この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

補助金と税制を組み合わせた資金計画はどう立てるか?

公立・私立それぞれの財源の組み方

校舎の改修に3億円かかる。補助金はいくら出るのか、残りをどう賄うのか、いつ現金が必要になるのか。施設整備の相談で最初に詰まるのは、この資金の部分です。

補助金は工事費の全額を賄うものではありません。多くの制度では、基準額を基に算定された額の一部が交付され、しかも完了後の精算払いです。工事中の支払いは、自己資金か借入れで立て替えることになります。

この記事では、①資金計画の全体像、②公立の財源、③私立の財源、④税制との関係、⑤時系列の組み立て方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 補助金は工事費の実額ではなく、補助基準額を基に算定されるのが一般的で、基準額を超える部分は自己負担になる
  • 補助金は原則として完了後の精算払いのため、工事中の支払いは立て替えが必要
  • 公立では、国庫補助と地方債を組み合わせる。公共施設等適正管理推進事業債は充当率90%で、集約化・複合化事業は交付税措置率50%
  • 私立では、補助金、第2号基本金の特定資産、私学事業団や金融機関の借入れ、寄附金を組み合わせる
  • 収益事業の利益を教育事業に繰り入れると、所得の50%か年200万円の多い額まで損金に算入できる

資金計画とは何を決めることか?

施設整備の資金計画とは、いつ、いくらの支払いが発生し、それを何で賄うかを対応させることです。

決めるのは4つです。

決める対象内容
総額工事費、設計費、調査費、備品、仮設、解体、税や諸費用を含めた総額
財源の内訳補助金、借入金、自己資金、寄附金の割合
時期いつ支払い、いつ入金があるか
返済借入金の返済が、その後の収支をどれだけ圧迫するか

金額だけでなく、時期を合わせることが要点です。総額を賄える見込みがあっても、入金が後になれば資金が不足します。

逆に、資金の手当てができていても、補助の要件を満たさない進め方をすれば補助そのものを失います。内定前に契約や着手をしないことは、どの制度でも共通する前提です。

公立学校の財源はどう組むか?

国庫補助と地方債の組み合わせが基本です。

財源内容
国庫負担金・交付金公立学校施設整備費国庫負担金、学校施設環境改善交付金
地方債学校教育施設等整備事業債、公共施設等適正管理推進事業債など
一般財源自治体の予算
基金公共施設等整備基金など

補助金と起債の関係は充当率と交付税措置率の違いとは?で詳しく扱っています。

事業の区分で実質負担が変わる

総務省の資料では、公共施設等適正管理推進事業債は充当率90%とされ、集約化・複合化事業には交付税措置率50%が設けられている一方、除却事業には交付税措置がないとされています。

同じ解体でも、集約化・複合化の一環として位置づけられるかどうかで、自治体の実質的な負担が変わります。事業の組み立て方が、そのまま財源の有利不利につながります。

長期の見通しを添える

単年度の事業費だけでなく、今後30〜40年の施設費の見通しを示すことが、財政部局との調整では重要になります。今やらない場合に将来の費用がどれだけ増えるかも、あわせて示します。文部科学省のコスト試算の考え方を使うと、改築と長寿命化改修の比較を同じ条件で示せます。比べ方は施設投資のROIはどう考えるか?を参照してください。

補助が採択されなかった場合

補助を前提に組んだ計画は、不採択になると止まります。採択されなかった場合に、規模を縮小して実施するのか、翌年度に再申請するのか、自己資金で実施するのかを先に決めておきます。安全面に関わる工事は、補助の有無にかかわらず実施する前提で、優先順位を分けておきます。

私立学校の財源はどう組むか?

補助金、自己資金、借入れ、寄附の組み合わせです。

財源内容留意点
国の補助金私立学校施設整備費補助金など内定前の着手は対象外
都道府県の補助私学助成の施設補助制度の有無と要件は都道府県ごと
第2号基本金の特定資産将来の固定資産取得に向けた積立組入計画と理事会の決議が前提
借入金私学事業団の貸付、金融機関の融資返済が長期の収支を圧迫する
寄附金卒業生、保護者、企業からの寄附税額控除の証明があると集めやすい

積立てと借入れのバランス

第2号基本金で積み立てた資金を使えば、借入れを抑えられます。積立てが不足している場合は借入れに頼ることになり、返済が長期にわたって収支を圧迫します。積立ての状況は、私学事業団の経営判断指標の積立率にも表れます。基本金の仕組みは学校法人会計で施設整備はどう処理するか?にまとめています。

寄附を財源に組み込む

一定の要件を満たす学校法人への個人の寄附は、所得控除に代えて税額控除を選ぶことができます。税額控除の対象になっているかどうかで、小口の寄附の集まり方が変わります。寄附者向けの優遇措置は学校法人の税制優遇はどこまで及ぶか?で扱っています。

税制はどう関わるか?

私立学校では、税制の扱いが資金計画に直接効いてきます。

取得時の税

直接保育または教育の用に供する不動産の取得は、不動産取得税と登録免許税が非課税です。校地を買う場合でも、これらの税を見込む必要は通常ありません。

保有中の税

教育の用に供している校地・校舎は、固定資産税と都市計画税が非課税です。反対に、教育に使わなくなった建物や、第三者に貸した部分は課税される可能性があり、保有コストが増えます。

収益事業の利益を回す

駐車場の貸付や施設の時間貸しなどの収益事業から、教育事業に資金を繰り入れた場合、所得の50%と年200万円のいずれか多い額まで損金に算入できます。施設の維持費を収益で補う仕組みはみなし寄附金は学校の施設整備にどう活かせるか?にまとめています。

消費税

工事費には消費税がかかります。学校法人は授業料などの非課税売上が多いため、支払った消費税の全額を控除できるとは限りません。総額の試算では、消費税を含めた支出で考えます。補助金の算定でも、消費税の扱いは制度ごとに定められているため、要綱で確認します。

総額はどう見積もるか?

