この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

廃校活用で指定管理者とPFIはどう選ぶのか?【2026年版】手法の比較と適用の条件

廃校を民間に任せるとき、使える仕組みは1つではありません。

貸付、指定管理、PFI、売却。どれも民間活用ですが、何を任せるかが違います。施設の所有者が誰か、整備費を誰が出すか、運営の収入を誰が得るか。この3つの組み合わせで手法が決まります。

選び方を間違えると、手続きが重くなるだけで効果が出ません。小さな施設にPFIを使えば、手続きの費用が整備費に見合わなくなります。逆に、公の施設として位置づけるべきものを単純な貸付にすると、利用のルールを自治体が決められなくなります。

この記事では、①4つの手法、②指定管理者制度、③PFI、④選び方、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 指定管理者制度は地方自治法第244条の2に基づき、公の施設の管理を法人等に行わせる仕組み
  • 指定管理者の指定には、条例の定めと議会の議決が必要
  • PFIは民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づく整備手法
  • 廃校を公の施設として位置づけるかどうかが、手法選択の最初の分岐
  • 小規模な施設では、貸付のほうが手続きの負担に見合うことが多い

4つの手法はどう違うのか?

誰が何を持つかで分かれます。

手法 所有 整備費 運営の収入 利用のルール
貸付 自治体 事業者 事業者 事業者が決める
指定管理 自治体 自治体 自治体または事業者 自治体が条例で決める
PFI 方式による 事業者が調達 方式による 自治体が決める
売却 事業者 事業者 事業者 事業者が決める

一番の分岐は、その施設を公の施設として位置づけるかどうかです。

公の施設とは、住民の福祉を増進する目的で住民の利用に供するための施設です。図書館、公民館、体育館、福祉施設。これらは自治体が設置し、条例で利用のルールを定めます。

廃校を公の施設にするなら、指定管理かPFIになります。公の施設にしないなら、貸付か売却です。

公の施設にするかどうかの判断

公の施設にする 公の施設にしない
住民が公平に利用できることを担保したい 民間の事業として自由にやってもらう
利用料金や利用時間を自治体が決めたい 収益性を優先したい
継続的に公共サービスを提供する 用途が変わる可能性がある
条例の制定と議会の議決が必要 手続きは比較的軽い

公の施設にすると、自治体の関与は強くなりますが、手続きも重くなります。条例の制定が必要で、議会の議決も要ります。

PPPとPFIの全体像は学校のPPP/PFIとは何か?で扱っています。

指定管理者制度とは何か?

公の施設の管理を法人等に行わせる仕組みです。

地方自治法第244条の2は、普通地方公共団体が条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するものに、公の施設の管理を行わせることができるとしています。

項目 内容
根拠 地方自治法第244条の2
対象 公の施設
必要な手続き 条例の制定、指定管理者の指定(議会の議決)
期間 条例または協定で定める。3年から5年が一般的
収入 指定管理料、利用料金制を採用する場合は利用料金

廃校を地域交流施設や体育施設として公の施設に位置づけ、その管理を民間や地域団体に任せる。この形が廃校活用では比較的多く見られます。

利用料金制という選択

指定管理者が利用料金を自らの収入として収受する方式です。利用者を増やせば収入が増えるため、運営の工夫が促されます。

一方、収入が読めない施設では事業者がリスクを負いきれません。固定の指定管理料と利用料金を組み合わせる設計が実務では多く取られます。

期間の短さが投資を妨げる

指定管理の期間は3年から5年が一般的です。この期間では、事業者が大きな投資をする判断ができません。

改修費を事業者に負担させる前提なら、指定管理は向きません。自治体が改修してから指定管理に出す、という順序になります。

PFIはどういう手法か?

