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廃校の無償譲渡・減額譲渡はどう進めるのか?【2026年版】条件設定と契約の実務

廃校を無償で譲るという話は、地域でよく出ます。

地元の団体が使いたい。企業が進出したいと言っている。福祉法人が施設にしたい。相手がいるなら、維持費を払い続けるより渡したほうがいい。発想としては自然です。

ただし自治体の財産を無償で渡すには、手続きがあります。市民の財産を対価なしに特定の相手に渡すことになるため、議会の関与が法律で求められています。

そして渡した後のことも問題になります。約束した用途に使われなかったら。数年で撤退したら。転売されたら。契約でここを押さえていないと、後から取り返せません。

この記事では、①法律上の根拠、②条例による仕組み、③無償と減額の使い分け、④契約で定めること、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 地方自治法第237条第2項により、普通地方公共団体の財産は条例または議会の議決による場合でなければ適正な対価なくして譲渡・貸付けできない
  • 同法第96条第1項第6号は、条例で定める場合を除くほか、適正な対価なくして譲渡・貸付けすることを議会の議決事件としている
  • 多くの自治体が「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」を定め、一定の場合について個別の議決を要しない扱いにしている
  • 補助金を受けた施設の処分は、別途「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第22条の手続きが必要
  • 用途の指定、違反時の買戻しや返還を契約で定めないと、後から是正できない

法律上の根拠はどこにあるのか?

地方自治法の2つの条文です。

同法第237条第2項は、普通地方公共団体の財産について、条例または議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならないと定めています。

同法第96条第1項第6号は、条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けることを、議会の議決すべき事件としています。

条文 内容
第237条第2項 条例または議会の議決によらなければ、適正な対価なくして譲渡・貸付けできない
第96条第1項第6号 条例で定める場合を除き、適正な対価なくしての譲渡・貸付けは議会の議決事件

適正な対価なくして、というのが要件です。無償はもちろん、時価より低い価格での譲渡も該当します。

適正な対価とは

不動産の価値に見合う価格です。実務では不動産鑑定評価を取って算定します。

鑑定額を下回る価格で譲渡すれば、その差額が実質的な補助になります。だから議会の関与が求められます。

校地・校舎の処分の考え方は校地・校舎の売却と資産組替えはどう考えるか?で扱っています。

条例があるとどうなるのか?

個別の議決を要しない場合が生まれます。

多くの自治体が「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」といった名称の条例を定めています。この条例で、どういう場合に無償または減額で譲渡できるかをあらかじめ定めておけば、該当する案件については個別の議決が不要になります。

条例で定められている典型的な場合は次のようなものです。

区分 内容
他の地方公共団体等への譲渡 公用、公共用または公益事業の用に供するため
公共的団体への譲渡 公益上の必要があるとき
災害による被災者への譲渡 条例で定める場合
用途を指定しての譲渡 指定した用途に供するとき

条例の内容は自治体ごとに違います。自分の自治体の条例に何が書いてあるかを、最初に確認してください。該当しなければ、個別に議会の議決を得ることになります。

民間企業への無償譲渡は該当しにくい

条例が想定しているのは、公共的な性格を持つ相手です。営利企業に無償で譲渡する場合、条例の規定に当てはまらないことが多く、個別の議決が必要になります。

議会の理解を得るには、無償にする理由を説明できなければなりません。雇用の創出、地域の活性化、維持費の削減。定量的に示せる根拠を用意してください。

無償と減額はどう使い分けるのか?

相手と目的で分かれます。

方式 向いている場面 留意点
無償譲渡 公共的団体、地域団体が公益的に使う 議会の説明が最も重い
減額譲渡 民間が公益性のある事業を行う 減額の根拠を示す必要がある
有償譲渡 純粋に民間事業として使う 国庫納付の論点が生じる
無償貸付 用途を担保したい。将来の選択肢を残したい 所有権が残るため維持管理の責任も残る

実務で多く選ばれるのは無償貸付です。所有権を手放さないため、用途に反した使われ方をすれば契約を解除して取り戻せます。議会の説明も、譲渡より通りやすくなります。

ただし所有権が残る以上、建物の瑕疵に対する責任も残ります。老朽化した施設を長期で貸すなら、修繕の負担区分を明確にしておく必要があります。

補助金の手続きは別にある

国の補助を受けて整備した施設であれば、地方自治法とは別に、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第22条の手続きが必要です。

無償での処分であれば、補助事業完了後10年以上経過していれば報告で済みます。有償の場合は国庫納付の論点が生じます。詳しくは廃校の財産処分手続きとは?で扱っています。

契約で何を定めるのか?

渡した後を縛るための条項です。

条項 内容
用途の指定 何に使うか。変更する場合の手続き
用途指定の期間 何年間その用途に供するか
転売・転貸の制限 第三者への譲渡・貸付けの可否と承諾の要否
買戻しの特約 用途違反の場合に買い戻す権利
違約金 用途に供しなかった場合の金銭的な担保
報告の義務 使用状況を定期的に報告させる
原状回復・解体の責任 事業終了時に誰が建物を処理するか

最後の項目が見落とされます。無償で譲渡した建物が、数年後に使われなくなり、譲受人が解体費を出せずに放置される。これでは自治体が手放した意味がありません。

事業終了時の責任を契約で明確にしてください。

買戻しの登記

買戻しの特約は、登記をしておかないと第三者に対抗できません。契約書に書くだけでは不十分です。

用途指定の期間と買戻しの期間は、法律上の制限があります。設定の仕方は法務担当と相談してください。

報告をもらい続ける仕組み

年1回の使用状況報告を義務づけると、用途違反に気づけます。報告が止まった時点で状況を確認する。この運用がないと、何年も経ってから問題が発覚します。

相手は誰になり得るのか?

