この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校施設のグラウンド整備とは?目的・工法・進め方を解説

グラウンドの不具合は、雨のあとに分かります。水たまりが引かない、乾くまで授業が使えない、表面が固くなって転倒すると危ない——こうした症状は、表面の問題ではなく排水と土壌の問題であることがほとんどです。

そして学校のグラウンドは、体育の授業だけの場所ではありません。運動会、部活動、地域開放、そして災害時の応急対応——用途が増えるほど、求められる性能が変わります。

この記事では、劣化の見方と、舗装の選択肢、そして判断のポイントを整理します。

劣化のサインは「水」に出る

症状起きていること
水はけが悪い/水たまりが残る表面の勾配が失われている、または暗渠排水が目詰まりしている
不陸(ふりく/表面の凹凸)踏圧と雨水で土が移動し、締固めの状態が不均一になっている
表面が硬い踏圧で土が締め固まり、透水性とクッション性が低下している。転倒時のけがにつながる
砂塵の飛散表層の細粒分が乾燥して舞い上がる。近隣への影響が苦情になりやすい
周縁部の段差・雨裂表面排水が一方向に集中し、土が流出している

ここで重要なのは、表層を入れ替えるだけでは解決しない場合があることです。水はけの原因が路盤や暗渠にあるなら、表層だけ直しても数年で同じ状態に戻ります。「土を入れて転圧する」で済むのか、排水系統から見直すのかを、先に切り分ける必要があります。

舗装の選択肢

学校グラウンドの舗装は、大きく3つに分かれます。

クレイ(土)天然芝人工芝
初期費用低い中高い
維持管理整地・不陸調整が継続的に必要灌水・刈込み・目土・施肥・養生期間が必要日常管理は軽いが、耐用年数後に全面更新
課題砂塵・水はけ使用制限(養生)、集中利用部の傷み夏季の表面温度、充填材の飛散
向く用途多目的・全校利用環境教育・地域開放競技利用・稼働率重視

クレイ舗装はクッション性が魅力である一方、砂塵や水はけが課題とされています。この課題に対しては、グラウンド舗装の見直しと土壌改良を組み合わせる方法があります。

芝生化は「維持管理の設計」がすべて

校庭の芝生化は環境教育や安全性の面で注目されますが、導入判断で最も重要なのは維持管理体制です。

東京都の維持管理マニュアルによれば、必要な作業には灌水、刈込み、施肥、目土(手目土・全面目土)、生育診断、芝生・土壌調査などがあります。このうち生育診断や芝生・土壌調査は専門家でなければできず、全面目土も専門業者への委託が標準的とされています。

さらに現実的な指摘もあります。芝生は踏みつけや擦り切れに強い植物ですが、過度の使用に耐えるものではありません。学校での使用では、サッカーゴール前、遊具の周り、昇降口の前など、利用が集中する部分の傷みが目立ちます。

そして維持管理費は「どの作業を専門家に依頼するか」で大きく変わります。管理機械のメンテナンス費用、水道代、肥料・種子代も別途必要です。

芝生化の可否は、初期費用ではなく年間の管理体制で決まります。誰が刈るのか、養生期間中の代替場所はあるのか——これを決めずに導入すると、数年で荒れます。

補助制度──屋外教育環境施設の整備

公立学校のグラウンド整備は、学校施設環境改善交付金の「屋外教育環境施設の整備」が対象になります。

算定割合は1/3で、令和7年度から令和11年度に行われるものに限るという期限が付されています。

期限つきのメニューである点に注意が必要です。長期計画で後年度に回すと、制度自体が変わっている可能性があります。詳細は学校施設環境改善交付金の使い方(K168)をご覧ください。

なお交付金は、配分基礎額(配分面積×配分単価)×算定割合と実工事費×算定割合の少ない方を基礎とし、予算の範囲内で交付されます。「1/3が出る」とは限りません。

※会計検査院の検査では、太陽光発電等の整備において文部科学省が通知する単価を用いるべきところ、試算した工事費に基づく単価を用いていた事態が指摘されています。屋外系の事業でも、単価の取り方は確認が必要です。

グラウンド整備で見落とされやすい論点

1. 防球ネット・フェンス

グラウンド周辺の防球ネット、フェンス、バックネットは、支柱の根元が腐食・沈下していることがあります。ネットが破れているかどうかより、支柱が持つかどうかが安全上の論点です。グラウンドの表層を直す機会に、支柱基礎の状態も確認すべきです。

