統合校の新築や校舎の大規模改修を前に、「設計と施工をまとめて発注できないか」「工期を短くする発注方式はないか」とお考えではないでしょうか。近年、学校整備の分野でも設計施工一括発注方式(デザインビルド/DB方式)やECI方式(設計段階から施工者が関与する方式)という選択肢が検討されるようになりました。一方でこれらは名称が似ており、設計者を選ぶプロポーザル方式や、PPP/PFIといった事業手法と混同されやすい領域でもあります。
この記事を読み終えると、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)と国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」が定める定義に沿って、デザインビルド・ECI方式・従来の分離発注の違い、それぞれのメリットと留意点、学校整備で適する場面と適さない場面までを、自治体担当者の実務目線で整理できます。制度部分は国土交通省の一次情報をもとに、実務の視点は学校・教育施設の改修と統廃合支援を全国で手掛けてきた当社の現場知見から補います(記載は2026年8月時点の情報です)。
発注方式は一度決めると後戻りが難しく、選び方を誤ると設計段階での手戻りや、施工段階での協議難航につながります。方式の比較検討でお悩みの際は、学校整備の発注方式の比較検討について光建舎に無料で相談することもご検討ください。
目次
学校整備の発注方式は「契約方式」と「落札者の選定方法」の2軸で決まる
学校整備の発注方式を考えるときの出発点は、「どこまでの範囲を1つの契約で発注するか(契約方式)」と「候補者の中から誰を契約相手に選ぶか(落札者の選定方法)」を分けて考えることです。デザインビルドとECI方式は前者、総合評価落札方式や技術提案・交渉方式は後者に属します。この2軸を混ぜて議論すると、方式の取り違えが起こります。
国土交通省の「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」(平成27年5月策定、令和4年3月改正)では、工事調達の入札契約方式は「契約方式」「フレームワークの有無」「競争参加者の設定方法」「落札者の選定方法」「支払方式」の要素で構成され、これらを組み合わせて適用するものとされています(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」)。
このうち事業プロセスの対象範囲に応じた契約方式には、次のような種類があります(出典:同ガイドライン)。
- 工事の施工のみを発注する方式(いわゆる設計・施工分離)
- 設計段階から施工者が関与する方式(ECI方式)
- 設計・施工一括発注方式
- 詳細設計付工事発注方式
- 維持管理付工事発注方式
一方、落札者の選定方法には、価格競争方式、総合評価落札方式、技術提案・交渉方式があり、これらと併せて段階的選抜方式を採用することもできます(出典:同ガイドライン)。
こうした多様な方式の選択は、法律上も明確に位置づけられています。平成26年に改正された品確法第14条では、「発注者は、入札及び契約の方法の決定に当たっては、その発注に係る公共工事の性格、地域の実情等に応じ、この節に定める方式その他の多様な方法の中から適切な方法を選択し、又はこれらの組合せによることができる」と規定されています(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドラインについて」)。つまり、学校整備で従来型の分離発注以外を選ぶことは例外ではなく、制度上想定された選択肢のひとつだということです。
設計施工一括発注方式(デザインビルド)とは
設計・施工一括発注方式とは、構造物の構造形式や主要諸元も含めた設計を、施工と一括して発注する方式のことです。 一般に「デザインビルド(DB方式)」と呼ばれるのはこの方式を指します。国土交通省のガイドラインでは、事業プロセスのうち構造形式や主要諸元の検討・決定を行う設計段階での適用となる方式と整理されています(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」)。
学校に置き換えると、校舎の階数や構造種別、諸室の構成といった「建物の骨格を決める設計」の段階から、設計と施工を同じ事業者(またはその企業体)が一括して担うイメージです。発注者は詳細な設計図書ではなく、要求水準書などで求める性能・機能を示して発注することになります。
詳細設計付工事発注方式との違い
