目次
設置基準と安全
安全と設置基準の両方を見ます。
幼稚園は、自力での避難が難しい幼児が通う施設です。したがって改修では、転落、指挟み、衝突、やけどといった日常の危険への対応が最優先になります。
あわせて幼稚園設置基準への適合を確認します。1学級の幼児数は35人以下を原則とし、園舎は2階建以下を原則とします。園舎には職員室、保育室、遊戯室、保健室、便所、飲料水用設備・手洗用設備・足洗用設備を備えることとされています。
そして消防法では、幼稚園は特定防火対象物に該当します。
この記事では、①設置基準の内容、②日常の安全、③避難と消防法、④水まわりと衛生、⑤進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 幼稚園設置基準第3条により、1学級の幼児数は35人以下を原則とする
- 同基準第8条第1項により、園舎は2階建以下を原則とするが、耐火建築物で避難施設を備える場合は保育室等を2階以上に配置できる
- 同基準第9条により、園舎には職員室、保育室、遊戯室、保健室、便所、飲料水・手洗・足洗用設備を備える
- 園舎の面積は別表第1により1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートル
- 幼稚園は消防法施行令別表第一の(6)項で、特定防火対象物に該当する
設置基準には何が定められているのか?
学級、階数、施設、面積です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1学級の幼児数(第3条) | 35人以下を原則とする |
| 園舎の階数(第8条第1項) | 2階建以下を原則とする |
| 園舎に備える施設(第9条) | 職員室、保育室、遊戯室、保健室、便所、飲料水・手洗・足洗用設備 |
| 園舎の面積(別表第1) | 1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートル |
| 運動場の面積(別表第2) | 2学級以下は330+30×(学級数-1)平方メートル、3学級以上は400+80×(学級数-3)平方メートル |
2階以上に保育室を置く条件
第8条第1項は園舎を2階建以下を原則としますが、耐火建築物で避難施設を備える場合は保育室等を2階以上に配置できるとされています。
既存の園舎を改修して2階を保育室にする計画では、この条件の確認が必要です。
面積は学級数で決まる
園舎と運動場の面積は、学級数に応じた算式で定まります。学級数を増やす場合、必要な面積が増えます。
改修で定員を増やす構想があるなら、先にこの計算を行ってください。面積が足りなければ、定員を増やせません。
備えるべき施設の確認
既存の園舎に保健室がない、遊戯室がない、足洗用設備がないという状況があります。改修で確保する検討が必要です。
遊戯室は面積が大きいため、既存の園舎に設ける場合は配置の見直しを伴います。
幼稚園の改修全般
幼稚園の改修の考え方は幼稚園の改修はどう進めるのか?で扱っています。
認定こども園への移行
幼稚園を認定こども園に移行する構想がある場合、別の基準が関わります。保育所の機能を持つため、乳児室やほふく室、調理室の要件が加わります。
余裕教室を保育所にする場合の基準は空き教室を保育所に転用できるのか?で扱っています。
日常の安全はどう確保するのか?
転落、指挟み、衝突、やけどです。
| 危険 | 対応 |
|---|---|
| 転落 | 手すりの隙間、窓の開き方、階段の形状 |
| 指挟み | 建具の構造、戸当たり、ヒンジ側の処理 |
| 衝突 | 柱と壁の角、ガラスの位置 |
| やけど | 暖房器具、給湯の温度 |
| 転倒 | 床の仕上げ、段差 |
| 挟み込み | 可動間仕切り、収納の扉 |
手すりの隙間
手すりの隙間が広いと、幼児が頭や体を通して転落します。既存の園舎では、隙間が広い手すりが残っていることがあります。
隙間を塞ぐ板を追加する、縦格子に変えるといった対応になります。
建具の指挟み
引き戸の戸当たり、開き戸のヒンジ側。ここに指を挟む事故が起きます。
指挟み防止の部材を追加する、建具を交換するという対応があります。既存の木製建具では、隙間が大きいことが多くあります。
角の処理
柱の角、壁の出隅、収納の角。これらに頭をぶつける事故が起きます。
面取りした仕上げにする、緩衝材を貼るという対応があります。改修の機会に、仕上げの形状を見直してください。
ガラスの位置と材質
腰高より下のガラスは、ぶつかって割れる危険があります。強化ガラスや合わせガラスへの交換、飛散防止フィルムの貼付が対応になります。
既存の単板ガラスが残っている場合、優先度の高い項目です。
給湯の温度
手洗いの湯の温度が高いと、やけどの危険があります。混合水栓の設定、サーモスタットの設置。
給湯の設備を更新する機会に確認してください。
床の仕上げ
転倒したときの衝撃を和らげる仕上げが望まれます。一方、清掃しやすさも必要です。
硬すぎず、滑りすぎず、掃除しやすい。この3つのバランスで材料を選んでください。
避難と消防法はどうなるのか?
