目次
用途変更と管理区分
廃校活用でいちばん件数が多いのが、地域の集会施設への転用です。
もともと地域の中心にあり、体育館と教室とグラウンドが揃っている。地域の行事はすでにそこで行われてきた。だから閉校後も地域で使いたいという声が出ます。
ただし「地域で使う」という言葉のままでは、設計も見積りも進みません。公民館として位置づけるのか、集会場として貸すのか、誰が鍵を管理して誰が光熱費を払うのか。ここが決まらないと、消防法上の扱いさえ判定できません。
そして無理に全館を残すと、使わない部分の維持費が地域の負担になります。
この記事では、①法令上の位置づけ、②用途変更の扱い、③消防法の扱い、④区画の決め方、⑤管理区分、の5点を整理します。
この記事の要点
- 公民館は社会教育法第20条に基づき、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図ることを目的とする施設
- 社会教育法第23条は、公民館が営利事業の援助、特定政党の利害に関する事業、特定宗教の支持を行ってはならないと定めている
- 学校は建築基準法施行令第137条の18の11区分のいずれにも含まれないため、用途変更は類似の用途に当たらない
- 集会場に転用すると消防法施行令別表第一の(1)項ロとなり、特定防火対象物に該当する
- 使う範囲を区画して管理区分を決めないと、光熱費と鍵の管理で揉める
法令上はどう位置づけるのか?
公民館とするか、それ以外の集会施設とするかで扱いが変わります。
公民館は社会教育法に基づく施設です。同法第20条は、公民館は市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もって住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とすると定めています。
| 位置づけ | 根拠 | 特徴 |
|---|---|---|
| 公民館 | 社会教育法 | 社会教育施設。事業に制約がある |
| 公の施設 | 地方自治法第244条 | 条例で設置。指定管理が可能 |
| 集会場(貸室) | 建築基準法上の用途 | 利用者に貸す |
| 地域団体への貸付 | 賃貸借契約 | 運営は地域団体 |
ここを選ぶのは設計者ではなく自治体です。どの位置づけにするかで、できる事業と収入の扱いが変わります。
公民館には事業の制約がある
社会教育法第23条は、公民館について、営利事業の援助、特定政党の利害に関する事業、特定の宗教の支持を行ってはならないと定めています。
このため、公民館として位置づけると、営利目的の利用やテナントの入居が制約を受けます。収益を上げて維持費を賄う構想がある場合、公民館という位置づけが合わないことがあります。
公民館の事業の範囲
社会教育法第22条は、公民館が第20条の目的達成のために行う事業として、定期講座の開設、討論会・講習会・講演会等の開催、図書や資料の備置と利用、体育やレクリエーション等の集会の開催、各種団体の連絡調整、施設の公共的利用への提供などを挙げています。
地域で想定している活動がこの範囲に収まるかを、先に突き合わせてください。
用途変更の扱いはどうなるのか?
学校から集会場への変更は、類似の用途に当たりません。
建築基準法施行令第137条の18は、確認申請を要しない類似の用途の相互間の変更について、第1号から第11号までの区分を定めています。第2号に公会堂と集会場がありますが、学校はこの11区分のいずれにも含まれていません。
したがって学校から集会場への変更は類似の用途に当たらず、用途を変更する部分の床面積が200平方メートルを超えれば、建築基準法第87条第1項により確認申請が必要になります。
| 計画 | 確認申請 |
|---|---|
| 校舎全体を集会場にする | 必要 |
| 200平方メートルを超える部分を集会場にする | 必要 |
| 200平方メートル以下に収める | 不要(実体規定は守る) |
既存不適格の扱いは廃校の既存不適格はどこまで遡るのか?で扱っています。確認申請を出すと、防火と避難の規定への適合が審査されます。
面積を抑える設計もある
校舎の一部だけを使い、残りを閉じる計画にすれば、用途変更の面積を抑えられます。ただし200平方メートルの数え方は所管行政庁の運用に左右されます。
部分活用の考え方は廃校を部分的に活用できるのか?で扱っています。
体育館をそのまま使う場合
体育館を体育施設として使い続けるなら、用途は体育館のままです。ただし集会やイベントの会場として使うなら、実際の使い方で判定されます。
名称ではなく中身で判断されるため、どういう催しをどの頻度で行うかを整理してください。
消防法ではどう扱われるのか?