デザインビルドとよく似た名称に「詳細設計付工事発注方式」があります。詳細設計付工事発注方式とは、予備設計等を通じて構造物の構造形式や主要諸元、構造一般図等を確定したうえで、施工のために必要な詳細設計(仮設を含む)を施工と一括して発注する方式のことです(出典:同ガイドライン)。
つまり両者の差は「一括して発注する設計の深さ」にあります。デザインビルドは建物の骨格を決める段階から一括、詳細設計付工事発注方式は骨格を発注者側で固めたうえで、施工に必要な詳細設計から一括、という違いです。自治体の要綱や議会資料で「設計施工一括」と表現されていても、実態はどちらなのかを確認しておくと、責任範囲の議論がぶれにくくなります。
なお建築工事では、施工者が設計を行う場合、建築士法上、建築士事務所の登録がされている必要があります(出典:国土交通省「国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドライン」)。企業体を組む場合の役割分担を検討する際の前提として押さえておきたい点です。
ECI方式(設計段階から施工者が関与する方式)とは
ECI方式(設計段階から施工者が関与する方式)とは、設計段階の技術協力実施期間中に施工の数量・仕様を確定したうえで工事契約をする方式のことです。 ECIはEarly Contractor Involvement(施工者の早期関与)の略で、施工者は発注者が別途契約する設計業務への技術協力を実施します(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」)。
ここが最も誤解されやすいポイントです。ECI方式は「設計と施工を一括で契約する方式」ではありません。設計業務の契約はあくまで設計者と発注者の間で結ばれ、施工者は技術協力業務の契約に基づいて設計に協力します。そのうえで、技術協力を通じて施工法や仕様を明確にし、確定した仕様で技術協力を実施した者と施工に関する契約を締結する、という2段構えの流れになります。なお施工者が行う技術協力については、技術協力の開始に先立って技術協力業務の契約を締結するとされています(出典:同ガイドライン)。
適用段階は、事業プロセスのうち予備設計または詳細設計の段階が想定され、事業の初期段階から施工者の関与を必要とする場合には概略設計段階での適用も考えられるとされています(出典:同ガイドライン)。
ECI方式では、発注者・設計者・施工者の三者がパートナーシップを組み、発注者が柱となって三者の情報・知識・経験を融合させることが前提です。設計者が中立の立場で設計を担い続ける点が、デザインビルドとの決定的な違いだと整理できます。
混同しやすい「技術提案・交渉方式」との関係
デザインビルドやECI方式を検討すると必ず登場するのが「技術提案・交渉方式」です。結論から言えば、技術提案・交渉方式は契約方式ではなく「落札者の選定方法」であり、デザインビルドやECI方式と並列に比較するものではありません。
技術提案・交渉方式とは、技術提案を募集し、最も優れた提案を行った者を優先交渉権者とし、その者と価格や施工方法等を交渉して契約の相手方を決定する方式のことです(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」)。品確法第18条は、当該公共工事等の性格等により仕様の確定が困難である場合において、技術提案を公募のうえ、審査の結果を踏まえて選定した者と工法・価格等の交渉を行うことで仕様を確定したうえで契約できる旨を定めています(出典:同ガイドライン)。
技術提案・交渉方式は、施工者独自の高度で専門的なノウハウや工法等を活用することを目的としており、設計段階において施工者が参画することが必要になります。このため、技術提案・交渉方式の適用が考えられる契約方式は「設計・施工一括発注方式」または「設計段階から施工者が関与する方式(ECI方式)」の2種類とされています(出典:同ガイドライン)。
さらに技術提案・交渉方式には、次の3種類の契約タイプがあります(出典:国土交通省「国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドライン」)。
| 契約タイプ | 契約の流れ | ベースとなる契約方式 |
|---|---|---|
| 設計・施工一括タイプ | 優先交渉権者と価格等を交渉し、交渉成立後に設計及び施工の契約を締結 | 設計・施工一括発注方式 |
| 技術協力・施工タイプ | 優先交渉権者と技術協力業務の契約を締結し、別契約の設計に提案を反映しながら交渉、成立後に施工の契約を締結 | ECI方式 |
