この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

校舎の減価償却は更新時期の目安になるか?

耐用年数と実際の寿命のずれ

「この校舎はもう償却が終わっているから、建て替えの時期だ」。理事会や財務の場で、こうした発言を聞くことがあります。

減価償却は会計上の費用配分です。建物がいつ使えなくなるかを示すものではありません。ただし、更新に必要な資金をどれだけ手元に残せているかを測る物差しにはなります。

この記事では、①減価償却とは何か、②学校法人会計と税法の耐用年数の違い、③償却済みの建物をどう見るか、④更新資金をどう積み立てるか、⑤更新のタイミングをどう決めるか、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 学校法人会計の耐用年数は、鉄筋・鉄骨コンクリート造の建物で50年
  • 税法上の耐用年数は、学校用の鉄筋コンクリート造で47年
  • 文部科学省は長寿命化によって築80〜100年まで使う考え方を示している
  • 減価償却は資金が出ていかない費用なので、同額を積み立てれば更新原資になる
  • 更新の時期は会計の償却年数ではなく、劣化状況と将来の使用見通しで決める

校舎の減価償却とは何か?

校舎の減価償却とは、建物の取得費用を、使用できる期間にわたって毎年の費用として配分する会計処理です。

建物を建てた年に全額を費用にすると、その年だけ大赤字になり、翌年以降は建物を使っているのに費用がゼロになります。これでは各年度の実態が見えないため、耐用年数で割って毎年少しずつ費用にします。

重要なのは、減価償却費は現金が出ていかない費用だという点です。建設費は建てたときに支払い済みで、減価償却の年に新たな支出は発生しません。

耐用年数は何年か?

使う基準によって違います。

学校法人会計

日本公認会計士協会の学校法人委員会報告第28号「学校法人の減価償却に関する監査上の取扱い」では、建物の耐用年数が次のように示されています。

構造耐用年数
鉄筋・鉄骨コンクリート造50年
ブロック造、レンガ造、石造40年
金属造30年
木造20年
簡易建物10年

構築物は鉄筋コンクリート造で30年、機器備品は構造・用途・使用状況等に応じて15年、10年、5年から選択適用するとされています。

また、残存価額をゼロとして計算しても妥当な会計処理として扱い、その場合は最終年度に備忘価額を付けるとされています。

税法

減価償却資産の耐用年数等に関する省令では、学校用または体育館用の建物について次の耐用年数が定められています。

構造耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造47年
れんが造・石造・ブロック造38年
金属造(骨格材の肉厚4ミリメートル超)34年
木造・合成樹脂造22年

地方公共団体の公会計でも、この省令の耐用年数が一般に用いられています。

実際の使用年数

一方、文部科学省の劣化状況調査の手引きでは、長寿命化改修によって建物を築50〜60年程度で改築することなく、築80〜100年まで長寿命化させる考え方が示されています。

つまり鉄筋コンクリート造の校舎では、会計上の耐用年数(47〜50年)と、実際に使える年数(適切な改修をすれば80年以上)の間に、30年以上のずれがあります。

償却が終わった建物はどう見ればよいか?

「帳簿上の価値がゼロ」と「使えない」は別の話です。

償却済みでも使える

築50年を過ぎて償却が終わった校舎でも、構造躯体の状態が良ければ長寿命化改修で30年以上使えます。文部科学省の手引きに掲載された事例でも、築51年や築54年の校舎について、コンクリート強度に著しい劣化がないことを確認したうえで改築ではなく長寿命化改修を選んでいます。

建物の実際の状態を把握する方法は建物カルテとは何か?にまとめています。

償却前でも傷んでいる

逆に、築30年で帳簿上はまだ価値が残っていても、雨漏りや設備の故障が頻発する建物もあります。維持管理が不十分だった場合や、立地条件が厳しい場合です。

会計の数字だけを見て「まだ新しい」と判断すると、必要な修繕を見送ることになります。

設備は建物より早く寿命が来る

建物本体の耐用年数が50年でも、空調、受変電設備、給排水設備は15〜30年程度で更新時期を迎えます。

設備を建物の一部として一括で償却していると、設備の更新時期が会計上見えなくなります。設備の劣化診断は学校の設備調査とは?を参照してください。

更新資金はどう積み立てるか?

減価償却費と同額を積み立てるのが基本の考え方です。

減価償却費は更新原資の目安

減価償却費は現金が出ていかない費用です。収支が均衡していれば、減価償却費に見合う資金が手元に残ります。これを別に取り分けておけば、建物が更新時期を迎えたときの原資になります。

ただし実際には、この資金が運転資金や他の支出に使われてしまい、更新時に手元にないケースが多くあります。

積立率という指標

日本私立学校振興・共済事業団の経営判断指標では、積立率が次の式で示されています。

積立率 = 運用資産 ÷ 要積立額(減価償却累計額+退職給与引当金+2号基本金+3号基本金)

減価償却累計額が分母に入っています。これまでに建物が使った分に見合う資金を、法人として保有できているかを測る指標です。

私立学校の経営指標と施設の関係は私立学校の経営改善で施設はどう位置づけるか?で扱っています。

第2号基本金で計画的に積み立てる

学校法人会計基準には、将来取得する固定資産の取得に充てるために、計画的に資金を積み立てる仕組みとして第2号基本金があります。

組入計画を理事会で決定し、計画に沿って毎年組み入れていきます。校舎の建替えや大規模改修が見えている場合、この仕組みを使うことで、資金を運転資金と分けて管理できます。

組入計画の立て方や会計処理の詳細は、監査を担当する公認会計士や所轄庁に確認してください。

更新のタイミングはどう決めるか?

