目次
PCB・石綿・フロンの実務
築40年、50年の校舎を改修するとき、図面に書かれていないものが出てきます。照明器具の中の安定器、天井裏の吹付け材、機械室の変圧器。いずれも、その時代には普通に使われていた材料です。
問題は、これらが見つかった時点で工程が止まることです。調査、届出、処分の手続きにそれぞれ日数がかかり、夏休み工事の予定が崩れます。費用も後から増えます。
この記事では、①PCB、②石綿(アスベスト)、③その他の物質、④調査の進め方、⑤工程と費用への影響、の5点を整理します。
この記事の要点
- 低濃度PCB廃棄物の処分期間は令和9年(2027年)3月31日まで
- 高濃度PCB廃棄物は、全ての地域で処分期間が終了している
- 石綿の事前調査は、令和5年10月1日以降、有資格者が行う
- 解体は床面積80平方メートル以上、改修は請負代金100万円以上で事前調査結果の報告が必要
- 業務用の冷凍空調機器は、3か月に1回以上の簡易点検が義務
校舎に残る有害物質とは何か?
過去に合法的に使われ、その後に規制された材料や機器のことです。
建物を建てた当時は問題のない材料でした。その後に健康影響が分かり、製造や使用が禁止されました。しかし、すでに建物に入っているものは残ります。改修や解体のときに、初めて向き合うことになります。
学校で問題になりやすいのは、次の3つです。
| 物質 | どこにあるか | 主な規制 |
|---|---|---|
| PCB | 照明器具の安定器、変圧器、コンデンサー | PCB特別措置法 |
| 石綿 | 吹付け材、保温材、成形板、床材の接着剤 | 石綿障害予防規則、大気汚染防止法 |
| フロン | 空調機、冷凍冷蔵機器 | フロン排出抑制法 |
このほか、水銀を使った蛍光灯や、古い塗料に含まれる鉛なども、廃棄の段階で扱いが変わります。
建物の法適合の状況を先に把握しておく考え方は学校の法適合状況調査にまとめています。
PCBはどこに残っているのか?
照明器具の安定器が最も多く残っています。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、絶縁性と熱に対する安定性から、変圧器、コンデンサー、照明器具の安定器などに使われました。昭和47年に製造が中止されています。
学校では、体育館や廊下、特別教室の照明器具に、当時の安定器が残っていることがあります。器具の更新をしないまま使い続けている場合、中の安定器も当時のままです。ランプだけを交換してきた建物ほど、古い安定器が残っている可能性が高くなります。
高濃度と低濃度の区分
PCB廃棄物は、濃度によって扱いが分かれます。
| 区分 | 濃度 | 処分期間 |
|---|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 | 0.5パーセントを超えるもの | 全ての地域で処分期間が終了 |
| 低濃度PCB廃棄物 | 0.5ミリグラム毎キログラムを超え、高濃度に至らないもの | 令和9年3月31日まで |
環境省の情報サイトでは、高濃度PCB廃棄物について、全ての地域で処分期間が終了したとしています。処分の見込みが立っていない場合は、都道府県等またはJESCOに速やかに相談するよう求めています。
低濃度PCB廃棄物の処分期間は、令和9年3月31日までです。期限は動きません。
安定器の危険性
古い安定器は、劣化により内部のコンデンサーが破裂し、PCBを含む油が漏れ出すことがあります。教室や体育館でこれが起きれば、人がいる空間の汚染です。
照明器具の更新を検討する段階で、安定器の製造年と型番を確認しておくことが、事故を避ける手段になります。照明の更新の考え方は学校施設の照明のLED化とは?で扱っています。
石綿の調査はどう変わったか?