| 設計交渉・施工タイプ | 優先交渉権者と設計業務の契約を締結し、交渉成立後に施工の契約を締結 | ECI方式 |
注意したいのは、技術提案・交渉方式が価格競争のプロセスを持たず、随意契約の一種と位置づけられている点です。このためガイドラインでも、適用判断・技術提案の審査評価・交渉結果を踏まえた予定価格の妥当性確認にあたって学識経験者への意見聴取を行うなど、中立性・公平性・透明性の確保に留意すべきとされています(出典:同ガイドライン)。また、優先交渉権者との交渉が不成立となる場合があることにも留意が必要です。
一方、デザインビルドは総合評価落札方式で発注することも考えられます。国土交通省は、設計・施工一括発注方式について、「公示段階で仕様の確定が困難」かつ「最も優れた技術提案によらなければ工事目的の達成が難しい」工事に対して技術提案・交渉方式を適用するものとしています(出典:技術提案・交渉方式の運用ガイドライン)。デザインビルド=技術提案・交渉方式、と短絡しないことが大切です。
従来の分離発注(設計・施工分離)との違い
比較の基準となる従来型の方式も、定義を押さえておきましょう。工事の施工のみを発注する方式とは、別途実施された設計に基づいて確定した工事の仕様により、その施工のみを発注する方式のことです。事業プロセスのうち、調査・計画から詳細設計までのすべての段階が完了した後の施工段階における適用となります(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」)。
3方式の違いを一覧で整理します。学校整備の方針を検討する際の出発点としてお使いください。
| 項目 | 工事の施工のみを発注(分離発注) | 設計・施工一括発注方式(デザインビルド) | ECI方式 |
|---|---|---|---|
| 発注時に確定していること | 設計が完了し仕様が確定 | 求める性能・機能(要求水準)を提示 | 設計途中。技術協力期間中に数量・仕様を確定 |
| 設計を行う者 | 設計者(施工者とは別契約) | 施工者(設計と施工が一元化) | 設計者(施工者は技術協力) |
| 設計者の立場 | 施工者に対し中立の立場で設計できる | 施工と一体のため中立性の確保が論点 | 中立の立場を維持しやすい |
| 責任の所在 | 設計と施工で役割が分担される | 設計と施工の責任を一元化できる | 設計は設計者、技術協力・施工は施工者 |
| 施工者ノウハウの反映 | 設計完了後のため反映余地は限定的 | 設計に直接反映できる | 技術協力を通じて設計に反映できる |
| 主な適用段階 | 詳細設計完了後の施工段階 | 構造形式・主要諸元を決める設計段階 | 予備設計・詳細設計段階(初期なら概略設計) |
| 発注者に求められる体制 | 標準的 | 提案の審査・評価と要求水準の設計力 | 三者調整と提案の適用可否を判断する力 |
分離発注には、発注時に仕様を確定させることで精度の高い工事費の算出が可能になる、設計者が施工者に対し中立的な立場で設計できる、詳細な図面で発注することにより入札価格への余分なリスク費用の上乗せを防止できる、といった効果があるとされています(出典:同ガイドライン)。決して「古い方式」ではなく、条件が整った学校整備では合理的な選択肢であり続けます。
どの方式を軸に検討すべきかは、事業の規模・工期・敷地条件・発注者の体制によって変わります。判断材料の整理でお困りの際は、学校の設計・施工発注方式の比較検討について光建舎に相談することで、論点の抜け漏れを減らしやすくなります。
デザインビルドのメリットと留意点
デザインビルドの最大の価値は、施工者のノウハウを設計に取り込めることと、設計と施工の責任の所在を一元化できることです。一方で、リスクの取り扱いを誤ると発注者・受注者双方にとって不利益が生じます。
国土交通省のガイドラインが挙げる主な効果は次のとおりです(出典:同ガイドライン)。
- 施工者のノウハウを反映した現場条件に適した設計、施工者の固有技術を活用した合理的な設計が可能となる
- 設計時より施工を見据えた品質管理が可能となり、より優れた品質の確保につながる技術導入の促進が期待される
- 設計の全部または一部と施工を同一の者が実施するため、当該設計と施工に関する責任の所在を一元化できる
他方、適用にあたっての留意点として、次の点が示されています(出典:同ガイドライン)。
- 設計を完了しない段階から設計と施工を一括して契約するため、地質等の自然条件、地元及び関係行政機関との協議、地中埋設物等の社会条件に関するリスクが大きくなりやすい。施工者によりコントロールすることが難しいこれらのリスクがある工事には適用できない
