この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

認定こども園は改修か建替えか?

判断基準・費用比較・長寿命化の考え方

認定こども園の施設は、幼稚園または保育所から移行して成立したものが多くあります。つまり、もともと別の用途で建てられた建物を使っています。

この出自が、改修か建替えかの判断に影響します。移行のときに無理をして成立させた配置が、長く使ううえで支障になっている園があるためです。

この記事では、①施設基準の確認、②出自による違い、③判断の材料、④費用の比べ方、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 幼保連携型の園舎は3学級で420平方メートル、1学級増えるごとに100平方メートル加算
  • 園庭は、幼稚園の基準(3学級400平方メートル、1学級増ごとに80平方メートル)と保育所の基準(満2歳以上1人3.3平方メートル)の大きい方
  • 保育室または遊戯室は1人1.98平方メートル、乳児室1.65平方メートル、ほふく室3.3平方メートル
  • 職員配置は令和6年3月の改正で、3歳児が15対1、4歳以上が25対1に改善された
  • 認可の基準は都道府県等の条例で定められる

施設基準はどうなっているのか?

学級数と園児数の両方で決まります。

こども家庭庁の事業者向け資料では、幼保連携型の園舎について、3学級で420平方メートル、1学級増えるごとに100平方メートルを加えるとされています。

園庭については、幼稚園の基準(3学級400平方メートル、1学級増えるごとに80平方メートル加算)と、保育所の基準(満2歳以上の子ども1人につき3.3平方メートル)のいずれか大きい方を適用するとされています。

項目基準
園舎3学級420平方メートル、1学級増ごとに100平方メートル加算
園庭幼稚園基準と保育所基準の大きい方
保育室または遊戯室1人につき1.98平方メートル
乳児室1人につき1.65平方メートル
ほふく室1人につき3.3平方メートル

移行の要件は認定こども園に移行するには何が必要か?にまとめています。

職員配置の改正で空間が足りなくなる

こども家庭庁の通知「幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準の一部を改正する命令等の施行について」(令和6年3月13日)では、満3歳児が20対1から15対1へ、満4歳以上児が30対1から25対1へ改善されたことが示されています。

ただし経過措置があり、都道府県等が教育および保育の提供に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、当分の間、その都道府県等内で一律に改正前の基準が効力を有するとされています。

配置が手厚くなれば、職員の人数が増えます。更衣室、休憩室、事務室の広さが足りなくなる園が出てきます。改修の計画では、子どものための空間だけでなく職員のための空間も確認します。

出自によって課題はどう違うのか?

もとが幼稚園か保育所かで分かれます。

もとの施設抱えやすい課題
幼稚園から移行乳児室、ほふく室、沐浴と調乳の設備を後付けした配置
保育所から移行学級ごとの活動空間、園庭の面積
新設課題は比較的少ない

幼稚園から移行した園

もともと乳児を受け入れる設計になっていません。移行のときに既存の保育室を転用したり、隅の部屋に沐浴の設備を入れたりしている例があります。

給排水の配管が無理な経路になっている、換気が不十分、調乳の場所が動線から外れている。こうした部分は、日々の運営で職員の負担になり続けます。

改修のときに、配置そのものを見直せるかがポイントになります。配管の経路を変える工事が大きくなる場合、改築の方が目的に合うことがあります。

保育所から移行した園

満3歳以上の子どもについて学級を編制するため、学級ごとの活動ができる部屋の構成が必要です。大きな保育室を仕切って対応している園があります。

また、園庭の基準が幼稚園基準との比較になるため、これまでの面積では足りない場合があります。移行のときに近隣の場所を代替として認められていても、恒久的な解決にはなっていないことがあります。

保育所の設備基準は保育園の改修では何を押さえるのか?を参照してください。

判断の材料は何か?

6つあります。

材料見るもの
建物の状態躯体の劣化、耐震性能、給排水と空調の状態
配置の無理移行時に転用した部分が運営の支障になっていないか
園児数の見通し地域の就学前人口と、利用の形態の変化
職員の空間配置基準の改正に対応できるか
移転先の有無建て替える場合、園児をどこで受け入れるか
条例の基準都道府県等の条例で上乗せがあるか

認可の基準は条例で定められる

認定こども園の認可の基準は、国の基準を踏まえて都道府県等の条例で定められます。国の基準と同じとは限らず、自治体によって上乗せがある場合もあります。

計画の初期に、所管の窓口で条例の内容を確認します。国の基準だけを見て設計を進めると、協議の段階でやり直しになります。

判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。

費用はどう比べるのか?

30年、40年の総額で並べます。

項目改築長寿命化改修
初期費用大きい改築より小さい
配置の見直し自由に計画できる既存の配管と間仕切りに制約される
午睡と教育時間の両立設計に織り込める既存の部屋の構成が前提
工事中の運営移転先または仮設が必要区画を分けて段階施工できる
職員の空間必要な面積を確保できる既存の余剰部分に依存する

工事費、修繕費、光熱費を同じ期間で足し合わせます。

午睡と教育時間の両立

認定こども園では、教育時間だけ利用する子どもと、長時間利用する子どもが同じ園にいます。午後の時間帯に、午睡する子どもと降園する子どもが混在します。

午睡の空間を静かに保てるか、降園の動線が午睡の部屋を通らないか。既存の園舎では、この条件が成り立たない配置になっていることがあります。

配置を根本的に変える必要があるなら、改築の方が向きます。長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。

補助制度はどうなっているのか?

