学校給食室の改修

区域区分とドライシステムが設計を決める

給食室の改修は、他の教室の改修とまったく別物です。

理由は明確で、学校給食衛生管理基準という別系統の基準が設計を縛るからです。間取りも動線も設備も、この基準から逆算して決まります。

内装をきれいにする工事ではありません。区域をどう分けるかが本体です。

この記事では、給食室の改修で押さえるべき基準を整理します。

区域区分が間取りを決める

学校給食衛生管理基準では、調理場を二次汚染防止の観点から、汚染作業区域、非汚染作業区域、その他の区域に部屋単位で区分することとされています。

部屋単位という点が重要です。カーテンや線引きではなく、部屋として分ける必要があります。

区分の内容は次のとおりです。

区域含まれる場所
汚染作業区域検収、食品の保管、下処理の各作業を行う場所
非汚染作業区域食品の切断等を行う場所、加熱調理を行う場所、加熱調理した食品の冷却等を行う場所、食品を食缶に配食する場所、配膳室、食品・食缶の搬出場
その他の区域更衣・休憩室、調理員専用便所、前室、事務室等(学校給食調理員が通常出入りしない区域)

さらに、検収、保管、下処理、調理、配膳の各作業区域、更衣休憩にあてる区域、前室に区分することとされています。

境にはカウンター等を設ける

汚染作業区域と非汚染作業区域の境には、カウンター等を設けるなど、食品のみが移動するよう工夫することとされています。

人が行き来するのではなく、食品だけが受け渡される構造にするということです。

改修で間取りを見直す際、この受け渡し口の位置が動線全体を決めます。

洗浄室は時間帯で区分が変わる

給食室の設計で特殊なのがここです。

洗浄室は、使用状況に応じて汚染作業区域または非汚染作業区域に区分することが適当であることから、別途区分することとされています。

具体的には、午前中は非汚染作業区域、午後の洗浄開始時から清掃終了時までを汚染作業区域として整理されます。

同じ部屋が時間帯によって性格を変えるため、設備も動線もその前提で計画する必要があります。

なお「食品を取り扱う場所」については、作業区域から洗浄室を除いた施設として整理されています。

ドライシステム

学校給食でより高度な衛生管理を実施するためには、ドライシステムの導入、あるいはドライ運用を図ることが重要とされています。

基準では、ドライシステムを導入するよう努めることとされ、導入していない調理場においてもドライ運用を図ることが明記されています。

ドライシステムとは、調理場内の床を濡らさずに乾燥状態を維持して細菌の繁殖を防ぎ、衛生面の向上を図るとともに、従事する人にとって安全で快適な作業空間をつくることを指します。

ウェット仕様の調理場では、シンク、ホース、ザルなどから水が落ちる構造になっています。

改修での判断

既存のウェット仕様をドライシステムに転換するかどうかは、給食室改修の最大の判断項目です。

床の勾配、排水、シンクの仕様、調理機器の脚部、給水栓の位置。すべてが変わります。部分的な改修では成立しません。

一方、全面的な転換が難しい場合でも、ドライ運用を図ることが求められています。ドライ用調理台の設置、移動台やカートの導入、水切りワイパーの配置など、運用で対応する部分と設備で対応する部分を切り分けて計画してください。

設備の要件

基準では、施設・設備について具体的な要件が示されています。改修で関係する主なものを挙げます。

項目要件
温湿度食品を取り扱う場所は温度25℃以下、湿度80%以下が適切に行えること
エアカーテン作業区域の外部に開放される箇所には備えるよう努めること
排水溝詰まりまたは逆流が起きにくく、排水が飛散しない構造・配置とすること
配膳室廊下等と明確に区分すること。出入口には原則として施錠すること
給水給湯設備必要な数を使用に便利な位置に設置し、給水栓は直接手指を触れることのないよう肘等で操作できるレバー式等であること
下処理室のシンク加熱調理用食品、非加熱調理用食品、器具の洗浄に用いるシンクを別々に設置し、三槽式構造とすること
機械・機器可動式にするなど、調理過程に合った作業動線となるようにすること

温度25℃以下・湿度80%以下という条件は、空調計画に直結します。厨房は熱源が多く、この条件を満たすには相応の空調能力が必要です。既存の空調容量では届かないことがあります。

従事者専用の便所と手洗い

学校給食従事者専用の便所については、調理衣の着脱場所を便所の個室の前に設けるよう努めることとされています。

前室の考え方とあわせて、更衣・休憩・便所の配置を計画する必要があります。

手洗い設備については、石けん液、消毒用アルコール、ペーパータオル等を備えることが求められています。

建築基準法との関係

給食室は火気使用室にあたるため、建築基準法の内装制限の対象になります。

学校は施行令第128条の4で内装制限から除外されている部分がありますが、火気使用室は例外です。給食室の内装材は防火性能の要件を満たす必要があります。詳しくは学校の内装制限(K209)をご覧ください。

