この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校統廃合の利点と課題は何か?

4つの視点と打ち手をセットで整理

利点と課題は、必ず打ち手とセットで示します。

利点だけを並べると説明会で反発を受け、課題だけを並べると検討が止まります。文部科学省の手引も、統合を行う場合も小規模校を存続させる場合も、デメリットをきめ細かく分析し関係者間で共有したうえで、最小化する工夫を計画的に講じる必要があるとしています。

整理する視点は4つです。子どもの教育条件、教職員と学校運営、施設と財政、地域。視点を混ぜると「子どものためか財政のためか」が曖昧になります。

手引は令和8年8月5日に改訂されました(8文科初第1125号)。総合化の観点により、地域の視点をまちづくりと一体で扱う必要が出ています。

この記事の要点

  • 利点と課題は打ち手とセットで示す。手引もデメリットの最小化を計画的に講じることを求めている
  • 整理する視点は子どもの教育条件、教職員と学校運営、施設と財政、地域の4つ
  • 手引は統合と存置の両方について、デメリットの分析と共有を求めている
  • 手引改訂(令和8年8月5日)により、地域の視点はまちづくりと一体で扱う
  • 検討の目的は教育条件の改善。財政を目的に置くと手引の考え方と合わない

なぜ4つの視点に分けるのか?

視点を混ぜると目的が曖昧になります。

視点主な論点
子どもの教育条件学級規模、交流の機会、部活動、指導体制
教職員と学校運営教職員定数、専門性、研修、校務
施設と財政改修費、維持管理費、通学費
地域避難所、行事の場、人口への影響

目的は教育条件の改善

手引は、学校規模適正化の検討は児童生徒の教育条件をより良くする目的で行うべきものとしています。

したがって財政は目的ではなく制約条件です。4つの視点を並列に扱うと、財政が目的に見えてしまいます。

利点と課題を同じ視点で比べる

「教育条件は良くなるが地域が衰退する」という比較は、視点が違うため噛み合いません。各視点のなかで利点と課題を整理し、視点ごとに打ち手を示してください。

統廃合そのものの意味と手続きは学校統廃合とは何か?で扱っています。

存置の場合も同じ整理をする

手引には小規模校を存続させる場合の章があり、利点を活かす方策と課題を緩和する方策が整理されています。

統合案だけを4視点で整理し、存置案を整理しないと比較になりません。存置の方策は小規模校を存置する選択はあるのか?で扱っています。

子どもの教育条件はどう変わるか?

学級規模と交流の機会が中心です。

利点課題打ち手
クラス替えができる通学距離・時間が伸びるスクールバス、経路と便数の設計
多様な考えに触れる機会が増える人間関係の再構築が必要統合前の交流、統合後の支援体制
部活動の種目が増える一人あたりの発言機会が減る少人数指導、授業の工夫
集団での学習活動が成立する慣れた環境が変わる校舎の見学、合同授業

クラス替えができるかが大きい

手引は小学校について、6学級はクラス替えができない規模、7から8学級は全学年ではクラス替えできない規模と整理しています。

6学級は各学年1学級で、6年間クラス替えがありません。人間関係が固定され、相性が合わない場合に逃げ場がなくなります。統合でこれが解消されます。

複式学級の解消

手引は小学校1から5学級を、複式学級が存在する規模で教育上の課題が極めて大きいと整理しています。

複式学級は2つの学年を1つの学級に編制するものです。統合により学年ごとの学級編制が可能になります。

通学の負担は確実に増える

統合すれば通学距離は伸びます。これは避けられない課題です。

手引は通学距離を小学校おおむね4キロメートル以内、中学校おおむね6キロメートル以内とし、通学時間はおおむね1時間以内を一応の目安としたうえで各市町村が判断するとしています。

スクールバスを導入すれば距離の制約は緩みますが、停留所を回る経路では片道40分から50分になる例があります。経路と便数の設計が打ち手です。対応はスクールバスによる通学で扱っています。

少人数の利点は失われる

小規模校では一人あたりの発言機会が多く、教員が個々の状況を把握しやすくなります。統合でこの利点は薄れます。

少人数指導の導入や授業の工夫が打ち手になりますが、完全には代替できません。この点を認めたうえで説明する方が信頼されます。

人間関係の再構築には支援が必要

統合直後は人間関係が組み替わります。統合前の交流、統合後の相談体制、継続的なアンケート。

手引は統合後に児童生徒や保護者の不安や悩みを把握するアンケートを継続的に実施することを示しています。

教職員と学校運営はどう変わるか?

