「定員割れが続き、複数のキャンパスや校舎を維持し続けるのが難しくなってきた」「学部やコースの再編にあわせて、校舎を集約・改修したい」——学校法人の理事・事務局の皆さまから、こうしたご相談が増えています。少子化のなかで、私立学校の統廃合・再編は、もはや一部の法人だけの課題ではありません。
この記事では、公立学校とは意思決定の主体も財源も異なる「私立・学校法人」の視点にしぼって、統廃合・再編の選択肢、進め方の手順、私学助成や資金の考え方、そして校舎の集約・改修という実務までを整理します。制度・数値は文部科学省や日本私立学校振興・共済事業団の一次情報(2026年7月時点)で確認したものだけを記載しています。
なお当社は、在校生がいる環境での学校改修から、統廃合・再編に伴う調査・計画・設計・施工までを一貫して手掛けてきた建設会社です。校舎をどう集約・改修するかは、法人の再編方針が固まる前の段階から並行して検討したほうが、後戻りが少なくなります。方針が定まりきらない段階でも、学校法人の校舎再編・改修について光建舎に無料で相談することで、施設面からの論点整理に着手できます。
目次
私立学校の統廃合・再編とは?まず定義をそろえる
議論が噛み合わない原因の多くは、言葉の定義が人によって違うことにあります。まず用語を揃えます。
私立学校の統廃合・再編とは、学校法人が、児童・生徒・学生数の減少や経営環境の変化を踏まえ、設置する学校・学部・学科・キャンパス・校舎の配置を見直し、統合・集約・縮小・廃止などを行う経営判断のことです。 対象は施設だけでなく、募集単位(学部・学科・コース)や法人そのもの(合併)にまで及びます。
私立学校を設置・運営する主体は「学校法人」です。学校法人は、寄附行為(法人の根本規則)を定め、所轄庁の認可を受けて設立されます(出典:文部科学省「学校法人制度の概要」2026年7月確認)。したがって、再編の意思決定を担うのは自治体や教育委員会ではなく、理事・理事会をはじめとする学校法人のガバナンス機構です。ここが公立と根本的に異なる出発点になります。
再編には、校舎という「施設」を集約するのか、学部・学科という「募集単位」を再編するのか、法人という「経営主体」を合併するのか、というレベルの違いがあります。どのレベルの話かを最初に区別しないと、施設の議論と経営の議論が混線します。学校配置や施設整備の基礎は公立と共通する部分もあるため、あわせて(関連記事「学校統廃合とは?意味・背景・進め方の基本」)もご覧ください。
【比較表】公立と私立で、統廃合はどう違うのか
私立学校の統廃合・再編は、公立とは前提が大きく異なります。既存の一般的な解説は公立を中心にしたものが多いため、まず違いを整理します。
| 比較軸 | 公立学校の統廃合 | 私立学校(学校法人)の統廃合・再編 |
|---|---|---|
| 意思決定の主体 | 自治体(首長・教育委員会)と議会。住民合意が前提 | 学校法人の理事会。寄附行為・私立学校法に基づくガバナンス機構が決定 |
| 主な財源 | 税財源+国庫補助(交付金) | 学納金(授業料等)+私学助成(経常費補助)+自己資金・借入 |
| 所轄庁・監督 | 設置者は自治体。国は制度・交付金を所管 | 大学・短大・高専を設置する法人は文部科学大臣、高校以下のみの法人は都道府県知事が所轄庁 |
| 募集・定員の枠組み | 学級編制・通学区域の見直しが中心 | 収容定員は学則事項。増員は所轄庁の認可が必要。定員割れは補助金にも影響 |
| 統合・撤退の手法 | 学校の統合・廃止、通学区域の再編 | 学部・学科の再編、キャンパス統合、募集停止、法人合併、学部譲渡など多様 |
| 合意形成の相手 | 保護者・地域住民・議会 | 在学生・保護者、教職員、卒業生、債権者、所轄庁。募集停止時は在学生保護が要 |
最大の違いは、財源と定員が経営に直結する点です。私立は学納金という自主財源が経営の柱であり、そこに私学助成(経常費補助)が加わります。定員割れは学納金収入の減少と補助金の減額という二重の影響を及ぼすため、私立の再編は「施設をどうするか」だけでなく「どの募集単位を残し、どこに資源を集約するか」という経営戦略と一体で考える必要があります。