有資格者による調査が必要になりました。
令和5年10月1日以降、建築物の解体や改修の工事を行う前の石綿の事前調査は、資格を持つ者が実施することとされています。特定建築物石綿含有建材調査者、一般建築物石綿含有建材調査者などが該当します。
報告が必要な工事の規模
令和4年4月1日から、一定規模以上の工事は、事前調査の結果を報告することが必要になりました。
| 工事の種類 | 規模の要件 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 床面積の合計80平方メートル以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負代金の合計100万円以上(税込) |
| 工作物の解体・改修工事 | 請負代金の合計100万円以上(税込) |
報告先は、都道府県等と労働基準監督署です。電子システムを使えば、1回の操作で両方に報告できます。
学校の改修工事は、請負代金が100万円を超えることがほとんどです。つまり、ほぼすべての改修工事が報告の対象になります。小規模な部分改修や、夏休みの短期工事であっても、金額が要件に当たれば同じ扱いです。石綿の詳しい扱いは学校改修とアスベストにまとめています。
フロンはどう管理するのか?
機器を使っている間も、点検の義務があります。
業務用の冷凍空調機器は、フロン排出抑制法の第一種特定製品に当たります。管理者には、点検と記録の義務があります。
| 点検の種類 | 対象 | 頻度 |
|---|---|---|
| 簡易点検 | すべての第一種特定製品 | 3か月に1回以上 |
| 定期点検 | 冷凍冷蔵機器(7.5キロワット以上) | 1年に1回以上 |
| 定期点検 | 空調機器(50キロワット以上) | 1年に1回以上 |
| 定期点検 | 空調機器(7.5キロワット以上50キロワット未満) | 3年に1回以上 |
点検や整備の記録は、機器を廃棄するためのフロン類の引渡しが完了した日から3年間保存することとされています。
学校では、普通教室の空調のほか、給食室の冷凍冷蔵設備、職員室や特別教室の空調が対象になります。機器の台数が多く、管理の担当が決まっていないと記録が残りません。一斉に整備した空調は更新の時期も重なるため、台帳を作って機器ごとの定格出力と設置年を押さえておくと、点検も更新の計画も立てやすくなります。
調査はどう進めるのか?
改修の計画を立てる段階で行います。
工事に入ってから見つかると、工程が止まります。設計の前に調査をしておけば、除去や処分の費用を予算に入れた上で、発注できます。
進め方は、次の順になります。
- 竣工図と改修の履歴から、使われている可能性のある材料と機器を絞る
- 現地で、天井裏、機械室、電気室、照明器具を確認する
- 石綿は有資格者が調査し、必要に応じて分析する
- PCBは、機器の銘板から型番と製造年を確認し、必要に応じて濃度を分析する
- 結果を図面に落とし、除去と処分の範囲を決める
竣工図が残っていない学校も多くあります。その場合は、現地調査の比重が上がります。改修全体の進め方は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。
そのほかに注意する物質は何か?
水銀と鉛が、廃棄の段階で関わってきます。
蛍光灯やHIDランプには水銀が含まれます。割れると蒸気が出るため、取り外しと運搬の扱いに注意が必要です。自治体によって、廃棄の区分と回収の方法が定められています。
古い鉄部の塗装には、鉛を含む塗料が使われていることがあります。体育館の鉄骨、手すり、フェンス、遊具などです。塗り替えのために既存の塗膜を削る作業では、粉じんが出ます。塗膜の成分を調べた上で、作業の方法を決めます。
このほか、屋上の防水層や配管の保温材に、石綿を含む材料が使われている例があります。目に触れない場所ほど、改修まで放置されやすい部分です。
工事中に見つかったらどうするか?
作業を止めて、確認することが先です。
事前の調査で漏れがあった場合、解体や撤去の途中で該当する材料が出てくることがあります。そのまま作業を続けると、飛散や漏えいが起きます。
対応の順は次のようになります。
- 該当箇所の作業を止め、範囲を区切る
- 設計者と元請業者に連絡し、材料を特定する
- 分析が必要であれば採取し、結果を待つ
- 除去の方法と届出の要否を確認する
- 工程と費用の変更について、発注者と協議する
学校が使用中の改修では、児童生徒の動線からの隔離が最優先になります。授業のある期間に見つかった場合は、その区画の使用を止める判断も必要です。改修で関わる法令の全体像は学校の改修で関わる建築基準法の基礎を参照してください。
工程と費用にどう影響するか?
