目次
基本構想との違いと記載項目
基本構想が方向を示し、基本計画が実施の内容を定めます。
この2つを混ぜると計画が使えなくなります。方向だけを書いた計画では設計に進めず、実施の細部だけを書いた計画では住民に方向が伝わりません。
基本計画で定めるのは、統合の対象校、時期、使用する校舎、通学手段、跡地の方針、財源の6点です。ここが固まれば設計に入れます。
さらに令和8年8月5日の手引改訂(8文科初第1125号)で広域化と総合化の観点が加わりました。改訂前に策定した計画は、この2点の検討状況を問われます。
この記事では、2つの違い、記載項目、委託する場合の仕様を整理します。
この記事の要点
- 基本構想が方向、基本計画が実施の内容。混ぜると設計に進めない
- 基本計画で定めるのは対象校、時期、校舎、通学手段、跡地、財源の6点
- 推計は最新の出生数で引き直す。数年前の推計では前提が合わない
- 手引改訂(令和8年8月5日)により広域化と総合化の検討状況が問われる
- 委託する場合、推計の方法と成果物の形式を仕様に明記する
基本構想と基本計画は何が違うのか?
方向と実施の内容です。
| 項目 | 基本構想 | 基本計画 |
|---|---|---|
| 示すもの | 方向、考え方、基準 | 対象校、時期、整備の内容 |
| 対象期間 | 10年から20年 | 5年から10年 |
| 対象校の特定 | しない場合がある | する |
| 時期 | 示さない場合がある | 年度で示す |
| 財源 | 考え方のみ | 概算額 |
| 次の工程 | 基本計画の策定 | 設計、条例改正 |
構想では対象校を特定しない選択もある
構想の段階で対象校を特定すると、議論が「なぜうちの学校か」に集中します。先に基準と方向を合意し、その基準を当てはめる形で対象校を決める順番が実務的です。
ただし基準が決まれば対象校は自動的に決まるため、構想の段階でも実質的には見えています。
計画では時期を年度で示す
基本計画では統合の時期を年度で示します。これがないと設計の発注時期も条例改正の議案提出時期も決まりません。
2つを1本にまとめる団体もある
「基本方針」として1本にまとめる例もあります。規模が小さい統合では、分ける必要がない場合があります。
ただし住民協議に時間がかかる見込みなら、構想で合意を取ってから計画に進む方が手戻りが減ります。
全体の工程での位置
構想と計画が検討全体のどこに入るかは学校統廃合はどう進めるのか?で扱っています。
基本計画には何を書くのか?
6つの項目が核です。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 統合の対象校 | どの学校とどの学校を統合するか |
| 統合の方式と時期 | 吸収型か新設型か。実施の年度 |
| 使用する校舎 | 既存校舎の改修か新築か。必要な整備 |
| 通学手段 | スクールバスの導入、経路、便数、運行費 |
| 跡地の方針 | 転用、貸付、売却、解体のいずれか |
| 財源 | 国庫補助と地方債の組合せ、年度別の事業費 |
対象校の決め方を示す
どの基準でその組合せになったのかを書いてください。学級数、通学距離、施設の状態。基準と当てはめの結果を並べます。
結論だけを書くと、説明会で選定の理由を問われて答えられません。
方式で費用と合意が変わる
| 方式 | 内容 | 費用 | 合意 |
|---|---|---|---|
| 吸収型 | 片方の校舎に統合 | 抑えられる | 廃止される側の反発が出やすい |
| 新設型 | 両方を廃止し新設 | 大きい | 双方が対等で合意しやすい |
吸収型は既存校舎を使うため費用が抑えられます。新設型は校名や校歌を新たに決めるため、双方の参加の余地があります。
校舎の整備内容を具体化する
統合後の学級数に対して普通教室が足りるかを確認し、不足するなら転用か増築かを書きます。転用すると特別教室が足りなくなるため、その代替も書いてください。
転用が建築基準法上の大規模の修繕・模様替に当たる場合、建築確認の対象になります。令和7年4月1日施行の改正により、2階建て又は延べ面積200平方メートル超の建築物では構造によらず構造関係規定等の審査が必要になりました。
通学手段は運行費まで書く
スクールバスの経路、便数、乗車時間、そして運行費です。運行費は統合後に毎年発生します。
初期費用だけを書いた計画は、後年度の負担が抜けています。
跡地の方針を必ず書く
方針がないと統合後に使われない校舎が残ります。文部科学省の廃校施設活用状況実態調査(令和6年5月1日現在)では、現存7,612校のうち1,951校(25.6パーセント)が未活用です。
転用、貸付、売却、解体のいずれかを書き、用途の候補まで示してください。
財源は年度別に書く
総額だけでなく年度別の事業費と財源内訳を書きます。公立学校施設整備費負担金は原則2分の1、学校教育施設等整備事業債は充当率90パーセント(負担金事業・通常分)です。
対象事業費を超えた部分は全額が自治体の負担になるため、この単独費を見込んでください。
推計はどう扱うのか?