私立学校の再編にはどんな選択肢があるか
「統廃合」と一括りにされがちですが、学校法人が取り得る手法は幅があります。代表的なものを整理します。
- キャンパス・校舎の統合(集約):複数の校地・校舎に分散した機能を1か所に集約し、残る施設を改修・増築します。物理的な施設整備であり、当社が最も多くご相談をいただく領域です。
- 学部・学科・コースの再編:募集単位を統合・改組し、需要のある分野へ資源を振り向けます。大学等では収容定員の変更を伴い、学則変更の手続きが必要になります。
- 募集停止・撤退:特定の学部・学科・課程の学生募集を停止し、在学生の卒業をもって課程を閉じます。在学生の教育を最後まで保証する体制が不可欠です。
- 法人合併・学部譲渡:他の学校法人と合併したり、学部を他法人へ譲渡したりする経営主体レベルの再編です。私立学校法に基づく手続きを要します。
これらは排他的ではなく、「学部を再編し、分散キャンパスを1か所に統合し、残る校舎を長寿命化改修する」といった具合に組み合わせて用いられます。重要なのは、経営レベルの再編方針(何を残すか)と、施設レベルの整備(校舎をどうするか)を、二段構えで順に決めていくことです。校舎の改修・建替え・統合のどれを選ぶかという判断軸は公立・私立で共通する部分も多いため、(関連記事「学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?判断基準とコスト比較」)が参考になります。
施設の実態を把握しないまま再編方針だけを固めると、後で「この校舎は集約先として使えない」と判明し、計画が巻き戻ることがあります。方針検討と並行して施設を調べておきたい段階で、分散キャンパスの集約可否や校舎改修について光建舎に相談することも、遠回りを避ける方法のひとつです。
私立学校の統廃合・再編を進める手順
再編は「決め打ち」ではなく、調査と検討を重ねて絞り込むものです。一般的な進め方を番号で整理します。
- 将来推計と経営分析を行う:18歳人口・志願動向・在籍者数の推移から、学部・キャンパスごとの充足見通しを把握します。学納金収入と私学助成の見通しを重ね、どの単位が持続可能かを分析します。
- 再編方針の骨子を固める:残す募集単位、集約するキャンパス、縮小・撤退する課程の骨子を、理事会で共有できる形に整理します。
- 施設の現況調査を行う:集約候補となる校舎の劣化状況・耐震性能・法適合性を調査します。集約先として使えるか、増築・改修が必要かを見極めます(関連記事「学校の老朽化調査・劣化調査」)。
- 施設整備計画と概算費用を組む:集約に伴う改修・増築・新築の範囲と概算費用、工程を組み立てます。在学生がいる環境での施工なら、安全計画と工区分けを前提にします。
- 財源計画を設計する:自己資金・借入・私学助成・寄付・資産売却などを組み合わせ、資金計画を立てます(財源は次章で詳述します)。
- 所轄庁・関係手続きを確認する:収容定員の変更(学則変更)、寄附行為の変更、法人合併など、必要な認可・届出を所轄庁に確認します。
- 在学生・教職員・関係者への説明と保護策を用意する:募集停止を伴う場合は、在学生が卒業まで安心して学べる教育体制の保証を最優先に、丁寧な説明を行います。
- 設計・施工を進める:施設整備の設計・施工を進めます。設計者・施工者の選定は再編スケジュール全体を左右します(関連記事「学校の設計事務所の選び方・設計費用」)。
この手順で見落とされやすいのがステップ3と5です。施設が集約先として使えるかの見極めを後回しにすると、再編方針そのものが揺らぎます。全体像や委託先の選び方を整理したい場合は(関連記事「学校統廃合コンサルティングとは?業務範囲と依頼先の選び方」)もご覧ください。
財源・私学助成・資金の考え方
私立の再編で公立と最も異なるのが、財源の設計です。ここを正しく押さえることが、再編の成否を分けます。