幼稚園は特定防火対象物です。
| 用途 | 消防法施行令別表第一 | 特定防火対象物 |
|---|---|---|
| 病院、診療所、福祉施設、幼稚園、特別支援学校 | (6)項 | 該当する |
| 小学校、中学校、高等学校、大学、各種学校 | (7)項 | 該当しない |
| 複合用途(特定用途を含む) | (16)項イ | 該当する |
(6)項に該当すると、消防法第17条の2の5により消防用設備等が現行基準に適用されます。小中学校の(7)項とは扱いが違います。
幼稚園は学校だが扱いが違う
学校教育法上は幼稚園も学校ですが、消防法では避難に配慮が必要な施設として特定防火対象物に分類されています。
学校と消防法の関係は学校と消防法はどう関わるのか?で扱っています。
避難の計画
自力での避難が難しい幼児が対象です。1階に保育室を集約し、屋外に直接出られる経路を確保する構成が基本になります。
2階を使う場合、避難の経路と職員による誘導の体制を具体的に検討してください。
消防設備の要件
必要な消防用設備等は、延べ面積と階数によって変わります。改修の範囲によって要件が変わるため、計画の初期に消防本部へ相談してください。
避難訓練で確認する
設備を整えても、実際に避難できるかは訓練で分かります。幼児を誘導する時間、経路の幅、屋外までの距離。
訓練の結果を踏まえて、施設の改善点が出てきます。
水まわりと衛生はどうするのか?
幼児の体格に合わせます。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 便器 | 幼児用の寸法、個数 |
| 手洗い | 高さ、水栓の操作 |
| 足洗用設備 | 設置基準で求められる |
| 飲料水用設備 | 高さと衛生 |
| おむつ交換の場所 | 3歳未満児がいる場合 |
| 沐浴・シャワー | 必要に応じて |
| 清掃のしやすさ | 床と壁の仕上げ |
高さが合わないと使えない
既存の園舎でも、便器と手洗いの高さが合わないことがあります。改修の機会に、幼児の体格に合わせた寸法に見直してください。
水栓は、幼児が自分で操作できる形状が望まれます。
足洗用設備
幼稚園設置基準第9条は、飲料水用設備、手洗用設備、足洗用設備を備えることとしています。
屋外の遊びから戻ったときに足を洗う設備です。既存の園舎で機能していない場合、改修で確保してください。
トイレの位置と個数
保育室から遠いと、間に合いません。保育室の近くに配置する必要があります。
個数は幼児数に対して十分であることが求められます。改修で個数を増やす場合、給排水の経路を確認してください。
清掃のしやすさ
幼児の施設では、清掃の頻度が高くなります。床と壁の仕上げが清掃しやすいこと、水が溜まらない勾配であることが必要です。
バリアフリーの考え方は学校のバリアフリー改修はどう進めるのか?で扱っています。幼児と高齢者で求められる寸法は違いますが、段差の解消は共通します。
どう進めるのか?