2. 夜間照明

照明設備がある場合、ポールの腐食、灯具の劣化、地中配線の状態が問題になります。水銀灯を使用している場合、一般照明用高圧水銀ランプは既に2020年末までに製造・輸出入が禁止されており、更新の検討が必要です。

3. 地域開放との関係

グラウンドは学校施設の中で最も地域開放されやすい部分です。文部科学省の「学校体育施設の有効活用に関する手引き」でも、屋外運動場の開放について検討のポイントが示されています。

開放を前提とするなら、校舎への動線を分離できるか、施錠管理をどうするか、夜間の安全確保をどうするかが設計の論点になります。これは防犯計画そのものです。(学校施設の防犯・セキュリティ対策/K035)

4. 災害時の利用

公立小中学校の約9割が避難所に指定されています。グラウンドは、応急仮設住宅の建設用地、支援物資の集積場所、車両の駐車場所として想定されることがあります。その場合、大型車両の進入経路と地耐力が論点になります。

実務の勘所

検討項目課題・発生するリスク解決の方向
表層だけ直す水はけの原因が路盤や暗渠にあると、表層を入れ替えても数年で同じ状態に戻る。整備費が繰り返し発生する排水系統(表面勾配・暗渠)の状態を先に調査し、原因を特定してから工法を決める
芝生化を初期費用で判断灌水・刈込み・目土・生育診断など継続的な管理が必要。体制がないと数年で荒れ、かえって使いにくくなる年間の管理作業と費用、専門業者への委託範囲、養生期間中の代替場所を先に決める
利用集中部を考慮しないサッカーゴール前、遊具周り、昇降口前は傷みが集中する。全面同一仕様だと部分的に早く劣化する利用実態に応じて部位別に仕様を変える。集中部は耐久性の高い仕様とする
期限つき補助の見落とし屋外教育環境施設の整備は令和7〜11年度に限るとされている。後年度に回すと制度が変わっている可能性がある適用期限を計画表に明記し、期限内に着工できる工程を優先する
付帯設備の確認漏れ防球ネットの支柱基礎、夜間照明のポールや地中配線が劣化。グラウンドを直した直後に別工事が必要になる表層工事と同時に支柱基礎・照明設備を点検し、更新範囲に含める
工期と行事の衝突グラウンドが長期間使えないと、体育の授業・部活動・運動会が成立しない。芝生は養生期間も必要年間行事予定と照らして工期を設定する。分割施工で使用可能な範囲を残す

グラウンドは「土木」に見えて、学校運営の設計である

グラウンド整備が他の改修と違うのは、工事中に代替手段がないことです。

教室なら別の教室を使えます。トイレなら別の階を使えます。しかしグラウンドは1つしかありません。使えない期間は、体育の授業も、部活動も、休み時間の遊び場もなくなります。芝生化なら、そこに養生期間が加わります。

だから判断すべきは、工法だけではありません。いつ、どの範囲を、どれだけの期間止めるか——これが実質的な設計になります。分割して施工すれば使える範囲は残りますが、その分だけ工期は延び、仮設費も増えます。

そして、グラウンドの周りには付帯設備が集まっています。防球ネット、フェンス、夜間照明、遊具、屋外水栓、排水桝。重機が入り、掘削し、転圧するこの機会は、これらをまとめて更新できる数少ないタイミングです。

逆に言えば、表層だけを単独で直せば、支柱も照明も配線も古いまま残ります。そして数年後、それぞれの不具合が別々に顕在化し、そのたびにグラウンドを止めることになります。

雨のあとに水が引かない——その症状の原因を、表面ではなく路盤と排水から読むこと。そして工事の範囲を、表層ではなく屋外環境全体で設計すること。これがグラウンド整備の勘所です。

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光建舎は教育施設の設計・改修を専門とし、現況調査から設計・施工管理までを一貫して対応します。排水・路盤の状態調査、舗装工法の比較検討、維持管理体制を踏まえた芝生化の可否判断、付帯設備と束ねた工事計画、行事日程を踏まえた工程の組み立てまでご提案します。全国対応・現地調査とオンライン協議の併用で、構想段階からのご相談を承ります。

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参考・出典

※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。

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