私学助成の法的な根拠は「私立学校振興助成法」です。同法は昭和50年(1975年)に成立し、昭和51年(1976年)4月に施行されました。これに基づき、大学等には「私立大学等経常費補助金」、高校以下の学校には(都道府県を通じた)「私立高等学校等経常費助成費補助金」が交付されています(出典:文部科学省「私学助成の充実」2026年7月確認)。公立の国庫補助(交付金)とは制度体系が異なる点に注意が必要です。
ここで再編判断に直結するのが、定員と補助金の関係です。私立大学等経常費補助金の交付では、令和5年度(2023年度)から、入学定員の充足状況による不交付措置が廃止され、収容定員による不交付措置に一本化されました。収容定員に対する在籍学生数の割合が50%以下の学部等は補助金が不支給となり、収容定員充足率が90%未満の場合は減額の対象となります。反対に大幅な定員超過(収容定員8,000人以上の大学等で1.40倍以上、それ以外で1.50倍以上)でも不交付となります(出典:文部科学省「令和5年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱いについて(通知)」2026年7月確認)。つまり、定員を適正な水準に近づける再編は、補助金の観点からも合理性を持ち得るということです。
実際、定員割れは広がりを見せています。日本私立学校振興・共済事業団の調査では、2025年度(令和7年度)に入学定員が充足しなかった私立大学は594校中316校(53.2%)でした。前年度の59.2%からはやや改善し、私立大学全体の入学定員充足率は101.6%と3年ぶりに100%を超えましたが、これは入学定員の減少と18歳人口の一時的な回復によるもので、半数以上の大学で定員割れが続いている状況に変わりはありません(出典:日本私立学校振興・共済事業団「令和7年度私立大学・短期大学等入学志願動向」2026年7月確認)。
なお、大学等の収容定員の変更は学則変更にあたり、増員する場合は所轄庁(大学等は文部科学大臣)の認可が必要です(出典:文部科学省「収容定員に係る学則変更について」2026年7月確認)。再編に伴う定員の見直しは、施設整備のスケジュールと手続きの時期を合わせて設計する必要があります。校舎整備の費用感については(関連記事「学校統廃合の費用は?内訳と考え方」)も参考にしてください。
学校法人の意思決定と手続きで押さえるべき論点
私立の再編は、経営判断であると同時に、法人ガバナンスと所轄庁手続きの問題でもあります。実務で押さえるべき論点を整理します。
まず所轄庁の区分を確認します。私立大学・短期大学・高等専門学校を設置する学校法人は文部科学大臣、私立高等学校以下の学校のみを設置する学校法人は都道府県知事が所轄庁です(出典:文部科学省「学校法人制度の概要」2026年7月確認)。複数校種を設置する法人ほど、どの手続きがどの所轄庁に向かうのかを整理しておく必要があります。
理事会の議決も重要です。学校法人には理事5人以上・監事2人以上を置くこととされ、基本財産の処分など重要事項については、一般に理事総数の3分の2以上の特別決議が必要とされています(同「学校法人制度の概要」)。キャンパスの土地・建物の処分を伴う再編では、この要件が関わってきます。
法人合併・寄附行為の変更も私立特有の論点です。学校法人の合併は、私立学校法に基づき、理事会での議決、債権者保護の手続き、所轄庁の認可を経て効力を生じます。寄附行為の変更も、一部の届出事項を除き所轄庁の認可が必要です(同「学校法人制度の概要」)。さらに、令和5年(2023年)改正私立学校法により、理事・理事会・監事・評議員会の権限分配が整理され、大臣所轄法人には内部統制システムの整備が義務づけられました。この改正は令和7年(2025年)4月1日に施行されています(出典:文部科学省「私立学校法の改正について(令和5年改正)」2026年7月確認)。
これらの制度手続きは専門的な判断を要するため、法務・会計の専門家と連携して進めることをおすすめします。当社が担うのは、こうした経営・法務の判断を施設面から支える調査・計画・設計・施工の領域です。
校舎の集約・改修という実務——当社が担う領域
再編方針が固まると、最後に必ず「校舎をどう整備するか」という物理的な課題が残ります。ここが当社の専門領域です。
