この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

設計施工の分離と一括はどう違うのか

学校改修の発注方式を選ぶ前に

学校改修を依頼するとき、多くの学校法人・自治体が最初にやるのは「設計事務所に図面を引いてもらい、その図面で数社から見積を取る」ことです。

これは設計施工分離方式と呼ばれる、長く標準とされてきたやり方です。ただし、唯一の方法ではありません。

国土交通省は2015年5月に「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」を作成し、2022年3月に初の改正を行いました。改正では、ECIやフレームワークといった方式が新たに盛り込まれています。背景には、画一的な一般競争入札の運用が入札不調の頻発を招いたという問題意識があります。

つまり国の方向性としても、発注方式は選ぶものになっています。

この記事では、学校改修における発注方式の違いと、どう選ぶべきかを整理します。

3つの方式

方式設計施工契約先
設計施工分離設計事務所施工会社2社と別々に契約
設計施工一括(DB/デザインビルド)施工会社施工会社1社と契約
ECI(設計段階から施工者が関与)設計事務所施工会社設計段階から施工者が技術協力

国土交通省の技術提案・交渉方式の運用ガイドラインでは、契約方式として「設計・施工一括発注方式」と「設計段階から施工者が関与する方式(ECI方式)」の適用が考えられるとし、①設計・施工一括タイプ、②技術協力・施工タイプ、③設計交渉・施工タイプの3種類に分類しています。

なお設計施工一括にも2つのタイプがあります。基本設計は設計事務所が行い実施設計+施工を施工会社が担う形と、基本設計から施工までを一貫して施工会社が行う形です。どこから施工者が入るかで、性格がかなり変わります。

それぞれの性格

設計施工分離

公正さと安さが求められる公共工事では、入札競争によって施工者を決定できるため、長らく分離発注方式が採用されてきました。

一般に挙げられる利点は次のとおりです。

  • 設計者が施工側におもねることなく設計できる
  • 設計事務所が工事監理を客観的に行うため、手抜き工事のリスクが軽減される
  • 専門性の高い設計と施工をそれぞれの専門業者に委託できる

一方で、次の課題が指摘されています。

  • 設計者・施工者それぞれの選定や契約に手間と時間を要する
  • 施工のノウハウを設計に反映しづらく、より良い工法や技術が生かされないことがある
  • 工期やコストが予測しづらく、割高になる場合がある
  • 工事着手までに時間がかかり、入札不調やダンピングといった課題をはらむ

設計施工一括(DB)

設計部門のある建設会社に設計・施工を一括で依頼する方式です。

  • 窓口が一本化され、最初の相談から施工まで一社で完結する
  • 発注にかかる時間と手間が軽減され、工期を短縮できる
  • 工事全体に対する責任が一本化される
  • 設計に施工者の技術力を活かせる
  • 工事費や工期を早期に高い精度で確認できる

デメリットとして、施工しやすさやコストを優先して設計が妥協する、工事監理のチェックが甘くなる、といった指摘があります。

ECI

設計の初期段階から施工者を参画させる方式です。施工者の技術力やノウハウを設計に活かすことで、コスト削減や工期短縮、品質向上を目指します。

分離の客観性と、一括の施工知見の反映を両立させようとする考え方です。

学校改修では何が判断を分けるか

一般論としての比較は上記のとおりですが、学校改修には固有の事情があります。

判断項目分離が向く場合一括・ECIが向く場合
仕様の確定度工事範囲と仕様が事前に確定している現況調査の結果で工事範囲が変わり得る
発注者の体制施設担当の技術職員がいて、設計と施工の調整ができる技術職員がおらず、2社間の調整を担えない
工期の制約十分な期間がある授業を止められず、工期短縮の必要がある
補助の要件申請内容が固まっている補助対象経費の切り分けを設計段階から詰めたい
用途変更の要否発生しない発生する可能性があり、早期の法規判断が必要

とくに重要なのが、発注者の体制です。

国土交通省のガイドラインでも、選択した入札契約方式に応じて、発注者は施工者からの技術提案の妥当性等の審査・評価、受注者が提案した工法に基づく設計成果の確認等を実施する必要があることから、発注者のこれまでの発注経験や発注体制も考慮して入札契約方式を選択することが望ましいとされています。

ここで問題になるのが、体制の実態です。文部科学省の調査研究協力者会議の報告では、教育委員会において施設担当技術職員を有していない地方公共団体が約半数にのぼるとされています。地方公共団体では技術職員が年々減少し、業務負担が増しているという指摘もあります。

学校法人の場合も同様で、施設部門に建築の専門職を置いている法人は多くありません。

調整役が不在のまま分離発注すると何が起きるか

設計施工分離では、設計事務所と施工会社の間に必ず調整が発生します。図面と現場が合わない、想定していない劣化が見つかった、補助の要件に対して仕様が足りない。こうした場面で、誰が判断するのか。

発注者に技術職員がいれば、その人が裁きます。いなければ、設計事務所と施工会社の主張が並び、発注者は判断材料を持たないまま決めることになります。

学校改修で頻繁に起こるのは次のような場面です。

  • 解体してみたらアスベストが出た。工期と費用が変わる
  • 空調を増設したら受変電設備の容量が足りない。キュービクルの更新が必要になる
  • 教室を実習室に変える計画で、確認申請が必要と判明した
  • 補助対象経費の切り分けが見積書に反映されておらず、申請が差し戻された

