この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校施設の用途変更とは何か?

制度の基礎と検討の順序

余裕教室を放課後児童クラブにする。閉校した校舎を事務所や宿泊施設にする。体育館を地域の集会施設として使う。

いずれも、建物の使い方を変える話です。そして、使い方を変えると、建築基準法上の扱いが変わることがあります。手続きが必要な場合もあれば、不要な場合もあります。

この記事では、①用途変更の定義、②確認申請が必要になる場合、③類似の用途、④遡及して適用される規定、⑤検討の順序、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 用途を変更して200平方メートルを超える法第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合は、確認申請が必要
  • 確認申請に加えて、工事完了の届出も必要
  • 類似の用途相互間の変更であれば、確認申請は不要
  • 学校は、類似の用途の組み合わせに含まれていない
  • 用途変更では、防火・避難に関する規定などが遡及して適用される

用途変更とは何か?

建築物の使い方を、別の用途に変えることです。

建築基準法では、建築物の用途によって適用される規定が変わります。学校には学校の、事務所には事務所の基準があります。使い方が変われば、求められる性能も変わる、という考え方です。

工事を伴わない場合でも、用途変更に当たることがあります。逆に、大がかりな内装工事をしても、用途が変わらなければ用途変更ではありません。判断の基準は、工事の規模ではなく、使い方の変化です。看板を掛け替えただけのつもりでも、手続きが必要になる場合があります。

学校が建築基準法上どう位置づけられているかは学校は特殊建築物であるにまとめています。

確認申請はいつ必要になるのか?

用途を変更した後の用途と、面積で決まります。

建築基準法第87条第1項は、建築物の用途を変更して同法第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかとする場合について、確認の規定を準用するとしています。

法第6条第1項第1号の対象は、別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものです。

条件確認申請
変更後が別表第一(い)欄の用途で、200平方メートル超必要
変更後が別表第一(い)欄の用途で、200平方メートル以下不要
変更後が特殊建築物でない用途(事務所など)不要
類似の用途相互間の変更不要

確認申請が必要な場合、工事の完了後には建築主事等への届出も必要です。新築の場合の完了検査とは、手続きの名称が異なります。届出であっても、適合していない状態で使用してよいという意味ではありません。

面積の考え方や具体的なケースは用途変更の確認申請が必要なケースで扱っています。

類似の用途とは何か?

建築基準法施行令第137条の18で定められた、互いに近い用途の組み合わせです。

この組み合わせの中での変更であれば、確認申請は不要とされています。示されているのは次の区分です。

  • 劇場、映画館、演芸場
  • 公会堂、集会場
  • 診療所(患者の収容施設があるもの)、児童福祉施設等
  • ホテル、旅館
  • 下宿、寄宿舎
  • 博物館、美術館、図書館
  • 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
  • 百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
  • キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
  • 待合、料理店
  • 映画スタジオ、テレビスタジオ

学校は含まれていない

この列挙の中に、学校はありません。つまり、学校から他の用途への変更、他の用途から学校への変更には、類似の用途による除外が使えません。

校舎を宿泊施設にする、体育館を集会場にするといった転用では、面積の要件を満たせば確認申請が必要になります。廃校の活用を検討するとき、最初に確認すべき点です。学校の校舎は200平方メートルを超えることがほとんどなので、面積の要件で外れる場面は多くありません。

何が遡及して適用されるのか?

防火と避難に関する規定が中心です。

建築基準法第87条第3項は、既存不適格の建築物について用途を変更する場合に、一定の規定を準用すると定めています。実務上、次のような規定が問題になります。

規定内容
法第27条耐火建築物等としなければならない特殊建築物
法第35条関連廊下、避難階段、出口、排煙設備、非常用の照明装置
法第48条用途地域による建築物の用途の制限

建てた当時は適法でも、現在の基準では不足している部分があります。用途を変えるときに、その部分を現行の基準に合わせることが求められます。建物をそのまま使うだけのつもりでも、工事が必要になるのはこのためです。

古い校舎では、階段の数や幅、排煙の設備、内装の制限が論点になりやすい部分です。改修の費用が想定を超える原因も、多くはここにあります。

建築基準法の全体像は学校の改修で関わる建築基準法の基礎を参照してください。

確認申請が不要でも何が必要か?

他の法令の手続きが残ります。

確認申請が不要であっても、建築基準法の規定に適合させる義務がなくなるわけではありません。また、用途によっては、消防法、旅館業法、食品衛生法、福祉関係の法令など、別の手続きが必要になります。

確認申請が不要な場合の注意点は用途変更で確認申請が不要な場合の注意点にまとめています。

検討はどの順で進めるのか?

5つの段階に分かれます。

用途地域を確認する

その場所に、目指す用途の建物を建てられるか。用途地域によっては、そもそも認められない用途があります。ここで不可なら、他の検討は意味を持ちません。学校は住居系の地域にも建てられますが、宿泊施設や店舗は制限を受ける地域があります。用途地域と学校の関係は用途地域と学校の立地にまとめています。

用途の分類を確定する

同じ「福祉施設」でも、建築基準法上の分類は異なります。児童福祉施設等に当たるのか、それ以外なのか。分類が変われば、必要な手続きも基準も変わります。

面積を算定する

その用途に供する部分の床面積の合計を出します。建物全体ではなく、変更する部分の面積です。200平方メートルを超えるかどうかで、確認申請の要否が分かれます。棟が分かれている場合の扱いは、所管行政庁の考え方を確認します。

既存の図書を確認する

確認済証、検査済証、竣工図が残っているか。これらがないと、現況の調査から始めることになります。検査済証がない場合の進め方は検査済証がない学校施設の改修の進め方で扱っています。

遡及する規定を洗い出す

防火、避難、内装について、現行基準との差を確認します。改修の費用は、ここで大きく変わります。

費用はどこで増えるのか?

