この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

教室の採光・照明はどう計画する?

集中を妨げる暗さ・まぶしさを減らす改修の考え方

照明を更新する予算がついたとき、既存器具を同じ位置で交換するだけでよいかは、施設担当者が判断に迷う点です。教室の中央は明るくても、廊下側の机や黒板の端が見えにくい場合があります。

電子黒板やタブレットを使う授業では、別の問題も生じます。画面を見やすくするためにカーテンを閉めた結果、ノートを書く手元が暗くなるなど、同じ教室でも活動によって必要な調整が変わります。

採光・照明計画では、明るさの基準を満たすことと、授業中の見えにくさを解消することを一緒に検討します。この記事では、基準の読み方と発注時の確認事項を整理します。特定の照明による集中力や成績の向上率を保証するものではありません。

この記事の要点

教室の照明改修は、照度の下限、望ましい水準、まぶしさ、授業時の操作方法を分けて計画します。

  • 2026年4月施行の学校環境衛生基準では、教室等の照度の下限は300 lxです。教室・黒板は500 lx以上が望ましい水準です。
  • 同基準では、コンピュータを使う教室等の机上は500~1,000 lx程度が望ましいとされています。
  • 机上と黒板は別々に評価します。照度の平均だけで、暗い席がないことを確認した扱いにはできません。
  • JIS Z 9110は2024年に改正されています。文科省の2018年度版資料に載る旧版由来の表を、現行規格の数値表として転記しないことが必要です。
  • 発注仕様には、照明器具の交換範囲だけでなく、遮光、点灯区分、現地測定、調整結果の記録を含めます。

教室の採光・照明計画とは何か?

教室の採光・照明計画とは、自然光と人工照明を組み合わせ、学習する場所と対象に応じた見やすさを整える計画です。

採光は窓などから昼光を取り入れることです。照明設備は、それだけでは不足する明るさを補い、天候や時間帯が変わっても活動を支えます。施設担当者は、窓の大きさと器具の台数を別々に決めず、座席、黒板、提示装置、内装を含めて検討する必要があります。

照度は面に届く光の量を表す指標で、単位はlxです。ただし、数値が高ければ必ず見やすいわけではありません。照明や窓が強く光って見える状態、黒板や画面に光が反射する状態も確認対象です。文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル」は、照度と輝度を区別し、周囲の仕上げも含めた評価を示しています。

内装の更新と合わせて計画する場合の全体像は学校施設の内装リフォームとは?にまとめています。

そのため、改修の目的は「明るい器具の導入」より具体的に設定します。例えば、廊下側の手元の暗さ、午後の黒板反射、端末利用時の映り込みなど、実際に解消したい問題を記録します。

教室の照度は何lxを基準にする?

学校環境衛生基準では、教室等の下限300 lxと、教室・黒板の望ましい500 lx以上を区別します。

次の表は2026年4月1日施行の基準に基づきます。調査結果の全国平均ではなく、学校環境を評価するための基準値です。数値の意味と測定面を併せて読む必要があります。

対象・評価項目基準に示された数値読み方
教室及びそれに準ずる場所下限300 lx教室全体の平均だけを示す基準ではありません
教室及び黒板500 lx以上が望ましい下限値と区別して扱います
コンピュータ使用時の机上500~1,000 lx程度が望ましい画面そのものの明るさではありません
テレビ・コンピュータ等の画面垂直面照度100~500 lx程度が望ましい画面に入射する光を評価します
教室・黒板それぞれの最大照度と最小照度の比20:1を超えないこと。10:1を超えないことが望ましい下限の扱いと望ましい水準を分けて確認します

出典:文部科学省「学校環境衛生基準」採光及び照明。

下限を設計目標と取り違えない

下限と望ましい水準が併記されているため、発注時にはどの水準を目指すかを明記します。「基準に適合する照明」とだけ記載すると、発注者と設計者で想定する性能が異なる可能性があります。

また、机上の明るさと黒板の見え方は別の確認事項です。机上の測定結果だけで黒板も適切と判断せず、授業で使用する面の向きに応じて検証します。黒板照明を設ける場合も、反射が強くならない位置と向きを検討します。

JIS Z 9110の学校の推奨照度はどう読む?