キャンパス統合では、集約先の校舎に機能を集めるための改修・増築が発生します。分散していた学部・実験室・実習設備を1か所に収めるには、教室構成の変更、設備の更新、バリアフリー・ICT環境・省エネの改善などが伴います。当社は、内装仕上げ・改修を軸に、企画から設計・施工・アフターまでを一貫して対応し、学校・教育施設の改修や大規模修繕、リノベーションに強みを持ってきました。
私立学校の再編で特に難しいのが、在学生がいる環境での施工です。授業を続けながらの改修は、騒音・粉じん対策や動線分離が欠かせず、長期休業に工事を寄せる分割施工になりやすいものです。当社は、稼働中でも「止めない」ことを前提に、安全計画と工程を先に組み立てる進め方を大切にしています。私学助成をはじめとする補助金・交付金の活用支援にも対応しています。
施設整備は、再編スケジュールのなかで最も時間とコストがかかる部分です。方針が固まってから施設を考え始めると、集約先の適否や工期の見通しが後から覆るリスクがあります。再編の初期段階から、キャンパス集約と校舎改修の進め方を光建舎に無料で相談することで、施設面の制約を早く把握し、実現性の高い再編計画につなげられます。
よくある質問
Q1. 私立の統廃合は、公立と何が一番違うのですか。
意思決定の主体と財源です。公立は自治体・議会が税財源をもとに決めますが、私立は学校法人の理事会が、学納金と私学助成・自己資金をもとに決めます。定員割れが学納金と補助金の両面で経営に影響するため、施設だけでなく募集単位の再編と一体で考える必要があります。
Q2. 定員割れの学部を減らすと、補助金にはどう影響しますか。
私立大学等経常費補助金では、収容定員充足率が90%未満だと減額、50%以下だと不支給の対象になります(2023年度以降、収容定員基準に一本化)。定員を適正水準に近づける再編は、補助金の観点からも合理性を持ち得ます。ただし配分は複雑なため、私学事業団の最新の取扱いを確認してください(2026年7月時点)。
Q3. キャンパスを統合したいのですが、何から着手すべきですか。
まず集約候補の校舎の現況調査(劣化・耐震・法適合)です。集約先として使えるか、増築・改修がどこまで必要かを把握しないと、再編方針の実現性が判断できません。調査結果をもとに整備計画と概算費用、工程を組むのが実務的な順序です。
Q4. 校舎の集約・改修にはどのくらいの期間がかかりますか。
建物規模・劣化状況・工事範囲によって大きく変わるため、一律には言えません。特に在学生がいる環境では、安全確保のための分割施工で暦上の工期が延びやすくなります。早期に現況調査を行い、工程を前もって組むことが、結果的に最短ルートになりやすいと考えられます。
Q5. 校舎の再編・改修について、上流から相談できますか。
はい。当社は調査・計画・設計・施工までワンストップで対応しており、再編方針が固まりきる前の段階から、施設面の論点整理やスケジュールの検討にお付き合いできます。まずは現状のお悩みをお聞かせいただければ、次に何を調べるべきかからご案内します。
まとめ|私立の再編は「経営」と「施設」を二段構えで
私立学校の統廃合・再編は、意思決定の主体が学校法人であり、財源が学納金と私学助成である点で、公立とは前提が異なります。だからこそ、①残す募集単位を決める経営レベルの再編と、②校舎をどう集約・整備するかの施設レベルの整備を、順番に、しかし並行して検討することが大切です。
制度面では、所轄庁の区分、収容定員の学則変更、定員と補助金の関係、令和5年改正私立学校法のガバナンス手続きが、再編の進め方を左右します。そして最後に必ず残るのが、校舎の集約・改修という物理的な課題です。
当社は、在校生がいる環境での学校改修から、統廃合・再編に伴う調査・計画・設計・施工までを一貫して手掛けてきました。「分散したキャンパスをどう集約するか」「この校舎は集約先として使えるか」といった段階からでもご相談いただけます。再編を実現性の高い計画に落とし込むために、学校法人の校舎再編・キャンパス集約について光建舎に無料で相談するところから始めてみてください。