学級数と安全の点検から始めます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 現在と今後の学級数を確認する |
| 2 | 設置基準との照合(面積、施設、階数) |
| 3 | 日常の安全の点検(転落、指挟み、衝突、やけど) |
| 4 | 避難の経路と消防設備を確認する |
| 5 | 水まわりの寸法と個数を確認する |
| 6 | 優先度を決める |
| 7 | 設計に入る |
現場を職員と一緒に歩く
どこで事故が起きそうか、どこで手間がかかっているか。日々幼児と接している職員が最もよく知っています。
設計の前に、職員と一緒に園舎を歩いてください。図面を見るだけでは分かりません。
優先度は安全から
転落、指挟み、衝突、やけど。これらは起きると取り返しがつきません。設置基準への適合より先に、安全の対応を行う判断があります。
一方、面積や施設の不足は、定員や認可に関わります。両方を並べて優先度を決めてください。
工事中の安全
在園中の工事では、幼児が工事範囲に入らないことが前提になります。囲いの設置、動線の分離、作業員の立入りの管理。
工区の設定と時期を、園と一緒に決めてください。長期休業に寄せる判断が基本になります。
費用の小さい対応から
手すりの隙間を塞ぐ、建具に指挟み防止の部材を付ける、角に緩衝材を貼る、ガラスにフィルムを貼る。
これらは費用が小さく、効果が大きい対応です。大きな改修を待たずに実施できます。
よくある質問
Q. 1学級の幼児数に上限はありますか。
A. 幼稚園設置基準第3条により、1学級の幼児数は35人以下を原則とするとされています。
Q. 2階に保育室を置けますか。
A. 同基準第8条第1項は園舎を2階建以下を原則としますが、耐火建築物で避難施設を備える場合は保育室等を2階以上に配置できるとされています。
Q. 園舎に備えるべき施設は何ですか。
A. 同基準第9条により、職員室、保育室、遊戯室、保健室、便所、飲料水用設備・手洗用設備・足洗用設備です。
Q. 園舎の面積の基準はありますか。
A. 別表第1により、1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートルです。運動場は別表第2に定められています。
Q. 消防設備の扱いは小中学校と同じですか。
A. 違います。幼稚園は消防法施行令別表第一の(6)項で特定防火対象物に該当します。小中学校の(7)項とは扱いが違います。
Q. 費用をかけずにできる安全対策はありますか。
A. 手すりの隙間を塞ぐ、建具に指挟み防止の部材を付ける、角に緩衝材を貼る、ガラスに飛散防止フィルムを貼る。これらは費用が小さく効果が大きい対応です。
まとめ
幼稚園の改修では、日常の安全と設置基準への適合の両方を見ます。
幼稚園設置基準では、第3条で1学級の幼児数を35人以下を原則とし、第8条第1項で園舎を2階建以下を原則としています。ただし耐火建築物で避難施設を備える場合は、保育室等を2階以上に配置できるとされています。第9条では職員室、保育室、遊戯室、保健室、便所、飲料水・手洗・足洗用設備を備えることとされています。
面積は学級数で決まります。園舎は別表第1により1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートルです。定員を増やす構想があるなら、先にこの計算を行ってください。
日常の安全では、転落、指挟み、衝突、やけどへの対応が優先です。手すりの隙間、建具のヒンジ側、柱と壁の角、腰高より下のガラス、手洗いの湯の温度。これらは費用の小さい対応で改善できる項目が多くあります。
消防法では、幼稚園が(6)項で特定防火対象物に該当します。学校教育法上は学校ですが、避難に配慮が必要な施設として分類されています。小中学校の(7)項とは扱いが違い、消防用設備等が現行基準に適用されます。
水まわりは幼児の体格に合わせてください。便器と手洗いの高さ、水栓の操作のしやすさ、トイレの位置と個数。保育室から遠いと間に合いません。
進め方では、設計の前に職員と一緒に園舎を歩いてください。どこで事故が起きそうか、どこで手間がかかっているかは、日々幼児と接している職員が最もよく知っています。
参考・出典
- e-Gov法令検索「幼稚園設置基準」 https://laws.e-gov.go.jp/law/331M50000080032
- 千葉県「私立幼稚園の設置認可等に関する審査基準」 https://www.pref.chiba.lg.jp/gakuji/shiritsutou/shiritsu-ninka/documents/kijyun_you260731.pdf
- e-Gov法令検索「学校教育法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026
- e-Gov法令検索「消防法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 文部科学省「幼稚園施設整備指針」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/index.htm
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
記載の法令および基準は公表時点のものです。設置基準の適用、認可の判断および消防用設備等の要件は所管部署および消防本部の運用により異なります。個別の適用は所管部署、特定行政庁、消防本部および設計者にご確認ください。
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