JISの照度表は、規格の版と対象となる作業を確認し、学校環境衛生基準の下限値と分けて読みます。

文科省の2018年度改訂版マニュアルには、JIS Z 9110に基づく学校の照度表が掲載されています。以下は、その公表資料で確認できる値です。現行JISの数値として示すものではありません。

文科省2018年度版マニュアルの区分掲載されている維持照度改修検討での注意点
学習空間の「教室」300 lx現行の学校環境衛生基準の望ましい水準とは区別します
作業としての「板書」500 lx対象面が机上とは異なります
学習空間の「実験実習室」500 lx実際の作業内容も確認します
学習空間の「図書閲覧室」500 lx読む位置や家具配置も条件になります

出典:文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル」2018年度改訂版、参考Ⅱ-1-10。維持照度は、使用期間を通じて維持する対象面の平均照度を扱う指標です。

一方、2026年9月24日に確認した現行のJIS Z 9110:2024は「照明基準総則」です。個別の照明基準がJISで定められている場合は、その個別基準を用いる構成です。屋内照明についてはJIS Z 9125:2023も確認対象になります。日本規格協会「JIS Z 9110:2024」、「JIS Z 9125:2023」。

JIS本文は有償の規格であり、本記事では現行版の学校用途の数値を転記しません。設計仕様を確定する際は、設計者に現行規格本文の適用箇所を確認してもらい、版年、対象面、維持照度などの条件を設計図書に明記します。

採光は窓を大きくすれば改善する?

採光の改善には、光を取り入れる量と、直射日光を抑える方法の両方が必要です。

2022年6月改訂の中学校施設整備指針は、窓の位置や面積だけでなく、日射に応じた庇やガラスの検討、必要に応じた遮光を挙げています。自然採光と照明設備を組み合わせて環境を整える考え方です。文部科学省「中学校施設整備指針」第5章。

既存教室では、まず窓の方位、周辺建物、樹木、庇、カーテンの使用状況を平面図に記録します。窓際がまぶしい時間帯と廊下側が暗い時間帯を分ければ、器具交換だけで足りるか、窓回りの調整も必要かを検討できます。

遮光した状態も設計条件に入れる

カーテンを開けた状態だけで照度を確認すると、映像を使う授業時の条件が抜けます。遮光設備を更新する場合は、閉めた状態での手元と黒板の見え方も検証対象にします。

全面を一度に暗くする方法だけでなく、必要な窓面を調整する方法も比較します。ただし、実際に採用できる範囲は窓の構成や操作位置によります。設備担当者だけで決めず、授業を担当する教員に操作の流れを確認します。

窓の変更を伴う工事では、採光の快適性評価と建築関係法令の適合確認を別に行います。照度が確保できることだけを理由に、窓を塞いでよいとは判断できません。変更内容に応じた手続きや適用条件は、設計者を通じて所管行政庁に確認してください。

LED化と内装改修はどう組み合わせる?

照明器具、天井・壁の仕上げ、黒板、座席配置を同じ計画図で検討します。

小学校施設整備指針は、必要照度の確保に加え、明るさの分布、まぶしさ、画面への映り込み、点灯区分などを扱っています。器具の性能表だけで教室の見え方が決まるわけではありません。文部科学省「小学校施設整備指針」第8章。

以下は、発注前の整理例です。すべてを一律に工事対象とする趣旨ではなく、現況に応じて調査範囲を選ぶための表です。

現場での訴え調査する項目設計案で確認する事項
廊下側の机が暗い座席ごとの照度、器具配置光の届き方と点灯区分
黒板の一部が白く光る見る位置、窓と器具の映り込み黒板面、遮光、照明の向き
端末利用時に手元が暗い授業中の遮光・消灯操作部分点灯や調光の操作方法
内装更新後に暗く感じる天井・壁の色、光沢、家具仕上げ変更を反映した照明計画
操作が複雑で調整されないスイッチ位置と表示教員が使い分けられる操作系統

