目次
窓口の分かれ方と負担割合
園舎を建て替えたい。耐震補強をしたい。防犯カメラを付けたい。幼稚園や認定こども園の施設整備には複数の補助制度がありますが、園の類型によって所管する役所も、負担割合も変わります。
同じ「こども園」でも、幼稚園型と保育所型では申請先が違います。教育に使う部分と保育に使う部分で、財源が分かれることもあります。ここを取り違えると、年度の途中で申請できないことが分かり、工事が1年先送りになります。
この記事では、①制度の全体像、②私立幼稚園の補助、③認定こども園の補助、④公立の場合、⑤申請の流れと注意点、の5点を整理します。
この記事の要点
- 園の類型と設置主体によって、文部科学省・こども家庭庁・市町村のどこが窓口になるかが変わる
- 認定こども園施設整備交付金(教育部分)は、認定こども園整備で国1/2、市町村1/4、事業者1/4
- 就学前教育・保育施設整備交付金(保育部分)は国1/2、市区町村1/4、設置主体1/4。待機児童対策などでは国2/3に引き上げられる
- 同交付金の令和8年度予算額は230億円で、令和7年度の245億円から減少している
- 内定前に契約や着手をすると補助の対象外になる
幼稚園・認定こども園の施設整備補助とは何か?
幼稚園や認定こども園の園舎・設備の整備にかかる費用の一部を、国や市町村が負担する仕組みです。
学校教育を担う部分は文部科学省、保育を担う部分はこども家庭庁が所管しており、園の類型によって使う制度が変わります。
| 園の類型・設置主体 | 主に使う制度 | 所管 |
|---|---|---|
| 私立幼稚園(学校法人) | 私立学校施設整備費補助金(私立幼稚園施設整備費) | 文部科学省 |
| 幼稚園型・幼保連携型認定こども園の教育部分 | 認定こども園施設整備交付金 | 文部科学省 |
| 保育所、保育所型認定こども園、幼保連携型の保育部分 | 就学前教育・保育施設整備交付金 | こども家庭庁 |
| 公立幼稚園 | 学校施設環境改善交付金 | 文部科学省 |
まず自園がどの類型に当たるか、どの部分の整備かを整理することが出発点になります。
同じ園でも、園舎の増築は文部科学省の制度、給食室の改修はこども家庭庁の制度というように、工事ごとに使う制度が変わることがあります。工事の一覧を作り、それぞれの所管を確認してから計画を立てます。
私立幼稚園ではどの補助が使えるか?
学校法人が設置する私立幼稚園は、私立学校施設整備費補助金の私立幼稚園施設整備費を使います。
東京都が公表している同補助金の概要では、補助の対象となる事業として次のようなものが挙げられています。
- 園舎の新築・増築・改築
- 耐震補強工事(耐震診断の経費も対象。診断後3年以内の着手が条件とされています)
- 防犯対策工事、特別防犯対策工事
- アスベスト対策工事
- エコ改修工事
- バリアフリー化工事
補助率は事業の種類によって異なり、特別防犯対策工事については補助率を1/2に引き上げる措置が示されています。認定こども園に移行する園は、この補助の対象から除かれます。
私立学校の施設整備補助の全体像は私立学校施設整備費補助金の全体像にまとめています。
認定こども園ではどう分かれるか?