就学前教育・保育施設整備交付金の対象です。

こども家庭庁の資料では、対象となる事業として、幼保連携型認定こども園整備事業(私立)、認定こども園整備事業(保育所型、幼稚園型)、公立認定こども園整備事業(教育部分に限る)が挙げられています。

補助率は、原則として国2分の1、市区町村4分の1、設置主体4分の1です。待機児童対策、人口減少対策、こども誰でも通園制度の要件を満たす場合、2分の1から3分の2に嵩上げされます。

公立は教育部分に限る点に注意

公立認定こども園整備事業は、教育部分に限るとされています。事業の組み立てと対象経費の切り分けを、設計の段階で整理しておきます。

申請の窓口は市区町村です。年度ごとの募集と内示の時期があるため、工事の計画と合わせて早い段階で相談します。

移行時の無理をどう洗い出すのか?

現場の声から始めます。

図面を見ても、運営上の支障は見えません。日々使っている職員が、どこで困っているかを知っています。

聞く相手分かること
保育教諭動線の無理、部屋の使いにくさ、音の問題
調理担当搬入、下処理、配膳の動線、換気と温度
事務担当来客対応、書類の保管、電話と面談の場所
看護職体調不良の子どもを静養させる場所
送迎する保護者出入口の混雑、駐輪と駐車、雨天時の動線

支障を分類する

聞き取った内容を、運用で解決できるものと、工事が必要なものに分けます。工事が必要なものは、さらに部分改修で足りるものと、配置を変えなければ解決しないものに分けます。

3つ目に該当する項目が多ければ、改築を検討する材料になります。数を数えるだけでも判断の助けになります。

記録に残す

不具合が起きた日時と内容を記録しておくと、改修の必要性を説明する資料になります。理事会や自治体への説明でも使えます。

工事はどう進めるのか?

長期休業がありません。

保育を必要とする子どもを受け入れているため、年間を通して園児がいます。区画を分けて段階的に進めることが前提になります。

  • 保育室を一時的に移し、空いた区画を工事する
  • 園庭に仮設を設けて保育の場所を確保する
  • 年度の切り替わりの時期を使う
  • 作業の音が午睡の時間に重ならないよう調整する

工事の区画と園児の動線を完全に分離すること、粉じんと騒音を抑えること、工事関係者の出入りを管理すること。いずれも保育の安全の前提です。

保護者への説明

利用の形態が分かれるため、送迎の時間帯も分散します。動線が変わる場合は、利用形態ごとに何がどう変わるのかを図で示します。バス通園がある園では、発着の場所も確認します。

よくある質問

Q. 幼保連携型の園舎は何平方メートル必要ですか。

A. こども家庭庁の資料では、3学級で420平方メートル、1学級増えるごとに100平方メートルを加算するとされています。

Q. 園庭の面積はどう計算しますか。

A. 幼稚園の基準と、保育所の基準(満2歳以上1人につき3.3平方メートル)を比べ、大きい方を適用するとされています。

Q. 職員配置の改正で施設に影響はありますか。

A. 職員の人数が増えるため、更衣室、休憩室、事務室の広さが足りなくなる園があります。

Q. 幼稚園から移行した園で課題になるのはどこですか。

A. 乳児室、ほふく室、沐浴と調乳の設備を後付けした部分です。配管の経路や換気に無理が出ていることがあります。

Q. 認可の基準は全国同じですか。

A. 国の基準を踏まえて都道府県等の条例で定められます。自治体ごとに内容を確認してください。

Q. 建替えは選択肢になりますか。

A. 工事期間中の保育の場所が確保できるかで決まります。条件がそろわない場合、改修で対応することになります。

Q. 移行時の無理はどう見つけますか。

A. 日々使っている職員から聞き取ります。運用で解決できるもの、部分改修で足りるもの、配置を変えなければ解決しないものに分けます。

Q. 公立の補助は何が対象ですか。

A. 公立認定こども園整備事業は教育部分に限るとされています。対象経費の切り分けを設計の段階で整理します。

Q. 補助率は嵩上げされますか。

A. 待機児童対策、人口減少対策、こども誰でも通園制度の要件を満たす場合、2分の1から3分の2に嵩上げされます。

まとめ

認定こども園の多くは、幼稚園または保育所から移行して成立しています。もともと別の用途で建てられた建物を使っているため、移行時の配置が運営の支障になっている園があります。

幼保連携型の園舎は3学級で420平方メートル、1学級増えるごとに100平方メートル加算。園庭は幼稚園の基準と保育所の基準の大きい方を適用します。保育室または遊戯室は1人1.98平方メートル、乳児室1.65平方メートル、ほふく室3.3平方メートルです。

令和6年3月の改正で、3歳児が15対1、4歳以上が25対1に改善されました。職員の人数が増えるため、更衣室、休憩室、事務室の面積も見直しの対象になります。

判断の出発点は、移行のときに無理をした部分がどこかを洗い出すことです。配管の経路や午睡と教育時間の両立のように、配置を根本から変えなければ解決しない課題であれば、改築の方が目的に合います。認可の基準は条例で定められるため、所管の窓口との協議を早い段階で始めてください。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。認可の基準は都道府県等の条例によります。個別の適用は所管の窓口にご確認ください。

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