目次
収益事業の判定と注意点
夜間と休日のグラウンド、使っていない駐車場、空いている体育館。学校には、使われていない時間帯の施設が多くあります。これを外部に貸せば収入になります。
ただし、貸し方によっては法人税の対象になり、固定資産税の非課税の扱いにも影響します。先に税務の整理をしておかないと、後から想定外の負担が発生します。
この記事では、①学校施設の収益活用とは何か、②法人税の収益事業の判定、③固定資産税への影響、④私立学校法上の手続き、⑤公立学校の場合、の5点を整理します。
この記事の要点
- 学校法人が駐車場業・席貸業・不動産貸付業を継続して営むと、法人税法上の収益事業に当たる
- たまたまグラウンドを外部団体の運動会に貸した程度では、収益事業に該当しない
- 講堂や体育館を、本来の目的に使わない時間に随時興行等に使わせている場合は、事業場を設けているものとみなされる
- 教育の用に供する不動産は固定資産税が非課税だが、貸付の形態によっては影響する可能性がある
- 公立学校では、目的外使用許可や学校開放の制度の枠内で扱う
学校施設の収益活用とは何か?
学校施設の収益活用とは、校地・校舎・駐車場・グラウンドなどを、教育活動に使わない時間や空間で外部に貸し出し、使用料などの収入を得ることです。
代表的なのは次のような形です。
- 駐車場を月極やコインパーキングとして貸す
- 夜間や休日にグラウンドを地域のスポーツ団体に貸す
- 体育館や講堂をイベント会場として貸す
- 空き教室を塾や習い事の教室に貸す
この記事では、主に時間貸しや外部利用の形(駐車場・グラウンド・体育館)を扱います。空いた校舎を長期にわたって賃貸する場合は空き校舎を貸すと税金はどうなる?を参照してください。
いずれも、施設の維持費の一部を賄う手段になります。私立学校の経営改善における施設の位置づけは私立学校の経営改善で施設はどう位置づけるか?で扱っています。
法人税はかかるのか?
学校法人の場合、継続して事業として行えば、かかります。
収益事業の3つの要件
学校法人は公益法人等に該当し、原則として法人税は課されません。ただし、法人税法施行令に定められた34業種のいずれかを、事業場を設けて、継続して営んでいる場合は、収益事業として法人税の対象になります。
文部科学省が公表している監事研修の資料では、この34業種に駐車場業、席貸業、不動産貸付業が含まれることが示されています。
| 貸し方 | 該当する可能性がある業種 |
|---|---|
| 駐車場を月極・時間貸しで貸す | 駐車場業 |
| 体育館・講堂・教室を時間単位で貸す | 席貸業 |
| 校地や建物を継続的に貸す | 不動産貸付業 |
たまたまの貸付は該当しない
同じ資料では、たまたま学校のグラウンドをある外部の団体の運動会の場所として貸したことがあったとしても、それが収益事業に該当することにはならないとされています。
一方で、講堂や体育館について、本来の目的に使用しない間に随時、興行等のために利用させているような場合には、事業場を設けているものとみなされるとされています。
つまり判定の分かれ目は、単発か継続か、そして事業として行っているかです。定期的に募集をかけて貸している、料金表を作っている、専用の窓口を設けている、といった実態があれば、継続的な事業と見られやすくなります。
税率とみなし寄附金
収益事業に該当した場合、その所得に法人税が課されます。公益法人等には軽減税率が適用されます。
また、収益事業から教育事業へ資金を繰り入れた場合、一定の範囲で寄附金として損金に算入できる仕組み(みなし寄附金)があります。
具体的な税率と損金算入の限度額は改正されることがあるため、実際の申告にあたっては税理士に確認してください。学校法人の税制全般は学校法人の税制優遇の全体像、収益事業と法人税の詳細は学校法人の収益事業と法人税で扱っています。
固定資産税への影響はあるか?
注意が必要です。
学校法人が所有する不動産のうち、その設置する学校において直接保育または教育の用に供する不動産は、固定資産税および都市計画税が課税されません。
外部への貸付が一時的で、教育の用に供している実態が主であれば、この扱いが維持されることが多いと考えられます。しかし、駐車場として恒常的に第三者に貸している土地や、教育に使わず専ら賃貸している建物は、「直接教育の用に供する」とは言いにくくなります。
非課税の判断は市町村(東京23区は都)が行います。貸付を始める前に、所在地の税務担当に扱いを確認しておくのが安全です。
消費税
土地の貸付や、期間1か月以上の住宅の貸付は消費税が非課税ですが、駐車場の貸付や施設の時間貸しは課税取引になるのが原則です。課税売上が一定額を超えると、消費税の納税義務が生じます。
私立学校法上の手続きは必要か?
収益事業として行う場合は、必要です。
私立学校法では、学校法人は教育に支障のない限り、その収益を学校の経営に充てるため、収益を目的とする事業を行うことができるとされています。ただし、行う事業の種類は寄附行為に定める必要があり、所轄庁の認可を受けて寄附行為を変更することになります。
私立学校法上の収益事業として認められる業種は告示で定められており、法人税法上の34業種とは範囲が異なります。どの業種に当たるか、寄附行為の変更が必要かどうかは、所轄庁に事前に相談してください。
また、収益事業は学校の会計とは区分して経理することが求められます。
公立学校ではどう扱うか?
