この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

相見積もりの取り方と比較のコツ|学校改修で失敗しない進め方

相見積もりで最も多い失敗は、比較できない見積りが集まることです。

各社が違う前提で積算すれば、金額の差が「安い会社」なのか「工事範囲が狭いだけ」なのか判断できません。そして見積期間には法律上の下限があり、短すぎる依頼は建設業法違反になり得ます。

この記事では、比較できる見積りを揃えるための手順を整理します。

見積期間には下限がある

建設業法第20条および同法施行令第6条により、工事の予定価格に応じた見積期間の最短日数が定められています。

工事の予定価格見積期間やむを得ない事情がある場合
500万円未満1日以上短縮の規定なし
500万円以上
5,000万円未満
10日以上5日以内に限り短縮可(最短5日)
5,000万円以上15日以上5日以内に限り短縮可(最短10日)

日数の数え方に注意

この日数は「中○日」で数えます。契約内容を提示した日と、契約締結日を除いた期間を設ける必要があります。

例えば12月1日に提示した場合、500万円以上5,000万円未満の工事なら12月12日以降でなければ契約締結できません。5,000万円以上なら12月17日以降です。

なお土日祝日を含めても構いません(平日のみを数える規定はありません)。ただし週休2日制の会社では実質的な作業日数が減るため、配慮が求められます。

「やむを得ない事情」の扱い

短縮が認められるのは、災害復旧工事で緊急を要する場合などです。明確な理由もないのに見積期間を短縮することは許されません。短縮する場合も、理由を記録し、下限日数は必ず守る必要があります。

学校改修では、この期間を工程に組み込んでおく必要があります。「来週までに見積りをください」は、金額規模によっては法令に反します。

見積条件を明示する

比較できる見積りを集める鍵は、全社に同じ条件を示すことです。そしてこれも法令上の要請があります。

国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」によれば、発注者が最低限明示すべき事項があり、具体的内容が確定していない事項については、その旨を明確に示さなければならないとされています。

施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、発注者が受注予定者に対して契約までの間に具体的な内容を提示しない場合には、建設業法違反となります。

「とりあえず概算で」は、法令上も実務上も避けるべき依頼の仕方です。

学校改修で示すべき条件

区分明示する内容
工事内容設計図書、仕様書、数量、使用材料、施工方法、品質基準
工期着手・完成の時期。工事を施工しない日または時間帯(授業中の作業制限、通学時間帯の車両制限など)
施工条件在校中施工か長期休暇施工か、工区分け、仮設校舎の有無、資材置場・搬入経路、騒音・振動への配慮
費用負担区分仮設費、労働災害防止対策費、産業廃棄物処理費の負担区分
支払条件前金払または出来形部分に対する支払の時期・方法
その他第三者に損害が生じた場合の賠償金の負担、注文者が資材を提供する場合の内容

学校で特に効くのが「工事を施工しない日または時間帯」です。授業中は騒音作業ができない、通学時間帯は車両を入れられない、行事の日は作業を止める——これらは工程と人員配置に直結し、そのまま金額に反映されます。

この条件を示さずに見積りを取ると、各社が勝手な前提を置きます。「長期休暇に集中できる前提」で積算した会社は安く、「在校中の細切れ施工」を織り込んだ会社は高くなる。金額差の正体が、施工条件の解釈違いになってしまいます。

補助金を使う場合の要件

相見積もりは、補助事業では手続き上の要件でもあります。

私立学校施設整備費補助金では、施工業者は原則として入札または3社以上の見積り合わせによることとされ、しかも計画調書の提出にあたって、あらかじめ施工業者等の選定を行った上で提出する必要があります。

