学校の設計事務所の選び方|実績・体制・監理の見方と設計料の考え方【2026年版】

学校の新築・改修・統合を控えて、「どの設計事務所に任せればよいのか」「実績はどこを見て判断すればよいのか」「設計料はどう算定されるのが妥当なのか」でお悩みではないでしょうか。発注方式や手続きの本を読んでも、肝心の「どんな相手を選ぶか」という基準は、意外と書かれていません。

この記事を読み終えると、学校設計を任せる設計事務所・会社を見極める評価軸、設計料(業務報酬)の算定の考え方、設計と施工の発注をどう組み立てるか、そして相談から契約までの流れが整理できます。設計料については国土交通省の告示という一次情報にあたり、根拠のない相場論は書きません。学校改修と統廃合支援を全国で手掛けてきた当社の現場知見も交えてお伝えします。

なお、選定の基準づくりや設計料の妥当性の見方で判断に迷われた際は、学校の設計事務所選びと設計料の考え方について光建舎に無料で相談することもご検討ください。

※本記事の制度・基準に関する記述は2026年7月時点の情報に基づきます。

学校の設計事務所選びは「実績・体制・監理」の3点で決まる

学校の設計事務所の選び方とは、価格の安さではなく「学校用途の実績」「設計を担う体制」「工事監理の質」の3点を具体的な事実で確認していく作業のことです。 結論から言えば、この3点が確認できない相手は、提案書がどれだけ美しくても学校では選びにくくなります。

なぜこの3点なのでしょうか。学校は児童生徒が使い続ける施設であり、在校生がいる中で工事が進むことも珍しくありません。図面上の完成度よりも、「使いながらつくる」条件を設計に織り込めるか、図面どおりに工事が行われているかを現場で確認しきれるかが、成否を分けるためです。

まず押さえておきたい前提があります。学校の用途で延べ面積が500平方メートルを超える建築物の設計・工事監理は、一級建築士でなければ行えません(建築士法第3条)。つまり統合校の新築や校舎の大規模改修では、一級建築士の関与は「強み」ではなく最低条件です。後述するチェックリストで、一段深く確認していく必要があります。

当社にも「提案は良かったが、設計開始後に担当者が変わってしまった」「監理が書類確認中心で、現場に来る頻度が想定より少なかった」といったご相談が寄せられます。いずれも、選定時に体制と監理の中身を確認していれば見極めやすかった論点です。

設計事務所選定のチェックリスト|7つの評価軸

評価軸を7つに整理しました。ヒアリングや提案審査の場で、そのまま質問項目として使える形にしています。

# 評価軸 具体的に確認すること 見極めのポイント
1 資格・登録 建築士事務所の登録(建築士法第23条)の有無と有効期間、一級建築士事務所か 登録の有効期間は5年間。更新されているか
2 管理建築士 管理建築士は誰か、その経歴 管理建築士は建築士として3年以上の実務を経て管理建築士講習を修了した建築士(建築士法第24条)
3 学校用途の実績 「学校」の実績か「公共施設」一般の実績か。新築か改修か。規模・構造 用途・規模・工事種別が自団体の計画に近いか
4 設計体制 総合・構造・設備の担当者は誰か。自社か外注か。担当者は契約後も継続するか 提案者と実務担当者が一致するか
5 工事監理 監理の実施方針、現場に立ち会う頻度、報告の様式 工事監理は建築士の独占業務。書類確認だけになっていないか
6 使いながらの改修 在校中・供用中の工程計画、安全対策、騒音・粉じん対策の考え方 学校特有の制約への具体的な回答があるか
7 設計料の説明 業務報酬基準に沿った内訳の提示。標準業務と追加業務の切り分け 一式表記ではなく、業務量の根拠を説明できるか

7つのうち差がつきやすいのは4〜7です。特に「4 設計体制」は、契約後に想定と違ったと分かっても取り返しがつきにくいため、提案時に担当者名と役割を書面で確認しておくことをおすすめします。

学校の設計者を「どの手続きで」選ぶか(プロポーザル方式・コンペ・入札の違いや実施要項の組み立て)については、当サイト内の記事「学校設計のプロポーザルとは?発注方式の違いと公募型の流れ・評価基準を実務目線で解説」で詳しく整理しています。本記事の評価軸は、その評価基準づくりの材料としてもお使いいただけます。

どの評価軸を重く見るべきか迷われる場合は、学校施設の設計者選定の評価軸づくりを光建舎の担当者に相談することで、論点を絞り込みやすくなります。

学校設計の設計料はどう決まるのか

設計料の算定は、建築士法第25条に基づき国土交通大臣が定める「業務報酬基準」が枠組みになります。現行の基準は令和6年国土交通省告示第8号で、令和6年1月9日に公布・施行されました(出典:国土交通省「設計、工事監理等に係る業務報酬基準について」)。