計画の前提であり、最も見落とされます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 推計の年次 | いつ時点の推計か |
| 出生数の反映 | 直近の出生数が入っているか |
| 統合後の学級数 | 標準学級数に収まるか |
| 再統合の可能性 | 10年後、20年後も規模が維持されるか |
計画策定中に推計が古くなる
構想から計画まで数年かかると、着手時の推計が古くなります。出生数の減少が想定より速い場合、統合後の規模が見込みを下回ります。
計画の策定時点で引き直してください。推計の方法は児童生徒数の将来推計で扱っています。
出生数は確定している
小学校の入学者数は出生数から6年先までほぼ読めます。ここが推計の最も確実な部分です。
直近の出生数が反映されていない推計は、それだけで疑う必要があります。
統合後の学級数を書く
推計から統合後の学級数を算出し、計画に書いてください。学校教育法施行規則第41条は小中学校12学級以上18学級以下を標準としています。
統合しても標準を下回る場合、将来の再統合が論点になります。その見通しも書いてください。
教室数と整合させる
学級数から必要な普通教室数が決まります。推計が過大なら教室が余り、過小なら不足します。
余裕教室が多く出る設計は、後の転用や貸付の検討が必要になります。
手引改訂で記載項目は変わるか?
検討状況の記載が加わります。
文部科学省は令和8年8月5日、8文科初第1125号「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の改訂等について(通知)」により、平成27年1月27日版を改訂しました。
| 観点 | 計画に書くべきこと |
|---|---|
| 広域化 | 周辺市町村との協議の有無と結果 |
| 総合化 | 首長部局を含めた検討の経過、他計画との整合 |
| 現代化 | ICTによる学校間連携の検討状況 |
広域化の検討状況を書く
改訂版は、各市町村がそれぞれの域内だけを念頭に検討するのではなく、周辺の市町村を巻き込んだ圏域で検討する観点を示しています。
したがって圏域での検討を行ったか、行わなかったならその理由を計画に書く必要があります。地理的に隣接校が遠い、協議して困難と判断した。いずれかの記録を残してください。
総合化は他計画との整合で示す
公共施設等総合管理計画との整合、都市計画との関係、公共交通の路線。これらとの整合を計画に書いてください。
教育委員会単独で策定した計画は、この部分が空白になりがちです。
数値の基準は変わっていない
標準学級数、通学距離、通学時間の基準は改訂版でも維持されています。既存計画の数値を作り直す必要はありません。
改訂の内容は学校統廃合の手引とは何か?で扱っています。
改訂前の計画は検証の対象になる
改訂前に策定した計画は、広域化と総合化の2点が検討されていません。議会や住民への説明で問われる可能性があります。
計画の検証の観点は学校統廃合計画の妥当性検証とは何か?で扱っています。
委託する場合の仕様はどう書くか?