定数と専門性が中心です。

利点課題打ち手
教科の専門性を持つ教員を配置できる教職員の配置換えが発生する計画的な人事、研修
研修や休暇の代替が組める学校文化の統一が必要統合前の教職員間の調整
校務の分担ができる一時的に校務が増える開校準備の体制、加配
学年会・教科会が成立する規模拡大で意思決定が遅くなる分掌の見直し

教職員定数は学級数で決まる

学級数に応じて教職員定数が決まります。小規模校では教科の専門性を持つ教員を揃えにくく、担任が複数教科を見る形になります。

統合により学級数が増えれば、専科教員の配置が可能になります。

研修と休暇の代替が組める

小規模校では教員が研修や休暇を取るときの代替が組みにくくなります。統合により人数が増えれば、代替が組めます。

学校文化の統一が課題になる

持ち物の決まり、宿題の量、行事の進め方。学校ごとに積み上がった慣習が違います。

統合前に教職員間で調整しておかないと、統合後に保護者から「前の学校と違う」という声が出ます。これは統合前の調整で防げる課題です。

開校準備の負担が一時的に増える

校名、校章、校歌、校旗、通学区域、PTA組織、同窓会名簿の整理。手引には統合の前後に発生する事務が例示されています。

この期間の校務は通常より重くなります。加配や事務の委託が打ち手になります。

施設と財政はどう変わるか?

集約される費用と増える費用があります。

集約される増える変わらない
校舎の改修費(1校分に集約)統合校の改修・増築費教職員の人件費(学級数で決まる)
維持管理費(光熱水費、点検)スクールバスの運行費(毎年)ー
ICT整備・運用費跡地の維持費または解体費ー

改修費は集約されるが増築費が出る

複数校を残せば改修費が学校数分かかります。統合すれば1校分に集約されます。

一方、統合校は普通教室が足りなくなり、増築や転用の費用が発生します。差額が実際の削減額です。

通学費は毎年発生する

スクールバスの運行費は統合後に毎年かかります。車両の購入または借上げ、運行の委託、乗降場所の整備。

改修費は一時的ですが、運行費は継続します。年度ごとの試算が必要です。

跡地の費用が抜けやすい

使わなくなる校舎を残すには、法定点検、安全対策、保険の費用がかかります。解体するなら解体費です。

文部科学省の廃校施設活用状況実態調査(令和6年5月1日現在)では、現存7,612校のうち1,951校(25.6パーセント)が未活用です。令和3年調査の未活用理由は老朽化46パーセント、要望がない42パーセント、財源19パーセントでした。

補助と起債で実質負担が変わる

公立学校施設整備費負担金は原則2分の1、学校教育施設等整備事業債は充当率90パーセント(負担金事業・通常分)です。公共施設等適正管理推進事業債の集約化・複合化は充当率90パーセント・交付税措置率50パーセント。

ただし対象事業費を超えた部分は全額が自治体の負担です。組み立ては学校統廃合の財源と起債で扱っています。

財政を目的にしない

財政の削減を目的に掲げると、手引の考え方と合いません。財政は制約条件として扱い、目的は教育条件の改善に置いてください。

地域への影響はどう扱うか?

手引改訂で扱い方が変わりました。

利点課題打ち手
統合校を核とした広域の地域づくり避難所・投票所の代替が必要跡地の活用、他施設での受入れ
跡地の活用による新しい地域機能地域行事の場が失われる跡地の一部を地域開放
公共施設全体の再編と整合人口流出への懸念まちづくり計画との整合を示す

学校は複合的な地域機能を持つ

学校は授業の場であると同時に、避難所、投票所、地域行事の場として機能しています。廃止後にこれらをどこで受けるかを示す必要があります。

跡地の方針が最大の材料になる

「検討します」では不安が残ります。どの用途で、誰が使い、費用をどう手当てするかまで示してください。

跡地の一部を地域開放する形で、地域機能を継続する選択もあります。

総合化の観点が加わった

文部科学省は令和8年8月5日、8文科初第1125号「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の改訂等について(通知)」により手引を改訂しました。

