この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

補助金の不正受給や過大交付はどう防ぐか?

学校施設の申請から実績報告までのチェック体制

補助金の不正受給というと、意図的な虚偽申請を思い浮かべるかもしれません。しかし学校施設の補助金で実際に多いのは、算定の誤りや対象外経費の計上による過大交付です。悪意がなくても、交付後に誤りが見つかれば、返還に加えて加算金を求められます。

会計検査院は毎年、学校施設の補助金について過大交付を指摘しています。いずれも、申請や実績報告の段階で確認していれば防げたものです。

この記事では、①補助金の不正・過誤とは何か、②発覚したときの影響、③会計検査院が指摘した誤りの類型、④段階ごとのチェックポイント、⑤体制の作り方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 補助金の不正・過誤には、意図的な虚偽申請と、算定の誤りなどによる過大交付がある
  • 補助金適正化法では、交付決定の取消、返還命令、年10.95%の加算金、罰則が定められている
  • 会計検査院は令和5年度決算検査報告で、学校施設環境改善交付金の過大交付を6件、計2,975万4千円指摘した
  • 誤りの多くは、実績に合わせた金額の更新漏れ、面積の誤り、対象外経費の計上
  • 申請、契約、実績報告、財産管理の各段階で、作成者と別の人が確認する仕組みが有効

補助金の不正・過誤とは何か?

補助金の不正・過誤とは、補助金の交付を受ける際や受けた後に、法令や交付の条件に反して、本来受けられる額を超えて補助金を受け取ったり、目的外に使ったりすることです。

大きく2つに分かれます。

種類内容例
不正意図的に偽りの申請や報告をする工事費の水増し、架空の工事、実績の虚偽報告
過誤意図せず誤った申請や報告をする算定基礎の誤り、面積の誤り、対象外経費の計上

学校施設の補助金で指摘が多いのは、後者の過誤です。ただし、過誤であっても、返還と加算金の対象になる点は同じです。

発覚するとどうなるか?

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)に定めがあります。

措置内容
交付決定の取消補助金の他の用途への使用や、交付決定の内容・条件への違反があった場合、決定の全部または一部を取り消せる
返還命令取り消した部分や過払い分について、期限を定めて返還を命じる
加算金返還を命じられた場合、受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95%の加算金を納付
延滞金納期日までに納付しない場合、年10.95%の延滞金を納付
財産処分の制限補助事業で取得した財産を、承認なく目的外に使用・譲渡・担保に供することはできない

罰則

補助金適正化法には罰則もあります。偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科とされています。補助金を他の用途に使用した者は、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科です。

加算金は受領の日から計算されるため、発覚が遅れるほど負担が大きくなります。たとえば1,000万円の返還を受領から3年後に命じられた場合、加算金だけで300万円を超える計算になります。

会計検査院はどんな誤りを指摘しているか?

会計検査院の令和5年度決算検査報告では、学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたものとして、6県の6件、計2,975万4千円が不当事項とされています。

主な誤りの類型

類型内容
実績に合わせた更新漏れ見積段階の金額のまま、契約後の実際の金額に更新していない
面積の誤り改修していない部分の面積を、算定の基礎に含めている
対象外経費の計上交付の対象にならない工事の費用を含めている
率の誤り定められた割合を超える率を適用している

事例1:解体費の更新漏れ

山口県下関市の中学校の屋内運動場の改築事業では、既存建物の解体撤去費を、見積段階の6,598万円余のまま算定していました。実際の契約後の額は2,546万円余で、交付金が894万4千円過大になっていたとされています。

事例2:面積の誤り

山梨県北杜市のトイレ改修の事業では、改修の対象面積を554平方メートルとして算定していましたが、このうち151平方メートルは改修を行っていない部分でした。正しい面積403平方メートルで算定すると、交付金が872万6千円過大になっていたとされています。

どちらも、実績報告の段階で、契約書や図面と算定の数字を突き合わせていれば防げた誤りです。

過去の指摘にも同じ傾向

平成30年度決算検査報告でも、学校施設環境改善交付金の過大交付として3件、計2,083万5千円が指摘されています。

自治体事業過大額原因
青森県風間浦村地域・学校連携施設整備事業205万8千円学校施設である屋内運動場を複合化の対象施設と誤解
奈良県奈良市危険改築事業625万6千円解体費を予算時の単価のまま、実績報告時に再計算しなかった
福岡県久留米市危険・不適格改築事業1,252万1千円別の年度に行った解体の費用を、対象年度に計上

解体費の再計算漏れは、年度をまたいで繰り返し指摘されている典型的な誤りです。年度の区分や、複合化の対象範囲の誤解も、交付要綱の読み違いから生じています。

どの段階で何を確認するか?