成果物の形式と推計の方法を明記します。
| 仕様に書くこと | 理由 |
|---|---|
| 推計の方法 | コーホート要因法など。方法で結果が変わる |
| 推計の基準年 | いつ時点のデータを使うか |
| 対象校の範囲 | 全校か特定地区か |
| 施設調査の範囲 | 現況調査を含むか、図面上の確認のみか |
| 財源の試算 | 補助と起債の区分まで試算するか |
| 跡地の検討 | 転用の可否の検討を含むか |
| 成果物 | 報告書、データ、図面の形式と部数 |
| 住民説明の支援 | 説明会の資料作成、同席の有無 |
推計の方法を指定する
推計の方法によって結果が変わります。方法を指定しないと、受託者の判断で決まります。
コーホート要因法を使うのか、どの期間の実績から移動率を出すのか。仕様に書いてください。
施設調査の範囲を明確にする
図面上の確認だけなのか、現地での劣化調査を含むのか。含まないと、改修で足りるかの判断ができません。
コンクリートの中性化、耐震診断、アスベストの有無。必要な調査を仕様に列挙してください。
財源の試算をどこまで求めるか
概算工事費だけでは財源計画が作れません。補助の算定割合、起債の区分、交付税措置率、実質負担まで求めるかを書いてください。
住民説明の支援を含めるか
資料の作成だけか、説明会への同席まで含めるか。同席を求めるなら回数を書いてください。
技術的な質問に受託者が答えられる体制があると、説明会が進みます。
成果物の形式を指定する
報告書だけでなく、推計のデータ、図面、概算の内訳を求めてください。データがないと、後から前提を変えた再計算ができません。
改訂版への対応を仕様に入れる
令和8年8月5日の改訂を踏まえた検討を求める旨を仕様に書いてください。書かないと、平成27年版だけを前提にした成果物が出てきます。
よくある質問
Q. 基本構想と基本計画の違いは何ですか。
A. 基本構想が方向と考え方と基準を示し、基本計画が対象校、時期、整備の内容を定めます。混ぜると、方向だけの計画では設計に進めず、細部だけの計画では住民に方向が伝わりません。
Q. 基本計画には何を書けばよいですか。
A. 統合の対象校、方式と時期、使用する校舎、通学手段、跡地の方針、財源の6点です。ここが固まれば設計に入れます。
Q. 推計はいつ時点のものを使いますか。
A. 計画の策定時点で引き直してください。構想から計画まで数年かかると着手時の推計が古くなり、統合後の規模が見込みを下回ります。出生数は確定しているため、小学校の入学者数は6年先までほぼ読めます。
Q. 跡地の方針も計画に書くのですか。
A. 書いてください。方針がないと統合後に使われない校舎が残ります。廃校施設活用状況実態調査では現存7,612校のうち1,951校(25.6パーセント)が未活用です。
Q. 手引改訂で記載項目は増えますか。
A. 増えます。広域化(周辺市町村との協議の有無と結果)と総合化(首長部局を含めた検討の経過、他計画との整合)の記載が必要になります。数値の基準は変わっていません。
Q. 委託する場合に気をつけることは何ですか。
A. 推計の方法と施設調査の範囲、財源の試算の深さ、成果物の形式を仕様に明記してください。あわせて令和8年8月5日の改訂を踏まえた検討を求める旨を書かないと、平成27年版だけを前提にした成果物が出てきます。
まとめ
学校統廃合では、基本構想が方向と考え方と基準を示し、基本計画が対象校、時期、整備の内容を定めます。この2つを混ぜると、方向だけを書いた計画では設計に進めず、実施の細部だけを書いた計画では住民に方向が伝わりません。
基本計画で定めるのは、統合の対象校、方式と時期、使用する校舎、通学手段、跡地の方針、財源の6点です。対象校については、どの基準でその組合せになったのかを書いてください。結論だけでは説明会で選定の理由を問われて答えられません。
最も見落とされるのは推計です。構想から計画まで数年かかると着手時の推計が古くなり、統合後の規模が見込みを下回ります。小学校の入学者数は出生数から6年先までほぼ読めるため、計画の策定時点で引き直してください。あわせて統合後の学級数を算出し、学校教育法施行規則第41条の標準学級数に収まるかを書いてください。
通学手段は運行費まで、跡地は用途の候補まで、財源は年度別に書きます。スクールバスの運行費は統合後に毎年発生し、対象事業費を超えた部分は全額が自治体の負担です。初期費用だけの計画は後年度の負担が抜けています。
令和8年8月5日の手引改訂(8文科初第1125号)により、広域化(周辺市町村との協議の有無と結果)と総合化(首長部局を含めた検討の経過、他計画との整合)の記載が必要になりました。改訂前に策定した計画はこの2点が検討されていないため、議会や住民への説明で問われる可能性があります。委託する場合は、改訂を踏まえた検討を求める旨を仕様に明記してください。
参考・出典
- 文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の改訂等について(通知)」(8文科初第1125号、令和8年8月5日) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tekisei/1413885_00007.htm
- 文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引~少子化に対応した活力ある学校づくりに向けて~」(平成27年1月27日) https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/07/24/1354768_1.pdf
- 文部科学省「廃校施設等活用状況実態調査」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1296809.htm
- 総務省「令和8年度 基本となる事業別地方債充当率(令和8年総務省告示第161号)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002597.pdf
- e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000080011
- 国土交通省「建築基準法等の改正について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000148.html
記載の基準および制度は公表時点のものです。計画の構成および記載事項は各市町村の実情により異なります。個別の検討は文部科学省および都道府県・市町村の教育委員会にご確認ください。
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