目次
受電容量・空調負荷・床荷重
廃校のデータセンター転用は、問い合わせがある一方で、成立する条件が限られます。
郊外に広い敷地と建物があり、地価が安い。都市から距離があるためバックアップ拠点に向く。自治体としては、雇用と税収につながる提案として歓迎したい。
しかし計算機を集めて動かす施設は、電力をまとまって消費します。学校の受電設備は照明と教室の空調を前提にしており、桁が違います。そして周辺の配電設備の容量も問われます。
さらに通信回線です。郊外の学校に高速で冗長な回線が引けるかは、立地で決まります。
この記事では、①受電容量、②空調負荷、③床荷重と階高、④通信と立地、⑤非常用発電機と危険物、の5点を整理します。
この記事の要点
- 受電容量が最大の制約で、学校の受電設備では足りず、周辺の配電設備の増強も必要になる
- 空調は計算機の発熱を通年で処理するため、断熱と気流の計画が運転費に直結する
- 床の積載荷重は建築基準法施行令第85条が室の種類ごとに定めており、機器と二重床の重量は確認が必要
- 通信回線の冗長性は立地で決まるため、電力と同時に確認する
- 非常用発電機の燃料は消防法上の危険物で、軽油(第2石油類)の指定数量は1,000リットル、重油(第3石油類)は2,000リットル
受電容量はなぜ最大の制約なのか?
必要な容量の桁が違うからです。
学校の受電設備は、照明、コンセント、教室の空調を前提に容量が決められています。計算機室を設ける施設では、機器の消費電力とその発熱を処理する空調の電力が加わります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 既存の受電容量 | キュービクルの容量 |
| 必要な容量 | 機器と空調の合計 |
| 幹線の容量 | 受電設備から各室までの経路 |
| 周辺の配電設備 | 電力会社側の容量 |
| 増強の期間 | 協議と工事に要する時間 |
| 増強の費用 | 誰が負担するか |
受電容量の確認は、計画の最初に行う作業です。ここが足りなければ、他の検討をしても意味がありません。
周辺の配電設備が足りないことがある
敷地内の受電設備を更新しても、電力会社側の配電設備の容量が足りないことがあります。郊外では高圧の配電線の増強が必要になり、期間と費用がかかります。
事業者が計画を持ち込む段階で、電力会社への事前相談を済ませているかを確認してください。この確認がない計画は、机上の案にとどまります。
増強の費用負担を決める
受電容量を上げる工事の費用を、自治体が負担するか事業者が負担するかは契約で決めます。
自治体が負担すると、撤退された場合に過大な設備が残ります。事業者が負担するなら、撤退時の扱いを決めておく必要があります。
設備の更新の考え方
受電設備、幹線、分電盤。これらの更新の順序と範囲は廃校の設備更新はどこから手をつけるのか?で扱っています。
用途変更の扱い
学校は建築基準法施行令第137条の18の11区分のいずれにも含まれていません。したがって用途変更は類似の用途に当たらず、用途を変更する部分の床面積が200平方メートルを超えれば、建築基準法第87条第1項により確認申請が必要になります。
既存不適格の扱いは廃校の既存不適格はどこまで遡るのか?で扱っています。用途地域の確認も必要です。
空調負荷はどう考えるのか?
発熱を通年で処理します。
計算機は消費した電力のほとんどを熱に変えます。この熱を室外に捨て続けるのが空調の役目です。学校の空調は、人がいる時間帯に室温を下げる前提で設計されており、前提が違います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 冷房の負荷 | 機器の発熱が主な要因 |
| 稼働時間 | 通年24時間 |
| 気流の計画 | 給気と排気の経路を分ける |
| 断熱 | 外気の影響を抑える |
| 外気冷房 | 冬季に外気を使えるか |
| 冗長性 | 空調が止まった場合の備え |
学校の校舎は壁に断熱材がなく、単板ガラスのアルミサッシです。この状態で室温を一定に保つと、空調が常時高負荷で動きます。
断熱改修の考え方は廃校の断熱改修はどこまでやるのか?で扱っています。断熱と気密は運転費に直結します。
窓を塞ぐ判断
計算機室では外光も日射も不要です。窓を塞げば断熱が改善し、日射の影響もなくなります。
ただし窓を塞ぐと自然換気ができなくなり、避難上有効な開口部として算定されている場合は避難の検討をやり直すことになります。
寒冷地は外気を使える
冬季の外気温が低い地域では、外気を取り入れて冷却する運転が可能になります。これが郊外の廃校が検討される理由の1つです。
ただし湿度と塵の管理が必要で、そのための設備が加わります。
空調の冗長性
空調が止まると室温が急上昇します。機器の停止につながるため、空調にも冗長性が求められます。
これが設備費と受電容量をさらに押し上げます。
床荷重と階高はどう確認するのか?
