この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

実績報告・精算で失敗しないためのポイント

過大交付の指摘はどこで起きるか

補助金の仕事は、交付決定が出たら終わりではありません。むしろ、事故が表面化するのは実績報告と精算、そして数年後の会計検査です。過去には、学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたとして複数の都県が指摘を受けた例もあります。

この記事では、①手続きの根拠と流れ、②過大交付が起きる典型的な原因、③実績報告で確認すべき点、④施設整備計画の事後評価、⑤担当者交代への備え、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 交付金の手続きは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律とその施行令が土台になる
  • 過大交付の指摘は、配分基礎額の算定、とくに配分基礎面積の誤りで起きやすい
  • 交付額は配分基礎額に算定割合を乗じた額と、実工事費に算定割合を乗じた額の少ないほうが基礎になる
  • 施設整備計画は、計画期間終了時に目標の達成状況を評価し、公表・報告する義務がある
  • 判断の根拠を文書で残しておかないと、担当者が交代した時点で説明できなくなる

補助金の実績報告とは何か?

実績報告とは、補助事業の完了後に、実際に要した経費と事業の内容を交付者に報告する手続きです。この報告をもとに交付額が確定し、精算が行われます。

手続きの根拠は交付要綱だけではありません。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律という一般法が上位にあり、過大交付が判明した場合の返還もこの枠組みで扱われます。

実績報告の根拠となる法令は何か?

学校施設環境改善交付金の交付に関しては、義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律、同法施行規則、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)および同法施行令(昭和30年政令第255号)その他関係法令等に定めるもののほか、交付要綱に定めるところによるとされています。

つまり交付要綱は最上位の規範ではありません。適正化法という一般法の上に、個別の要綱が乗っている構造です。実績報告や精算の手続き、交付決定の取消しや返還といった論点は、適正化法の枠組みで扱われます。

要綱の読み方全般は補助金の交付要綱の読み方にまとめています。

過大交付はどこで起きるのか?

会計検査院の決算検査報告には、学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたとして複数の都県の事例が取り上げられたことがあります。同報告では、交付額の算定について次のように整理されています。

交付金の交付額は、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された事業のうち交付対象事業ごとに、文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に、事業の種別に応じて定める算定割合を乗じるなどして得た額の合計額と、交付対象工事費に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定するとされています。そして配分基礎額については、配分基礎面積を算定し、これに事業の種別に応じて定められた単価を乗じるなどの方法により算定するとされています。

面積の算定が焦点になる理由

この構造から分かるのは、面積の算定を誤ると交付額そのものが狂うということです。

配分基礎面積は、実際に工事をした面積とイコールではありません。学級数に応ずる必要面積、児童生徒1人当たりの基準面積、保有面積といった複数の数値を突き合わせて算出します。要綱では、これらの面積について運用細目によるものとするとされており、細目を正しく参照しないと算定を誤ります。

たとえば改築の項では、学級数に応ずる必要面積と保有面積のいずれか少ない面積から、保有面積のうち危険でない部分の面積を控除する、という手順が定められています。控除を忘れる、あるいは危険でない部分の判定を誤れば、面積が過大になります。

さらに要綱には、鉄筋コンクリート造以外の構造の建物について保有面積に1.02を乗じる、あるいは単価に乗ずべき面積を1.02で除するといった補正の規定もあります。積雪寒冷地の学校の必要面積についても、運用細目に定めるところにより補正を加えるとされています。

これらの補正を漏らすと、そのまま金額の差になります。

実績報告の前に何を点検すべきか?

実績報告の前に、次の点を自主的に点検しておくと事故を減らせます。

面積の根拠を再確認する

  • 交付申請時の学級数と、実際の学級数に食い違いがないか
  • 基準日(要綱では改築等を行う年度の5月1日とされる規定が多い)の数値を使っているか
  • 保有面積の算定に、対象外の建物が混ざっていないか
  • 構造による補正、地域による補正を適用しているか

経費の区分を再確認する

要綱では、対象となる経費の種目は本工事費および附帯工事費(買収等の場合は買収費)であるとされています。実績報告の段階で、対象外の費目が紛れていないかを確認します。対象経費の考え方は補助金の対象経費・対象外経費の線引きにまとめています。

他制度との重複がないか

交付対象事業は、他の法律または予算制度に基づく国の負担または補助を得て実施するものを除くとされています。工事の途中で他制度の補助を受けることになった部分がないか、確認します。詳しくは補助金の併用可否の考え方を参照してください。

設計変更の反映

工期中の設計変更で面積や仕様が変わっていれば、算定に影響します。変更のたびに交付額への影響を確認する運用にしておくのが安全です。工事監理の体制については学校の工事監理とはにまとめています。

施設整備計画の事後評価とは何か?