民間の資金と能力を使って公共施設を整備する手法です。

民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づきます。設計、建設、維持管理、運営を一括して民間に委ね、民間が資金を調達します。

方式 所有の移転
BTO 建設後に自治体へ所有権を移転し、民間が運営
BOT 民間が所有・運営し、期間終了後に移転
BOO 民間が所有・運営し、移転しない

廃校の活用では、既存建物の改修が中心になるため、新築を前提とした典型的なPFIとは形が変わります。既存施設を活用した事例もありますが、規模が小さいと手続きの費用が見合いません。

手続きの重さを見積もる

PFIは、実施方針の公表、特定事業の選定、事業者の募集・選定、契約、モニタリング、という段階を踏みます。アドバイザーの費用も発生します。

数億円規模の整備であれば検討に値しますが、数千万円の改修ではまず見合いません。

廃校1棟ならまず検討外

実務的には、廃校1棟の活用でPFIを選ぶ場面は限られます。複数施設の再編を一体で行う、新築の統合校と跡地活用をまとめて発注する、といった規模になって初めて候補になります。

複数の公共施設を同時に再編する計画であれば、学校だけを切り離さず、全体の中で手法を選ぶことになります。

条例の整備には何が要るのか?

公の施設にする場合の手続きです。

公の施設として位置づけるには、設置と管理に関する条例を制定します。この条例に書く内容が、その施設の運用を決めます。

条例に定める事項 内容
設置の目的 何のための施設か
名称と位置 施設名と所在地
事業の内容 提供するサービス
利用の手続き 許可、申込み、制限
利用料金 金額または上限、減免
指定管理者に行わせる業務 管理の範囲
指定の手続き 公募の方法、選定の基準
休館日・開館時間 運用の基本

条例は議会の議決を経て制定します。施設の開設に間に合うよう、議会の日程から逆算してください。年4回の定例会しかない自治体では、ここが工程を決めます。

やめるときの手続きも見ておく

公の施設にすると、廃止するときも条例の改正が必要です。地方自治法は、公の施設のうち条例で定める重要なものについて、廃止や長期かつ独占的な利用をさせる場合に、議会の出席議員の3分の2以上の同意を求めています。

始めるときだけでなく、やめるときの重さも先に確認してください。

どう選ぶのか?

3つの問いで絞れます。

問い 答えによる分岐
公の施設にするか する→指定管理かPFI/しない→貸付か売却
改修費は誰が出すか 自治体→指定管理/事業者→貸付
事業の規模はどれくらいか 数億円以上→PFIも候補/数千万円→貸付か指定管理
場面 向いている手法
地域団体が運営し、住民が公平に使う 指定管理
民間企業が自己資金で改修し、事業として運営 貸付
自治体が改修し、運営だけ任せる 指定管理
複数施設の再編を一体で整備する PFI
用途を自治体が決める必要がない 売却

実務で一番多いのは貸付です。手続きが軽く、改修費を事業者が負担し、自治体の負担が小さいためです。

組み合わせることもできる

校舎の一部を公の施設として指定管理に出し、残りを民間に貸す。こうした組み合わせも可能です。

ただし区分が複雑になるほど、設備の系統分けや費用の按分が難しくなります。部分活用の論点は廃校の部分活用と減築はどう判断するのか?で扱っています。

地域団体に任せる場合はどうなるのか?

継続性の確認が要ります。

廃校活用では、地域の自治会やNPOが運営を担う形がよく取られます。地域の実情を知っていて、使い方も地域に合ったものになります。

一方で、組織としての継続性と財務の基盤が課題になります。

確認する項目 内容
法人格の有無 任意団体か、NPO法人か、一般社団法人か
代表者の交代 特定の個人に依存していないか
財務の基盤 自主財源があるか、補助金頼みか
人の確保 運営を担う人がいるか。高齢化していないか
事故時の対応 保険に加入できるか

指定管理者として指定する場合、法人その他の団体であることが要件になります。任意団体でも対象になり得ますが、契約の主体として適格かどうかを確認する必要があります。

無理をさせない設計にする

地域団体に過大な責任を負わせると、数年で立ち行かなくなります。建物の大規模修繕は自治体が負い、日常の管理と運営を団体が担う。この分担が現実的です。

収支の見積りについては廃校活用の収支計画はどう立てるのか?で扱っています。

どう進めるのか?

