目次
出入口の一元化から
出入口を1か所に絞ることです。
学校は、校門が複数あり、昇降口も複数あり、体育館に別の出入口がある構成が普通です。地域に開かれた施設として、この形が作られてきました。
しかし防犯の観点では、出入口が多いほど管理ができません。誰が入ったか分からない状態になります。したがって最初の対策は、通常時に使う出入口を1か所に絞り、そこを通らないと校舎に入れない状態をつくることです。
設備を増やす前に、この整理が来ます。カメラを10台付けても、出入口が5か所あれば誰が入ったかは追えません。
この記事では、①法令上の位置づけ、②出入口の一元化、③校門と外周、④校舎内の対策、⑤計画と運用、の5点を整理します。
この記事の要点
- 学校保健安全法は、第26条で学校安全に関する設置者の責務、第27条で学校安全計画の策定等、第28条で学校環境の安全確保、第29条で危険等発生時対処要領の作成等、第30条で地域の関係機関等との連携を定めている
- 最初の対策は、通常時に使う出入口を1か所に絞ること
- 設備を増やすより、出入口の一元化と見通しの確保が先に来る
- 校門を閉じると地域の利用と避難所の機能に影響するため、運用との両立が必要
- 対策は学校安全計画と危険等発生時対処要領に位置づけ、訓練で確認する
法令上はどう位置づけられるのか?
学校保健安全法が枠組みを定めています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第26条 | 学校安全に関する設置者の責務 |
| 第27条 | 学校安全計画の策定等 |
| 第28条 | 学校環境の安全確保 |
| 第29条 | 危険等発生時対処要領の作成等 |
| 第30条 | 地域の関係機関等との連携 |
防犯の設備や工事は、この枠組みの中に位置づけられます。施設の整備だけを行っても、計画と運用が伴わなければ機能しません。
計画への位置づけが前提
学校安全計画と危険等発生時対処要領に、防犯の内容が含まれている必要があります。工事を行う前に、この計画を確認してください。
計画の中で「ここが弱い」と特定された箇所に対して、工事で対応する順序になります。
設置者の責務
第26条は、学校安全に関する設置者の責務を定めています。施設の整備は設置者が行う部分です。
学校の職員が対応できるのは運用で、施設の改善は設置者の判断になります。
地域との連携
第30条は地域の関係機関等との連携を定めています。警察、消防、自治会、見守りの団体。
施設の対策だけでなく、地域の協力を含めた枠組みで考えてください。
環境の安全確保
第28条は学校環境の安全確保を定めています。点検と改善を継続する仕組みが必要です。
危険な箇所を見つけたら直す、という運用が回っているかを確認してください。
出入口の一元化はどうするのか?
通る場所を1か所にします。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 現在使われている出入口を全部洗い出す |
| 2 | 通常時に使う出入口を1か所に決める |
| 3 | 他の出入口を施錠または固定する |
| 4 | 受付の位置を決める |
| 5 | 来校者の動線を定める |
| 6 | 表示を設ける |
出入口を洗い出す
校門、昇降口、職員玄関、体育館の出入口、給食の搬入口、プールの出入口、裏門。実際に使われている出入口を全部把握してください。
図面上の出入口と、実際に使われている出入口は違うことがあります。現地で確認が必要です。
1か所に決める難しさ
出入口を1か所に絞ると、動線が長くなります。給食の搬入、部活動の出入り、地域の利用。それぞれに不便が生じます。
したがって完全に1か所にはできません。通常時の来校者が通る出入口を1か所にし、他は用途を限定して管理する形になります。
受付の位置
出入口から入った人が、必ず職員の目に入る位置に受付を設けてください。既存の校舎では、職員室が2階にあって玄関が見えないことがあります。
受付を1階に設けるか、玄関にインターホンとカメラを設けて職員室で応対する形になります。玄関の改修は学校の玄関はどう改修するのか?で扱っています。
表示を設ける
来校者が受付の場所を迷わないよう、表示を設けてください。迷った人が別の入口から入ると、管理が崩れます。
校門から受付までの経路に、分かりやすい表示を配置します。
校門と外周はどうするのか?