機器と二重床の重量です。
床の構造計算に用いる積載荷重は、建築基準法施行令第85条が室の種類ごとに定めています。校舎の教室は教室としての値で設計されており、機器を並べる前提ではありません。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 設計時の積載荷重 | 構造計算書で室種別の値を確認 |
| 機器の重量 | 設置する密度で決まる |
| 二重床の重量 | 床下に配線や気流の経路をつくる場合 |
| 階高 | 二重床と天井裏の高さを確保できるか |
| 梁と柱の位置 | 重量を集められる位置 |
| 耐震 | 機器の固定と建物の性能 |
二重床を設けると、その分だけ有効な天井高が下がります。教室の階高では、二重床と天井裏を両方確保すると天井が低くなりすぎることがあります。
1階が有利
重量と搬入の両面で1階が有利です。地面に近い位置であれば荷重の条件がよく、機器の搬入も容易になります。
2階以上に機器を置く計画は、床の補強と搬入経路の検討が前提になります。
耐震性能の確認
機器を守る施設では、建物の耐震性能が問われます。昭和56年以前の校舎をそのまま使う計画は、事業者側の要求水準を満たさないことがあります。耐震診断の結果と補強の履歴を、提案を受ける前に整理しておいてください。
通信と立地はどう確認するのか?
回線の冗長性です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 回線の種類 | 事業者と帯域 |
| 冗長性 | 経路の異なる2系統が引けるか |
| 引込みの経路 | 電柱か、地中か |
| 引込みの費用 | 距離に比例する |
| 遅延 | 都市からの距離 |
| 近隣の施設 | 既存の通信設備の有無 |
郊外の学校に、経路の異なる2系統の回線を引けるかは立地で決まります。1系統しか引けない立地では、事業の前提が成立しないことがあります。
災害リスクの確認
浸水想定区域、土砂災害警戒区域、液状化の可能性。これらは事業者が必ず確認する項目です。
自治体のハザードマップで、立地の条件を先に把握しておいてください。条件が悪ければ、提案そのものが来ません。
サウンディングで条件を聞く
データセンターの要求水準は事業者によって異なります。自治体が構想を固めてから公募すると、条件が合わず応募がないことがあります。
サウンディングの進め方は廃校活用のサウンディング調査とは何か?で扱っています。電力、通信、耐震の3点について、成立する条件を先に聞いてください。
非常用発電機と危険物はどう扱うのか?
