用途地域と学校の立地

専修学校は建てられない地域が多い

学校の増築や、廃校の転用を検討するとき、意外な壁になるのが用途地域です。

とくに専修学校は、小中高より建築できる地域が限られています。名古屋や大阪で新たに校舎を構える場合、この制約が候補地を絞ります。

この記事では、用途地域と学校の関係を整理します。

学校種で建てられる地域が違う

建築基準法第48条および別表第二により、用途地域ごとに建築できる建物の用途が定められています。

学校に関する部分を整理すると次のようになります。

用途地域幼稚園・小学校・中学校・高等学校大学・高等専門学校・専修学校等
第一種低層住居専用地域可不可
第二種低層住居専用地域可不可
第一種中高層住居専用地域可可
第二種中高層住居専用地域可可
第一種住居地域可可
第二種住居地域可可
準住居地域可可
田園住居地域可不可
近隣商業地域可可
商業地域可可
準工業地域可可
工業地域不可不可
工業専用地域不可不可

分かれ目は2つあります。

一つは工業系です。幼稚園から高校までも、大学・専修学校も、工業地域と工業専用地域では建築できません。

もう一つが低層住居専用地域です。幼稚園から高校までは建てられますが、大学・高等専門学校・専修学校等は建てられません。

田園住居地域も同様に、大学・専修学校等は建築不可です。

専修学校の制約は実務で効く

専門学校(専修学校)の校舎を新たに構える場合、第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域は候補から外れます。

小中高であれば建てられる住宅地に、専門学校は建てられません。

また、既存の校舎を専修学校として使いたい場合も同様です。たとえば廃校になった小学校を専門学校に転用する計画では、その敷地の用途地域を確認する必要があります。小学校として適法に建っていても、専修学校では建てられない地域である可能性があります。

廃校活用で最初に確認する

廃校の転用計画では、用途地域が入口の判断材料になります。

学校跡地の活用先としてよく挙がる用途と、地域による制限を整理します。

転用先制限が出やすい地域
専修学校・専門学校一低層、二低層、田園住居、工業、工業専用
病院一低層、二低層、田園住居、工業、工業専用
ホテル・旅館住居系の一部、工業、工業専用など
事務所低層住居専用地域など
工場・倉庫住居系の多く

一方で、図書館等は工業地域でも建築可能とされ、神社・寺院・教会等、巡査派出所、一定規模以下の郵便局等はすべての用途地域で建築可能です。診療所、保育所、公衆浴場も全用途地域で建てられます。

つまり同じ廃校でも、保育所や診療所への転用なら用途地域の制約を受けにくく、専門学校やホテルへの転用では制約を受けます。

用途変更の手続き自体は用途変更の確認申請は200㎡から(K204)で解説しています。

既存の校舎はどうなるか

用途地域は都市計画の変更によって見直されることがあります。

建築当時は適法だった学校が、その後の用途地域の変更で現在の規定に合わなくなっている場合、既存不適格建築物として扱われます。違反建築物ではありません。

ただし増築や改築を行う際には、制限がかかります。既存不適格建築物の増築等に関する扱いは学校の増築と既存不適格(K216)で整理しています。

増築を計画する前に、現在の用途地域と、その地域で当該学校種が建築可能かを確認してください。

用途地域だけで決まらない

用途地域は入口の判断です。実際の計画では、あわせて次を確認する必要があります。

  • 建蔽率、容積率
  • 高さ制限(絶対高さ、道路斜線、隣地斜線、北側斜線)
  • 日影規制
  • 防火地域・準防火地域の指定
  • 市街化調整区域かどうか(都市計画法に基づく立地要件)
  • 地区計画の有無
  • 自治体独自の条例

