この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

失敗しない施工会社の選び方チェックリスト|学校改修の業者選定

学校の改修工事には、他の建物にない条件があります。子どもがいる場所で工事をすること。そして補助金を使うなら、業者選定の方法まで要件で決まっていること。

価格の安さだけで選ぶと、この2つでつまずきます。この記事では、公立・私立それぞれの制度上の要件と、学校特有の判断軸を整理します。

まず制度──選び方が要件になっている

私立:申請前に業者選定が必要

私立学校施設整備費補助金では、業者選定の方法が明記されています。

施工業者は原則として入札または3社以上の見積り合わせによること。しかも計画調書の提出にあたって、あらかじめ施工業者等の選定を行った上で提出する必要があります。

ここを見落とすと年度がずれます。「補助金が採択されてから業者を探す」のではなく、申請書類を出す時点で既に業者が決まっていなければなりません。その前には設計と積算が終わっている必要があります。

私立の補助制度は私立学校施設整備費補助金の全体像(K157)をご覧ください。

公立:総合評価落札方式が基本

公共工事では、方式を適用する必要がないと認められる工事を除き、すべての公共工事において総合評価落札方式を適用することが基本とされています(公共工事の品質確保の促進に関する法律ほか)。

これは最も安い価格を出した業者が落札する仕組みではありません。価格と、価格以外の要素(技術力・品質・実績)を点数化し、合計点が最も高い者を落札者とします。

評価される主な項目は次のとおりです。

  • 企業の能力等:当該企業の施工実績、工事実績、表彰等
  • 技術者の能力等:配置予定技術者の施工経験、工事成績、表彰等
  • 簡易な施工計画:技術的な工夫の余地が小さい工事でも、施工計画を技術提案として評価
  • 施工体制評価点:平成18年に導入。ダンピング入札対策として、契約内容が確実に履行されるかを評価する

「施工体制評価点」が導入された経緯が重要です。安値受注が、品質低下・手抜き工事・下請けへの買い叩き・安全管理の不徹底につながることへの対策として設けられました。制度自体が「安ければいい」を否定しています。

学校特有のチェック項目

制度要件を満たしたうえで、学校ならではの観点が必要です。

1. 在校中の施工に対応できるか

学校の改修は、在校生がいる中で行うのが基本です。実際に自治体が施工者に遵守させている事項を見ると、求められる水準が分かります。

項目求められる対応の例
工事車両の通行時間通学時間帯を避ける(自治体の例では午前8時30分前の通行は控える)
ガードマンの配置工事車両の出入り時に所要の位置へ配置。ガードマン配置図の提出を求められる場合がある
仮囲い・立入禁止むやみに立ち入りができないよう仮囲い等の措置を施す。児童生徒の迷い込み防止
仮設通路必要に応じて確保。資材で通路を塞がない
路上駐車の防止現場周辺に工事関係車両を駐停車しない

これらは「気をつけます」で済む話ではありません。工程表とガードマン配置図の提出を求められ、書面で管理されます。学校現場の経験がない業者は、この段取り自体を知りません。

2. 長期休暇に工程を寄せられるか

騒音・振動・粉じんを伴う工事、停電を伴う工事、レッカーを使う搬入は、長期休暇に集中させるのが基本です。

実例として、都内の私立中高一貫校では耐震改修とリニューアル工事を、仮設校舎を設けずに長期休暇期間を利用して実施しています。一方、規模が大きい場合は別敷地の仮校舎を使い、全校生徒が1年半移動した事例もあります。

「仮設校舎を建てずに済ませられるか」は工事費に直結します。文科省の事例集でも、仮設校舎を建設した場合と比較して経費削減の面で有利だった例が紹介されています。工区分けと工程で解けるかどうかは、施工計画の力量そのものです。

3. 石綿(アスベスト)の事前調査に対応できるか

ここは発注者側にも義務がある点に注意が必要です。

石綿障害予防規則に基づき、建築物等の解体・改修等の作業を行う際は石綿等の使用の有無に関する事前調査が必要で、その結果の概要等を労働者が見やすい箇所に掲示することが求められます。そして工事の発注者・注文者も、情報の提供など配慮しなければならない事項があります(石綿則第8条・第9条)。

学校施設では、吹付けアスベスト等の対策は文科省の調査によればほぼ完了している状況ですが、平成26年の改正で石綿含有保温材等が新たに規制対象に加えられています。古い校舎の配管保温材などは、改修時に確認が必要です。

4. 化学物質対策(シックスクール)