見通しを確保します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 校門 | 施錠できる構造か、通常時の開閉 |
| フェンス | 高さ、破損箇所、乗り越えやすい箇所 |
| 植栽 | 見通しを遮っていないか |
| 死角 | 校舎の裏、物置の陰、駐輪場 |
| 照明 | 夜間の明るさ |
| 外部からの視線 | 近隣から校内が見えるか |
植栽が見通しを遮る
校庭の植栽が育ちすぎて、外から校内が見えない状態になっていることがあります。見通しが悪いほど、侵入されても気づきません。
一方、植栽は環境としての価値もあります。すべて切るのではなく、下枝を払って視線が通る高さを確保する方法があります。
屋外の整備は校庭はどう整備するのか?で扱っています。
死角を減らす
校舎の裏、物置の陰、駐輪場。人が隠れられる場所を把握し、見通しを確保するか、立入りを制限してください。
カメラを設置する場合も、死角を減らしてからのほうが効果が出ます。
校門を閉じることの影響
校門を常時施錠すると、地域の利用が難しくなります。グラウンドの開放、体育館の貸出し、災害時の避難。
| 用途 | 影響 |
|---|---|
| 地域のスポーツ利用 | 鍵の受渡しが必要になる |
| 通学路としての通過 | 使えなくなる |
| 避難所としての機能 | 開設時の解錠の手順が必要 |
| 保護者の送迎 | 動線が変わる |
校門を閉じるかどうかは、地域との調整が必要です。施設の対策と地域の利用の両立を、学校と自治体で決めてください。
外周の破損を直す
フェンスの破れ、門扉の変形、塀の隙間。これらは侵入の経路になります。
点検して直す。設備を追加する前の、基本的な対策です。
校舎内の対策はどうするのか?
区画と施錠です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使わない階・棟の施錠 | 立入りを止める |
| 特別教室の施錠 | 使用時以外は閉じる |
| 理科室の薬品 | 施錠できる保管 |
| 職員室・事務室 | 鍵と金庫の管理 |
| 個人情報を含む書類 | 施錠できる保管 |
| 非常通報の装置 | 位置と操作の方法 |
| 避難の経路 | 施錠と避難の両立 |
施錠と避難の両立
防犯で施錠を増やすと、避難の経路が塞がります。この両立が設計上の課題になります。
内側からは開けられる、外側からは開けられない建具。または非常時に解錠できる仕組み。これを組み込んでください。
工事中の動線と避難については学校の改修中も授業はできるのか?でも扱っています。
廊下と階段の見通し
廊下が長く、曲がり角が多い校舎では見通しが悪くなります。既存の形は変えられませんが、ミラーの設置や照明の改善で改善できる部分があります。
廊下と階段の改修は廊下と階段はどう改修するのか?で扱っています。
非常通報の装置
職員室から警察に通報する装置、各階に設ける非常ボタン、携帯する通報の機器。
設置するだけでなく、誰がどの場面で使うかを決めてください。訓練で使ってみないと、実際には使えません。
薬品と危険物
理科室の薬品、プールの薬剤、燃料。これらは施錠できる場所に保管してください。
持ち出されると、校外での事故につながります。
計画と運用はどうするのか?