教育部分と保育部分で、使う制度が分かれます。
教育部分(認定こども園施設整備交付金)
文部科学省の認定こども園施設整備交付金は、幼稚園型・幼保連携型認定こども園の教育部分を対象としています。
| 事業 | 内容 | 負担割合 |
|---|---|---|
| 認定こども園整備 | 新増改築、大規模改修等 | 国1/2、市町村1/4、事業者1/4 |
| 幼稚園耐震化整備 | 耐震化工事 | 国1/2、事業者1/2 |
| 防犯対策整備 | 門、フェンス、防犯カメラ等の設置 | 国1/2、市町村1/4、事業者1/4 |
保育部分(就学前教育・保育施設整備交付金)
こども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金は、保育所等の新設、修理、改造または整備に要する経費等を補助し、子どもを安心して育てることができる環境を整備することを目的としています。
対象は、私立の保育所、幼保連携型認定こども園、保育所型・幼稚園型認定こども園、公立認定こども園の教育部分、小規模保育施設、乳児等通園支援事業の実施事業所です。
| 区分 | 負担割合 |
|---|---|
| 基本 | 国1/2、市区町村1/4、設置主体1/4 |
| 補助率の引き上げ(待機児童対策、人口減少対策、乳児等通園支援事業の実施) | 国2/3、市区町村1/12、設置主体1/4 |
| 公立認定こども園 | 国1/3、設置者(市区町村)2/3 |
対象事業には、施設整備事業のほか、防音壁設置事業、防犯対策強化整備事業があります。
予算の規模
同交付金の令和8年度予算額は230億円で、令和7年度の245億円から減少しています。これとは別に、令和7年度の補正予算で306億円が措置されています。
予算の規模は年度によって変わるため、計画を立てる段階で最新の予算額と募集の状況を確認します。補正予算で追加される年もあり、当初予算だけを見て判断しないことが大切です。
公立幼稚園ではどうなるか?
公立幼稚園の施設整備は、文部科学省の学校施設環境改善交付金の対象になります。市町村の教育委員会が、他の学校施設と合わせて計画し、予算要求を行う流れです。
公立の場合は、園単独で判断するのではなく、公共施設等総合管理計画や学校施設の長寿命化計画の中に位置づけられているかどうかが、予算がつくかどうかを左右します。園児数の推計と、近隣の小学校や保育所との再編の議論も関係します。
公立認定こども園の場合は、教育部分がこども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金の対象に含まれ、負担割合は国1/3、設置者2/3とされています。どちらの制度を使うかは、施設の類型と整備の内容によって変わるため、市町村の担当課と事前に調整します。
申請はどう進めるか?
内定を受けてから着手するのが鉄則です。
東京都が示す私立幼稚園施設整備費の流れは、次のとおりです。
- 事業募集
- 事業計画調査書の提出
- 採択通知
- 事業計画書の提出
- 審査・確認
- 内定
- 交付申請書の提出
- 交付決定
- 着手
- 完了後の実績報告
同資料では、内定前の契約締結や着手金の支払いはできず、内定前に着手した場合は補助金の交付対象外になるとされています。
工事の時期から逆算すると、前年度のうちに事業計画の調査に回答し、設計の概要と工事費の見込みを固めておく必要があります。交付要綱の読み方は補助金の交付要綱の読み方を参照してください。
どんな点に注意すべきか?
4つあります。
類型の変更で制度が変わる
幼稚園から認定こども園へ移行する場合、使える制度が変わります。私立幼稚園施設整備費は、認定こども園に移行する園を対象から除いています。移行の時期と工事の時期が重なる場合は、どちらの制度で申請するかを早めに整理します。
教育部分と保育部分の按分
幼保連携型認定こども園では、同じ建物の中に教育部分と保育部分があります。どの範囲をどちらの制度で整備するか、面積や利用状況に応じた按分の考え方を、所管課に確認しておきます。
市町村の計画への位置づけ
こども家庭庁の交付金は、市区町村を通じて交付される仕組みです。市町村の整備計画に位置づけられていなければ、事業者が単独で申請することはできません。工事の2年前には市町村の担当課に相談を始めます。
対象経費の範囲
備品、外構、既存建物の解体などは、制度によって対象になる場合とならない場合があります。対象経費の線引きは補助金の対象経費・対象外経費の線引きで扱っています。国と自治体の制度を組み合わせる場合の可否は補助金の併用可否の考え方を参照してください。
資金計画はどう立てるか?
補助を受けても、自己負担は必ず残ります。
補助基準額と実際の工事費の差
多くの制度では、工事費の実額ではなく、面積などに応じた補助基準額を基に補助額が決まります。実際の工事費が基準額を上回る部分は、全額が自己負担になります。近年は資材費と労務費の上昇が続いているため、設計段階の概算と入札の結果が開くことも珍しくありません。
資金繰りの山
補助金は、原則として工事の完了後に精算して交付されます。工事中の支払いは、いったん園の資金で立て替えることになります。借入れでつなぐ場合は、金融機関との調整も工程に含めます。
分けて進める選択肢
一度にすべてを整備できない場合は、耐震化、防犯、バリアフリーなど、対象の異なる事業に分けて年度をずらす方法もあります。ただし、同じ建物で工事を繰り返すと仮設や足場の費用が重複するため、分割した場合の総額と比べて判断します。
園を使いながら工事するときは?
