則75%という区分と、危険改築・不適格改築という90%の例外です。そして令和8年度は、緊急防災・減災事業債と脱炭素化推進事業債がいずれも令和12年度まで延長され、高等学校教育改革等推進事業債が新設された年でもあります。工事の内容を、どの枠に乗せられる形で計画に書いておくかが、実質負担を左右します。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。最新の要件・割合・期限は所管省庁の公表資料でご確認ください。

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