契約前に確認できる客観的な材料
施工会社を選ぶとき、多くの人は提案内容と金額を見ます。それは当然として、もう一つ確認できるものがあります。
法令上の資格と、それに紐づく義務です。
建設業には許可制度があり、工事の規模によって必要な許可の区分が変わります。現場に配置する技術者にも要件があります。これらは会社の営業トークではなく、公的に定められた基準です。相手が要件を満たしているかどうかは、契約前に確認できます。
しかもこの金額要件は、令和7年2月1日に改正されています。古い数字のまま説明している資料も残っているため、注意が必要です。
この記事では、業者選定で確認できる客観的な材料を整理します。
目次
建設業許可の一般と特定
建設業許可は、下請契約の規模によって「一般建設業」と「特定建設業」に区分されています。
区分の基準は、発注者から直接請け負う工事1件について、一定金額以上の下請契約を締結するかどうかです。
| 項目 | 令和7年1月31日まで | 令和7年2月1日から |
|---|---|---|
| 特定建設業許可を要する下請代金額の下限 | 4,500万円(建築工事業は7,000万円) | 5,000万円(建築工事業は8,000万円) |
| 施工体制台帳等の作成を要する下請代金額の下限 | 4,500万円(建築一式工事は7,000万円) | 5,000万円(建築一式工事は8,000万円) |
| 専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限 | 4,000万円(建築一式工事は8,000万円) | 4,500万円(建築一式工事は9,000万円) |
この改正は、建設業法施行令の一部改正によるものです。国土交通省は、近年の建設工事費の高騰を踏まえて各種の金額要件を見直したと説明しています。
誤解しやすい点
発注者から直接請け負う請負金額そのものには、一般・特定にかかわらず制限がありません。つまり請け負うだけであれば、金額がいくらでも一般建設業の許可で足ります。
区分を分けるのは、下請に出す金額です。工事の大半を自社で直接施工する会社であれば、規模の大きな工事でも一般建設業許可で適法に施工できます。
したがって「特定建設業許可がないから小さな会社」という読み方は正確ではありません。確認すべきは、その会社がどういう施工体制で工事を進めるかです。
なお許可は29の業種区分ごとに取得するものです。ある業種で特定を持っていても、別の業種が一般であれば、その業種で基準額以上の下請発注はできません。学校改修は複数業種が絡むため、どの業種の許可を持っているかを確認する意味があります。
施工体制台帳と施工体系図
発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者である元請業者は、その工事の施工に際して締結した下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になる場合、施工体制台帳と施工体系図の作成が義務付けられています(建設業法第24条の8)。
施工体制台帳には、どの会社がどの工事を担当するかが記載されます。施工体系図は、それを図で示したものです。
学校改修の発注者にとって、これは有用な資料です。誰が実際に工事をするのかが分かります。作成義務がかからない規模でも、任意で提出を求めることはできます。
技術者の配置
工事現場には、主任技術者または監理技術者を置くことが求められます。
請負金額が4,500万円(建築一式工事の場合は9,000万円)以上の工事については、工事の安全かつ適正な施工を確保するため、工事現場に配置する主任技術者または監理技術者は専任の者でなければなりません。
専任が求められる期間中、その技術者は他の工事現場に係る職務に従事できません。営業所の技術者との兼任も原則不可です。
この対象は公共工事に限りません。民間工事も含まれます。
発注者が確認すべきこと
「担当者は誰か」ではなく「現場に専任で置かれる技術者は誰か」を確認してください。
専任義務がかかる規模なのに、その技術者が他の現場も見ている状態であれば、法令上の問題があるだけでなく、実務上も現場管理が手薄になります。
元請が実質的に関与しているか
建設業法では、一括下請負が禁止されています。実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除し、不要な重層化を回避するためです。
ここでいう「実質的に関与」とは、自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいいます。
発注者の立場で確認するなら、次の質問が有効です。
- 施工計画は誰が作りますか
- 工程管理は誰が行いますか
- 現場に常駐するのはどの会社の誰ですか
- 下請はどの会社が入る予定ですか
契約した会社が窓口だけで、実際の施工管理を別の会社が行う体制になっていないか。ここは見積書の金額からは読み取れません。
学校改修で追加して確認したいこと
法令上の要件に加えて、学校改修では次を確認する価値があります。
| 確認項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 学校施設の施工実績 | 授業を止めない工程、学校暦への対応は経験がないと組めない |
| 分野別の実習室の実績 | 美容・調理・医療などは設備要件が一般教室と全く異なる |
| 補助対象経費の切り分け経験 | 見積内訳が補助申請に対応していないと差し戻される |
| 近隣対応の体制 | 市街地の学校では、苦情対応が工程を左右する |
| 用途変更・確認申請の判断 | 教室の用途を変える改修では法規判断が先に必要になる |
これらは許可制度では測れません。過去の実績を具体的に確認してください。