会計ではなく、次の3つで決めます。

1. 構造躯体の状態

コンクリートの中性化、鉄筋の腐食、圧縮強度。これらが長寿命化に耐えられる状態なら改修、耐えられないなら改築です。

公立学校の長寿命化改良事業では、建築後40年以上経過した建物について構造体の劣化状況調査を行うことが採択要件とされています。私立学校でも同じ考え方で判断できます。

2. 将来の使用見通し

その建物をあと何年使うか。在籍者数の推計と学校の将来像から決めます。10年後に集約する予定の建物に、30年使う前提の投資をすると回収できません。

3. 機能の陳腐化

構造は健全でも、教室の広さや配置が現在の教育に合わない場合があります。改修で対応できるか、建替えが必要かを検討します。

改築と長寿命化の比較は施設投資のROIはどう考えるか?、判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。

会計と施設計画はどうつなげるか?

2つの表を並べて管理します。

表内容目的
固定資産台帳取得価額、耐用年数、減価償却累計額、帳簿価額会計上の価値と積立の目安
建物カルテ劣化状況、改修履歴、今後の工事予定と概算実際の更新時期と必要額

この2つを建物ごとに突き合わせると、「帳簿価額は残っているが、近く大規模な工事が必要な建物」や「償却は終わっているが、まだ長く使える建物」が見えてきます。

そのうえで、今後10〜20年の工事予定額と、積立済みの資金、今後の積立見込みを比較します。不足が見えれば、借入、補助金、または工事の優先順位の見直しで対応します。

中長期の計画の立て方は施設整備の中長期修繕計画の作り方を参照してください。

公立学校では減価償却をどう使うか?

公立学校の場合、地方公会計の固定資産台帳に校舎の取得価額と減価償却累計額が記録されています。ここから算出されるのが有形固定資産減価償却率です。

有形固定資産減価償却率は、償却資産の取得価額に対する減価償却累計額の割合で、資産老朽化比率とも呼ばれます。数値が高いほど、耐用年数に対して資産の取得からの経過年数が長いことを示します。

この指標は団体全体や施設類型ごとに算出され、類似団体との比較にも使われます。学校施設の比率が高い自治体は、それだけ更新需要が近いことを意味します。

ただし公立学校でも、この比率は会計上の経過年数を示すにすぎません。実際の更新時期は、私立学校と同じく劣化状況と将来の使用見通しで決めます。公共施設全体の再編の中での学校の位置づけは公共施設の再編と学校で扱っています。

よくある質問

Q. 償却が終わった校舎は建て替えなければいけませんか。

A. その必要はありません。減価償却は会計上の費用配分であり、建物の使用可能年数を示すものではありません。構造躯体の状態が良ければ、長寿命化改修で使い続けられます。

Q. 学校法人会計と税法で耐用年数が違うのはなぜですか。

A. 目的が違うためです。学校法人会計の耐用年数は日本公認会計士協会の報告で示された監査上の取扱い、税法の耐用年数は課税所得の計算のための基準です。学校法人の計算書類では学校法人会計の基準を用います。

Q. 減価償却費を全額積み立てれば、建替え費用は足りますか。

A. 足りない可能性が高いです。減価償却費は取得時の価格が基準ですが、建替え時の工事費は物価や仕様の変化で大きく上がっています。取得時と現在の単価の差を見込んで積立額を設定する必要があります。

Q. 設備は建物と分けて償却すべきですか。

A. 分けて管理すると、設備の更新時期が見えやすくなります。会計処理の方法は監査担当の公認会計士に確認してください。

Q. 公立学校でも減価償却は関係ありますか。

A. 地方公会計では固定資産台帳を整備し、減価償却を計上しています。有形固定資産減価償却率は施設の老朽化度合いを示す指標として公表されています。

まとめ

学校法人会計の耐用年数は鉄筋コンクリート造の建物で50年、税法は学校用で47年です。一方、文部科学省は長寿命化によって築80〜100年まで使う考え方を示しており、会計上の耐用年数と実際の使用年数には30年以上のずれがあります。

このため、償却が終わったことを理由に建て替える必要はありません。更新の時期は、構造躯体の状態、将来の使用見通し、機能の陳腐化の3つで判断します。

一方で、減価償却費は現金が出ていかない費用であり、同額を積み立てれば更新の原資になります。第2号基本金を使えば、資金を運転資金と分けて計画的に管理できます。固定資産台帳と建物カルテを建物ごとに突き合わせることで、会計と施設計画がつながります。

参考・出典

記載の基準・制度は公表時点のものです。会計処理の適用については監査担当の公認会計士または所轄庁にご確認ください。

CONTACT

学校施設のご相談

その工事、補助金が使えるか無料でチェックします

トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。

補助金の無料チェックを依頼する

株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。

受付時間 平日 9:00〜18:00