ここで重要なのは、この基準が「工事費に一定の料率を掛ける」方式ではないという点です。基準が定める算定方法は次の2つです(出典:同上・改正業務報酬基準説明会資料)。

  • 実費加算方法:業務報酬=直接人件費+直接経費+間接経費+特別経費+技術料等経費+消費税相当額
  • 略算方法:業務報酬=直接人件費×2.1+特別経費+技術料等経費+消費税相当額

略算方法では、直接人件費を「略算表に示された標準業務人・時間数×人件費単価」で算定し、直接経費と間接経費の合計は直接人件費に1.1を標準とする倍数を乗じて算定します(合わせて2.1倍)。学校は告示の別添二で「教育施設(第七号)」に分類され、幼稚園・小学校・中学校・高等学校等がここに含まれます。そのうえで、床面積に応じた標準業務人・時間数が略算表(別添三 別表第7)に定められています。

なお、設計受託契約・工事監理受託契約を締結しようとする者は、この基準に準拠した委託代金で契約するよう努めなければならないとされています(建築士法第22条の3の4/平成26年の建築士法改正による努力義務)。「工事費の◯%」という言い方を耳にすることがありますが、現行の基準は業務量の積み上げを基本としており、料率での断定は避けるのが実務的です。

公共発注の場合は、国の官庁施設について「官庁施設の設計業務等積算基準」(平成21年4月1日国営整第1号、最終改定 令和6年1月9日国営整第159号)が、告示第8号等の考え方に基づき、設計業務等委託料=直接人件費+諸経費+技術料等経費+特別経費+消費税等相当額という構成を定めています。自治体の積算でも参照されることがあるため、内訳書の構成を照らし合わせて確認すると理解が早まります。

新築と改修で設計料の考え方は変わります

結論として、略算方法は建築物の新築を行う場合が前提であり、増改築・用途変更等の報酬算定に適用することはできません(出典:国土交通省 改正業務報酬基準説明会資料)。改修設計を略算表で算定しようとすると、そもそも基準の想定から外れます。

では、改修の設計料はどう考えるのでしょうか。実費加算方法は改修なども含め幅広く適用可能とされており、必要な業務を積み上げて算定するのが基本です。学校の改修では、既存図面の有無、現地調査の範囲、法適合の確認、供用しながらの工区分けなど、案件ごとに業務量が大きく振れます。だからこそ、「一式いくら」ではなく、何をどれだけ行うかの積み上げで説明できる相手かどうかが選定の分かれ目になります。

耐震診断・耐震改修に係る設計等については、別に平成27年国土交通省告示第670号が定められています(出典:国土交通省 同上ページ)。改修系の業務は、依拠する基準そのものが異なり得る点にご注意ください。

いくつか、見積比較の際に効いてくる論点を挙げます。

  • 標準業務と追加業務の切り分け:告示の別添四には、標準業務に付随する追加的な業務が例示されています。BIM関連業務や各種性能シミュレーション、委託者都合による設計変更に伴う追加業務などが該当し得ます。見積の前提として明示されているか確認しましょう。
  • 一部の業務だけを委託する場合:基本設計と実施設計等を別々に委託する場合は、業務比率を用いて業務量を算定する考え方が示されています。分割発注では事務所間の調整業務が追加で発生する点も見込む必要があります。
  • 合築部分の扱い:学校の校舎に合築された図書館・体育館・プール等は、主たる用途を補完する施設として、主たる用途と同じ類型に含めて算定する考え方が示されています。

なお、国土交通省は令和7年6月に「業務報酬基準に関するフォローアップ会議」を設置し、今後の基準のあり方について検討結果を公表しています。基準は固定ではなく見直されるものだという前提で、時点を確認する習慣を持つと安心です。

設計と施工の発注をどう組み立てるか

学校の事業では、「設計と施工を分けて発注するか、一体で発注するか」も選定と表裏一体の論点です。結論から言えば、どちらが優れているという話ではなく、事業の性格と自団体の体制で選ぶものです。

設計施工を分離すると、設計者が発注者側の立場で工事監理を行いやすく、チェック機能が働きやすいという整理ができます。一方、設計と施工を一貫して担う体制では、施工の実情を早い段階から設計に反映しやすく、調査から施工までの情報が途切れにくいという特徴があります。特に既存校舎の改修では、解体してみないと分からない事項が出やすいため、情報の連続性が工程やコストに効いてくる場面があります。

株式会社光建舎は、一級建築士事務所(運営:株式会社ウイングスペース)として、調査・設計・施工までをワンストップで対応できる体制を持ち、在校中・営業中でも止めない安全・工程管理を強みとしています。全国対応で、学校・教育施設の改修に特化した実績とノウハウを積み重ねてきました。

改修・建替え・統合のどれを選ぶかという上流の判断そのものについては、当サイト内の記事「学校の建替え・改修・統合の判断基準」「統合校舎の新築|計画と費用の考え方」も併せてご覧ください。