- 設計と施工を分離して発注した場合と比べて、設計者の視点や発注者におけるチェック機能が働きにくく、施工者の視点に偏った設計となる可能性がある
- 契約時に受発注者間で具体的な設計・施工条件の共有及び明確な責任分担がない場合、必要な契約変更ができないおそれや、受注者側に過度な負担が生じることがある
- 発注者側が設計施工を「丸投げ」してしまうと、本来発注者が負うべきコストや工事完成物の品質に対する責任が果たせなくなる
- 提案された技術を対象構造物に適用することについて、発注者が審査・評価を行い、確実性や成立性等を判断する必要がある
学校整備に引きつけると、留意点の中心は「要求水準書をどう書くか」に集約されます。文部科学省が運営する学校施設整備の共創プラットフォーム「CO-SHA Platform」で公開されている義務教育学校の整備事例でも、デザインビルド方式では発注者が作成する要求水準書に基づいて設計・施工を進めるため記載方法が難しく、性能規定で記載される項目が多いことから発注者と事業者の間で解釈が異なり、協議が難航する場面があったことが課題として整理されています。同時に、粘り強い協議によって短工期・コスト抑制・品質確保を両立できたことも報告されています(出典:文部科学省 CO-SHA Platform 事例紹介)。
現場では、「要求水準書に書いたつもりだったが、教育委員会が当然と考えていた仕様が明記されておらず、後から追加協議になった」というご相談を受けることがあります。校舎は教育活動と一体で使われる施設であり、諸室の使われ方や動線の意図は言語化しにくい部分が多く残ります。要求水準書の作成段階で、学校現場のヒアリング結果を「性能として何を求めるのか」に翻訳しておくことが、後の協議負担を大きく左右すると考えられます。
ECI方式のメリットと留意点
ECI方式は、設計者の中立性を保ったまま施工者の知見を設計に反映できる点が特徴です。発注時に仕様や前提条件の確定が困難な事業に対応する方式として位置づけられています。
ガイドラインが挙げる主な効果は次のとおりです(出典:国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」)。
- 設計段階で、発注者と設計者に加えて施工者も参画することから、施工者の知識・経験を踏まえた代替案の検討が可能となる
- 地元及び関係行政機関との協議、近隣工事の進捗状況、作業用道路・ヤード等、事業のリスクに関する情報を施工者が設計段階から把握し、リスクへの対処方針を発注者と施工者が検討して設計に反映できる
- 別途発注された設計業務の実施者による設計に対して、施工性等の観点から施工者の提案が行われることから、施工段階における施工性等の面からの設計変更発生リスクの減少が期待できる
- 施工者によって、設計段階から施工計画の検討を行うことができる
適用にあたっては、発注者・設計者・施工者の三者からなる体制において、発注者が施工者による提案の適用可否や、追加調査・協議等の必要性の判断を行う必要があることに留意するとされています(出典:同ガイドライン)。三者の中心に発注者が立つ以上、「決める人」が自治体側に必要だということです。
学校整備でECI方式が効きやすいのは、在校生がいる敷地内での工事や、既存校舎を使いながらの段階施工など、施工計画が計画全体を左右する場面です。仮設・動線・工区分けの制約を設計に織り込めるかどうかで、児童生徒の安全確保と工期の両方が変わります。当社でも、在校中・営業中でも止めない安全・工程管理を重視して改修計画を組み立ててきましたが、こうした条件を設計初期から共有できる仕組みは、方式にかかわらず有効だと考えています。
学校整備でデザインビルド・ECI方式が適する場面
方式選択の判断軸は、ガイドラインが示す考慮事項に沿って整理するのが確実です。契約方式の選択では「仕様、前提条件や工事価格の確定度」「事業・工事の複雑度」「施工の制約度」等を、落札者の選定方法では「価格以外の要素の評価の必要性」「最良の提案を採用する必要性」「競争参加者数の見込み等を踏まえた受発注者双方の事務負担軽減の必要性」等を考慮するとされています(出典:同ガイドライン)。
学校整備の実務に置き換えると、次のような整理ができます。
デザインビルドの検討が向きやすい場面
- 統合の期日が決まっており、設計と施工を重ねて工期を短縮する必要がある場合
- 求める機能・性能を要求水準として言語化でき、発注者側に審査・評価の体制がある場合
- 敷地条件が比較的単純で、地中埋設物や地元協議に起因する大きな不確実性が想定されない場合