3つの影響があります。
工期が延びる
調査、分析、届出、除去、処分の順に進みます。分析には日数がかかり、届出には法定の期間が必要なものがあります。夏休みの40日程度で終わらせる計画では、間に合わないことがあります。
費用が読みにくい
数量が確定するのは、調査が終わった後です。概算の段階では、一定の見込みを置くしかありません。工事費とは別に、予備費の考え方を持っておく方が安全です。
発注の区分が分かれる
石綿の除去やPCBの処分は、許可や資格を持つ事業者が行います。改修工事の一部として発注するのか、別に発注するのかで、責任の範囲と工程の管理が変わります。設計者と相談して決めます。
公立と私立で違いはあるか?
法令の適用は同じですが、予算の取り方が違います。
公立学校
調査の結果で数量が増えると、増額の手続きが必要になります。年度をまたぐ場合は、繰越の手続きも関わります。当初予算で調査費を確保し、翌年度に除去を行う組み方もあります。
私立学校
理事会の承認を得た予算の中で対応することになります。調査の段階で概算を把握し、上振れの幅を含めて説明しておくと、後の手続きが軽くなります。
よくある質問
Q. 低濃度PCB廃棄物の期限までに処分できないとどうなりますか。
A. 処分期間は法令で定められたものです。間に合わない見込みがある場合は、早い段階で都道府県等に相談してください。
Q. 照明器具を全部LEDに替えれば安定器の問題は解決しますか。
A. 器具ごと交換すれば、建物の中には残りません。ただし、取り外した安定器はPCB廃棄物として扱う必要がある場合があります。
Q. 石綿の調査は工事ごとに必要ですか。
A. 解体、改修、補修の工事を行う前に、その工事の対象となる部分について事前調査が必要です。
Q. 事前調査の報告は誰が行いますか。
A. 工事の元請業者が行います。発注者としては、報告が行われているかを確認します。
Q. 床のPタイルにも石綿が入っていますか。
A. 時期によっては含有するものがあります。材料の種類と製造時期で判断するため、調査が必要です。
Q. 空調機の点検記録は誰が保管しますか。
A. 機器の管理者です。学校施設の場合は、設置者である自治体や学校法人が該当します。
Q. 蛍光灯を一斉にLEDに替える場合、外した蛍光管はどう処理しますか。
A. 水銀を含むため、自治体の定める区分に従って処理します。数量がまとまるので、工事の発注の中に処理の範囲を含めておきます。
Q. 改修の前に必ず全部を調べる必要がありますか。
A. 工事の対象となる範囲について調べます。手を付けない部分まで一度に調べる義務はありませんが、次の改修を見据えて範囲を広げておく考え方もあります。
まとめ
低濃度PCB廃棄物の処分期間は令和9年3月31日までです。高濃度PCB廃棄物は、全ての地域で処分期間が終了しています。処分の見込みが立っていない機器がある場合は、都道府県等またはJESCOに相談する必要があります。
石綿の事前調査は、令和5年10月1日以降、有資格者が行います。解体は床面積80平方メートル以上、改修と工作物は請負代金100万円以上で、事前調査結果の報告が必要です。
有害物質は、見つかってから考えるのではなく、改修の計画の段階で調べておくものです。調査を先に済ませておけば、費用と工程を織り込んだ上で発注できます。工事が始まってから止まる方が、結果として高くつきます。
参考・出典
- 環境省「低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト」 https://policies.env.go.jp/recycle/pcb/teinoudo-soukishori/
- 環境省「4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします」 https://www.env.go.jp/press/110648.html
- 環境省「令和3年度 改正フロン排出抑制法に関する説明会 改正フロン法の概要(第一種特定製品の管理者)」 https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r03_kanrisya.pdf
- ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法、石綿障害予防規則、大気汚染防止法、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律
記載の制度は公表時点のものです。個別の適用は所管の行政庁にご確認ください。
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