公立の公共工事では、総合評価落札方式が基本となり、価格だけでなく施工実績・技術者の能力・施工計画・施工体制が評価されます。

制度の詳細は私立学校施設整備費補助金の全体像(K157)と学校施設環境改善交付金の使い方(K168)をご覧ください。

相見積もりの進め方

  1. 現況調査を終える——劣化状況が分からなければ工事範囲が決まらず、条件を示せません(現況調査・建物診断から始める理由/K309)
  2. 設計図書・仕様書を固める——これが比較の土台になります
  3. 見積依頼書に条件を明示する——上表の項目。未確定の事項は「未確定である旨」を明記します
  4. 現地説明会を実施する——搬入経路、資材置場、既存設備の状況を全社が同じ条件で確認します
  5. 法定の見積期間を確保する——金額区分に応じて中10日・中15日
  6. 質疑応答を全社に共有する——1社の質問への回答を全社に展開し、条件のズレを防ぎます
  7. 同一の内訳区分で提出させる——直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費の区分を揃えます

比較の実務──金額だけを見ない

見積書が揃ったら、次の観点で並べます。

比較する項目見るポイント
工事範囲同じ数量・同じ仕様か。「一式」でまとめられている項目がないか
仮設費足場・仮囲い・養生の範囲と期間。ここが最も差が出る
工程長期休暇に山場を寄せられているか。夜間・休日作業の前提が入っていないか
諸経費現場管理費・一般管理費の率。極端に低い場合は他項目に振り分けられている可能性
安全対策費ガードマン配置、仮設通路、立入禁止措置が計上されているか
除外項目「別途」「見積対象外」と書かれた項目。ここに費用が隠れる

内訳の読み方は見積書の見方(内訳・諸経費)(K300)で詳しく解説しています。

実務の勘所

検討項目課題・発生するリスク解決の方向
見積期間が短すぎる法定の下限(中10日・中15日)を割ると建設業法に反する。短期間では積算が粗くなり、着工後の追加請求につながる金額区分に応じた期間を工程に組み込む。日数は提示日と契約日を除いて数える
条件を示さず依頼各社が異なる前提で積算し、金額を比較できない。正当な理由なく条件を示さない場合は建設業法違反となり得る設計図書・仕様・施工条件・費用負担区分を明示する。未確定の事項はその旨を明記する
施工条件を伝えない在校中施工か長期休暇施工かで工程も人員も変わる。条件が曖昧だと、安い見積りは「休暇中に集中できる前提」で組まれているだけということが起きる工事を施工しない日・時間帯(授業中、通学時間帯、行事日)を条件として明示する
現地説明会を省く搬入経路や既存設備の状況が各社で認識が異なり、後から追加工事になる全社を同じ日に現地案内する。質疑応答は全社へ共有する
最安値で即決安値受注は品質低下・下請けへの買い叩き・安全管理の不徹底につながる。公共工事では施工体制評価点でこれを防ぐ仕組みがある除外項目と仮設費の範囲を確認する。施工計画と技術者の経験も評価軸に入れる
補助申請との順序私立では計画調書の提出前に業者選定が必要。採択後に見積りを取ると年度がずれる設計・積算・見積り合わせを申請前に完了させる。前年度から逆算する

相見積もりの精度は、設計の精度で決まる

ここまでの内容は、1つのことに集約されます。比較できる見積りは、比較できる条件からしか生まれません。

数量が確定していなければ、各社は自分の想定で数量を拾います。施工条件が示されていなければ、各社は自分に都合のよい工程を前提にします。その結果並んだ3つの金額は、3つの異なる工事の値段です。比べても意味がありません。

そして条件を示すには、その前に調査で建物の状態を把握し、設計で工事範囲を確定させている必要があります。相見積もりは、業者を選ぶ作業に見えて、実は設計の完成度を試される作業です。

学校改修では、ここに「授業を止めない」という条件が加わります。工区をどう切り、どの工種を長期休暇に寄せ、どこまで在校中に進めるか——この設計ができていれば条件として示せますが、できていなければ各社任せになります。そして各社任せの見積りは、着工後に必ず条件変更と追加費用を生みます。

相見積もりで安く買えるのは、条件が固まっているときだけです。

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光建舎は教育施設の設計・改修を専門とし、現況調査から設計・施工管理までを一貫して対応します。比較可能な見積条件の整理、施工条件の設定、内訳の妥当性の確認、補助要件を踏まえた進め方までご提案します。全国対応・現地調査とオンライン協議の併用で、構想段階からのご相談を承ります。

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参考・出典

※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。

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