集会場は特定防火対象物です。
学校は消防法施行令別表第一の(7)項で、特定防火対象物には含まれません。一方、公会堂または集会場は(1)項ロで、特定防火対象物に該当します。
| 用途 | 項 | 特定防火対象物 |
|---|---|---|
| 学校 | (7)項 | 該当しない |
| 公会堂、集会場 | (1)項ロ | 該当する |
| 図書館、博物館、美術館 | (8)項 | 該当しない |
| 複合用途(特定用途を含む) | (16)項イ | 該当する |
特定防火対象物に該当すると、消防法第17条の2の5により、消防用設備等が現行基準に適用されます。自動火災報知設備の全館設置などが必要になり、金額が動きます。
消防設備の要件は廃校の転用で消防設備はどこまで必要か?で扱っています。
用途が混ざると(16)項イになる
集会のスペースに加えて、カフェや物販のコーナーを置く計画はよくあります。この場合、複合用途防火対象物として(16)項イに該当し、特定防火対象物になる可能性があります。
小さな売店を1つ置くかどうかで設備の要件が変わることがあるため、計画の段階で消防に相談してください。
区画はどう決めるのか?
使う範囲と使わない範囲を物理的に分けます。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 使う範囲 | 階と棟を特定する |
| 閉じる範囲 | 建具で区画し、立入りを止める |
| 動線 | 玄関から使う範囲までの経路 |
| トイレ | 使う範囲の近くに確保する |
| 空調の範囲 | 区画の内側だけ |
| 避難経路 | 閉じた範囲を経由しないこと |
よくある失敗は、避難経路が閉じた範囲を通っていることです。避難のために通れるようにしておくと、その範囲も管理と空調の対象になります。
計画の初期に、避難の経路を含めた区画を描いてください。
1階に集約する
階段の上り下りがあると、高齢者の利用が減ります。1階に集会室とトイレを集約し、上階は閉じる形が使いやすくなります。
ただし1階に適切な室がない校舎もあります。職員室や特別教室の配置によっては、2階を使うことになります。
トイレの位置が使い勝手を決める
学校のトイレは各階の端にあります。1階だけを使う計画で、トイレが使う範囲の反対側の端にあると、動線が長くなります。
トイレの改修は廃校活用で金額の大きい項目です。位置を変えるかどうかは、給排水の経路で決まります。
管理区分はどう決めるのか?
鍵と費用の担い手を文書にします。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 鍵の管理 | 誰が開け閉めするか |
| 光熱費 | 誰が払うか、どう按分するか |
| 日常の清掃 | 誰がやるか |
| 小修繕 | 金額の線を引く |
| 大規模修繕 | 所有者の負担とするか |
| 損害保険 | 誰が加入するか |
| 利用の受付 | 窓口をどこにするか |
ここを曖昧にすると、数年後に揉めます。地域団体が善意で引き受けたが、光熱費の負担が重くて続かなくなる。これは実際に起きている形です。
用途変更の制度全体は用途変更とは何か?にまとめています。
担い手の体制を確認する
地域の団体に運営を任せる場合、中心になる人が何人いるかを確認してください。1人の熱意で動いている場合、その人が退いたときに止まります。
収入の見込みは控えめに置く
集会施設の利用料収入は小さくなります。地域の団体に低額で貸す前提であれば、光熱費も賄えません。
維持費の多くは自治体が負担する前提で計画を組むか、収益用途を併設するかのどちらかです。併設する場合は、公民館としての位置づけが合わなくなる点に戻ります。
光熱費は実績から見積もる
学校として使っていた時期の光熱費の実績が、庁内に残っています。これを使う範囲の面積で按分すれば、おおよその見込みが出ます。
ただし学校は夏休みと冬休みに使用が落ち、授業時間帯だけ空調を入れる運用でした。通年で開館する施設にすると、面積あたりの光熱費は実績より上がります。按分した額をそのまま使わないでください。
| 比較する項目 | 学校時代 | 集会施設 |
|---|---|---|
| 稼働日数 | 授業日のみ | 通年(休館日を除く) |
| 稼働時間 | 日中 | 夜間利用が入る |
| 長期休業 | 使用が落ちる | 変わらない |
