目次
判断基準・費用比較の考え方
インターナショナルスクールの施設の判断は、まず前提の確認から始まります。建物を所有しているのか、借りているのか。制度上どう位置づけられているのか。
多くの学校は各種学校として認可を受けており、一条校向けの補助制度の多くは対象になりません。財源が自前である以上、投資の判断はより慎重になります。
この記事では、①制度上の前提、②所有形態による違い、③判断の材料、④費用の比べ方、⑤進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 多くは学校教育法第134条に基づく各種学校として認可を受けている
- 一条校向けの補助制度の多くは対象外で、財源は自己資金と授業料収入が中心
- 自己所有か賃貸かで、判断の枠組みが大きく変わる
- 賃貸では、契約の期間内に回収できるかが投資の上限を決める
- 用途変更に伴い、防火と避難の規定が遡及して適用される
制度上の前提はどうなっているのか?
多くは各種学校です。
学校教育法第1条に掲げる学校を一条校といいます。インターナショナルスクールの多くは、これに当たらず、同法第134条に基づく各種学校として都道府県知事の認可を受けています。認可を受けていない施設もあります。
この違いが財源に影響します。一条校向けの補助制度の多くは、各種学校には適用されません。自己資金と授業料収入が中心になります。
都道府県によっては、各種学校向けの助成制度がある場合もあります。所管の私学担当課に確認します。
制度と施設基準の詳細はインターナショナルスクールの施設は何が違うのか?にまとめています。
所有形態で判断はどう変わるのか?
2つに分かれます。
| 所有形態 | 選択肢 |
|---|---|
| 自己所有 | 改築、長寿命化改修、部分改修、売却・移転 |
| 賃貸 | 契約の継続、内装の更新、移転、縮小 |
自己所有の場合
他の学校種と同じ判断になります。躯体の状態、在籍者数の見通し、法人の資金力、敷地の条件。そして、その建物を何年使うかを決めます。
ただし、補助制度が限られるため、総額がそのまま自己負担になります。年あたりの費用に直して比べることが、他の学校種よりも重要になります。
判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。
賃貸の場合
建て替えるという選択肢はありません。判断は次の形になります。
- 契約を継続し、内装と設備を更新する
- 契約を継続し、最小限の維持にとどめる
- 契約の満了に合わせて移転する
- 在籍者数に合わせて、借りる面積を調整する
内装に投資するほど、退去時の原状回復の費用も大きくなります。契約の期間と投資額の関係を、着手の前に整理します。
判断の材料は何か?
6つあります。
| 材料 | 見るもの |
|---|---|
| 所有形態 | 自己所有か賃貸か。契約の期間と条件 |
| 建物の状態 | 躯体の劣化、設備の状態、検査済証の有無 |
| 在籍者数の見通し | 地域の需要、駐在員家庭の動向、日本人家庭の利用 |
| 課程の構成 | 初等部から高等部まで持つか。学年の構成 |
| 認可の方針 | 各種学校の認可を受けるか、受け続けるか |
| 立地 | 通学の利便、送迎の条件、近隣との関係 |
在籍者数の前提が読みにくい
インターナショナルスクールの在籍者は、駐在員家庭の動向に左右されます。企業の拠点の移転や、制度の変更で前提が変わります。
一方、日本人家庭の利用が増えている学校もあります。どの層を主な対象とするかによって、見通しの立て方も変わってきます。
見通しが読みにくいほど、固定的な投資は慎重になります。賃貸で面積を調整できる形は、この点では有利に働きます。
検査済証の有無
転用した建物を使っている場合、検査済証がないことがあります。古いビルほど、そろっていない可能性が高くなります。増築や用途変更を検討する段階で、現況の調査から始めることになります。
期間と費用が増えるため、計画の初期に確認しておきます。
用途変更の扱いはどうなるのか?