相談から契約までの流れ

学校の設計事務所を選び、契約に至るまでの実務的な流れを番号で整理します。

  1. 現況と課題の整理:児童生徒数の見通し、既存校舎の劣化・耐震・法適合の状況を棚卸しします。ここが曖昧だと提案の比較ができません。
  2. 事前相談・情報収集:複数の事務所・会社に、学校用途の実績と体制をヒアリングします。見積取得ではなく論点の洗い出しが目的です。
  3. 業務範囲の確定:基本設計・実施設計・工事監理のどこまでを委託するか、調査業務を含めるかを決めます。設計料の内訳を左右します。
  4. 選定方式の決定:プロポーザル方式・コンペ・入札のいずれで選ぶかを決め、評価基準を組み立てます(手続きの詳細は関連記事へ)。
  5. 提案・ヒアリングの実施:チェックリスト7項目を質問票に落とし込み、担当者名・監理頻度・追加業務の考え方を書面で確認します。
  6. 設計料の内訳確認:業務報酬基準に沿った内訳(業務量と単価の根拠、標準業務と追加業務の切り分け)を提示してもらい、比較します。
  7. 契約締結:業務内容、成果図書、追加業務が発生する場合の取り扱い、変更時の協議方法を契約書に明記します。
  8. 設計着手・定例協議:設計条件の変更が生じた場合の記録と合意の残し方を、最初の定例で決めておきます。

このうち、後から効いてくるのは3と7です。委託範囲と変更時の扱いが曖昧なまま進むと、追加業務の要否をめぐる協議が設計中盤で発生し、工程が滞りやすくなります。

よくある質問

Q1. 学校の設計は、必ず一級建築士でなければ設計できないのですか。

A. 学校の用途で延べ面積が500平方メートルを超える建築物については、一級建築士でなければ設計・工事監理を行えないと建築士法第3条に定められています。統合校の新築や校舎の大規模改修は、この規模を超えることが多いと考えられます。

Q2. 設計料は工事費の何%が相場ですか。

A. 現行の業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)は、工事費に料率を乗じる方式ではなく、業務量(人・時間)と人件費単価の積み上げを基本としています。そのため、公的な根拠のある「工事費の◯%」という相場をお示しすることはできません。比較の際は、料率ではなく業務量の内訳で見ることをおすすめします。

Q3. 設計事務所の実績は、どこまで具体的に確認すべきですか。

A. 「公共施設の実績◯件」ではなく、用途(学校か)、工事種別(新築か改修か)、規模、構造、在校中の施工を伴ったかまで分解して確認すると、自団体の計画との近さが判断できます。その案件を担当した技術者が今回も担当するかも確認しておきましょう。

Q4. 工事監理の質は、選定の段階でどう見極めればよいのでしょうか。

A. 監理方針、現場に立ち会う頻度、施工図の検討・報告の様式、報告書の提出タイミングを具体的に確認します。工事監理は建築士法上の建築士の独占業務であり、工事を設計図書と照合して確認する業務です。書類確認に偏っていないか、誰が現場に入るのかを質問しておくと差が見えます。

Q5. 基本設計と実施設計を別々の事務所に委託しても問題ありませんか。

A. 制度上は一部の業務のみを委託することも想定されており、業務比率を用いた業務量の算定の考え方が示されています。ただし、事務所間の調整やデータ形式の変換、手戻りへの対応といった業務が追加で発生し得ます。設計意図の連続性をどう担保するかを事前に整理しておくことをおすすめします。

まとめ|「基準で語れる相手」を選ぶ

学校の設計事務所選びは、提案書の見栄えではなく、資格・登録、管理建築士、学校用途の実績、設計体制、工事監理、使いながらの改修への回答、設計料の説明という7つの評価軸を、事実で確認していく作業です。

設計料については、建築士法第25条に基づく業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)が枠組みであり、料率ではなく業務量の積み上げが基本です。そして略算方法は新築が前提で、改修は実費加算方法の考え方で積み上げるという違いを押さえておくと、見積の比較軸が定まります。基準に照らして自社の見積を説明できる相手かどうか——これが、実務で最も裏切られにくい判断材料だと考えられます。

上流の調査から設計・施工までを見通した体制づくりや、設計料の内訳の見方を整理したい場合は、学校の設計事務所選び・設計料の内訳について光建舎に無料で相談するところから始めてみてください。全国対応で、学校・教育施設の計画に携わってきた担当者が実務の論点整理からお手伝いします。

内部リンク先

  • 学校設計のプロポーザルとは?発注方式の違いと公募型の流れ・評価基準を実務目線で解説
  • 学校統廃合とは?意味・背景・メリットとデメリットを自治体目線で解説
  • 学校統廃合の進め方——検討開始から開校までの流れと期間の目安
  • 学校統廃合にかかる費用の内訳と考え方
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