公立学校の施設は行政財産です。貸し出すには、法令に定められた枠内で行う必要があります。
学校施設の開放
学校教育法第137条では、学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために利用させることができるとされています。夜間・休日の体育館やグラウンドの地域開放は、この考え方に基づくものです。
目的外使用許可
地方自治法では、行政財産はその用途または目的を妨げない限度において使用を許可することができるとされています。駐車場や空き教室を一時的に使わせる場合は、この目的外使用許可の形を取るのが一般的です。使用料は条例で定めます。
貸付
行政財産そのものを貸し付けられる場合は、地方自治法で限定されています。空いた校舎を長期にわたって民間に貸す場合は、用途廃止して普通財産にしたうえで貸し付けるなどの手続きが必要になることがあります。
廃校となった施設の貸付・売却は廃校の売却・貸付と公募の進め方で扱っています。
貸し出すときに確認すべきことは何か?
税務以外にも、確認すべき点があります。
安全管理と責任の分担
外部の利用者が施設内で事故に遭った場合の責任を、契約で明確にします。利用者側に保険加入を求めるのが一般的です。
防犯と動線
利用者が校舎内に立ち入らないよう、動線と施錠の範囲を決めます。グラウンドだけを貸すなら、校舎への出入口を閉鎖できる構造かを確認します。
補助金を受けた施設の制限
国庫補助を受けて整備した施設は、補助目的以外に使う場合に承認が必要になることがあります。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づく財産処分の制限です。整備時の補助金の交付条件を確認してください。
施設の改修が必要になる場合
外部利用を想定すると、照明の増設、トイレの外部からの動線、駐車場の舗装や区画線など、改修が必要になることがあります。改修費と見込み収入を比較して判断します。
収入はどれくらい見込めるか?
立地と貸し方によって大きく変わります。事前に試算する際は、次の3点を並べます。
見込み収入
周辺の月極駐車場の相場、近隣の公共体育館やグラウンドの使用料を調べ、稼働率を掛けて年間の収入を見込みます。稼働率は楽観的に見ないことが重要です。平日夜間と休日に限られるため、民間施設と同じ稼働率にはなりません。
追加で発生する費用
照明や空調の光熱費、清掃、鍵の管理、予約受付の人件費、保険料。外部利用のための改修費がかかる場合は、その償却分も含めます。
税負担
収益事業に該当する場合は法人税、課税取引であれば消費税、固定資産税の扱いが変わる場合はその増分を見込みます。
この3つを差し引いた手取りが、施設維持費をどれだけ補えるかで判断します。収入が小さくても、地域との関係づくりや学校の認知度向上という効果を重視して実施する学校もあります。
よくある質問
Q. 年に数回、体育館を地域のイベントに貸す程度でも税金はかかりますか。
A. たまたま貸した程度であれば、収益事業に該当しないと整理されています。ただし定期的に募集して貸している場合は、継続的な事業と見られる可能性があります。
Q. 教職員用の駐車場を外部に貸すと、どうなりますか。
A. 継続して貸せば駐車場業として収益事業に当たる可能性があります。また、その土地が「直接教育の用に供する」不動産でなくなると、固定資産税の扱いにも影響する可能性があります。
Q. 収益事業の所得はすべて法人税の対象ですか。
A. 収益事業から教育事業に資金を繰り入れた場合、一定の範囲で損金に算入できる仕組みがあります。具体的な計算は税理士に確認してください。
Q. 公立学校のグラウンドを民間のスポーツクラブに有料で貸せますか。
A. 学校開放や目的外使用許可の枠内で、条例に定めた使用料で利用させることは可能です。長期・独占的な利用になる場合は、別の手続きが必要になることがあります。
Q. 空き教室を塾に貸すことはできますか。
A. 私立学校では、収益事業としての手続きと税務の整理が必要です。公立学校では、用途や期間によって目的外使用許可で対応できるか、用途廃止が必要かが変わります。長期の賃貸については空き校舎を貸すと税金はどうなる?で扱っています。
まとめ
学校の駐車場やグラウンドを外部に貸すことは、施設の維持費を補う手段になります。ただし学校法人の場合、駐車場業・席貸業・不動産貸付業は法人税法上の収益事業に当たり、継続して営めば法人税の対象になります。
たまたまグラウンドを外部団体に貸した程度であれば収益事業に該当しない一方、体育館や講堂を随時興行等に使わせている場合は事業場を設けているとみなされます。判定の分かれ目は、継続性と事業としての実態です。
あわせて、固定資産税の非課税、私立学校法上の寄附行為の定め、補助金で整備した施設の処分制限も確認が必要です。公立学校では、学校開放と目的外使用許可の枠内で扱います。始める前に、所轄庁、税務担当、税理士に確認しておくことが、後からの負担を避ける近道です。
参考・出典
- 文部科学省「監事が知っておきたい 学校法人の税務」(平成29年10月13日 監事研修会資料) https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/18/1397326_4.pdf
- 国税庁 税務大学校「公益法人等に対する法人課税の在り方について-学校法人に対する課税を中心に-」 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/86/03/index.htm
- 学校教育法、地方自治法、私立学校法、地方税法
記載の税制・制度は公表時点のものです。実際の課税関係は、所轄庁・税務署・地方公共団体の税務担当・税理士にご確認ください。
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