ECI方式の検討が向きやすい場面
- 在校しながらの施工など、施工計画の制約が設計内容を強く規定する場合
- 既存校舎の改修で、解体してみないと分からない部分が残り、設計段階での条件確定が難しい場合
- 設計者の中立性を保ちつつ、施工性の知見を設計に取り込みたい場合
分離発注が引き続き妥当な場面
- 仕様が明確で、設計完了後に確定した数量・仕様で発注できる場合
- 発注者のチェック機能を効かせ、精度の高い工事費算出を優先したい場合
- 技術提案の審査・評価に割ける体制や期間が限られる場合
なお、デザインビルドは自然条件・社会条件のリスクが大きい工事には適用できないとされている点を、繰り返し確認しておく必要があります。「工期短縮のためにデザインビルド」という動機だけで進めると、リスク分担の設計が置き去りになりかねません。
発注方式を決めるまでの実務手順
発注方式の検討は、事業着手後のできるだけ早い段階から始めることが重要です。ガイドラインでも、事業着手後の早い段階から入札契約方式の検討を行うこと、状況の変化があった場合には適用する方式の見直しを行う必要があることが示されています(出典:同ガイドライン)。一般的な流れは次のとおりです。
- 事業条件の整理:統合の時期、必要諸室、敷地、既存校舎の扱い、概算事業費、財源の見通しを整理します。
- リスクの洗い出し:地中埋設物、アスベスト等の有害物質、地元・関係機関協議、埋蔵文化財、在校生への影響など、不確実性のある要素を列挙します。
- 仕様の確定度の判定:発注時点でどこまで仕様を確定できるかを評価します。ここがデザインビルド・ECI方式・分離発注を分ける最大の分岐点です。
- 契約方式の一次選定:確定度・複雑度・施工の制約度を踏まえ、契約方式の候補を絞り込みます。
- 落札者の選定方法の検討:価格以外の要素をどこまで評価する必要があるか、最良の提案を採用する必要があるかを検討し、価格競争方式・総合評価落札方式・技術提案・交渉方式を選びます。必要に応じ段階的選抜方式を併用します。
- 発注者体制の点検:技術提案の審査・評価、交渉、設計成果の確認を担える体制があるかを確認し、不足があれば補完策を検討します。
- リスク分担の設計:どのリスクを発注者が負い、どこから受注者が負うのかを契約図書で具体的に示します。曖昧なまま契約すると、後の協議が長期化します。
- 要求水準書・説明書の作成:デザインビルドの場合は特に、性能規定の書きぶりと解釈の余地を点検します。教育委員会・学校現場の要望を性能表現へ翻訳する工程を必ず挟みます。
- 公告・審査・契約:透明性を確保しながら手続を進めます。技術提案・交渉方式を採る場合は、学識経験者の意見聴取や結果の公表など、法令上求められる手続を漏らさず実施します。
このうち3と7が実務上の山場です。当社では調査・計画・設計・施工までワンストップで対応してきた経験から、既存校舎の劣化状況や敷地条件の不確実性を早期に可視化し、方式選択の判断材料として整理する支援を行っています。
発注者体制の確保と国の支援策
多様な発注方式を使いこなすうえで最大の制約になるのは、多くの場合、予算ではなく発注者側の体制です。ガイドラインでも、各発注者は自らの発注体制を把握し、体制が十分でないと認められる場合には、国及び都道府県等の他機関の協力・支援も得ながら、発注関係事務を適切に実施できる体制確保に取り組むよう努める必要があるとされています(出典:同ガイドライン)。
体制を補う方式として位置づけられているのがCM方式です。CM方式とは、コンストラクションマネージャー(CMR)が技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種マネジメント業務の全部または一部を行うものです。CM方式にはピュア型とアットリスク型があり、技術職員がいない、または著しく少ない発注者において導入される場合があるとされています(出典:同ガイドライン)。ピュア型については「地方公共団体におけるピュア型CM方式活用ガイドライン(令和2年9月)」が整備されています。
また国土交通省は、他の発注者のモデルとなる発注への支援を実施する「多様な入札契約方式モデル事業」等に取り組み、地方公共団体における多様な入札契約方式の導入・活用を促進しています。近年は「入札契約改善推進事業」「ハンズオン支援事業」として、公募・選定を経た自治体への支援が継続的に行われています(出典:国土交通省「多様な入札契約方式の導入・活用について」)。学校整備で新しい方式を初めて採用する場合は、こうした公的支援の活用可否をあわせて確認しておくと、庁内・議会への説明もしやすくなります。