燃料が消防法上の危険物になります。
停電時に機器を動かし続けるため、非常用発電機を設ける構成が一般的です。その燃料は消防法上の危険物に該当します。
| 品名 | 指定数量 | 5分の1 |
|---|---|---|
| ガソリン(第1石油類) | 200リットル | 40リットル |
| 灯油・軽油(第2石油類) | 1,000リットル | 200リットル |
| 重油(第3石油類) | 2,000リットル | 400リットル |
指定数量以上を貯蔵または取り扱う場合は消防法の規制対象となり、許可が必要です。指定数量の5分の1以上で指定数量未満の場合は、少量危険物として市町村の火災予防条例による規制の対象となり、管轄の消防署への届出が必要になります。
運転時間から必要量が決まる
停電時に何時間運転するかで、必要な燃料の量が決まります。長時間の運転を想定すれば、貯蔵量が増え、指定数量を超えます。
貯蔵の方法と場所は、量に応じて要件が変わります。計画の初期に消防本部に相談してください。
発電機の設置場所
発電機は重量があり、騒音と排気を出します。屋外に設置するか、屋内に設置して排気を導くか。近隣との距離も考慮が必要です。
郊外の学校は近隣に住宅があることが多く、騒音が論点になります。
消防法上の用途区分を確認する
学校は消防法施行令別表第一の(7)項です。データセンターの扱いは計画の内容によって判断されるため、消防本部に確認してください。
消火の方式も論点になります。水による消火は機器を損傷させるため、ガス系の消火設備を求める事業者があります。既存の設備との関係を消防本部に確認してください。
従業員は少ない
データセンターは、面積に対して常駐する人員が少ない施設です。雇用の創出を期待して誘致すると、想定と合わないことがあります。
| 期待されること | 実際 |
|---|---|
| 雇用 | 常駐は少人数。保守は訪問が中心 |
| 税収 | 設備投資が大きく、固定資産税の対象になる |
| 地域との関わり | 施設の性質上、限定的になる |
| 来訪者 | ほとんどない |
税収の面では効果が見込めます。固定資産税の扱いは、売却か貸付かで変わります。
よくある質問
Q. 雇用は生まれますか。
A. 面積に対して常駐する人員が少ない施設です。雇用の創出を主な目的に誘致すると想定と合わないことがあります。税収の面では効果が見込めます。
Q. 何から確認しますか。
A. 受電容量です。既存の容量と必要な容量を比べ、周辺の配電設備の容量も電力会社に確認してください。ここが足りなければ他の検討は意味がありません。
Q. 電力会社側の工事も必要ですか。
A. 郊外では高圧の配電線の増強が必要になることがあります。期間と費用がかかるため、事前相談が済んでいるかを確認してください。
Q. 窓は塞ぐべきですか。
A. 計算機室では外光も日射も不要なので、断熱の面では有利です。ただし自然換気ができなくなり、避難上有効な開口部の算定にも関わります。
Q. 二重床は入りますか。
A. 教室の階高では、二重床と天井裏を両方確保すると天井が低くなりすぎることがあります。階高の確認が必要です。
Q. 非常用発電機の燃料に手続きは必要ですか。
A. 指定数量以上なら消防法の許可、5分の1以上で指定数量未満なら少量危険物として市町村の火災予防条例に基づく届出が必要です。軽油の指定数量は1,000リットルです。
Q. 郊外の立地は不利ですか。
A. 地価と外気温では有利ですが、通信回線の冗長性と受電容量で制約を受けます。経路の異なる2系統を引けるかが分かれ目になります。
まとめ
廃校のデータセンター転用は、郊外の敷地と建物という条件が魅力的に見える一方、電力と通信で成立する立地が限られます。
最初に確認するのは受電容量です。学校の受電設備は照明と教室の空調を前提にしており、桁が違います。敷地内の設備を更新しても、電力会社側の配電設備の増強が必要になることがあり、期間と費用がかかります。事前相談が済んでいない計画は机上の案です。
空調は機器の発熱を通年で処理します。壁に断熱材のない校舎で室温を一定に保つと、空調が常時高負荷で動きます。窓を塞げば断熱が改善しますが、換気と避難の検討をやり直すことになります。冬季の外気温が低い地域では外気冷房が使えるため、ここは郊外の利点です。
床については建築基準法施行令第85条の積載荷重を確認してください。二重床を設けると有効な天井高が下がり、教室の階高では成立しないことがあります。重量と搬入の両面で1階が有利です。
通信回線は、経路の異なる2系統を引けるかで決まります。1系統しか引けない立地では事業の前提が成立しません。あわせて浸水想定区域や土砂災害警戒区域などの災害リスクも、事業者が必ず確認する項目です。
非常用発電機の燃料は消防法上の危険物です。軽油(第2石油類)の指定数量は1,000リットル、重油(第3石油類)は2,000リットル。指定数量以上なら許可、5分の1以上なら少量危険物として市町村の火災予防条例に基づく届出が必要になります。
参考・出典
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- e-Gov法令検索「消防法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000186
- e-Gov法令検索「危険物の規制に関する政令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306
- 総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/
- 文部科学省「廃校施設活用状況実態調査」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu_00002.htm
記載の法令および制度は公表時点のものです。少量危険物の届出に関する規定は市町村の火災予防条例により異なり、受電容量の条件は電力会社の設備により異なります。個別の適用は消防本部、電力会社、所管行政庁および設計者にご確認ください。
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