性格によって手続きの重さが変わります。

相手 条例に該当する可能性 留意点
他の地方公共団体 高い 公用・公共用に供する場合
国・独立行政法人 高い 同上
社会福祉法人・学校法人 場合による 公益事業の用に供するか
自治会・町内会 場合による 地縁による団体の認可の有無
NPO法人 場合による 事業の公益性と継続性
一般の民間企業 低い 個別の議決が必要になることが多い
個人 低い 同上

自治会や町内会に譲渡する場合、地方自治法に基づく地縁による団体の認可を受けているかどうかが問題になります。認可を受けていない任意団体には、不動産の登記名義を置けません。

登記ができるかを先に確認する

譲渡の相手に法人格がなければ、所有権移転登記ができません。代表者個人の名義にすると、代表者が交代したときや相続が発生したときに問題になります。

地域団体に譲渡する計画なら、まず法人格の有無を確認してください。認可地縁団体やNPO法人としての手続きから始める場合、数か月を要します。

公益性を数字で示す

議会に説明するとき、公益性という言葉だけでは通りません。

雇用が何人生まれるか。年間何人が利用するか。自治体が負担していた維持費が年間いくら減るか。解体した場合にかかる費用はいくらか。これらを並べると、無償にする合理性が説明できます。

活用の類型と事例は廃校活用の事例と進め方は?にまとめています。

どう進めるのか?

条例の確認からです。

段階 内容
1. 条例の確認 自分の自治体の条例に該当するか
2. 補助履歴の確認 国の補助を受けているか。経過年数は
3. 相手方の確認 公共的団体か、民間か。事業の継続性
4. 鑑定評価 適正な対価の算定。減額の幅を決める根拠
5. 庁内の調整 財産管理部門、法務、財政
6. 議会への説明 条例に該当しない場合は議決が必要
7. 契約 用途指定、買戻し、報告義務を盛り込む
8. 登記 買戻しの特約の登記

3の相手方の確認を軽く見ないでください。無償で譲り受けた団体が数年で解散すると、建物の行き場がなくなります。事業計画と財務の状況を確認してから進めます。

売却・貸付の全体の進め方は廃校の売却・貸付と公募はどう進めるか?にまとめています。

よくある質問

Q. 無償で譲渡するには議会の議決が必要ですか。

A. 地方自治法第96条第1項第6号により、条例で定める場合を除き議決事件です。条例に該当すれば個別の議決は不要になります。

Q. 時価より安く売るのも同じ扱いですか。

A. 同じです。適正な対価なくしての譲渡に当たります。

Q. 民間企業に無償譲渡できますか。

A. 条例が想定しているのは公共的な性格を持つ相手であることが多く、個別の議決が必要になる場合が多いと考えられます。

Q. 譲渡と無償貸付のどちらがよいですか。

A. 用途を担保したいなら無償貸付です。所有権が残るため解除して取り戻せます。ただし建物に対する責任も残ります。

Q. 用途違反があった場合どうしますか。

A. 買戻しの特約を契約で定め、登記をしておく必要があります。契約書に書くだけでは第三者に対抗できません。

Q. 補助金の手続きは別に必要ですか。

A. 必要です。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第22条の手続きが地方自治法とは別にあります。

Q. 自治会や町内会に譲渡できますか。

A. 法人格がなければ所有権移転登記ができません。認可地縁団体としての手続きを先に済ませる必要があります。

Q. 議会にどう説明しますか。

A. 公益性を数字で示してください。雇用、利用者数、削減できる維持費、解体した場合の費用を並べると合理性を説明できます。

まとめ

廃校を無償または減額で譲渡するには、地方自治法の手続きがあります。第237条第2項により、普通地方公共団体の財産は条例または議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくして譲渡・貸付けできません。第96条第1項第6号は、条例で定める場合を除き、これを議会の議決事件としています。

多くの自治体が「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」を定めており、他の地方公共団体や公共的団体が公用・公共用・公益事業の用に供する場合などについて、個別の議決を要しない扱いにしています。まず自分の自治体の条例を確認してください。民間企業への無償譲渡は条例に該当しにくく、個別の議決が必要になることが多くなります。

実務で選ばれることが多いのは無償貸付です。所有権が残るため、用途に反した使われ方をすれば解除して取り戻せます。ただし建物の瑕疵に対する責任も残るため、修繕の負担区分を明確にする必要があります。

契約で定めるのは、用途の指定、指定の期間、転売・転貸の制限、買戻しの特約、違約金、報告の義務、そして事業終了時の解体の責任です。買戻しの特約は登記をしないと第三者に対抗できません。

国の補助を受けた施設であれば、補助金等適正化法第22条の手続きが別にあります。地方自治法の手続きだけでは完結しません。

参考・出典

記載の制度・手続きは公表時点のものです。条例の内容、議決の要否および契約の条項は自治体により異なります。個別の適用は所管の財産管理部門、法務担当および議会事務局にご確認ください。

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