なお、設計者を選ぶ手続そのもの(プロポーザル方式・コンペ・価格競争入札の違いや実施要項の作り方)は、本記事とは別の論点です。詳しくは「学校設計のプロポーザルとは?発注方式の違いと公募型の流れ・評価基準を実務目線で解説」をご覧ください。事業手法として民間資金・ノウハウの活用を検討する場合は「学校施設のPPP/PFI・民間活用」の記事が参考になります。
よくある質問
Q. デザインビルドとECI方式は、どちらも「設計施工一括」ですか。
A. 異なります。設計・施工一括発注方式(デザインビルド)は、構造形式や主要諸元も含めた設計を施工と一括して発注する方式です。一方ECI方式は、施工者が発注者と別途契約する設計業務に技術協力を行い、設計段階の技術協力実施期間中に施工の数量・仕様を確定したうえで工事契約をする方式です。ECI方式では設計業務の契約は別に存在し、設計者は中立の立場を保ちます。
Q. デザインビルドを採ると、必ず技術提案・交渉方式になりますか。
A. なりません。技術提案・交渉方式は落札者の選定方法であり、設計・施工一括発注方式では総合評価落札方式の適用も考えられます。国土交通省は、「公示段階で仕様の確定が困難」かつ「最も優れた技術提案によらなければ工事目的の達成が難しい」工事に対して技術提案・交渉方式を適用するものとしています。契約方式と選定方法は分けて検討してください。
Q. デザインビルドなら工期は必ず短くなりますか。
A. 必ずとは言えません。設計と施工を一元化することで並行して準備を進めやすくなる一方、要求水準書の解釈をめぐる協議が長引けば、期待した短縮効果が得られないこともあります。文部科学省のCO-SHA Platformで公開されている義務教育学校の事例でも、要求水準書が性能規定中心であることから解釈の相違が生じ、協議が難航した場面があったことが課題として示されています。
Q. 既存校舎の大規模改修にもデザインビルドは使えますか。
A. 事業の性格によります。国土交通省のガイドラインでは、設計を完了しない段階から一括契約するため自然条件・社会条件に関するリスクが大きくなりやすく、施工者がコントロールすることが難しいリスクがある工事には適用できないとされています。解体してみないと分からない部分が多い改修では、ECI方式のように設計段階で施工者の知見を得ながら条件を詰める進め方も検討に値します。
Q. 技術職員が少ない自治体でも、これらの方式を採用できますか。
A. 体制の確保が前提になります。ガイドラインでは、発注体制が十分でないと認められる場合、国及び都道府県等の他機関の協力・支援も得ながら体制確保に努める必要があるとされ、技術職員がいない、または著しく少ない発注者向けにCM方式が位置づけられています。国土交通省による自治体向けの入札契約改善推進事業やハンズオン支援事業の活用も選択肢です。
まとめ|方式の定義を正しく押さえることが選択の第一歩
学校整備で設計施工一括発注(デザインビルド)やECI方式を検討する際に最も重要なのは、「契約方式」と「落札者の選定方法」を分けて考えることです。デザインビルドは構造形式や主要諸元も含めた設計を施工と一括して発注する契約方式、ECI方式は設計段階の技術協力実施期間中に施工の数量・仕様を確定したうえで工事契約をする契約方式、技術提案・交渉方式はそれらに適用しうる落札者の選定方法という関係にあります。
そのうえで、デザインビルドは施工者ノウハウの反映と責任の一元化という効果がある一方、自然条件・社会条件のリスクが大きい工事には適用できないこと、要求水準書の書きぶりが成否を分けることに留意が必要です。ECI方式は設計者の中立性を保ちながら施工性の知見を設計に取り込める一方、発注者が三者の中心として判断する役割を担います。従来の分離発注も、仕様が確定できる事業では引き続き合理的な選択肢です。
品確法第14条が示すとおり、公共工事の性格や地域の実情に応じて多様な方法から適切なものを選択することが、発注者に期待されています。まずは自らの事業について「発注時点でどこまで仕様を確定できるか」を評価するところから始めてみてください。
当社は、学校・教育施設の改修に特化した実績とノウハウを全国で積み重ね、調査・設計・施工までワンストップで自治体の事業を支えてきました。在校中でも止めない安全・工程管理、補助金・交付金の活用支援も含め、上流からの検討をお手伝いしています。発注方式の比較検討や事業スケジュールの組み立てでお悩みの際は、統合校・学校改修の発注方式と事業計画について光建舎に無料で相談することをご検討ください。実務上の論点整理から丁寧にお付き合いします。