器具そのものの選定と省エネ効果は学校施設の照明のLED化とは?で扱っています。

見積書は器具代だけで比較せず、調査、設計、配線変更、天井の復旧、測定、調整の範囲をそろえます。既存の配線や制御機器を利用する案と更新する案は、前提条件を分けて提示してもらいます。

色温度だけを集中力の根拠にしない

色温度の異なる照明を比較する場合も、「この色なら集中できる」と効果を決めつけません。教科書、肌、教材、掲示物の見え方や、光に対する感じ方を試用時に記録する方法が適切です。

選定理由は、授業で困っている状態がどう変わるかで説明します。明るさの印象に加え、反射、影、操作性を確認すると、採用後に残る課題を把握できます。

調査から完成検査まではどう進める?

現況の記録、設計条件の合意、施工後の測定、使用開始後の調整を一続きで進めます。

初めに、既存の環境衛生検査結果と教員からの申告を集めます。改善したい場所を図面で特定し、検査記録にない授業場面も補います。教室の広さや器具数が同じでも、窓の向きや周辺条件が異なるため、代表教室を選ぶ理由も残します。

次に、設計図書へ測定面、目標とする水準、点灯状態、遮光状態を記載します。昼光を含む測定と人工照明の性能確認を区別し、天候や測定時刻も報告書に残す仕様にすると、結果の読み違いを防げます。

2026年施行の学校環境衛生基準では、教室は所定の9か所に近い机上、黒板は9か所の垂直面で測定し、それぞれ最大・最小照度を示します。使用する照度計の規格も指定されています。文部科学省「学校環境衛生基準」検査方法。

完成検査では計測結果とともに、通常の座席位置から黒板や画面を確認します。提出資料には測定位置図、器具の設定、未解決事項、追加調整の担当を残します。基準の定期検査と工事契約上の完成検査は目的が異なるため、片方の実施だけで他方を済ませた扱いにしないことが必要です。

見え方の改善を学校全体の印象づくりにつなげる考え方は「選ばれる学校」をつくる内装デザインの基本を参照してください。

授業再開後は、実際に困った場面を教員から集めます。新しい操作方法が伝わっていない場合と、設計上の調整が必要な場合を分けて記録すると、追加工事の要否を判断しやすくなります。

よくある質問

発注時によく迷うのは、下限値の扱い、測定面、授業時の調整方法です。

Q. 教室が300 lxあれば改修は不要ですか?

A. それだけでは判断できません。2026年施行の基準は500 lx以上を望ましい水準としています。まぶしさや席による差、黒板の見え方も確認して判断します。

Q. 教室全体の平均照度だけを測れば足りますか?

A. 足りません。学校環境衛生基準は所定位置の最大照度と最小照度を扱います。平均値だけの資料では暗い場所の有無を確認できません。

Q. 電子黒板を見せるときは教室を全消灯してよいですか?

A. 手元の作業を含めて判断します。画面が見えてもノートが読みにくい状態では、授業全体に適した環境とはいえません。部分点灯や遮光範囲を試して条件を決めます。

Q. 照明器具を交換すれば窓のまぶしさも解消できますか?

A. 器具交換だけで解消するとは限りません。日射の方向、遮光設備、座席や画面の位置も調べ、原因に応じて対策を組み合わせます。

Q. 学校環境衛生基準とJISの数値が異なる資料はどう扱いますか?

A. 資料の版、対象、評価方法を確認します。旧版由来の維持照度と、学校環境衛生基準の下限値や望ましい水準を同じ意味で比較しないことが必要です。

まとめ

教室の採光・照明改修は、明るさの数値と授業中の見え方を合わせて判断する計画です。

2026年施行の学校環境衛生基準では、教室等の照度の下限は300 lx、教室・黒板は500 lx以上が望ましい水準です。JISを参照する際は版年を確認し、旧版の数値を現行の推奨値として扱わないことが重要です。

発注者は、困っている席や時間帯、画面を使う授業の操作を整理し、設計と検査の条件に反映します。器具、採光、内装を一体で検討し、施工後も測定と利用者の確認を行うことが、見えにくさを残さない改修につながります。

参考・出典

記載の制度・規格は確認時点のものです。最新の内容と個別施設への適用は、所管省庁の公表資料及び現行規格でご確認ください。

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