目次
補助率・基準・学校施設の活用
保育所の園舎が古くなった。放課後児童クラブの利用が増えて手狭になった。学校の空き教室を学童に使いたい。いずれも施設整備の補助制度がありますが、保育所と放課後児童クラブでは使う交付金も補助率も異なります。
さらに、施設の面積や職員の配置には基準があります。補助の額だけを見て計画すると、基準を満たす面積が確保できず、後から設計をやり直すことになります。
この記事では、①保育所等の補助、②放課後児童クラブの補助、③面積などの基準、④学校施設を使う場合、⑤申請の進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 保育所等は、こども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金で、国1/2、市区町村1/4、設置主体1/4が基本
- 待機児童対策などに当たる場合は、国の負担が2/3に引き上げられる
- 放課後児童クラブは、子ども・子育て支援施設整備交付金で、公立は国・都道府県・市町村が各1/3、民立は国2/9・都道府県2/9・市町村2/9・社会福祉法人等1/3
- 放課後児童クラブの専用区画は、児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上が基準
- 令和7年度の調査では、学校施設以外に転用された余裕教室3,094室のうち2,373室、76.7%が放課後児童クラブだった
保育所等の施設整備にはどの補助があるか?
こども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金が中心です。
この交付金は、保育所等の新設、修理、改造または整備に要する経費等を補助することにより、子どもを安心して育てることができる環境を整備することを目的としています。
対象となる施設
- 私立の保育所
- 幼保連携型認定こども園(私立)
- 保育所型・幼稚園型認定こども園(私立)
- 公立認定こども園(教育部分に限る)
- 小規模保育施設
- 乳児等通園支援事業の実施事業所
対象事業は、施設整備事業のほか、防音壁設置事業、防犯対策強化整備事業です。
負担割合
| 区分 | 負担割合 |
|---|---|
| 基本 | 国1/2、市区町村1/4、設置主体1/4 |
| 引き上げ(待機児童対策、人口減少対策、乳児等通園支援事業の実施) | 国2/3、市区町村1/12、設置主体1/4 |
| 公立認定こども園 | 国1/3、設置者(市区町村)2/3 |
令和8年度の予算額は230億円で、令和7年度の245億円から減少しています。これとは別に、令和7年度の補正予算で306億円が措置されています。
幼稚園・認定こども園の側から見た制度の分かれ方は幼稚園・認定こども園の施設整備にはどの補助金が使えるか?にまとめています。
放課後児童クラブにはどの補助があるか?
子ども・子育て支援施設整備交付金が使えます。
対象は、市町村の整備計画に基づく放課後児童クラブの施設整備等に要する経費です。新しく建てる場合だけでなく、学校施設を含む既存施設の改修も対象になります。
補助率
| 区分 | 国 | 都道府県 | 市町村 | 事業者 |
|---|---|---|---|---|
| 公立(通常) | 1/3 | 1/3 | 1/3 | — |
| 民立(通常) | 2/9 | 2/9 | 2/9 | 社会福祉法人等1/3 |
| 公立(待機児童発生時の引き上げ) | 2/3 | 1/6 | 1/6 | — |
| 民立(待機児童発生時の引き上げ) | 1/2 | 1/8 | 1/8 | 社会福祉法人等1/4 |
引き上げの対象は、財政力指数が1未満の自治体などとされています。
令和8年度の予算額は67億円の内数で、令和7年度の当初予算は91億円の内数でした。
整備の目標と現状
国は2030年頃に約165万人分の受け皿確保を目標としています。2025年5月時点の登録児童は約157万人、待機児童は1.6万人で、2025年10月時点では0.7万人とされています。
利用の見込みは地域によって差が大きいため、自治体の整備計画で自校区の位置づけを確認することが先決です。待機児童数は年度当初に多く、年度の後半に減る傾向があるため、どの時点の数字を根拠にするかも整理しておきます。
面積などの基準はどうなっているか?