| 空調の範囲 | 教室単位 | 使用範囲全体 |
夜間の利用があると、照明と空調の時間が延びます。地域の集会は夜に行われることが多いため、ここは見込んでおく必要があります。
よくある質問
Q. 夜間の利用は見込んでおくべきですか。
A. 地域の集会は夜に行われることが多く、照明と空調の時間が延びます。学校時代の光熱費を面積で按分した額より上がります。
Q. 公民館にすると何が制約されますか。
A. 社会教育法第23条により、営利事業の援助、特定政党の利害に関する事業、特定の宗教の支持を行うことができません。収益事業を組み込む構想とは合わないことがあります。
Q. 用途変更の確認申請は必要ですか。
A. 学校から集会場への変更は類似の用途に当たりません。用途を変更する部分の床面積が200平方メートルを超えれば、建築基準法第87条第1項により必要です。
Q. 消防設備の負担は増えますか。
A. 集会場は消防法施行令別表第一の(1)項ロで特定防火対象物に該当します。消防用設備等が現行基準に適用されるため、学校のままより要件が厳しくなります。
Q. カフェを併設すると扱いが変わりますか。
A. 複合用途防火対象物として(16)項イに該当し、特定防火対象物になる可能性があります。計画段階で消防に相談してください。
Q. 校舎全部を使う必要がありますか。
A. 使う範囲を区画して閉じる計画が現実的です。ただし避難経路が閉じた範囲を通っていると、その範囲も管理の対象になります。
Q. 地域団体に任せる場合の注意点は何ですか。
A. 鍵、光熱費、清掃、小修繕、保険、利用受付の担い手を文書で決めてください。曖昧なままでは数年後に続かなくなります。
まとめ
廃校を地域の集会施設にする構想は件数が多いものの、「地域で使う」という言葉のままでは進みません。公民館とするか、公の施設とするか、集会場として貸すか、地域団体に貸し付けるか。この位置づけを自治体が決める必要があります。
公民館は社会教育法第20条に基づく施設で、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図ることを目的とします。ただし同法第23条により営利事業の援助などが禁じられているため、収益で維持費を賄う構想とは合わないことがあります。
用途変更では、学校が建築基準法施行令第137条の18の11区分のいずれにも含まれないことが出発点です。集会場への変更は類似の用途に当たらず、200平方メートルを超えれば確認申請が必要になります。
消防法では扱いが変わります。学校は(7)項で特定防火対象物に含まれませんが、公会堂または集会場は(1)項ロで該当します。カフェや物販を併設すると(16)項イの複合用途となる可能性もあります。
設計では、使う範囲を区画し、1階に集約し、トイレの位置を確認する。避難経路が閉じた範囲を通らないようにする。そして鍵、光熱費、清掃、小修繕、保険、受付の担い手を文書で決めることです。ここを曖昧にしたまま始めた施設が、数年後に止まっています。
参考・出典
- e-Gov法令検索「社会教育法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000207
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- e-Gov法令検索「消防法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 文部科学省「廃校施設活用状況実態調査」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu_00002.htm
記載の法令および制度は公表時点のものです。用途変更の判定、面積の算定方法および消防用設備等の要件は所管行政庁および消防本部の運用により異なります。個別の適用は所管行政庁、消防本部および設計者にご確認ください。
学校施設のご相談
その工事、補助金が使えるか無料でチェックします
トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。
補助金の無料チェックを依頼する株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。
受付時間 平日 9:00〜18:00