これらは設計時点で完全には予測できません。誰がどこまで責任を持つかが曖昧なまま進むと、追加費用の負担をめぐって話が止まります。

相見積もりの前に決めること

相見積もりは、仕様の前提が揃っていて初めて金額の比較が成立します。

発注方式が分離であれば、各社は同じ図面に対して見積を出すので比較は容易です。一方で、比較できるのは金額だけになります。工法の工夫、工期短縮の提案、補助対象の切り分けといった要素は、図面が決まった後では反映されません。

一括やECIであれば、提案内容を含めて比較することになります。手間はかかりますが、金額以外の差が見えます。

どちらが良いという話ではありません。ただ、次の順序は守ってください。

  1. 自校の条件(仕様の確定度、体制、工期、補助)を整理する
  2. 発注方式を決める
  3. その方式に合った形で相見積もりを取る

方式を決めないまま見積だけ集めると、比較の軸が金額しかない状態になります。学校改修は工期と法規と補助が絡むため、金額だけで選ぶと後工程で差が出ます。

相見積もりの取り方は学校の相見積もり(K299)、見積書の読み方は見積書の見方(K300)、会社選びの観点は施工会社の選び方(K297)で解説しています。

支援を受けるという選択肢

発注者に体制がない場合、外部の支援を使う方法があります。

国土交通省のガイドラインでは、発注関係事務を発注者が実施する上で支援が必要な場合は、発注者における体制確保を図る方式(事業促進PPP、CM方式等)の活用も考えることが望ましいとされています。

地方公共団体向けには、2020年9月に「地方公共団体におけるピュア型CM方式ガイドライン」が発行されています。

ただし学校1棟の改修に対してCM会社を入れると、その費用が別途かかります。規模によっては、設計と施工を一社に任せて窓口を一本化するほうが、実質的な負担は小さくなります。

よくある質問

Q. 学校改修はどの方式が正解ですか。
A. 一律の正解はありません。仕様が確定していて発注者に技術職員がいるなら分離が機能します。仕様が現況調査次第で変わり、調整を担う人がいないなら、一括やECIのほうが破綻しにくくなります。

Q. 設計施工一括だと工事監理が甘くなりませんか。
A. 一般にそう指摘されています。対策としては、工事監理を第三者に委託する、監理報告の提出頻度と内容を契約時に定める、といった方法があります。方式の選択と監理の担保は別に設計できます。

Q. 公共工事でも一括発注は使えますか。
A. 国土交通省は多様な入札契約方式の導入・活用を促進しており、公共工事でも設計施工一括発注方式を採用する案件が増えています。ただし自治体ごとに運用が異なるため、契約担当部局にご確認ください。

Q. ECIとは何ですか。
A. Early Contractor Involvementの略で、設計の初期段階から施工者を参画させる方式です。施工者の技術力を設計に反映し、コスト削減や工期短縮を目指します。

Q. 相見積もりは何社取ればいいですか。
A. 社数より前に、仕様の前提が揃っているかを確認してください。前提が違えば、何社集めても比較になりません。

まとめ

  • 発注方式は、設計施工分離・設計施工一括(DB)・ECIの3つが基本
  • 国土交通省は2022年3月にガイドラインを初改正し、一般競争以外の方式を推奨している
  • 分離は客観性と競争性に優れるが、施工ノウハウを設計に反映しづらく、工期とコストが読みにくい
  • 一括は窓口と責任が一本化され工期を短縮できるが、監理の担保を別途設計する必要がある
  • 判断を分けるのは、仕様の確定度と発注者の体制
  • 教育委員会に施設担当技術職員がいない自治体は約半数。調整役の不在は分離発注の前提を崩す
  • 相見積もりは発注方式を決めてから。方式を決めずに集めると、比較の軸が金額だけになる

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参考・出典

  • 国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」平成27年5月(令和4年3月改正)(発注者の発注経験・発注体制を考慮した方式選択、事業促進PPP・CM方式等の活用) https://www.mlit.go.jp/tec/content/001475361.pdf
  • 国土交通省「Ⅳ.多様な入札契約方式の選択・活用」(設計・施工一括発注方式、詳細設計付工事発注方式の定義) https://www.mlit.go.jp/tec/content/001338848.pdf
  • 国土交通省大臣官房「国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドライン」平成27年6月(平成29年12月改正)(設計・施工一括タイプ、技術協力・施工タイプ、設計交渉・施工タイプの3分類) https://www.mlit.go.jp/common/001215659.pdf
  • 文部科学省「学校施設の老朽化対策について~学校施設における長寿命化の推進~」平成25年3月 学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(教育委員会において施設担当技術職員を有していない地方公共団体が約半数) https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/03/18/1131926_01_1.pdf
  • 日経クロステック「国交省が入札契約指針を初改正、一般競争以外の発注方式を推奨」2022年(2022年3月改正でECI・フレームワークを新たに盛り込み、一般競争の画一的運用が入札不調を招いた背景) https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/01261/

※記載の制度やガイドラインは公表時点のものです。発注方式の運用は発注機関により異なります。最新情報は国土交通省および所管の契約担当部局の公表資料をご確認ください。

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