総合化の観点は、学校を設置する教育委員会の視点で検討するのではなく、首長部局も含めた各市町村全体でその地域の未来を考える視点で検討するという観点です。

したがって地域への影響は、まちづくり、公共交通、公共施設全体の計画と一体で説明する必要があります。教育委員会だけで資料を作ると答えられません。

広域化は地域の捉え方を変える

改訂版は、周辺の市町村を巻き込んだ圏域で検討する観点も示しています。地域を自市町村内に限らず圏域で捉える形です。

市町村の境界に近い地区では、この視点が選択肢を広げます。

人口流出への懸念に数値で答えるのは難しい

学校がなくなると人口流出が進むという懸念には、確実な反証がありません。否定しても納得されません。

したがって否定するのではなく、跡地の活用とまちづくり計画で地域の将来像を示す形が現実的です。

よくある質問

Q. 学校統廃合の最大の利点は何ですか。

A. クラス替えができる規模の確保です。手引は小学校6学級をクラス替えができない規模と整理しています。6学級は各学年1学級で6年間クラス替えがなく、人間関係が固定されます。統合でこれが解消されます。

Q. 最大の課題は何ですか。

A. 通学の負担です。統合すれば通学距離は伸び、これは避けられません。スクールバスを導入しても、停留所を回る経路では片道40分から50分になる例があります。経路と便数の設計が打ち手です。

Q. 財政は改善しますか。

A. 改修費は1校分に集約されますが、統合校の増築費とスクールバスの運行費が加わります。跡地の維持費または解体費も発生します。差額が実際の削減額で、学校数や距離によって変わります。

Q. 小規模校の利点は失われますか。

A. 薄れます。一人あたりの発言機会が多い、教員が個々の状況を把握しやすいといった利点は、規模が大きくなると弱まります。少人数指導の導入が打ち手ですが完全には代替できません。この点を認めて説明する方が信頼されます。

Q. 地域の衰退への懸念にはどう答えますか。

A. 否定するより跡地の活用とまちづくり計画で地域の将来像を示す形が現実的です。人口流出への懸念には確実な反証がありません。令和8年8月5日の手引改訂により、まちづくりと一体での説明が求められています。

Q. 利点だけを説明してはいけませんか。

A. 避けてください。手引は、統合する場合も存置する場合も、デメリットをきめ細かく分析し関係者間で共有したうえで最小化する工夫を計画的に講じる必要があるとしています。課題を隠すと説明会で不信を招きます。

まとめ

学校統廃合の利点と課題は、必ず打ち手とセットで示します。手引は、統合を行う場合も小規模校を存続させる場合も、デメリットをきめ細かく分析し関係者間で共有したうえで、最小化する工夫を計画的に講じる必要があるとしています。

整理する視点は、子どもの教育条件、教職員と学校運営、施設と財政、地域の4つです。視点を混ぜると「子どものためか財政のためか」が曖昧になります。手引は検討の目的を児童生徒の教育条件の改善に置いているため、財政は目的ではなく制約条件として扱ってください。

子どもの教育条件では、クラス替えができる規模の確保と複式学級の解消が利点です。一方、通学の負担は確実に増え、小規模校の利点(発言機会の多さ、個々の把握)は薄れます。この点を認めたうえで説明する方が信頼されます。

施設と財政では、改修費が1校分に集約される一方、統合校の増築費とスクールバスの運行費が加わります。運行費は毎年発生するため、年度ごとの試算が必要です。跡地の維持費または解体費も抜けやすい項目です。廃校施設活用状況実態調査では現存7,612校のうち1,951校が未活用で、理由は老朽化46パーセント、要望がない42パーセント、財源19パーセントでした。

令和8年8月5日の手引改訂(8文科初第1125号)により、地域への影響はまちづくり、公共交通、公共施設全体の計画と一体で説明する必要が出ました。人口流出への懸念には確実な反証がないため、否定するのではなく跡地の活用とまちづくり計画で地域の将来像を示す形が現実的です。

参考・出典

記載の基準および制度は公表時点のものです。利点と課題の評価は各市町村の実情により異なります。個別の検討は文部科学省および都道府県・市町村の教育委員会にご確認ください。

CONTACT

学校施設のご相談

その工事、補助金が使えるか無料でチェックします

トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。

補助金の無料チェックを依頼する

株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。

受付時間 平日 9:00〜18:00