会社選びの観点は施工会社の選び方(K297)、発注方式そのものの検討は設計施工の分離と一括の違い(K298)で整理しています。
見積を比較する前に
業者選定は見積の比較から始まりがちですが、順序が逆です。
- 発注方式を決める
- 資格・体制の要件を満たす会社に絞る
- 同じ前提で見積を取る
- 金額と提案内容を比較する
前提が揃っていない見積を並べても、比較になりません。取り方は学校の相見積もり(K299)、読み方は見積書の見方(K300)をご覧ください。
発注者側に技術判断ができる人がいない場合の進め方は学校の発注者体制(K312)で解説しています。
よくある質問
Q. 特定建設業許可がない会社は避けるべきですか。
A. そうとは限りません。区分を分けるのは下請に出す金額です。工事の大半を自社で施工する会社であれば、一般建設業許可で適法に施工できます。確認すべきは施工体制です。
Q. 建設業許可はどこで確認できますか。
A. 各都道府県の許可業者名簿や、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで確認できます。会社に許可番号を尋ねることもできます。
Q. 金額要件が変わったと聞きました。
A. 令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正により、特定建設業許可を要する下請代金額の下限が4,500万円(建築工事業7,000万円)から5,000万円(同8,000万円)に引き上げられました。専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限も4,000万円(建築一式8,000万円)から4,500万円(同9,000万円)になっています。
Q. 施工体制台帳は見せてもらえますか。
A. 作成義務がある規模であれば作成されています。義務がかからない規模でも、施工体制の説明資料の提出を求めることは可能です。
Q. 技術者が専任かどうかは何で分かりますか。
A. 契約前に、現場に配置する技術者の氏名と、その技術者が他の現場を兼務していないかを確認してください。専任義務がかかる規模では兼任は原則できません。
まとめ
- 建設業許可の一般と特定を分けるのは、請負金額ではなく下請に出す金額
- 令和7年2月1日施行の改正で、特定建設業許可を要する下請代金額の下限は5,000万円(建築工事業8,000万円)に引き上げられた
- 専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限も4,500万円(建築一式9,000万円)に変更
- 許可は29業種ごと。学校改修は複数業種が絡むため、どの業種を持っているかを確認する
- 施工体制台帳・施工体系図で、実際に工事をする会社が分かる
- 一括下請負は禁止。元請が施工計画・工程管理・品質管理等に実質的に関与しているかを確認する
- 法令要件では測れない部分(学校の施工実績、分野別実習室、補助対応、近隣対応)は個別に確認する
光建舎にご相談ください
光建舎は教育施設の改修を専門とする建築会社です。グループ内に一級建築士事務所(ウイングスペース)を擁し、調査・設計・施工・工事監理までを一貫して対応しています。
関連記事
- 施工会社の選び方(K297)
- 設計施工の分離と一括の違い(K298)
- 学校の発注者体制(K312)
- 学校の相見積もり(K299)
- 見積書の見方(K300)
参考・出典
- 国土交通省「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します~『建設業法施行令及び国立大学法人法施行令の一部を改正する政令』を閣議決定~」(特定建設業許可を要する下請代金額の下限を4,500万円(7,000万円)から5,000万円(8,000万円)へ、施工体制台帳等の作成を要する下請代金額の下限も同様に改正) https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00267.html
- 国土交通省 関東地方整備局 建政部 建設産業第一課「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8年2月版)」(施工体制台帳・施工体系図の作成義務(法第24条の8)、専任の技術者を要する請負金額4,500万円(建築一式9,000万円)以上、公共工事に限らず民間工事も対象、一括下請負の禁止と「実質的に関与」の定義) https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000699485.pdf
- 岡山県監理課「【令和7年2月1日~】特定建設業許可等の金額要件の見直しについて」(改正前後の金額要件の対比、専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限4,000万円(8,000万円)から4,500万円(9,000万円)へ) https://www.pref.okayama.jp/page/952871.html
※記載の制度や金額要件は公表時点のものです。建設業法および施行令は改正されることがあります。最新情報は国土交通省および所管の許可行政庁の公表資料をご確認ください。
学校施設のご相談
その工事、補助金が使えるか無料でチェックします
トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。
補助金の無料チェックを依頼する株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。
受付時間 平日 9:00〜18:00