方針の決定が先です。

段階 内容
1. 公の施設にするかの判断 住民の利用を担保する必要があるか
2. 改修費の負担の決定 自治体が出すか、事業者が出すか
3. 手法の選択 貸付、指定管理、PFI、売却
4. 条例の整備 公の施設にする場合
5. 公募 要項の作成、サウンディングの反映
6. 議会の議決 指定管理者の指定、無償譲渡等
7. 契約・協定 役割分担、リスク分担

1と2を決めずに公募をかけると、要項が書けません。この2つは庁内の政策判断であり、事業者に聞いて決めることではありません。

公募要項の設計は廃校活用の公募要項はどう作るのか?にまとめています。

よくある質問

Q. 指定管理者制度の根拠は何ですか。

A. 地方自治法第244条の2です。条例の定めるところにより、指定する法人等に公の施設の管理を行わせることができます。

Q. 指定管理者の指定に議会の議決は必要ですか。

A. 必要です。あわせて公の施設の設置と管理に関する条例の制定も必要になります。

Q. 指定管理で事業者に改修費を負担させられますか。

A. 期間が3年から5年と短いため、事業者が大きな投資をする判断は難しくなります。自治体が改修してから指定管理に出す順序が現実的です。

Q. 廃校1棟でPFIは使えますか。

A. 制度上は可能ですが、手続きの費用が整備費に見合わないことが多くあります。複数施設の一体整備の規模で検討対象になります。

Q. 一番多く使われているのはどれですか。

A. 貸付です。手続きが軽く、改修費を事業者が負担するため自治体の負担が小さくなります。

Q. 手法は組み合わせられますか。

A. できます。一部を指定管理、残りを貸付とする形もあります。ただし設備の系統分けと費用の按分が複雑になります。

Q. 地域団体に任せる場合の注意点は。

A. 組織の継続性と財務の基盤を確認してください。特定の個人に依存していないか、人の確保ができているかが重要です。

Q. 地域団体にどこまで責任を負わせますか。

A. 建物の大規模修繕は自治体が負い、日常の管理と運営を団体が担う分担が現実的です。過大な責任を負わせると数年で立ち行かなくなります。

Q. 公の施設にするには何が必要ですか。

A. 設置と管理に関する条例の制定です。議会の議決を経るため、開設の時期から逆算して日程を組んでください。

Q. 公の施設をやめるときはどうなりますか。

A. 条例の改正が必要です。条例で定める重要な公の施設の廃止には、議会の出席議員の3分の2以上の同意が求められます。

まとめ

廃校を民間に任せる手法は、貸付、指定管理、PFI、売却の4つです。施設の所有者、整備費の負担、運営の収入、利用のルールを誰が決めるか。この組み合わせで手法が決まります。

最初の分岐は、その施設を公の施設として位置づけるかどうかです。住民が公平に利用できることを担保したいなら指定管理かPFI、民間の事業として自由にやってもらうなら貸付か売却になります。

指定管理者制度は地方自治法第244条の2に基づきます。条例の制定と議会の議決が必要で、期間は3年から5年が一般的です。この期間の短さが事業者の投資判断を妨げるため、改修費を事業者に負わせる前提では向きません。

PFIは民間資金等活用法に基づく手法ですが、手続きが重く、廃校1棟の改修では費用が見合わないことがほとんどです。複数施設の再編を一体で行う規模になって初めて候補になります。

実務で最も多く選ばれるのは貸付です。手続きが軽く、改修費を事業者が負担するため、自治体の負担が小さくなります。

公の施設にするかと、改修費を誰が出すか。この2つは庁内の政策判断です。決めずに公募をかけると要項が書けません。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。指定管理者制度の運用、条例の内容および議決の要否は自治体により異なります。個別の適用は所管部署および法務担当にご確認ください。

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