この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

大学の研究施設整備に補助はあるのか?

要綱の探し方

私立大学については、事業ごとの交付要綱が設けられています。

文部科学省は、私立学校の施設整備に関する補助金の交付要綱を事業ごとに分けて示しています。私立大学・大学院等については、次の2つが関わります。

1つは「私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費))交付要綱」で、教育研究の装置と施設の整備が対象です。もう1つは「私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等研究設備等整備費)交付要綱」で、研究の設備が対象です。

装置、施設、設備で要綱が分かれています。計画している整備がどれに当たるかを先に確認する必要があります。

この記事では、①私立大学向けの制度、②装置・施設・設備の区別、③要綱の探し方、④申請の実務、⑤資金計画、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 私立大学・大学院等については、私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費))の交付要綱が設けられている
  • 研究の設備については、私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等研究設備等整備費)の交付要綱が設けられている
  • 要綱は装置、施設、設備で分かれており、計画している整備がどれに当たるかで該当する要綱が変わる
  • 補助の割合は事業ごとの交付要綱で定められ、公立学校のような一律の負担割合はない
  • 要綱と公募の内容は年度ごとに示されるため、申請を検討する年度の内容を確認する

私立大学向けの制度には何があるのか?

事業ごとに要綱が分かれています。

補助金 対象
私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費)) 私立大学・大学院等
私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等研究設備等整備費) 私立大学等
私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立高等学校等施設高機能化整備費)) 私立高等学校等
私立大学等研究設備整備費等補助金(私立高等学校等ICT教育設備整備推進事業費) 私立高等学校等

要綱の名称が長く、入れ子になっているのが特徴です。「私立学校施設整備費補助金」という大きな枠の中に、事業ごとの区分があります。

大学等向けと高等学校等向けで分かれる

同じ学校法人が大学と高等学校を設置している場合、学校種によって該当する要綱が違います。

計画している整備がどの学校のものかを明確にしてから、要綱を確認してください。

公立学校とは別の制度

公立学校の施設整備には、義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律に基づく国庫負担金と、学校施設環境改善交付金があります。私立学校はこの制度の対象ではありません。

公立と私立の違いは私立学校でも国の補助金は使えるのか?で扱っています。

一律の割合がない

公立学校では、事業区分ごとに算定割合が示されています。私立学校の補助は、事業ごとの交付要綱で定められ、一律の割合が示されるわけではありません。

該当する要綱の本文を確認してください。

国立大学法人の場合

国立大学法人等については、別の枠組みで施設整備が行われます。私立大学向けの補助金とは制度が異なります。

大学の改修の考え方は大学の改修はどう進めるのか?で扱っています。

装置・施設・設備はどう違うのか?

区分によって該当する要綱が変わります。

区分 内容の例
装置 研究に用いる大型の装置
施設 建物、建物の一部の整備
設備 研究に用いる機器、什器

建物の改修か、機器の購入かで分かれる

研究棟の改修は施設、実験装置の購入は装置、測定機器の購入は設備。このように分かれます。

1つの計画に複数の区分が含まれる場合、それぞれの要綱で申請することになります。

建物と装置が一体の場合

大型の装置を設置するために建物を改修する場合、装置と施設の両方が関わります。

この扱いは要綱の内容によります。文部科学省の所管課に確認してください。

名称だけでは判断できない

要綱の名称から、自分の計画が該当するかを判断するのは難しくなります。本文を確認し、対象となる事業の内容を読んでください。

名称が似ている要綱が複数あるため、取り違えに注意が必要です。

整備の内容を具体化する

「研究施設を整備したい」という段階では、どの要綱に当たるか判断できません。何をどこまで整備するのかを具体化してから相談してください。

要綱はどう探すのか?

文部科学省のページから確認します。

手順 内容
1 文部科学省の交付要綱等のページを開く
2 学校種(大学等か高等学校等か)で絞る
3 区分(装置、施設、設備)で絞る
4 要綱の本文を確認する
5 対象となる事業の内容を読む
6 所管課に相談する

年度ごとに内容が示される

要綱と公募の内容は年度ごとに示されます。前年度の内容をそのまま前提にすると、要件が変わっている場合があります。

申請を検討する年度の内容を確認してください。

所管課に相談する

要綱の本文を読んでも、自分の計画が該当するか判断がつかないことがあります。文部科学省の所管課に相談してください。

相談の前に、整備の内容と事業費の概算を整理しておくと話が早くなります。

都道府県の制度も確認する

国の補助とは別に、都道府県が私立学校向けの助成制度を設けている場合があります。

ただし国の補助との併用ができない場合があるため、両方を前提にする前に確認してください。

採択の競争がある

申請しても採択されないことがあります。国の予算の範囲で、全国の申請が判断されます。

採択されなかった場合の資金を自前で用意する必要があるため、公立より判断の重さが違います。

申請の実務はどうなるのか?