工事費だけを見ていると、後から足りなくなります。

工事費以外に必要なもの

費目内容
調査費劣化状況調査、耐震診断、アスベスト調査、地盤調査
設計費基本設計、実施設計、工事監理
仮設費仮設校舎、仮設トイレ、引越し、リース料
備品家具、什器、ICT機器
解体・処分費既存部分の解体、アスベスト除去、廃棄物処理
諸費用登記、保険、印紙、確認申請の手数料
予備費変更や物価上昇への備え

補助の対象になるのは、このうち一部です。対象外の費目を自己資金でどう賄うかを、早い段階で確認します。区分は補助金の対象経費・対象外経費の線引きを参照してください。

単価の動きを見込む

資材費と労務費の上昇が続いています。基本設計の段階で作った概算のまま入札に進むと、予定価格を超えて不調になることがあります。設計の各段階で概算を更新し、差が出た場合の対応方針を先に決めておきます。

時系列はどう組み立てるか?

支払いと入金の時期を並べます。

時期支出収入
前年度調査費、基本設計費—
年度当初実施設計費—
着工後前払金、出来高払い—
完成・引渡し残代金—
完了後—補助金の精算払い
翌年度以降借入金の返済、減価償却費の増加—

補助金の入金は最後になります。工事中の支払いをどう賄うかを、着工前に決めておく必要があります。概算払いが認められる制度もあるため、要綱で確認します。金融機関のつなぎ資金を使う場合は、金利と手数料も総額に含めます。

変更に備える

工事中に地中埋設物が出る、資材価格が上がるといった事情で、工事費が増えることがあります。増額した部分が補助の対象になるとは限らないため、予備費を見込んでおきます。

計画の変更が補助の内容に関わる場合は、変更の承認や届出が必要になることがあります。現場の判断で進めず、担当課への確認を工程に組み込んでおきます。

数字はどう並べて示すか?

理事会や財政部局に示す資料では、次の3つの表をそろえると判断しやすくなります。

1. 総額と財源の内訳

総額を費目ごとに並べ、その下に補助金、借入金、自己資金、寄附金の内訳を置きます。補助金は、確定していない段階では見込み額であることを明記します。

2. 年度ごとの収支

設計、工事、完了の各年度について、支出と収入を並べます。補助金の入金が翌年度になる場合は、その年度の資金不足額が分かるようにします。

3. 返済と収支への影響

借入れを行う場合、返済が始まってからの年度ごとの返済額と、減価償却費の増加を示します。在籍者数が減少するシナリオでも返済が続けられるかを、あわせて示します。

この3つがそろっていれば、「補助金がいくら出るのか」という質問で議論が止まることはありません。意思決定の場に出す資料の作り方は理事会で施設投資を通すための資料はどう作るか?にまとめています。

よくある質問

Q. 補助金は工事費の何割くらい出ますか。

A. 制度と事業区分によって異なります。多くは補助基準額を基に算定されるため、工事費に対する実際の割合は、制度上の補助率より低くなることがあります。過去の同種の工事での実績を、自治体や同じ規模の学校法人に確認しておくと見込みを立てやすくなります。

Q. 補助金の入金前に工事代金を払えない場合はどうしますか。

A. つなぎの借入れを使うのが一般的です。金融機関には、交付決定の通知など補助が見込まれることを示す資料を提示します。出来高払いの時期と金額を施工者と調整し、支払いの山を平準化する方法もあります。

Q. 寄附金はどれくらい見込めますか。

A. 学校の規模と関係者の状況によります。資金計画では、寄附金を確実な財源として組み込まず、集まった分で借入れを減らす扱いにしておくと安全です。募集の期間と目標額は、工事の時期に合わせて設定します。

Q. 複数の補助金を同時に使えますか。

A. 同じ経費に国の補助を重ねて受けることは、通常認められません。対象経費を分けられる場合や、国と自治体の制度を組み合わせられる場合があるため、それぞれの要綱で確認します。

Q. 借入れはどこまでしてよいですか。

A. 返済額が毎年の収支に与える影響から判断します。私学事業団の経営判断指標で自法人の位置を確認し、在籍者数の減少シナリオでも返済できるかを試算します。

Q. 公立で基金を使うのはどんな場合ですか。

A. 起債できない経費や、単年度の一般財源の負担が大きい場合に取り崩す例があります。基金の設置目的と条例の定めに沿って使うことが前提です。

まとめ

施設整備の資金計画は、総額、財源の内訳、時期、返済の4つを決める作業です。補助金は基準額を基に算定され、完了後の精算払いになるのが原則なので、工事中の支払いをどう立て替えるかが実務の要点になります。

公立では、国庫補助と地方債を組み合わせ、事業の区分によって交付税措置の有無が変わります。私立では、補助金、第2号基本金の特定資産、借入れ、寄附金を組み合わせ、取得時と保有中の税の扱い、収益事業からの繰入れも財源の一部として考えられます。

支払いと入金の時期を並べ、変更に備えた予備費を見込んでおくこと。この2つができていれば、工事の途中で資金に詰まる事態はほぼ避けられます。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。最新の要件・率・期限は、所管省庁と自治体の担当課、税理士にご確認ください。

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