この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

みなし寄附金は学校の施設整備にどう活かせるか?

収益事業の利益を修繕財源に回す仕組み

駐車場の貸付、体育館の時間貸し、購買部の売上。学校法人が収益事業で得た利益には法人税がかかります。ただし、その利益を教育事業に回した場合、一定の範囲で税負担を軽くできる仕組みがあります。それが、みなし寄附金です。

施設の維持費を収益事業で補おうとする学校法人にとって、この仕組みは重要です。収益事業の利益を施設の修繕や改修の財源に回せば、税負担を抑えながら、施設の維持に充てる資金を確保できます。

この記事では、①みなし寄附金とは何か、②損金算入の限度額、③施設整備への活かし方、④会計と税務の手続き、⑤注意点、の5点を整理します。

この記事の要点

  • みなし寄附金は、収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額を、収益事業の寄附金とみなす仕組み
  • 学校法人の損金算入の限度額は、所得金額の50%と年200万円のいずれか多い額
  • 所得が年200万円以下なら、全額を教育事業に繰り入れることで課税所得をゼロにできる
  • 繰り入れた資金は、施設の修繕や改修を含む教育事業の財源に充てられる
  • 区分経理と、繰入の事実を示す記録が前提になる

みなし寄附金とは何か?

みなし寄附金とは、公益法人等が、収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額を、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、一定の範囲で損金に算入できる仕組みです。法人税法に定められています。

学校法人は、法人税法上の公益法人等に当たり、収益事業から生じた所得にだけ法人税が課されます。同じ法人の中で、収益事業の資金を教育事業に移すことは、外部への寄附ではありません。しかし税法上は、これを寄附とみなすことで、教育事業に回した分の課税を軽くしています。

収益事業の判定や税率の全体像は学校法人の収益事業にはどう法人税がかかるか?にまとめています。

損金に算入できる限度額はいくらか?

学校法人の場合、所得金額の50%と年200万円のいずれか多い額です。

財務省の公益法人等の課税に関する資料では、法人の種類ごとの限度額が次のように示されています。

法人の種類みなし寄附金の損金算入限度額
公益社団法人・公益財団法人所得金額の50%、または公益目的事業の実施に必要な金額のいずれか多い額
学校法人・社会福祉法人など所得金額の50%、または年200万円のいずれか多い額
認定NPO法人所得金額の50%、または年200万円のいずれか多い額

所得別の計算例

みなし寄附金を最大限使った場合の、課税所得の変化を示します。ここでの所得は、みなし寄附金を差し引く前の収益事業の所得です。

所得金額損金算入の限度額限度額まで繰り入れた場合の課税所得
150万円200万円(全額繰入で150万円)0円
200万円200万円0円
400万円200万円(50%の200万円と同額)200万円
1,000万円500万円500万円
3,000万円1,500万円1,500万円

所得が年200万円以下であれば、全額を教育事業に繰り入れることで、課税所得をゼロにできます。所得が400万円を超えると、限度額は所得の50%になります。

税額への影響

学校法人の法人税率は、年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%です。たとえば所得が1,000万円の場合、みなし寄附金を使わなければ所得1,000万円に課税されますが、限度額の500万円を繰り入れれば、課税所得は500万円になります。

法人税のほか、所得に連動する法人住民税や事業税の負担も変わります。具体的な税額は、税理士に確認してください。

施設整備にどう活かせるか?

収益事業の利益を、施設の維持と改修の財源に回す流れをつくれます。

収益事業と施設の関係

学校法人の収益事業には、施設を使うものが多くあります。

収益事業の例使う施設
駐車場の貸付校地の一部
体育館・講堂の時間貸し体育館、講堂
空き校舎の賃貸空いた棟
購買部での物品販売校舎内の一室

施設を使って得た利益を、施設の修繕に回す。みなし寄附金を使えば、この循環を税負担を抑えながら回せます。駐車場やグラウンドの貸出の税務は学校の駐車場・グラウンドを貸すと税金はどうなるか?を参照してください。

繰り入れた資金の使い道

繰り入れた資金は、教育事業の財源として使えます。校舎の修繕、設備の更新、長寿命化改修の自己負担分などに充てることができます。

将来の施設整備に備えるなら、繰り入れた資金を第2号基本金の特定資産として積み立てる方法もあります。基本金の仕組みは学校法人会計で施設整備はどう処理するか?で扱っています。

年間の流れ

時期内容
年度中収益事業を区分経理し、収入と費用を記録する
決算前収益事業の所得を見込み、繰入額を決める
決算収益事業会計から教育事業へ繰り入れ、記録を残す
申告みなし寄附金を損金に算入して法人税を申告する
翌年度以降繰り入れた資金を施設の修繕・改修に充てる

具体的な数字で見るとどうなるか?