また、調理室と他の部分の区画についても確認が必要です。防火区画の考え方は学校の防火区画(K215)で整理しています。

消防法上の設備要件も関係します。学校と消防法(K208)をご覧ください。

改修の進め方

  1. 現状の区域区分を図面と現地で確認する
  2. 基準に対して不足している区分を洗い出す
  3. ドライシステムへの転換の可否を判断する
  4. 温湿度管理を満たす空調計画を検討する
  5. 受変電設備の容量を確認する(厨房機器の更新は電気容量に直結する)
  6. 内装制限・防火区画・消防設備の要件を確認する
  7. 給食の提供を止められる期間を確定させる
  8. 自治体の衛生管理マニュアルを確認する

7が工程の前提になります。給食は毎日提供されるため、工事期間中の対応(弁当対応、他校からの搬入、共同調理場の利用)を先に決めないと工程が組めません。長期休業期間に収まるかどうかで、改修範囲の判断が変わります。

8も重要です。自治体が独自の衛生管理マニュアルを作成している例が多くあります。国の基準に加えて、自治体のマニュアルを確認してください。

調査の内容と費用は現況調査の費用(K901)で解説しています。

よくある質問

Q. 汚染作業区域と非汚染作業区域はどう分けますか。

A. 部屋単位で区分することとされています。境にはカウンター等を設けるなど、食品のみが移動するよう工夫することが求められます。

Q. 洗浄室はどちらの区域ですか。

A. 使用状況に応じて区分します。午前中は非汚染作業区域、午後の洗浄開始時から清掃終了時までを汚染作業区域として整理されます。

Q. ドライシステムは必須ですか。

A. 導入するよう努めることとされています。導入していない調理場においても、ドライ運用を図ることが明記されています。

Q. 空調は何を満たす必要がありますか。

A. 食品を取り扱う場所は、温度25℃以下、湿度80%以下の管理が適切に行えることとされています。

Q. 給食を止めずに改修できますか。

A. 区域区分やドライシステムへの転換を伴う改修では、調理場を止める必要があります。弁当対応、他校からの搬入、共同調理場の利用など、給食提供の代替手段を先に決めてください。

Q. 内装材に制限はありますか。

A. 給食室は火気使用室にあたるため、建築基準法の内装制限の対象になります。学校の他の部分とは扱いが異なります。

まとめ

  • 調理場は汚染作業区域、非汚染作業区域、その他の区域に部屋単位で区分する
  • 汚染・非汚染の境にはカウンター等を設け、食品のみが移動する構造にする
  • 洗浄室は時間帯で区分が変わる(午前は非汚染、午後の洗浄開始から清掃終了まで汚染)
  • ドライシステムを導入するよう努め、導入していない調理場でもドライ運用を図る
  • 食品を取り扱う場所は温度25℃以下、湿度80%以下の管理が求められる
  • 下処理室のシンクは用途別に別々に設置し、三槽式構造とする
  • 配膳室は廊下等と明確に区分し、出入口は原則施錠する
  • 給食室は火気使用室として内装制限の対象になる
  • 工程は給食提供の代替手段を決めてから組む
  • 自治体独自の衛生管理マニュアルもあわせて確認する

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参考・出典

  • 文部科学省「学校給食衛生管理基準の施行について」(学校給食施設の区分=汚染作業区域・非汚染作業区域・その他の区域と前室、ドライシステムの導入努力とウェットシステムのドライ運用、学校給食従事者専用便所の調理衣着脱場所、洗浄室の時間帯による区分、汚染・非汚染の境にカウンター等を設ける旨) https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1283821.htm
  • 公益財団法人 食品衛生保健協会「学校給食の衛生管理」編(調理場の部屋単位での区分、洗浄室の別途区分、各作業区域と更衣休憩区域・前室への区分、ドライシステムの導入) https://www.fgk.or.jp/wp-content/uploads/2015/10/tebiki_07.pdf
  • 兵庫県教育委員会事務局体育保健課「学校給食衛生管理マニュアル」(温度25℃以下・湿度80%以下、エアカーテン、排水溝の構造、配膳室の区分と施錠、給水栓のレバー式、下処理室の三槽式シンク、機械機器の可動式化) https://www.hyogo-c.ed.jp/~taiiku-bo/syokuikukakari/eiseikanri/eisei.pdf
  • 長野県教育委員会「学校給食の衛生管理」(非汚染作業区域の具体的な範囲、ドライシステムとウェット仕様の違い) https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/hokenko/hoken/kyushoku/shokuiku/jokyo/documents/04eiseikanri.pdf

※記載の基準は公表時点のものです。自治体が独自の衛生管理マニュアルを定めている場合があります。設計に当たっては所管の教育委員会および保健部局にご確認ください。