建物の使い方を変えるときに関わります。
建築基準法第87条第1項により、用途を変更して200平方メートルを超える法第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合は、確認申請が必要です。
用途変更では、防火と避難に関する規定が遡及して適用されます。避難階段、排煙設備、非常用の照明装置、内装制限。オフィスビルを転用する場合、この部分の工事が費用の中心になります。
用途変更の制度は学校施設の用途変更とは何か?にまとめています。
移転先を検討するとき
移転を検討する場合、候補の物件について用途地域と用途変更の要否を先に確認します。契約した後で対応できないと分かると、損失が大きくなります。
設計者に物件の資料を渡し、候補の段階で見てもらう方が安全です。
費用はどう比べるのか?
契約期間または使用年数で割ります。
| 項目 | 自己所有 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 比べる期間 | その建物を使う年数 | 契約の期間 |
| 初期投資 | 改築または改修の工事費 | 内装と設備の工事費 |
| 毎年の費用 | 修繕費、光熱費、固定資産税等 | 賃料、共益費、光熱費 |
| 退去時 | 除却費または売却収入 | 原状回復費 |
| 面積の調整 | 難しい | 借りる階数を減らせる |
賃貸では、縮小しやすいことが利点です。在籍者数が減った場合、借りる面積を減らすという対応が取れます。
長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。
補助がない前提で組む
一条校向けの補助制度の多くは対象外です。総額がそのまま自己負担になるため、年あたりの費用に直して判断します。
借入をする場合、在籍者数が改善することを前提にしない返済計画にします。授業料収入の見通しが、返済の原資になります。
認可の方針は施設にどう関わるのか?
基準への適合が前提になります。
各種学校の認可を受けると、施設の基準に従う必要が生じます。東京都の私立各種学校設置認可基準では、生徒150人以下の場合、校舎面積は生徒定員1人につき2.31平方メートルで算定するとされています。最低基準は生徒40人のときに116平方メートルです。
図書は生徒1人当たり5冊以上を自己所有することが求められ、教室、実習室、医務室または休養室等を備える必要があるとされています。基準は都道府県ごとに定められます。
認可を受けるかどうかで投資の範囲が変わる
認可を目指すなら、基準を満たす施設が前提になります。現在の物件で満たせるか、満たせないなら何が足りないか。この確認が投資の範囲を決めます。
認可を受けない選択をする場合、施設の基準は建築基準法と消防法などの一般の規制によります。ただし、税制上の扱いや保護者からの信頼に関わる部分が変わります。
課程を増やす場合
初等部だけの学校が中等部を設ける、といった課程の拡大では、必要な面積と諸室が変わります。認可の手続きも関わるため、所管の私学担当課に早い段階で相談します。
施設で何に投資するのか?
教育の中身を支える部分です。
| 範囲 | 判断 |
|---|---|
| 少人数の教室 | 分割のための間仕切りと設備の系統 |
| カフェテリア・食事の場所 | 提供の方法によって必要な設備が変わる |
| セキュリティ | 出入口の管理、他テナントとの動線の分離 |
| 多言語のサイン | 文字を減らし、記号と色で伝える |
| 屋外の場所 | 屋上の活用、近隣施設の利用 |
| 保護者の場所 | 面談、待機、送迎時の滞留 |
分割は設備とセットになる
大きな部屋を小さく区切ると、空調の吹き出し口がない部屋、照明の数が足りない部屋が出ます。間仕切りの工事は、設備の工事とセットになります。
見積りで内装だけを比べると、後から設備の分が加算されます。分割の計画は、設備の系統から確認します。
移転と残留をどう比べるのか?