在園児がいる中での工事には、別の配慮が必要です。
保育室と工事区画を明確に分け、出入口と動線を分離します。粉じん、騒音、におい、振動が保育に影響しないよう、工事の時間帯を調整します。仮設の保育スペースが必要になる場合は、その費用が補助の対象になるかを事前に確認します。
送迎の車両と工事車両の経路が重ならないよう、保護者への周知も早めに行います。長期休業期間のない園では、工期が長くなるほど負担が積み重なるため、工区の分け方を施工者と詰めておきます。
よくある質問
Q. 園舎の大規模修繕にも補助は出ますか。
A. 認定こども園整備には大規模改修等が含まれています。私立幼稚園施設整備費でも、耐震補強、防犯対策、アスベスト対策、エコ改修、バリアフリー化などが対象に挙げられています。工事の内容が対象に当たるかは、年度ごとの募集要項で確認します。
Q. 耐震診断の費用も補助の対象になりますか。
A. 私立幼稚園施設整備費では、耐震診断の経費も対象とされ、診断後3年以内に耐震補強に着手することが条件とされています。
Q. 防犯カメラの設置だけでも申請できますか。
A. 認定こども園施設整備交付金の防犯対策整備では、門、フェンス、防犯カメラ等の設置が対象とされています。金額の下限や対象範囲は年度の要領で確認してください。
Q. 幼稚園から認定こども園に移行する場合、園舎の改修費は補助されますか。
A. 移行に伴う整備は、認定こども園施設整備交付金や就学前教育・保育施設整備交付金の対象になり得ます。移行の認可の時期と工事の時期の関係を、都道府県と市町村の担当課に確認してください。
Q. 補助金の内示はいつ頃ありますか。
A. 制度と年度によって異なります。こども家庭庁の交付金では、年度の初めに第1次の内示が公表される例があります。募集から内定までの時期を、工事の工程に織り込んでおきます。
Q. 補助金だけで整備費は賄えますか。
A. 賄えません。いずれの制度も設置主体の負担が残り、補助基準額を超える部分は自己負担になります。自己資金、借入金、寄附金を組み合わせた資金計画が必要です。
まとめ
幼稚園・認定こども園の施設整備補助は、園の類型と設置主体によって窓口が分かれます。私立幼稚園は文部科学省の私立学校施設整備費補助金、認定こども園の教育部分は認定こども園施設整備交付金、保育部分はこども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金です。
負担割合は、認定こども園整備で国1/2・市町村1/4・事業者1/4、就学前教育・保育施設整備交付金で国1/2・市区町村1/4・設置主体1/4が基本です。待機児童対策などに当たる場合は国の負担が2/3に引き上げられます。
いずれの制度でも、内定前の着手は補助の対象外です。市町村の計画への位置づけ、教育部分と保育部分の按分、類型の変更との関係を早めに整理し、工事の前年度から準備を進めることが大切です。
参考・出典
- こども家庭庁「就学前教育・保育施設整備交付金」(令和8年度予算資料) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/214cacce-0305-4ce9-a120-355df90cf035/960ad77c/20260408_policies_hoiku_yosan_29.pdf
- 文部科学省「認定こども園施設整備交付金」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/1398182.htm
- 東京都生活文化局「私立学校施設整備費補助金(私立幼稚園施設整備費)の概要」 https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/seikatubunka/02keikaku_hojokin_gaiyo_shigaku_0000001027
- こども家庭庁「令和8年度就学前教育・保育施設整備交付金の内示について(第1次)」 https://www.cfa.go.jp/press/8d1bb857-0da9-4a5c-935b-94eb2401e7ff
記載の制度・予算額は公表時点のものです。最新の要件・補助率・募集時期は、所管省庁と市区町村の担当課でご確認ください。
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