遡及する規定への対応が、最大の要因です。

用途変更そのものにかかる費用は、確認申請の手数料や設計料です。金額としては限られます。問題は、現行基準に適合させるための工事の方で、こちらが全体の大部分を占めます。

項目内容
避難階段数や構造が不足していれば、増設や改修が必要
排煙設備居室の用途と面積によって、設置が求められる
非常用の照明装置居室や避難経路への設置
内装制限壁や天井の仕上げを不燃材料等に変更
防火区画竪穴区画、面積区画の追加

古い校舎は、廊下が広く、教室が整然と並ぶ構造です。避難という点では有利な形ですが、階段の構造や排煙の設備が現行基準に満たないことがあります。特に、階段が吹き抜けのようにつながっている場合、竪穴区画の追加が大きな工事になります。

調査をしないまま概算を出すと、後から大幅に増えます。用途変更を検討する段階で、設計者に法規のチェックを依頼しておく方が確実です。

廃校はどんな用途に転用されているのか?

地域の需要によって幅があります。

多いのは、地域の交流施設、福祉施設、企業のオフィスやサテライト拠点、体験型の宿泊施設、工場や倉庫、農産物の加工施設などです。学校は地域の中心にあり、駐車場と敷地の広さを持つため、用途によっては条件がよい建物になります。

転用先によって、建築基準法上の扱いが変わります。

  • 事務所や工場にする場合、変更後の用途が特殊建築物でなければ確認申請は不要
  • 宿泊施設にする場合、面積によって確認申請が必要となり、旅館業法の手続きも加わる
  • 福祉施設にする場合、用途の分類と、福祉関係の法令の基準への適合が必要

体育館は天井が高く、床面積が大きいため、用途の選択肢が広い部分です。一方、断熱や空調がないことが多く、通年で使うには設備の追加が必要になります。屋根と外壁の防水、電気設備の容量も、転用の前に確認しておく項目です。

公立と私立で違いはあるか?

法令の適用は同じですが、進め方が違います。

公立学校

廃校の活用や、余裕教室の転用が中心になります。庁内の複数の部局が関わり、財産の所管替えや、補助金を受けて整備した施設の財産処分の手続きが並行して進みます。

建築基準法上の手続きだけを見ていると、他の手続きで止まります。早い段階で、関係する部局を集めた検討の場を作る方が確実です。民間事業者を募集する場合は、募集の前にどこまで整理できているかが、応募の数に影響します。

私立学校

校舎の一部を別の事業に使う、閉鎖した校地を売却または賃貸する、といった場面が想定されます。学校法人の財産としての扱いと、収益事業との関係も整理が必要です。寄附を受けて整備した建物では、寄附者への説明が求められることもあります。

よくある質問

Q. 教室を職員室にするのは用途変更ですか。

A. 建物全体の用途が学校のままであれば、建築基準法上の用途変更には当たりません。

Q. 余裕教室を放課後児童クラブにする場合はどうですか。

A. 用途の分類と面積によります。学校施設内で継続して使う場合と、独立した施設とする場合で扱いが変わるため、所管行政庁への確認が必要です。

Q. 確認申請が不要なら何もしなくてよいですか。

A. 建築基準法に適合させる義務は残ります。また、消防法など他の法令の手続きが必要になる場合があります。

Q. 体育館を集会場にするのは類似の用途ですか。

A. 令第137条の18の列挙では、体育館と集会場は別の区分に置かれています。所管行政庁に確認してください。

Q. 検査済証がない場合は用途変更できませんか。

A. できないわけではありませんが、現況の調査が必要になります。手続きの負担は大きくなります。

Q. 用途変更の完了時に検査はありますか。

A. 建築基準法第87条第1項の読み替えにより、工事完了の届出を行うこととされています。

Q. 工事をしなくても用途変更の手続きは必要ですか。

A. 工事の有無ではなく、用途が変わるかどうかで判断します。間仕切りを動かさなくても、手続きが必要になる場合があります。

Q. 建物の一部だけ用途を変えることはできますか。

A. できます。その部分の面積で確認申請の要否を判断します。ただし、防火区画や避難の経路は建物全体で検討します。

Q. 用途変更した後、また学校に戻せますか。

A. 戻す場合も用途変更として扱われます。面積の要件を満たせば、あらためて手続きが必要です。

まとめ

用途変更は、建物の使い方を変えることです。建築基準法第87条第1項により、用途を変更して200平方メートルを超える法第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合は、確認申請が必要になります。工事完了後には届出も必要です。

類似の用途相互間の変更であれば確認申請は不要ですが、学校はその列挙に含まれていません。廃校の活用では、確認申請が必要になる前提で検討を始める方が安全です。

用途変更では、防火と避難に関する規定が遡及して適用されます。改修の費用が膨らむ原因の多くは、この部分です。用途地域、用途の分類、面積、既存の図書、遡及する規定。この順で確認していけば、実現の可否と費用の見通しが早い段階で立ちます。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。個別の適用は所管の行政庁にご確認ください。

CONTACT

学校施設のご相談

その工事、補助金が使えるか無料でチェックします

トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。

補助金の無料チェックを依頼する

株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。

受付時間 平日 9:00〜18:00