工事と運用を一体で決めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学校安全計画への位置づけ | 第27条に基づく計画 |
| 危険等発生時対処要領 | 第29条に基づく要領 |
| 訓練 | 不審者対応の訓練 |
| 点検 | 施設の点検の頻度と項目 |
| 鍵の管理 | 誰が持つか、記録 |
| 来校者の記録 | 受付での記録の方法 |
| 地域との連携 | 第30条に基づく連携 |
設備だけでは機能しない
カメラを設置しても、見る人がいなければ事後の確認にしか使えません。インターホンを設けても、応対する体制がなければ機能しません。
設備の計画と同時に、運用を誰が担うかを決めてください。
訓練で確認する
対策が機能するかは、訓練で分かります。出入口が1か所になっているか、受付を通らずに入れないか、非常通報が使えるか。
訓練の結果を踏まえて、施設の改善点が出てきます。
点検を続ける
フェンスの破損、植栽の成長、照明の球切れ、建具の不具合。これらは時間とともに発生します。
点検の項目と頻度を決め、見つけたら直す仕組みを回してください。
優先順位
| 優先 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 出入口の一元化と受付の設置 |
| 2 | 外周の破損の修繕 |
| 3 | 見通しの確保(植栽、死角) |
| 4 | 使わない範囲の施錠 |
| 5 | 非常通報の装置 |
| 6 | カメラ、電子錠 |
設備の導入は後ろです。1から4は費用が小さく、効果が大きい対策です。
よくある質問
Q. 防犯対策は何から始めますか。
A. 出入口を1か所に絞ることです。出入口が多いほど誰が入ったかが分からなくなります。設備を増やす前に、この整理が来ます。
Q. 法令上の位置づけはありますか。
A. 学校保健安全法が、第26条で設置者の責務、第27条で学校安全計画の策定等、第28条で学校環境の安全確保、第29条で危険等発生時対処要領の作成等、第30条で地域の関係機関等との連携を定めています。
Q. 出入口を完全に1か所にできますか。
A. できません。給食の搬入、部活動、地域の利用があります。通常時の来校者が通る出入口を1か所にし、他は用途を限定して管理する形になります。
Q. 校門は常時施錠すべきですか。
A. 地域の利用と避難所の機能に影響します。グラウンドの開放、体育館の貸出し、災害時の解錠の手順。学校と自治体で地域との調整を行ってください。
Q. カメラを設置すれば安全になりますか。
A. なりません。見る人がいなければ事後の確認にしか使えません。出入口の一元化と見通しの確保が先に来ます。
Q. 施錠を増やすと避難に支障が出ませんか。
A. 出ます。内側からは開けられ外側からは開けられない建具、または非常時に解錠できる仕組みを組み込んでください。
まとめ
学校の防犯対策で最初に行うのは、通常時に使う出入口を1か所に絞ることです。出入口が多いほど、誰が入ったかが分からなくなります。カメラを10台付けても、出入口が5か所あれば追えません。
法令上は、学校保健安全法が枠組みを定めています。第26条で設置者の責務、第27条で学校安全計画の策定等、第28条で学校環境の安全確保、第29条で危険等発生時対処要領の作成等、第30条で地域の関係機関等との連携です。工事はこの計画の中に位置づけてください。
出入口の一元化では、まず実際に使われている出入口を全部洗い出します。そして通常時の来校者が通る出入口を1か所にし、受付を必ず職員の目に入る位置に設けてください。職員室が2階にあって玄関が見えない校舎では、インターホンとカメラで応対する形になります。
外周では見通しを確保します。育ちすぎた植栽の下枝を払う、死角を減らす、フェンスの破損を直す。費用の小さい対策で効果が出ます。校門を常時施錠するかどうかは、地域の利用と避難所の機能への影響があるため、学校と自治体で調整してください。
校舎内では区画と施錠ですが、避難との両立が課題になります。内側からは開けられ外側からは開けられない建具、または非常時に解錠できる仕組みを組み込んでください。
優先順位は、出入口の一元化、外周の修繕、見通しの確保、使わない範囲の施錠、非常通報の装置、カメラと電子錠の順です。設備の導入は後ろに来ます。そして訓練で機能を確認し、点検を続けることです。
参考・出典
- e-Gov法令検索「学校保健安全法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000056
- 文部科学省「学校安全」 https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/index.htm
- 宮城県「安全教育目標・学校安全計画の作成にあたって」 https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/hotai/anzenkeikakusakusei.html
- 文部科学省「学校安全資料『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」 https://anzenkyouiku.mext.go.jp/
- e-Gov法令検索「学校教育法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026
記載の法令および制度は公表時点のものです。学校安全計画および危険等発生時対処要領の内容、必要な対策は学校の状況と設置者の方針により異なります。個別の判断は設置者、学校および警察等の関係機関にご確認ください。
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