この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

特別支援学校の改修で気をつけることは何か?

設置基準と動線

設置基準と、個々の児童生徒の状態の両方を見ます。

特別支援学校設置基準(令和3年文部科学省令第45号)が令和3年9月24日に公布されました。総則及び学科に係る規定は令和4年4月1日から、編制並びに施設及び設備に係る規定は令和5年4月1日から施行されています。

この基準では、1学級の児童生徒数の上限、校舎及び運動場の面積、校舎に備えるべき施設が定められました。校舎には教室、自立活動室、図書室、保健室、職員室を備えることとされています。

ただし基準を満たすことと、実際に使いやすいことは別です。改修では、通っている児童生徒の状態に合わせた検討が必要になります。

この記事では、①設置基準の内容、②動線と移動、③水まわりと介助、④感覚への配慮、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 特別支援学校設置基準は令和3年文部科学省令第45号として令和3年9月24日に公布された
  • 総則及び学科に係る規定は令和4年4月1日から、編制並びに施設及び設備に係る規定は令和5年4月1日から施行
  • 1学級の児童生徒数の上限は、幼稚部5人(2以上の障害を併せ有する場合3人)、小学部・中学部6人(同3人)、高等部8人(同3人)
  • 校舎には教室(普通教室、特別教室等)、自立活動室、図書室、保健室、職員室を備えることとされている
  • 校舎及び運動場の面積は別表に定める面積以上とするが、地域の実態その他により特別の事情があり教育上支障がない場合はこの限りでないとされている

設置基準には何が定められているのか?

編制と施設・設備です。

項目 内容
1学級の児童生徒数(幼稚部) 5人(2以上の障害を併せ有する幼児で学級を編制する場合は3人)以下
1学級の児童生徒数(小学部・中学部) 6人(同3人)以下
1学級の生徒数(高等部) 8人(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由又は病弱のうち2以上併せ有する生徒で学級を編制する場合は3人)以下
校舎及び運動場の面積 別表に定める面積以上
校舎に備える施設 教室(普通教室、特別教室等)、自立活動室、図書室、保健室、職員室

面積の基準にはただし書きがある

校舎及び運動場の面積は別表に定める面積以上とするものとされていますが、地域の実態その他により特別の事情があり、かつ教育上支障がない場合はこの限りでないとされています。

既存の学校を改修する場合、この規定の適用について所管部署に確認してください。

自立活動室が明記されている

校舎に備える施設として自立活動室が挙げられています。既存の校舎にこの室がない、または面積が不足している場合、改修で確保する検討が必要になります。

普通教室を転用するのか、既存の多目的室を充てるのか。配置と面積の両方を見てください。

専門教育施設

高等部で専門教育を行う場合、必要に応じて専門教育施設を備えるとされています。作業学習や職業教育の内容によって、必要な室と設備が変わります。

1学級の人数が教室の面積に関わる

1学級の児童生徒数の上限が定まっているため、必要な教室数が学級数から算出されます。学級数が増えれば教室が足りなくなります。

在籍者数の推移を確認し、必要な教室数を見込んでください。

校種別の改修の考え方

在籍する児童生徒の障害の種類と程度によって、必要な室と設備が変わります。学校の種類ごとに一律の答えはありません。

動線と移動はどう考えるのか?

車椅子と介助を前提にします。

項目 確認すること
廊下の幅 車椅子のすれ違い、介助者の付添い
建具の幅 車椅子の通行
段差 昇降口、廊下、教室の出入口
スロープの勾配 自走できる勾配か
階段 手すり、踏面、蹴上げ
エレベーター かごの寸法、操作盤の高さ
床の仕上げ 滑り、車椅子の走行性
曲がり角 車椅子の回転に必要な寸法

廊下の幅は介助を前提に見る

車椅子が通れる幅と、介助者が横に付いて通れる幅は違います。すれ違いが発生する位置では、さらに幅が必要になります。

既存の校舎では廊下の幅を広げられないことが多いため、待避できる場所を設ける、動線を一方向にするなどの運用での対応になります。廊下と階段の改修の考え方は廊下と階段はどう改修するのか?で扱っています。

