電子黒板や大型提示装置は、多くの学校で整備が進んでいます。文部科学省の調査では、普通教室の大型提示装置整備率は、令和6年度末で全国平均91.0%となりました。
一方で、「画面が見えにくい」「配線が邪魔になる」「黒板が使いづらい」といった課題もあります。原因は機器の性能ではなく、設置する教室の計画にあることも少なくありません。
電子黒板は、教室へ運び込んで電源をつなげれば完了する備品ではありません。壁、電源、LAN、照明、黒板、教卓を一体で考える設備工事です。
本記事では、学校施設へ電子黒板・大型提示装置を導入する際の工事内容と判断ポイントを、教育施設中心に施工実績のある光建舎が解説します。
目次
学校における大型提示装置の整備状況
学校のICT環境は、機器を導入する段階から、日常の授業で安定して使える環境を整える段階へ移っています。
| 資料・調査時点 | 公表された内容 | 施設整備での判断 |
|---|---|---|
| 平成29年 | 普通教室の電子黒板整備率は21.9%。目標は100%、1学級当たり1台。 | 電子黒板を各教室へ広げる段階。 |
| 令和6年度 | 普通教室の大型提示装置整備率は全国平均91.0%。 | 機器の有無だけでなく、使いやすさや更新方法の検討が必要。 |
| ICT環境整備3か年計画(2025~2027年度) | 大型提示装置・実物投影機は各普通教室に1台、特別教室用として各学校に6台。 | 普通教室と特別教室で設置方法を分けて考える。 |
整備台数だけをそろえても、すべての教室が使いやすくなるとは限りません。普通教室、理科室、音楽室、実習室では、授業内容や壁面の使い方が異なります。各室の利用方法を整理したうえで、固定式や可動式などの設置方法を選びます。
電子黒板・大型提示装置の導入工事とは
文部科学省の学校施設整備指針では、1人1台端末を活用する学習環境に対応するため、無線LANやコンセント、大型提示装置などを計画的に整備する考え方が示されています。
電子黒板の導入は、機器の購入だけではありません。壁の下地補強、電源、LAN、照明、黒板との取り合いまで含めて計画する教室改修です。
壁掛け式と可動式を使い分ける
壁掛け式は、機器の位置が安定し、教室内の通路を確保しやすい方法です。ただし、既存壁が石こうボードの場合は、壁内の下地や躯体を確認し、必要に応じて補強します。
可動式は教室間の共用に向いていますが、スタンドの脚部や電源コードが通路を妨げることがあります。機器の仕様ではなく、「どの教室で、誰が、どのように使うか」で設置方法を判断します。
黒板との位置関係を整理する
大型提示装置を黒板の中央へ設置すると、板書範囲が不足する場合があります。端へ寄せすぎると、反対側の座席から画面が見えにくくなります。
画面、黒板、教卓、教師の立ち位置を立面図で確認し、必要に応じて黒板一体型やスライド式などを検討します。掲示物のスペースも失わないよう、側面や後方の壁を含めて再配置します。
電源・LAN・配線を整える
電子黒板の周囲には、電源、LAN、映像などの配線が集中します。延長コードで対応すると、つまずきや断線の原因になるため、壁内や天井裏を利用した配線計画が基本です。
コンセントの増設だけでなく、既存分電盤や電源容量も確認します。空調や照明との同時使用を踏まえ、必要に応じて電気設備の改修を計画します。
照明と日射を確認する
窓からの日射や天井照明が画面へ映り込むと、教材が見えにくくなります。学校施設整備指針でも、大型提示装置の利用を想定し、照明を部分的に点滅できる配列が有効とされています。
画面周辺と児童生徒の手元を照らす照明を分け、必要に応じてカーテンやブラインドも見直します。
導入時の検討項目・課題・解決策
| 検討項目 | 課題・発生するリスク | 解決の方向 |
|---|---|---|
| 設置壁の下地 | 下地が不足すると、操作時の力や機器の荷重で壁面が破損し、傾きや脱落につながる。 | 壁内と躯体を調査し、鋼製下地、補強板、躯体固定金物などを使い分ける。 |
| 黒板との取り合い | 画面の設置によって板書範囲が狭くなり、授業の進行が複雑になる。 | 黒板と画面の位置を立面図で検討し、一体型やスライド式を含めて選定する。 |
| 電源容量 | 教室内にコンセントを増設できても、分電盤や幹線の容量が不足する場合がある。 | 設計初期に分電盤、回路、幹線を調査し、必要な電気工事を導入計画へ含める。 |
| 配線経路 | 床を横断するケーブルが、つまずき、断線、端子破損の原因になる。 | 壁内、天井裏、配線モールなどを使い、機器背面と教卓の接続経路を整理する。 |
| 通信環境 | 端末の接続が集中すると通信が不安定になり、教材を表示できないことがある。 | 無線LANの利用状況を確認し、アクセスポイントや有線LAN端子を見直す。 |
| 照明・日射 | 画面への映り込みが座席によって異なり、教材が見えにくくなる。 | 照明回路の分割、器具配置、カーテンやブラインドを一体で検討する。 |
電子黒板導入の実務の勘所
機器を決める前に教室を実測する
教室正面には、黒板だけでなく、時計、スピーカー、インターホン、スイッチ、コンセントなどが集中しています。カタログ寸法だけで判断せず、既存設備との干渉を現地で確認します。
機器の外形だけでなく、接続端子の位置、ケーブルを差し込む空間、点検時に機器を動かす範囲も必要です。
内装改修と同時に施工する
後付け工事では、配線モールや補強材が露出しやすくなります。内装改修と同時に行えば、壁を開けて下地を補強し、配線を壁内や天井裏へ納められます。
黒板、掲示板、壁仕上げ、照明、コンセントも同時に見直せるため、教室正面を一体的に整備できます。
将来交換できる納まりにする
機器を壁へ隙間なく納めても、端子へ手が届かず、機器を外せない構造では保守が困難です。
電源や情報端子の位置、金物の着脱方法を確認し、将来の機器更新で壁や黒板を大きく解体しない構成にします。
どこまで整備すべきか
既に大型提示装置を導入している学校では、機器の有無ではなく、授業で日常的に使われているかを確認します。
画面位置や配線だけに問題がある場合は、壁面の再配置やコンセント、LAN、照明の改修で改善できる可能性があります。一方、壁下地、電源容量、通信環境、黒板配置に複数の課題がある場合は、教室内装と設備を一体で改修する必要があります。
導入台数や製品を先に決めず、授業方法と既存施設を調査してから工事範囲を定めます。改修全体の進め方は、学校改修の進め方ガイド(K296)をご参照ください。
関連記事
- 学校改修の進め方ガイド(K296)
- 失敗しない施工会社の選び方(K297)
- 選ばれる学校をつくる内装デザイン(K264)
参考・出典
- 文部科学省「学校のICT環境整備3か年計画(2025~2027年度)」https://www.mext.go.jp/content/20250417-app_dev04-000041888_2.pdf
- 文部科学省「小学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_02.pdf
- 文部科学省「中学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_03.pdf
- 文部科学省「高等学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_04.pdf
- 文部科学省「学校におけるICT環境整備の状況について」平成29年10月2日 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/11/15/1398036_12.pdf
- 文部科学省「令和6年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」令和7年10月 https://www.mext.go.jp/content/20251031-mxt_shuukyo01-000044325_01-1.pdf
※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。
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