放課後児童クラブには、設備と運営の基準があります。
放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準では、次のように定められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 専用区画の面積 | 児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上 |
| 面積の算定 | 専用区画の面積を児童数で割った値。事務室や便所は含まない |
| 衛生・安全 | 専用区画等は、衛生及び安全が確保されたものでなければならない |
| 支援の単位 | 1つの支援の単位を構成する児童の数は、おおむね40人以下 |
| 職員 | 放課後児童支援員は、支援の単位ごとに2人以上。そのうち1人を除き補助員で代替可能 |
この基準は、施設の計画に直接影響します。利用児童が80人なら支援の単位は2つになり、専用区画も約132平方メートル以上が必要という計算になります。事務室や便所は面積に含められないため、教室1室をそのまま充てられるかどうかは、面積の実測から確認します。
保育所についても、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準で、乳児室やほふく室、保育室、屋外遊戯場の面積などが定められています。設計の前に、基準を満たす面積を確保できるかを確かめます。
学校施設を使う場合はどうなるか?
余裕教室の活用が最も多い形です。
文部科学省の令和7年度の調査では、学校施設以外の用途に転用された余裕教室3,094室のうち、2,373室、76.7%が放課後児童クラブでした。子どもが移動せずに放課後を過ごせるため、保護者の需要が高い使い方です。
財産処分の手続き
国庫補助を受けて整備した学校施設を、学校教育以外の用途に使う場合は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づく財産処分の手続きが必要です。ただし文部科学省は手続きを簡素化しており、放課後児童クラブなどへの転用は、経過年数が10年未満でも報告をもって承認があったものとみなされる扱いが示されています。
余裕教室の使い道全体は空き教室(余裕教室)の使い道は何か?にまとめています。
設計上の確認事項
学校の中に学童を設ける場合、次の点を確認します。
- 専用の出入口を設け、児童生徒の動線と分けられるか
- 専用区画の面積が基準を満たすか(事務室・便所を除いて計算する)
- 区画内にトイレと手洗いを確保できるか
- 静養できるスペースと、荷物の収納を確保できるか
- 建築基準法上の用途変更に当たるか(変更部分が200平方メートルを超える場合は確認申請が必要)
- 光熱水費のメーターを分けるか、按分するか
- 長期休業中は朝から利用するため、空調と給湯の能力が足りるか
申請はどう進めるか?
市町村の計画に位置づけることが出発点です。
どちらの交付金も、市区町村を通じて交付される仕組みです。事業者が単独で国に申請することはできません。整備を考えた時点で、保育所は市町村の保育担当課、放課後児童クラブは子育て支援の担当課に相談します。
年度の流れは、前年度のうちに市町村の計画へ位置づけ、年度当初に交付の協議、その後に内示という順になるのが一般的です。内示や交付決定の前に契約や着手をすると、補助の対象外になります。
交付要綱の読み方は補助金の交付要綱の読み方、対象経費の線引きは補助金の対象経費・対象外経費の線引きを参照してください。
どんな点に注意すべきか?
3つあります。
補助基準額と実際の工事費
補助は、工事費の実額ではなく、定員や面積に応じた補助基準額を基に算定されるのが一般的です。基準額を超える部分は自己負担になります。資材費と労務費の上昇が続いているため、設計時の概算と入札結果の開きも見込んでおきます。
完了後の精算
補助金は原則として工事の完了後に精算して交付されます。工事中の支払いは立て替えになるため、資金繰りの計画が必要です。借入れでつなぐ場合は、金融機関との調整も工程に含めます。
運営の見通し
施設を整備しても、職員を確保できなければ定員を満たせません。放課後児童支援員は支援の単位ごとに2人以上が必要です。支援の単位を増やせば職員も増えるため、採用と処遇の見通しを整備計画と合わせて立てます。
整備はどんな順番で進めるか?