エレベーターのかごの寸法

車椅子に介助者が付く場合、一般的な寸法のかごでは狭くなります。ストレッチャーを使う児童生徒がいれば、さらに大きな寸法が必要です。

エレベーターの設置はエレベーター設置はどう進めるのか?で扱っています。構造と防火区画の検討を伴い、金額が大きくなります。

段差の解消

昇降口、廊下と教室の間、屋外への出入口。段差の位置を全部洗い出してください。

1か所でも段差が残れば、その先に行けません。バリアフリー改修の考え方は学校のバリアフリー改修はどう進めるのか?で扱っています。

避難の経路

自力での避難が難しい児童生徒がいる場合、避難の計画が設計に直結します。1階に教室を集約する、バルコニーを設ける、避難用の設備を設ける。

学校と消防法の関係は学校と消防法はどう関わるのか?で扱っています。特別支援学校は消防法施行令別表第一の(6)項で特定防火対象物に該当します。

水まわりと介助はどうするのか?

介助のスペースが要ります。

項目 内容
トイレの広さ 車椅子の回転、介助者のスペース
便器の位置 移乗の方向
手すり 位置と形状を個別に検討
おむつ交換台 大型のものが必要になる場合がある
シャワー・入浴 介助を前提とした広さと設備
洗面 車椅子で寄り付ける形状
汚物の処理 処理の設備と動線
更衣 介助できる広さ

トイレは個別の検討が必要

車椅子対応のトイレを設けても、個々の児童生徒に合うとは限りません。移乗の方向、手すりの位置、便器の高さ。

通っている児童生徒の状態を学校から聞き取り、設計に反映してください。標準的な仕様をそのまま入れると、使えないことがあります。

数と位置

トイレの数が足りないと、休み時間に間に合いません。介助に時間がかかるため、一般の学校より余裕が必要です。

教室からの距離も重要です。移動に時間がかかるため、近い位置に設ける必要があります。

入浴とシャワーの設備

学校の種類と児童生徒の状態によって、入浴やシャワーの設備が必要になることがあります。

給湯の熱源、排水、床の防水。既存の校舎にない設備を新設する場合、給排水の経路が計画を左右します。

医療的ケアへの対応

医療的ケアを必要とする児童生徒がいる場合、ケアを行う場所、医療機器の電源、衛生の確保が必要になります。

室の確保と設備の整備を、学校と医療の関係者を含めて検討してください。

感覚への配慮はどうするのか?

音、光、色を調整します。

項目 内容
音 残響を抑える。突然の大きな音を減らす
光 直射日光と眩しさを抑える
色 刺激の強い配色を避ける
情報の表示 分かりやすい表示、ピクトグラム
落ち着ける場所 クールダウンできる小空間
床と壁の仕上げ 衝撃の吸収、角の処理

残響を抑える

学校の廊下と教室は、硬い仕上げで残響が長くなりがちです。聞き取りにくさは、聴覚に障害のある児童生徒だけでなく、他の児童生徒にも影響します。

吸音の処理を内装の計画に含めてください。

光のコントロール

教室の大きな窓からの直射日光は、眩しさの原因になります。遮光と拡散の調整が必要です。

照明についても、均一な明るさと、眩しさを抑える配光を検討してください。

落ち着ける場所を設ける

刺激に反応しやすい児童生徒のために、落ち着ける小空間を設ける例があります。

既存の校舎では、使っていない小部屋や廊下の一部を転用する形になります。

表示を分かりやすくする

室名、行き先、トイレの位置。文字だけでなく、色やピクトグラムを併用した表示が有効です。

改修の機会に、校内のサインを一式で見直すことができます。

どう進めるのか?

