照明のLED化には、他の改修にない特徴があります。期限が法律で決まっていることです。
蛍光ランプは、2026年から2028年にかけて種類ごとに製造と輸出入が段階的に禁止されます。すでに一部は禁止済みです。
そして学校には、もう一つの事情があります。学校でエネルギー消費が最も大きいのは照明であり、しかも教室の明るさは法令で基準が定められています。単なる器具の入れ替えでは済みません。
目次
【期限】蛍光ランプの製造・輸出入禁止スケジュール
2024年12月、水銀汚染防止法の施行令が改正され、一般照明用蛍光ランプのすべてが「特定水銀使用製品」に指定されました。特定水銀使用製品は、製造および部品として他の製品の製造に使用することが原則禁止されます。
| 種類 | 製造・輸出入の禁止時期 |
|---|---|
| 電球形蛍光ランプ | 2026年1月1日より禁止 ※30Wを超えるものは2027年1月1日より |
| コンパクト形蛍光ランプ | 2027年1月1日より禁止 |
| 直管形蛍光ランプ (学校で最も多い) | 2028年1月1日より禁止 ※ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものは2027年1月1日より |
| 環形蛍光ランプ | 2028年1月1日より禁止 ※ハロりん酸塩を主成分とするものは2027年1月1日より |
⚠️ 正確に押さえるべき2点
1. 「2027年末で全部禁止」ではありません。種類ごとに時期が違い、直管形・環形は2028年1月です。ただしハロりん酸塩系だけは1年早く2027年1月。学校の直管形がどちらのタイプかで、期限が1年変わります。
2. 禁止されるのは製造と輸出入だけです。環境省は明記しています——蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されません。
つまり「明日から蛍光灯が使えなくなる」わけではありません。問題は供給です。製造が止まれば、在庫が尽きた時点で交換球が手に入らなくなります。球切れのたびに調達に苦労し、最終的には計画外の緊急工事になる——これが実際に起きるリスクです。
環境省も「蛍光ランプからLED照明への計画的な交換」を呼びかけています。
※蛍光灯の品番は「F」か「EF」で始まるものが多く、自校の照明がどのタイプかは品番から確認できます(海外製品などでは表記が異なる場合もあります)。
【学校固有】照度は法令で決まっている
ここがオフィスビルのLED化と決定的に違う点です。
学校保健安全法に基づく学校環境衛生基準で、教室の明るさが定められています。
学校環境衛生管理マニュアル(平成30年度改訂版)
- 教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値は300lx
- さらに教室及び黒板の照度は500lx以上であることが望ましい
- コンピュータを使用する教室等の机上面は500〜1,000lx程度、画面の垂直面照度は100〜500lx程度が望ましい
そして検査方法まで決まっています。
- 教室の照度は、壁から1m内側と部屋の中央を含む縦3列・横3列の合計9点で測定
- 黒板の照度は、同じく9か所の垂直面照度を測定
- 毎学年2回、定期に検査を行う
つまり学校のLED化は「明るくなればいい」ではなく、決められた9点で基準値を満たす必要があります。測定点で500lxを確保するには、設計照度を500lxよりやや高めに設定するのが実務的です。
反射率という見落としやすい変数
照度設計では、内装の反射率が効いてきます。学校環境衛生管理マニュアルの推奨範囲の最小値として、天井70%・壁50%・床30%を用いるのが一般的です。
ここが重要です。同じ照明器具でも、内装の色が変われば机上面の明るさは変わります。内装改修と照明計画を別々に進めると、想定した照度が出ないことがあります。逆に言えば、内装を明るくすれば、より少ない器具で基準を満たせるということです。木質化で濃い色の内装にする場合は、反射率の低下を照明計画に織り込む必要があります。
器具交換か、ランプ交換か
LED化には2つの方法があります。そして学校では、原則として器具交換が推奨されます。
| 直管LEDランプへの交換 | 器具ごと交換 | |
|---|---|---|
| 工事 | 安定器のバイパス工事等が必要な場合がある | 器具の取付・電源接続 |
| 初期費用 | 安い | 高い |
| 既存器具の劣化 | 解決しない(本体・配線・ソケットは古いまま) | 解決する |
| 配光・照度設計 | 既存器具の配光に制約される | 教室・体育館・廊下ごとに最適化できる |
| 制御 | 明るさセンサ等の導入は限定的 | 調光・センサ制御を組み込める |
判断のポイントは器具の築年数です。照明器具本体にも寿命があり、内部配線やソケットの劣化は、ランプを替えても解消しません。築30年以上の校舎で一度も器具を更新していないなら、ランプだけ替えるのは対症療法です。
そして制御を組み込めるかどうかが、省エネ効果を大きく左右します。学校は昼間しか使わず、普通教室は外周部に面していて自然光が入ります。明るさセンサによる調光を入れれば、窓側の列は日中ほとんど点灯不要になります。ZEBを達成した瑞浪北中学校も、自然採光とLED照明・明るさセンサによる照明制御の組み合わせで照明エネルギーを削減しています(学校施設の省エネ・ZEB化/K037)。