市街化調整区域では、用途地域による制限とは別に、都市計画法に基づく立地の要件があります。郊外の廃校を転用する計画では、この確認が必須です。

面積による制限もある

用途地域によっては、用途に応じた面積の上限が設けられている場合があります。

たとえば、当該用途に供する部分が2階以下かつ1,500㎡以下の場合に限り建築可能、3,000㎡以下の場合に限り建築可能、といった制限です。

学校本体ではなく、併設する施設や転用先の用途でこの制限にかかることがあります。用途地域の一覧表では、丸印と三角印の区別があるため、注釈まで確認してください。

確認の手順

  1. 敷地の用途地域を確認する(自治体の都市計画図・都市計画情報システム)
  2. 計画する学校種または転用先の用途が、その地域で建築可能かを確認する
  3. 面積による制限の有無を確認する
  4. 市街化区域か市街化調整区域かを確認する
  5. 建蔽率・容積率・高さ制限・日影規制を確認する
  6. 地区計画や自治体の条例を確認する
  7. 既存建物がある場合、既存不適格の有無を確認する

1は自治体のウェブサイトで公開されている都市計画情報で確認できます。ただし境界付近では複数の用途地域にまたがることがあり、その場合の扱いは所管の担当課に確認してください。

調査の内容と費用は現況調査の費用(K901)で解説しています。

よくある質問

Q. 専修学校はどの用途地域に建てられませんか。

A. 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域では建築できません。大学、高等専門学校も同様です。

Q. 小中高はどうですか。

A. 幼稚園、小学校、中学校、高等学校は、工業地域と工業専用地域では建築できません。それ以外の用途地域では建築可能です。

Q. 廃校を専門学校に転用できますか。

A. 用途地域によります。小学校として建てられていても、専修学校が建築できない地域である可能性があります。まず敷地の用途地域を確認してください。

Q. 廃校を保育所にする場合は制限がありますか。

A. 保育所は全用途地域で建築可能とされています。ただし用途変更の手続きや、児童福祉施設としての基準への適合は別途必要です。

Q. 用途地域が変わって既存の校舎が建てられない地域になった場合はどうなりますか。

A. 既存不適格建築物として扱われ、違反建築物ではありません。ただし増築・改築の際には制限がかかります。

Q. 市街化調整区域の廃校は転用できますか。

A. 用途地域による制限とは別に、都市計画法に基づく立地の要件があります。所管の都市計画担当課にご確認ください。

まとめ

  • 用途地域ごとに建築できる学校種が異なる(建築基準法第48条、別表第二)
  • 幼稚園・小学校・中学校・高等学校は、工業地域と工業専用地域で建築不可
  • 大学・高等専門学校・専修学校等は、上記に加えて第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域でも建築不可
  • 専修学校は小中高より建てられる地域が限られる。新規立地や廃校転用で制約になる
  • 図書館等は工業地域でも可、神社・寺院・教会等、巡査派出所、診療所、保育所、公衆浴場は全用途地域で可
  • 用途地域の変更により既存不適格となっている場合、増築・改築に制限がかかる
  • 市街化調整区域では、都市計画法に基づく立地要件を別途確認する
  • 用途地域は入口の判断。建蔽率・容積率・高さ制限・日影規制・地区計画もあわせて確認する

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参考・出典

  • 建築基準法第48条、別表第二
  • 東京都都市整備局「用途地域による建築物の用途制限の概要」(幼稚園・小学校・中学校・高等学校、大学・高等専門学校・専修学校等、図書館等、神社・寺院・教会等、巡査派出所等の用途地域別の可否) https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_kanko_area_ree_youto_seigen
  • 京都市「用途地域内における建築物の用途制限」(面積による建築可能の条件) https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000022/22941/youtokisei_ichiran.pdf
  • ツナグ行政書士事務所「工業系用途地域における用途制限について」(工業地域で建築できない用途に幼稚園・小学校・中学校・高等学校、大学・高等専門学校・専修学校等が含まれる旨) https://tsunagu-office.net/archives/26482

※記載の制度は公表時点のものです。用途地域の指定内容や面積要件は自治体により異なり、地区計画等による付加規制がある場合があります。計画に当たっては必ず所管の都市計画担当課および建築士にご確認ください。