この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

相見積もりは何社が適切か

社数より先に決めることがある

学校改修の相談で、よく聞かれる質問です。3社なのか、5社なのか。

先に結論を書くと、社数に絶対的な正解はありません。ただし、社数を決める前に整理すべきことがあり、そこを飛ばすと何社集めても比較が成立しません。

この記事では、社数の考え方と、比較が成立する条件を整理します。

公的な目安があるケース

自治体が発注者の場合、随意契約における見積徴取の社数は各自治体の規則等で定められていることがあります。

たとえば地方公共団体では、随意契約によろうとするときは2人以上から見積書を徴さなければならないと規則で定めている例が一般的です。予定価格の額に応じて、必要な見積徴取の社数を区分している自治体もあります。

学校法人や民間の場合、法令上の定めはありません。ただし補助金を使う場合、交付要綱や実施要領で複数社の見積を求められることがあります。

まず確認すべきは、自組織のルールと、使う補助制度の要件です。ここに定めがあれば、それが下限になります。

社数を増やすと何が起きるか

社数が多いほど良い、というものではありません。増やすと次のことが起こります。

影響内容
現地説明の負担が増える学校改修では現地確認が必須。授業のある建物に何社も入れることになる
質疑対応が増える各社から仕様確認の質問が来る。回答を全社に共有する手間が発生する
検証の負担が増える提出された見積の内訳を精査する作業が社数分かかる
辞退が出る受注確率が下がると、有力な会社ほど見積作成の労力を割かなくなる

最後の点は見落とされがちです。詳細な見積を作るには、図面を読み、現地を見て、数量を拾う作業が必要です。10社に声をかければ受注確率は1割です。丁寧に対応する会社ほど、その労力に見合わないと判断します。

結果として、簡易な見積しか集まらず、着工後に「これは含まれていません」という話が増えます。

社数より先に決めること

比較が成立するかどうかは、社数ではなく前提で決まります。

1. 工事範囲を確定させる

どこからどこまでを工事するのか。この範囲が曖昧なままだと、各社が異なる想定で積算します。

外壁改修ひとつでも、下地補修の想定数量、シーリングの打ち替え範囲、鉄部塗装の対象をどう見るかで金額は大きく変わります。

2. 現況資料を揃える

竣工図(意匠・設備)、確認済証・検査済証、過去の修繕履歴。これらがないと、各社は現地目視だけで推定することになります。

推定の幅がそのまま金額差になり、比較しても意味がありません。

3. 調査結果を先に出す

アスベストの有無、コンクリートの中性化、設備の劣化状況。調査前に見積を取ると、各社が「別途」と書きます。

金額に含まれていない項目が各社バラバラだと、総額の比較になりません。調査の内容と費用は現況調査の費用で解説しています。

4. 工事不可期間を提示する

入試、行事、定期考査、実習。工事ができない期間は学校側にしか分かりません。

これを伝えずに見積を取ると、各社が独自の工程を前提に積算します。仮設や割増作業の見込みが変わり、金額が揃いません。

5. 補助の有無と対象範囲を伝える

補助を使うなら、補助対象経費と対象外を分けた内訳が必要です。この指示がないと、後で内訳を作り直すことになります。

6. 発注方式を決める

設計事務所が引いた図面で施工者を選ぶのか、設計から一社に任せるのか。方式が違えば、比較の軸そのものが変わります。詳しくは設計施工の分離と一括の違い(K298)をご覧ください。

実務的な考え方

以上を踏まえると、社数の考え方は次のようになります。

状況目安
図面と仕様が確定し、条件も揃っている3社程度。前提が同じなら比較は容易
工事範囲が固まっていない社数を増やす前に範囲を確定させる
提案内容も含めて比較したい2〜3社。各社に十分な情報を渡し、提案の質を上げる
自組織の規則で社数が定められている規則に従う。そのうえで前提を揃える

社数を増やすより、少数の会社に十分な情報を渡すほうが、結果として良い見積が集まります。

集まった見積をどう見るか

金額の安い順に並べるだけでは判断できません。次を確認してください。

  • 各社の見積が同じ工事範囲を対象にしているか
  • 「別途」「一式」の項目が何を指しているか
  • 仮設工事費の内訳が明示されているか
  • 諸経費の率が妥当か
  • 補助対象・対象外の区分がされているか

見積書の読み方は見積書の見方(K300)、取り方の全体は学校の相見積もり(K299)で解説しています。

よくある質問

Q. 何社から取るべきですか。
A. 自組織の規則や補助要件に定めがあればそれに従ってください。定めがない場合、前提が揃っていれば3社程度で比較は成立します。社数より前提の統一が重要です。

Q. 社数が多いほど安くなりますか。
A. 必ずしもそうではありません。受注確率が下がると、丁寧に積算する会社ほど労力を割かなくなります。簡易な見積が集まり、着工後の追加が増えることがあります。

Q. 前提が揃っているかはどう確認しますか。
A. 各社に同じ資料を渡し、同じ工事範囲を指定したかを確認してください。質疑応答の内容も全社に共有する必要があります。

Q. 現地説明は必要ですか。
A. 学校改修では必須です。図面と現況が一致していないことが多いためです。ただし授業のある建物に何社も入れることになるため、社数を絞る理由にもなります。

Q. 見積が出てから工事範囲を変えてもいいですか。
A. 範囲が変われば金額の前提も変わります。比較のやり直しになるため、範囲は見積依頼の前に確定させてください。

まとめ

  • 社数に絶対的な正解はない。自組織の規則と補助要件を先に確認する
  • 社数を増やすと、現地説明・質疑対応・検証の負担が増え、有力な会社ほど辞退する
  • 比較が成立するかは前提で決まる。工事範囲、現況資料、調査結果、工事不可期間、補助の有無、発注方式
  • 前提が揃っていれば3社程度で比較は成立する
  • 少数の会社に十分な情報を渡すほうが、良い見積が集まる

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参考・出典

  • 地方自治法施行令第167条の2(随意契約によることができる場合)
  • 地方自治法施行令第167条の6ほか、各地方公共団体の契約事務規則(随意契約における見積書の徴取に関する定め)
  • 国土交通省「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン【本編】」平成27年5月(令和4年3月改正) https://www.mlit.go.jp/tec/content/001475361.pdf

※見積徴取の社数に関する定めは、発注機関および補助制度により異なります。記載の内容は公表時点のものです。最新情報は自組織の契約事務規則および所管の交付要綱をご確認ください。

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