実務の勘所
| 検討項目 | 課題・発生するリスク | 解決の方向 |
|---|---|---|
| 期限の誤認 | 「2027年末で全部禁止」と理解して計画。実際は種類ごとに違い、ハロりん酸塩系の直管形は2027年1月で1年早い。逆に「使用禁止」と誤解して不要な緊急対応をする | 自校の照明の品番・種類を確認する。禁止は製造・輸出入であり、使用・販売・購入は禁止されない |
| 在庫切れによる緊急工事 | 製造停止後に球切れが続発し、交換球が調達できない。計画外の工事を単発で発注することになり、割高になる | 中長期修繕計画にLED化を位置づけ、他の改修と束ねて実施する。棟単位・階単位で計画的に進める |
| 照度基準の未確認 | 明るさだけを見て器具を選定し、定期検査(毎学年2回)の9点測定で下限300lxや黒板500lxを満たさない。是正工事が必要になる | 測定点で基準を満たすよう、設計照度をやや高めに設定する。黒板は垂直面照度で確認する |
| 内装との不整合 | 内装改修で濃い色や木質化を採用し、反射率が下がって想定照度に届かない。照明を先に決めていると手戻りになる | 天井70%・壁50%・床30%を目安に、内装の仕上げと照明計画を同時に検討する |
| ランプ交換で済ませる | 築30年以上の器具にLEDランプだけを入れ、本体・配線・ソケットの劣化が残る。数年後に器具更新が必要になり二度手間 | 器具の設置年を確認し、劣化状況に応じて器具交換を選ぶ。制御を入れるなら器具交換が前提 |
| 体育館の高所作業 | 体育館の照明交換には高所作業車や足場が必要。単独で発注すると仮設費が丸ごと乗る | 天井を触る工事(空調・非構造部材の耐震対策・断熱)と同時期に実施し、仮設を共有する |
LED化は「単独でやると最も損をする工事」
照明のLED化は、費用対効果が分かりやすく、単独でも成立しやすい工事です。だからこそ単独で発注されやすく、そして単独でやると最も損をします。
理由は場所です。照明器具は天井にあります。そして天井には、空調のダクトも、LAN配線も、感知器も、誘導灯もあります。体育館なら、その天井材そのものが非構造部材の耐震対策の対象です。
特に体育館は高所作業車や足場が必要です。足場・仮設・養生は共通費であり、何の工事のために架けても金額はほとんど変わりません。LED化のためだけに足場を架け、3年後に空調のためにまた架け、5年後に天井の耐震対策でまた架ける——これが実際に起きています。
さらに、単独発注では設計の余地が消えます。内装の反射率を上げて器具を減らす、自然採光を活かして窓側の制御を効かせる、天井高と配光を見直す——これらはすべて建築側の判断であり、器具の入れ替えだけでは手が届きません。
制度の側も同じ方向を向いています。省エネ改修は学校施設環境改善交付金(K168)の大規模改造(内部環境改善)や、省エネ・脱炭素関連の補助(K162)の対象になりますが、いずれも一定規模の事業を前提としています。球の交換だけでは、制度の土俵に乗りません。
蛍光ランプの製造禁止は、2026年から2028年にかけて確実に来ます。この期限は、LED化を「いつやるか」ではなく「何と一緒にやるか」を考えるための時間だと捉えてください。
株式会社光建舎にご相談ください
光建舎は教育施設の設計・改修を専門とし、現況調査から設計・施工管理までを一貫して対応します。照度基準を満たす照明設計、内装の反射率を含めた計画、天井を触る他工事と束ねた工事計画、補助制度を見据えた事業設計までご提案します。全国対応・現地調査とオンライン協議の併用で、構想段階からのご相談を承ります。
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参考・出典
- 環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制について」(2026年7月確認)
https://www.env.go.jp/chemi/tmms/lamp.html - 水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)/同法施行令の改正(2024年12月)
https://www.env.go.jp/press/press_04170.html - 文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル『学校環境衛生基準』の理論と実践[平成30年度改訂版]」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/31/1292465_01.pdf - 学校保健安全法/学校環境衛生基準
- JIS Z 9110(照明基準総則)
- 文部科学省「脱炭素社会と環境教育に貢献する学校施設の『ZEB』化」(瑞浪北中学校の照明制御)
https://www.mext.go.jp/co-sha/ideas/case12_mizunamikita_00001.html
※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。