文科省は「学校施設整備指針」に、化学物質濃度が基準値以下であることを確認した上で建物の引渡しを受けることなどの留意事項を盛り込んでいます。

引渡しの条件です。使用する建材と、引渡し前の測定について、契約段階で確認しておく必要があります。

選定チェックリスト

区分確認する項目
資格・体制建設業許可の業種と区分(特定/一般)が工事規模に合っているか
配置予定の主任技術者・監理技術者の資格と、学校での施工経験
下請け構成と施工体制(施工体制台帳・施工体系図)
実績同種・類似工事の実績(学校であること、改修であること、在校中施工であること)
工事成績評定の点数(公共工事の場合)
補助事業での施工経験(実績報告まで対応できるか)
施工計画工区分け(棟別・階別)と、授業を継続する範囲の切り分け
児童生徒の動線と、工事車両・作業員動線の分離計画
長期休暇に寄せる工種の特定と、そこに山場を置く工程
機器の納期を踏まえた発注時期(空調・受変電設備等は長期化)
安全・環境仮囲い・立入禁止区域・仮設通路の計画
石綿の事前調査と掲示、除去時の措置
化学物質濃度の測定と、引渡し条件
見積・契約同一条件の設計図書・仕様で相見積りを取っているか
仮設費・諸経費の内訳が示されているか
引渡し後瑕疵(契約不適合)対応の期間と範囲、定期点検の体制

見積りの取り方と比較は相見積もりの取り方と比較のコツ(K299)、内訳の読み方は見積書の見方(内訳・諸経費)(K300)で解説しています。

実務の勘所

検討項目課題・発生するリスク解決の方向
採択後に業者を探す私立では計画調書の提出前に業者選定(入札または3社以上の見積り合わせ)が必要。順序を誤ると申請できず1年待ちになる設計・積算・業者選定を申請前に終える。前年度の早い時期から動く
価格だけで選ぶ安値受注により品質低下、下請けへの買い叩き、安全管理の不徹底が起きる。公共工事では施工体制評価点でこれを防ぐ仕組みになっている施工計画・技術者の経験・同種工事実績を評価軸に入れる。仮設費と諸経費の内訳を確認する
条件が揃わない相見積り各社が異なる前提で積算し、金額を比較できない。安い見積りは工事範囲が狭いだけということが起きる同一の設計図書・仕様書で見積りを依頼する。現地説明会を実施し、条件を揃える
学校の実績がない業者在校中施工の段取り(通学時間帯の車両制限、ガードマン配置図、仮囲い、動線分離)を知らず、着工後に学校側と調整が難航する同種・類似工事の実績を「学校・改修・在校中」の3条件で確認する
石綿対応の確認漏れ事前調査・掲示の義務があり、発注者にも配慮すべき事項がある。古い校舎では保温材等が該当することがある改修範囲の石綿含有建材を事前に調査する。除去が必要なら工程と費用に織り込む
引渡し条件の未確認化学物質濃度が基準値以下であることを確認して引渡しを受ける必要があるが、測定の実施が契約に入っていない使用建材と引渡し前の測定を契約段階で明記する

「誰に頼むか」は「何を頼むか」で決まる

施工会社の選定は、業者を比べる前の段階でほぼ決まっています。工事の範囲と内容が固まっていなければ、比較する土俵ができないからです。

同一の設計図書がなければ相見積りは成立しません。工区分けの方針がなければ、在校中に施工できるかどうかも判断できません。石綿や化学物質の条件が仕様に入っていなければ、見積りに反映されません。そして補助金を使うなら、その前に事業区分を選び、設計を制度に合わせて組み立てている必要があります。

逆に言えば、調査と設計が固まっていれば、業者選定は比較的シンプルな作業になります。同種工事の実績、配置技術者の経験、施工計画の具体性、仮設費と諸経費の内訳——見るべき項目は明確です。

学校の改修で最も避けたいのは、着工後に条件が変わることです。在校中の安全管理は、変更に最も弱い領域です。工区を切り直せば動線が変わり、動線が変われば仮囲いの位置も、ガードマンの配置も、資材搬入の時間も変わります。その調整は、学校の日常に直接跳ね返ります。

だから、調査から設計、業者選定、施工管理までを分断しないことが、結果として最も安全で確実な進め方になります。

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光建舎は教育施設の設計・改修を専門とし、現況調査から設計・施工管理までを一貫して対応します。在校中施工の工区分け・動線計画、長期休暇に寄せた工程、補助要件を踏まえた業者選定の進め方までご提案します。全国対応・現地調査とオンライン協議の併用で、構想段階からのご相談を承ります。

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参考・出典

※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。

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