見落とされやすいのが、この義務です。

要綱では、地方公共団体は計画期間の終了時に施設整備計画の目標の達成状況等について評価を行い、これを公表するとともに、文部科学大臣(市町村にあっては都道府県教育委員会を経由して)に報告しなければならないとされています。文部科学大臣は、報告を受けたときに必要な助言をすることができるとされています。

施設整備計画には、目標と、目標の達成状況に係る評価に関する事項を記載することになっています。つまり計画を作った時点で、何をもって達成とするかを決めているはずです。

実務上の問題

計画期間が5年程度あると、計画を作った担当者と評価する担当者が別人になります。目標の設定意図が引き継がれていないと、評価の作業が形骸化します。

対応としては、計画策定時に次を残しておくことです。

  • 目標の数値をどう設定したか(根拠となったデータ)
  • 達成状況をどう測るか(データの取り方)
  • 計画期間中に想定される変動要因

担当者交代に何を残しておくべきか?

補助金事務でもっとも多いトラブルの原因は、記録が残っていないことです。

学校施設の整備は、計画から完了まで数年かかります。人事異動を挟むのが普通です。前任者が所管と口頭で確認した内容は、その人が異動した時点で失われます。

残しておくべき記録

  • 所管への確認事項と回答、日付、担当者名
  • 面積算定の根拠となった数値と、その出典(学級数の基準日、保有面積の内訳など)
  • 経費区分の判断根拠と、判断に迷った費目の扱い
  • 設計変更の内容と、交付額への影響の検討結果

これらを1つのファイルにまとめ、案件ごとに引き継ぐ運用にしておけば、会計検査の際の説明も容易になります。

統廃合案件では特に重要

統廃合を伴う事業は、計画から完了まで10年近くかかることもあります。その間に複数回の人事異動があり、首長や教育長が交代することもあります。期間の目安と工程の組み方は学校統廃合のスケジュールは何年かかる?にまとめています。

精算で交付額が下回るのはなぜか?

実績報告の結果、交付額が交付決定額を下回ることがあります。原因は概ね次のいずれかです。

  • 入札の結果、実工事費が予定価格を下回った
  • 設計変更で工事量が減った
  • 対象外と判断された経費があった

このうち入札差金による減額は、事業としては望ましい結果です。ただし財源構成が変わるため、起債の額も見直しが必要になります。

学校施設環境改善交付金を受けて実施する事業の起債対象事業費は、交付金の対象事業費から、交付率を乗じた額または実際に充当した交付金の額のいずれか多い額を控除した額とされています。交付額が変わると、この計算も変わります。財政部局との連絡を早めに取っておく必要があります。

起債の仕組みは補助金と起債(学校債・地方債)の関係で扱っています。

年度末に集中させないためにどうするか?

実績報告は年度末に集中します。工事の完了検査、請負代金の確定、書類の作成が3月に重なると、確認が甘くなります。

年度内完了が難しいと見込まれる段階で、繰越明許費の設定を検討するほうが、無理に押し込むより安全です。繰越明許費は、当該年度中の事業完了を予定して所要の財源を措置することを前提に、自然的・社会的諸条件等の外部的要因により執行が翌年度にわたる可能性がある場合に設定できるとされています。

議会日程との関係で、設定の判断には期限があります。工程が遅れ始めた時点で財政部局と相談を始める運用にしておくのが現実的です。複数年度事業の制度の使い分けは複数年度にまたがる施設整備の補助金活用にまとめています。

なお、要綱では複数年度にわたる施設整備計画に係る交付金の交付について、計画に記載された個々の事業の着工時期に応じ、年度ごとに交付するものとするとされています。計画全体で一括して交付されるわけではありません。

よくある質問

Q. 会計検査はいつ行われますか。

A. 事業完了後、数年経ってから対象になることがあります。当時の担当者が異動している前提で、記録を残しておく必要があります。

Q. 過大交付が判明した場合、どうなりますか。

A. 返還の対象になりえます。手続きは補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の枠組みで扱われます。

Q. 面積算定を自前で確認する方法はありますか。

A. 運用細目に定められた必要面積・基準面積と、自校の学級数・児童生徒数・保有面積を突き合わせる作業になります。所管に事前相談することもできます。

Q. 事後評価の公表はどこまで求められますか。

A. 要綱では評価を行い、これを公表するとともに文部科学大臣に報告しなければならないとされています。公表の方法については所管の運用を確認してください。

Q. 設計変更が生じたら、そのつど交付申請を変更しますか。

A. 変更の内容と規模によります。施設整備計画の変更については、要綱で当初と同じ規定が準用されるとされています。所管に確認してください。

まとめ

実績報告と精算でつまずく典型は、配分基礎面積の算定です。実際の工事面積ではなく、必要面積・基準面積・保有面積を突き合わせて算出する仕組みであり、控除や補正の適用漏れがそのまま金額の差になります。

そして交付要綱の上には補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律があり、過大交付が判明すれば返還の対象になりえます。

もうひとつ、計画期間終了時の事後評価という義務があります。作って出して終わりではなく、達成状況を評価し公表する仕組みです。長期にわたる事業では担当者が交代するため、判断の根拠を文書で残す運用を作れるかどうかが、実務の分かれ目になります。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。最新の要件・割合・期限は所管省庁の公表資料でご確認ください。

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