駐車場の貸付を例に、流れを追います。数字は説明のための仮定です。

前提

学校法人が校地の一部を月極駐車場として貸し、年間600万円の賃料収入を得ているとします。管理委託費、舗装の修繕費、按分した固定資産税などの費用が年間200万円で、収益事業の所得は400万円です。

みなし寄附金を使わない場合

所得400万円に法人税がかかります。年800万円以下の部分の税率15%を当てはめると、法人税は60万円です。

みなし寄附金を使う場合

所得400万円の50%と200万円のいずれか多い額は、200万円です。200万円を教育事業に繰り入れれば、課税所得は200万円となり、法人税は30万円になります。

項目使わない場合使う場合
収益事業の所得400万円400万円
みなし寄附金0円200万円
課税所得400万円200万円
法人税(15%)60万円30万円
教育事業に回る資金税引後の残りを別途繰入200万円+税引後の残り

法人税の差は30万円ですが、それ以上に、教育事業に回す資金の流れが明確になる点に意味があります。毎年200万円を校舎の修繕に充てる計画を立てれば、駐車場の収入が施設の維持に直接つながります。

実際の税額は、法人住民税や事業税を含めて税理士に確認してください。

繰入額はどう決めるか?

施設の修繕計画と合わせて決めます。

限度額を目安にする

税負担の軽減を最大にするなら、限度額まで繰り入れるのが基本です。ただし、収益事業側で翌年度に設備の更新が控えている場合は、その資金を残しておく必要があります。

修繕計画と結びつける

中長期の修繕計画で、今後数年間に必要な修繕費を見込みます。収益事業からの繰入をその財源の一部として位置づければ、繰入額の根拠を理事会に説明しやすくなります。

会計と税務の手続きはどうするか?

区分経理が前提です。

区分経理

公益法人等は、収益事業から生ずる所得に関する経理と、収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行う必要があります。学校法人会計の中で、収益事業を別の会計単位として管理します。

施設を教育と収益事業の両方で使っている場合は、光熱水費や減価償却費などの共通費用を、面積比や使用時間比などの合理的な基準で按分します。

繰入の記録

みなし寄附金は、収益事業に属する資産のうちから、収益事業以外の事業のために支出した金額が対象です。繰入を決めた記録、資金を移した記録を残しておきます。帳簿上の振替だけでなく、収益事業の口座から教育事業の口座へ実際に資金を移しておくと、事実関係が明確になります。

どんな点に注意すべきか?

3つあります。

限度額を超えた部分は損金にならない

限度額は毎年の所得によって変わります。限度額を超えて繰り入れることはできますが、超えた部分は損金に算入されません。施設の修繕のために多めに繰り入れても、税負担の軽減には上限があることを理解しておきます。

収益事業の資金繰り

繰入によって収益事業の手元資金が減ると、収益事業に必要な設備の更新や運転資金が不足することがあります。収益事業側の資金計画も合わせて立てます。

制度の改正

公益法人等の課税は、税制改正の対象になることがあります。毎年の税制改正の内容を確認し、最新の制度で計画を立てます。学校法人の税制全体は学校法人の税制優遇はどこまで及ぶか?にまとめています。

よくある質問

Q. みなし寄附金を使うには、事前の届出が必要ですか。

A. みなし寄附金そのものについて特別な届出は求められていませんが、収益事業を始めた際には収益事業開始届出書の提出が必要です。申告にあたっては、繰入の事実を示す書類を整えておきます。

Q. 収益事業が赤字の年は、みなし寄附金は使えますか。

A. 所得がない年は損金算入の効果がありません。収益事業が赤字であれば、そもそも法人税の課税所得は生じません。

Q. 繰り入れた資金を施設整備に使わなかった場合はどうなりますか。

A. 教育事業のために支出した資金であれば、使い道が施設整備に限られるわけではありません。人件費や教育研究費に充てることもできます。

Q. 収益事業の所得の計算で、校舎の減価償却費は差し引けますか。

A. 収益事業に使っている部分の減価償却費は、合理的な基準で按分したうえで、収益事業の費用に含めることができます。按分の基準は毎年同じものを使い、根拠を記録しておきます。

Q. 公立学校にも関係しますか。

A. 地方公共団体には法人税の納税義務がないため、この仕組みは関係しません。

まとめ

みなし寄附金は、学校法人が収益事業に属する資産のうちから教育事業のために支出した金額を、一定の範囲で損金に算入できる仕組みです。学校法人の限度額は、所得金額の50%と年200万円のいずれか多い額で、所得が年200万円以下であれば、全額の繰入で課税所得をゼロにできます。

駐車場や体育館の貸出など、施設を使った収益事業の利益を、施設の修繕や改修の財源に回す流れをつくれる点が、施設整備にとっての意味です。繰り入れた資金を第2号基本金の特定資産として積み立てれば、将来の更新にも備えられます。

区分経理と繰入の記録が前提となり、限度額を超えた部分は損金になりません。収益事業を始める段階で、税理士と繰入の方針を決めておくことが大切です。

参考・出典

記載の税制は公表時点のものです。実際の課税関係は、税務署・税理士にご確認ください。

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