5つの段階で進みます。
1. 需要を確かめる
就学前人口の推計、入所申込の状況、放課後児童クラブの登録児童数と待機の有無を確認します。数年先まで需要が続くのか、一時的な増加なのかで、恒久的な施設を建てるか既存施設の改修で対応するかが変わります。
2. 場所の候補を比べる
新築、既存施設の改修、学校の余裕教室、民間物件の借り上げを並べ、面積、通所の安全、費用、整備までの期間を比べます。学校内に設ける場合は、学校の管理体制との調整も必要です。
3. 基準を満たすか確認する
専用区画の面積、トイレ、静養スペース、避難経路を図面で確認します。基準を満たさない場合は、支援の単位を分ける、別室を併用するなどの方法を検討します。
4. 市町村の計画に位置づける
整備計画への位置づけがなければ交付金は使えません。前年度のうちに担当課と協議します。
5. 設計・申請・工事
内示と交付決定の時期を確認し、着手の時期を決めます。工事の期間中、既存の施設をどう使うか(仮設、他施設の利用、受け入れ人数の調整)も合わせて決めます。
よくある質問
Q. 民間の学童保育でも補助を受けられますか。
A. 子ども・子育て支援施設整備交付金では、民立の場合の補助率が定められています。ただし市町村の整備計画に位置づけられることが前提です。
Q. 保育所の大規模修繕は対象になりますか。
A. 就学前教育・保育施設整備交付金は、保育所等の新設、修理、改造または整備に要する経費等を対象としています。工事の内容が対象に当たるかは、年度の要綱と市町村の担当課で確認してください。
Q. 学校の教室をそのまま学童に使えますか。
A. 面積、出入口、トイレ、収納の条件を満たせば使えます。専用区画の面積は事務室と便所を除いて算定するため、教室の面積だけで判断しないでください。学校と運営主体の間で、利用時間や鍵の管理の取り決めも必要です。
Q. 待機児童がいない地域では補助率は上がりませんか。
A. 待機児童対策以外に、人口減少対策や乳児等通園支援事業の実施を理由とする引き上げも設けられています。該当するかは市区町村に確認してください。
Q. 学校の敷地内に専用棟を建てる場合はどうなりますか。
A. 子ども・子育て支援施設整備交付金の対象になり得ます。敷地内に建てる場合は、学校の用途との関係、既存建物の建ぺい率・容積率、避難経路への影響も確認が必要です。
まとめ
保育所等の施設整備は、こども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金で、国1/2、市区町村1/4、設置主体1/4が基本です。待機児童対策などに当たる場合は国の負担が2/3に引き上げられます。
放課後児童クラブは、子ども・子育て支援施設整備交付金で、公立は国・都道府県・市町村が各1/3、民立は国2/9・都道府県2/9・市町村2/9・社会福祉法人等1/3です。専用区画は児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上、支援の単位はおおむね40人以下という基準があります。
学校の余裕教室を使う形が最も多く、令和7年度の調査では学校外用途への転用3,094室のうち76.7%が放課後児童クラブでした。国庫補助を受けた施設の転用には財産処分の手続きが要りますが、報告で足りる扱いが示されています。市町村の計画に位置づけることが、どの制度でも最初の一歩になります。
参考・出典
- こども家庭庁「就学前教育・保育施設整備交付金」(令和8年度予算資料) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/214cacce-0305-4ce9-a120-355df90cf035/960ad77c/20260408_policies_hoiku_yosan_29.pdf
- こども家庭庁「令和8年度 放課後児童対策、こども・子育て支援関連予算案」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/efa58163-4cc2-43d6-ba57-3df41d552a52/686828c5/20260114_policies_kosodateshien_budget_10.pdf
- こども家庭庁「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準について」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0abf2f27-1ebe-4fa2-bab8-362dd67ffc4b/9650171a/20230401_policies_kosodateshien_houkago-jidou_hourei-tsuuti_02.pdf
- 文部科学省「令和7年度 余裕教室活用状況について」 https://www.mext.go.jp/content/20260410-mxt_sisetujo-000012748_1.pdf
- 文部科学省「公立学校施設整備費補助金等に係る財産処分手続の概要」(令和8年3月) https://www.mext.go.jp/content/20260331-mxt_sisetujo-100003148_03.pdf
記載の制度・予算額は公表時点のものです。最新の要件・補助率・募集時期は、所管省庁と市区町村の担当課でご確認ください。
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