4つの段階に分けて確認します。

申請の段階

確認項目確認の方法
対象事業の要件交付要綱と照らし、事業が対象に当たるかを確認
年度の区分経費が対象年度に実施・支出されるものかを確認
対象経費の範囲見積書の項目ごとに、対象と対象外を区分
面積・数量図面から算定した面積を、別の担当者が再計算
算定式と率交付要綱の算定式と、適用する率を確認

契約の段階

契約金額が見積と変わった場合、算定の基礎となる金額を更新します。解体費など、見積段階の概算で申請した項目は特に注意が必要です。工事の途中で設計変更があった場合も、変更の内容が対象経費や面積に影響しないかを、その都度確認します。変更のたびに記録を残しておけば、実績報告の段階で慌てずに済みます。

実績報告の段階

実際に支払った金額、実際に施工した面積と数量で、算定をやり直します。変更契約があった場合は、変更後の金額と内容を反映させます。実績報告書の作成者とは別の担当者が、契約書、請求書、竣工図と突き合わせます。実績報告の進め方は実績報告・精算で失敗しないためのポイントにまとめています。

財産管理の段階

補助事業で整備した施設は、処分制限期間中は、承認なく目的外に使ったり、貸したり、売ったりすることはできません。施設の用途を変える検討をするときは、補助を受けた施設かどうかを最初に確認します。

チェック体制はどう作るか?

3つの仕組みを組み合わせます。

作成者と確認者を分ける

申請書や実績報告書を作成した担当者とは別の担当者が、算定を確認します。同じ人が作成と確認を兼ねると、思い込みによる誤りに気づきにくくなります。確認者には、数字だけでなく根拠となる図面や契約書も一緒に渡し、元の資料から計算し直してもらいます。

チェックリストを使う

交付要綱ごとに、確認すべき項目をチェックリストにまとめます。交付要綱の読み方は補助金の交付要綱の読み方、対象経費の区分は補助金の対象経費・対象外経費の線引きを参照してください。過去の会計検査院の指摘事例を項目に加えておくと、同じ誤りを繰り返さずに済みます。

施工会社と情報をそろえる

契約後の金額の変更、施工範囲の変更は、施工会社から速やかに共有してもらいます。工事の内訳を、補助の対象と対象外に分けて出してもらうと、算定がしやすくなります。

記録を残す

算定の根拠となった図面、見積書、契約書、変更の経緯を、事業ごとにまとめて保管します。補助金適正化法に基づき、会計検査院の検査や所管省庁の調査を受けることがあるため、担当者が異動しても説明できるようにしておきます。

私立学校で注意すべきことは何か?

私立学校の施設整備でも、国の私立学校施設整備費補助金や、都道府県の補助金を受ける場合は、同じ考え方が当てはまります。

学校法人の場合、補助事業の会計と学校法人会計の処理を整合させる必要があります。補助金で取得した固定資産の基本金の扱いは学校法人会計で施設整備はどう処理するか?で扱っています。また、補助事業で整備した施設を外部に貸したり収益事業に使ったりする場合は、財産処分の制限と税の扱いの両方を確認します。学校法人の税制全体は学校法人の税制優遇はどこまで及ぶか?にまとめています。

よくある質問

Q. 誤りに自分で気づいた場合はどうすればよいですか。

A. 速やかに所管の窓口に相談し、報告します。加算金は受領の日から計算されるため、早く対応するほど負担が小さくなります。

Q. 会計検査院の検査はどのくらい前の事業まで対象になりますか。

A. 検査の対象となる年度は限定されていません。補助事業の書類は、交付要綱で定められた期間、確実に保管しておきます。

Q. 見積段階の金額で申請するのは問題ですか。

A. 申請時点では見積で算定するのが通常です。見積の根拠となった資料は保管しておきます。問題になるのは、契約後や実績報告の段階で、実際の金額に更新しないことです。

Q. 補助金の担当者が1人しかいない場合はどうすればよいですか。

A. 他部署の職員や、施設担当以外の事務職員に算定の再計算を頼むだけでも効果があります。外部の専門家に実績報告の確認を依頼する方法もあります。

Q. 施工会社に確認を任せてもよいですか。

A. 補助金の申請者は学校や設置者です。施工会社の協力は得ても、最終的な確認の責任は申請者にあります。

まとめ

学校施設の補助金で多いのは、意図的な不正よりも、算定の誤りや対象外経費の計上による過大交付です。過誤であっても、補助金適正化法に基づき、交付決定の取消、返還、年10.95%の加算金の対象になります。

会計検査院は令和5年度決算検査報告で、学校施設環境改善交付金の過大交付を6件、計2,975万4千円指摘しました。解体費を見積のまま更新しなかった例、改修していない面積を含めた例など、実績報告の段階で契約書や図面と突き合わせていれば防げたものです。

申請、契約、実績報告、財産管理の各段階で、作成者と別の担当者が確認する仕組み、交付要綱ごとのチェックリスト、施工会社との情報共有、記録の保管。この4つを組み合わせることで、補助金を安心して活用できる体制が整います。

参考・出典

記載の制度・事例は公表時点のものです。最新の内容は所管省庁・会計検査院の公表資料でご確認ください。

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