学校からの聞き取りが起点です。

手順 内容
1 在籍者数と学級数の推移を確認する
2 通っている児童生徒の状態を学校から聞き取る
3 設置基準との照合を行う
4 動線と水まわりの不足を洗い出す
5 避難の計画を確認する
6 優先度を決める
7 設計に入る

学校の職員の意見を聞く

日々の介助を行っているのは学校の職員です。どこで手間がかかっているか、どこが危ないかを最もよく知っています。

設計の前に聞き取りの場を設けてください。図面を示すだけでなく、現場を一緒に歩くことが有効です。

在籍者の状態は変わる

卒業と入学で、通っている児童生徒の状態は変わります。個別の状態に合わせすぎると、数年後に合わなくなります。

標準的な対応と、個別の調整が可能な仕様を組み合わせてください。

優先度は安全から

段差による転倒、避難の経路、トイレの不足。安全と日常の支障に関わるものを先に行ってください。

感覚への配慮は重要ですが、安全が確保された後の課題です。

工事中の配慮

在校中の工事では、動線の変更と騒音が大きな影響を与えます。環境の変化に反応しやすい児童生徒がいる場合、工区の設定と時期を慎重に決めてください。

長期休業に寄せる、または工事の範囲を小さく分ける判断になります。

よくある質問

Q. 特別支援学校設置基準はいつから適用されますか。

A. 令和3年文部科学省令第45号として令和3年9月24日に公布され、総則及び学科に係る規定は令和4年4月1日から、編制並びに施設及び設備に係る規定は令和5年4月1日から施行されています。

Q. 校舎に備えるべき施設は何ですか。

A. 教室(普通教室、特別教室等)、自立活動室、図書室、保健室、職員室です。高等部で専門教育を行う場合は、必要に応じて専門教育施設を備えるとされています。

Q. 1学級の人数に上限はありますか。

A. 幼稚部5人、小学部・中学部6人、高等部8人が上限です。2以上の障害を併せ有する児童生徒で学級を編制する場合は3人です。

Q. 面積の基準を満たせない場合はどうなりますか。

A. 校舎及び運動場の面積は別表に定める面積以上とするものとされていますが、地域の実態その他により特別の事情があり、かつ教育上支障がない場合はこの限りでないとされています。所管部署に確認してください。

Q. トイレは標準的な車椅子対応で足りますか。

A. 足りないことがあります。移乗の方向、手すりの位置、便器の高さは個々の児童生徒によって違います。学校から聞き取って設計に反映してください。

Q. 何から始めますか。

A. 在籍者数と学級数の推移の確認と、学校の職員からの聞き取りです。日々の介助を行っている職員が、どこで手間がかかりどこが危ないかを最もよく知っています。

まとめ

特別支援学校の改修では、設置基準と個々の児童生徒の状態の両方を見ます。

特別支援学校設置基準は令和3年文部科学省令第45号として令和3年9月24日に公布され、編制並びに施設及び設備に係る規定は令和5年4月1日から施行されています。1学級の児童生徒数の上限は幼稚部5人、小学部・中学部6人、高等部8人で、2以上の障害を併せ有する児童生徒で学級を編制する場合は3人です。校舎には教室、自立活動室、図書室、保健室、職員室を備えることとされています。

既存の校舎に自立活動室がない、または面積が不足している場合、改修で確保する検討が必要になります。校舎及び運動場の面積は別表に定める面積以上とするものとされていますが、特別の事情があり教育上支障がない場合のただし書きがあります。

動線では、車椅子と介助を前提に見てください。廊下の幅は車椅子が通れる幅と介助者が横に付ける幅が違います。段差は1か所でも残ればその先に行けません。エレベーターのかごの寸法は、介助者が付く前提で検討が必要です。

水まわりでは介助のスペースが要ります。標準的な車椅子対応の仕様が、個々の児童生徒に合うとは限りません。移乗の方向、手すりの位置、便器の高さを学校から聞き取ってください。

進め方の起点は、学校の職員からの聞き取りです。図面を示すだけでなく、現場を一緒に歩いてください。そして優先度は安全からです。段差による転倒、避難の経路、トイレの不足を先に解決してください。

参考・出典

記載の法令および基準は公表時点のものです。面積の基準の適用、必要な施設の確保および避難の計画は学校の状況と所管部署の運用により異なります。個別の適用は所管部署、特定行政庁、消防本部および設計者にご確認ください。

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