学校法人が申請します。

項目 内容
申請者 学校法人
必要な図書 整備の内容と事業費を示す書類
設計の成果 施設の整備では図面と数量
理事会の決議 事業の実施と資金の調達
提出先 文部科学省の所管課
実績報告 完了後に報告

設計が申請の前段にある

施設の整備では、工事の内容と事業費を示す図書が必要です。設計が進んでいなければ揃いません。

したがって設計者の選定と契約が、申請の前段にあります。申請の実務は学校の補助金申請は誰がやるのか?で扱っています。

原則は後払い

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条により、完了に係る成果の報告を受けた後に調査し、交付すべき額を確定して通知する仕組みです。したがって原則は後払いです。

工事代金を先に支払い、完了後に額が確定して入金されます。この間の資金を自前で用意する必要があります。

支払いの時期は学校の補助金は前払いか後払いか?で扱っています。

実績報告に必要な書類

契約書、設計図書、工事写真、数量の根拠、検査の記録、支払いの証拠。これらを工事中に揃えてください。

工事写真は工事が終わってから撮り直せません。

装置と設備の場合

装置や設備の購入では、仕様書、見積り、契約、納品の記録が必要になります。

複数社からの見積りを取る手順も、要綱で定められている場合があります。装置や設備は納期が長いものがあり、年度内の納品が条件になる場合は発注の時期を逆算してください。

資金計画はどうするのか?

補助を前提にしない案も用意します。

手段 内容
自己資金 手元資金からの支出
金融機関からの借入れ つなぎの資金と長期の借入れ
日本私立学校振興・共済事業団の融資 学校法人向けの融資制度
寄付金 募集の時期と整備の時期の整合
外部資金 研究の資金との組合せ

返済の原資を確認する

借入れの返済は、学生生徒納付金から出ます。定員の充足率が下がる局面では、返済が経営を圧迫します。

今後の学生数の見通しと返済の計画を並べて確認してください。

金利を事業費に含める

借入れの金利は、実質的な事業費に乗ってきます。補助額だけを見て判断せず、この費用も含めて検討してください。

採択されない場合の対応を決める

採択されなかった場合に整備を延期するのか、自己資金で実施するのか。この判断を申請の前に決めてください。

決まっていないと、結果が出てから理事会で議論が始まり、整備の時期を逃します。

段階的に整備する

一度に全部を整備するのではなく、優先度の高い部分から始める方法があります。

優先度の高い部分は自己資金で先に実施し、残りを補助の採択を待つという組み立てです。

よくある質問

Q. 大学の研究施設整備に補助はありますか。

A. 私立大学・大学院等については、私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費))の交付要綱が設けられています。研究の設備については、私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等研究設備等整備費)の交付要綱があります。

Q. 補助の割合はどのくらいですか。

A. 事業ごとの交付要綱で定められます。公立学校のような一律の負担割合はありません。該当する要綱の本文を確認してください。

Q. 装置と施設と設備はどう違いますか。

A. 研究に用いる大型の装置が装置、建物や建物の一部の整備が施設、研究に用いる機器や什器が設備です。区分によって該当する要綱が変わります。

Q. 要綱はどこで確認しますか。

A. 文部科学省の交付要綱等のページです。学校種と区分で絞り、本文を確認してください。判断がつかない場合は所管課に相談してください。

Q. 補助金はいつ入金されますか。

A. 原則は後払いです。補助金適正化法第15条により、完了に係る成果の報告を受けた後に調査し、交付すべき額を確定して通知する仕組みです。

Q. 採択されなかった場合はどうしますか。

A. 整備を延期するのか自己資金で実施するのか、申請の前に決めてください。決まっていないと、結果が出てから議論が始まり整備の時期を逃します。

まとめ

私立大学の研究施設整備については、事業ごとの交付要綱が設けられています。

私立大学・大学院等については「私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費))交付要綱」、研究の設備については「私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等研究設備等整備費)交付要綱」が関わります。

要綱は装置、施設、設備で分かれています。研究棟の改修は施設、実験装置の購入は装置、測定機器の購入は設備。1つの計画に複数の区分が含まれる場合、それぞれの要綱で申請することになります。

補助の割合は事業ごとの交付要綱で定められ、公立学校のような一律の負担割合はありません。したがって公立の算定割合を前提に資金計画を立てるのは誤りです。該当する要綱の本文を確認し、判断がつかない場合は文部科学省の所管課に相談してください。

要綱と公募の内容は年度ごとに示されます。前年度の内容をそのまま前提にすると、要件が変わっている場合があります。

申請の実務では、施設の整備には工事の内容と事業費を示す図書が必要で、設計が進んでいなければ揃いません。そして補助は原則として後払いです。補助金適正化法第15条により、完了に係る成果の報告を受けた後に額が確定します。この間の資金を自前で用意する必要があります。

採択されなかった場合の対応を、申請の前に決めてください。優先度の高い部分は自己資金で先に実施し、残りを補助の採択を待つという段階的な整備も選択肢になります。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。交付要綱および公募の内容は年度ごとに示され、対象となる事業と補助の割合は要綱により異なります。個別の適用は文部科学省の所管課および税務・財務の専門家にご確認ください。

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