3つの費用を並べます。
賃貸の学校では、移転が現実的な選択肢になります。判断には、次の3つを並べます。
| 項目 | 残留する場合 | 移転する場合 |
|---|---|---|
| 工事費 | 既存物件の内装と設備の更新 | 新しい物件の内装と設備の工事 |
| 退去の費用 | 発生しない | 現在の物件の原状回復費 |
| 毎年の費用 | 現在の賃料と光熱費 | 新しい物件の賃料と光熱費 |
| 通学への影響 | 変わらない | 在籍者の通学条件が変わる |
| 面積 | 現在のまま | 必要な面積に合わせられる |
通学への影響を軽く見ない
移転は、在籍する家庭の通学条件を変えます。遠くなる家庭が一定数出れば、退学につながることがあります。
移転の候補地を決める前に、在籍者の居住地の分布を確認します。どの層が影響を受けるのかを把握してから判断します。通学の手段も家庭によって違います。
移転の時期
年度の切り替わりに合わせるのが基本です。ただし、新しい物件の工事と、現在の物件の原状回復が重なる期間が生じます。
二重に賃料を払う期間が発生することも、費用に含めて計算します。
どう進めるのか?
所有形態の確認が最初です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 所有形態の確認 | 自己所有か賃貸か。契約の期間と条件 |
| 2. 在籍者数の推計 | 対象とする層ごとに見通しを置く |
| 3. 法規の確認 | 用途変更の要否、遡及する規定、消防法の扱い |
| 4. 方針の決定 | 継続・改修・移転・縮小のいずれか |
| 5. 実施 | 設計、手続き、工事 |
1と2が決まらないまま工事の検討に入ると、前提が崩れます。特に賃貸では、契約の期間が投資の範囲を決めます。
よくある質問
Q. インターナショナルスクールは補助を受けられますか。
A. 一条校向けの補助制度の多くは対象外です。都道府県に各種学校向けの制度がある場合もあるため、私学担当課に確認します。
Q. 賃貸の場合、建替えは検討できますか。
A. できません。契約の継続、内装の更新、移転、縮小のいずれかになります。
Q. 内装にどこまで投資してよいですか。
A. 契約の期間内に回収できる範囲です。原状回復の費用も含めて計算します。
Q. 移転先を探すとき何を確認しますか。
A. 用途地域、用途変更の要否、検査済証の有無、避難階段、既存の消防用設備等です。契約の前に確認します。
Q. 在籍者数の見通しはどう立てますか。
A. 駐在員家庭と日本人家庭を分けて見ます。どの層を主な対象とするかで前提が変わります。
Q. 教室を分割する場合、内装工事だけで済みますか。
A. 空調と照明の系統を分ける工事が伴います。窓のない部屋になる場合は機械換気も必要です。
Q. 移転と残留はどう比べますか。
A. 工事費、退去の費用、毎年の賃料と光熱費を並べます。通学条件が変わる影響も判断に入れます。
Q. 移転の時期はいつがよいですか。
A. 年度の切り替わりが基本です。新しい物件の工事と原状回復が重なる期間の費用も見込みます。
Q. 検査済証がない物件はどうなりますか。
A. 現況の調査から始めることになり、期間と費用が増えます。計画の初期に確認します。
まとめ
インターナショナルスクールの多くは、学校教育法第134条に基づく各種学校です。一条校向けの補助制度の多くは対象外で、財源は自己資金と授業料収入が中心になります。
判断の枠組みは、自己所有か賃貸かで大きく変わります。賃貸であれば建て替えるという選択肢はなく、契約の継続、内装の更新、移転、縮小のいずれかになります。投資できる範囲は、契約の期間が決めます。
在籍者数の前提が読みにくい点も、判断に影響します。駐在員家庭の動向に左右される一方、日本人家庭の利用が増えている学校もあります。見通しが読みにくいほど、固定的な投資は慎重になり、面積を調整できる賃貸の形が有利になります。
用途変更を伴う場合、防火と避難の規定が遡及して適用されます。オフィスビルを転用する場合、この部分の工事が費用の中心です。移転先を検討する際は、契約の前に用途地域と用途変更の要否を確認してください。
参考・出典
- 東京都生活文化局「私立各種学校設置認可基準一覧」 https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/seikatubunka/41kakusyu_kijyunichiran
- e-Gov法令検索「各種学校規程」 https://laws.e-gov.go.jp/law/331M50000080031
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 学校教育法、消防法
記載の制度・基準は公表時点のものです。認可の基準は都道府県によって異なります。個別の適用は所管の私学担当課および行政庁にご確認ください。
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