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転用・貸出・減築の選び方と手続き
学級数が減り、使われなくなった教室が増えています。文部科学省の調査では、公立小中学校などの余裕教室は令和7年5月1日時点で74,138室にのぼります。
ほとんどの余裕教室は何らかの形で使われていますが、その大半は学校の中での活用です。学校の外の用途に転用されているのは一部にとどまります。空き教室をどう使うかは、学校の中で使うか、外に開くか、面積そのものを減らすかの選択でもあります。
この記事では、①余裕教室とは何か、②全国の活用状況、③使い道の選択肢、④公立学校の財産処分手続、⑤転用するときの設計の注意点、の5点を整理します。
この記事の要点
- 余裕教室は、普通教室として使われておらず、今後5年以内に普通教室として使われる見込みのない教室
- 令和7年5月1日時点で74,138室、そのうち98.3%が活用されている
- 活用の大半は学校施設内での活用で、学校施設以外への転用は3,094室。その76.7%が放課後児童クラブ
- 公立学校で国庫補助を受けた施設を転用する場合、経過年数10年以上の無償処分は報告で承認があったとみなされる
- 学校外の用途に使う場合は、児童生徒の動線との分離、用途変更、消防設備の確認が必要
余裕教室とは何か?
文部科学省の調査では、余裕教室を、現在は普通教室として使用されていない教室のうち、今後5年間以内に普通教室として使用されることがないと考えられる教室と定義しています。
一時的に空いている教室ではなく、当面は普通教室として使う見込みのない教室が対象です。空き教室という言葉で一般に呼ばれるものと、ほぼ同じ範囲を指します。
全国でどう活用されているか?
文部科学省の令和7年度の余裕教室活用状況調査によると、次のとおりです。
| 項目 | 教室数 |
|---|---|
| 余裕教室の総数 | 74,138室 |
| うち小学校 | 49,139室 |
| うち中学校 | 24,485室 |
| うち義務教育学校 | 514室 |
| 活用されている教室 | 72,902室(98.3%) |
| 活用されていない教室 | 1,236室(1.7%) |
学校施設としての活用が大半
活用されている教室のうち、69,468室は当該学校の施設として使われています。
| 用途 | 教室数 | 割合 |
|---|---|---|
| 学習方法・指導方法の多様化に対応したスペース | 33,849室 | 48.7% |
| 特別教室 | 12,590室 | 18.1% |
| 児童・生徒の生活・交流スペース | 6,422室 | 9.2% |
| 授業準備スペース | 4,177室 | 6.0% |
| その他 | 12,428室 | 17.9% |
学校施設以外への転用
学校施設以外に転用されているのは3,094室です。
| 用途 | 教室数 | 割合 |
|---|---|---|
| 放課後児童クラブ | 2,373室 | 76.7% |
| 放課後子供教室 | 222室 | 7.2% |
| その他(福祉施設、備蓄倉庫など) | 499室 | 16.1% |
文部科学省は、全国的・継続的に活用が図られていることが明らかになったとして、次回以降この調査は実施しないとしています。
どんな使い道があるか?
大きく4つの方向があります。
| 方向 | 例 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 学校内で使う | 少人数教室、多目的スペース、特別教室、ラーニングコモンズ | 学級数の減少が小幅 |
| 学校外の用途に転用 | 放課後児童クラブ、地域の集会所、備蓄倉庫、福祉施設 | 地域の需要がある |
| 外部に貸す | 塾、習い事教室、企業の研修室 | 私立学校、または普通財産化した公立施設 |
| 面積を減らす | 棟ごと閉鎖、除却 | 余裕教室が一つの棟に集中している |
学校内で使う
最も取り組みやすいのは、学校の中での活用です。少人数指導や習熟度別の授業、ICTを活用した学習スペース、児童生徒の居場所づくりなどに使います。全国の活用の半数近くが、学習方法・指導方法の多様化に対応したスペースです。
ただし、学校内で使う限り、施設の面積は減らず、維持費も変わりません。
学校外の用途に転用する
放課後児童クラブへの転用が最も多く見られます。子どもが移動せずに放課後を過ごせるため、保護者の需要が高い用途です。公共施設との複合化として位置づけると、財源面で有利になる場合があります。考え方は学校施設の複合化とは?にまとめています。
外部に貸す
私立学校では、空き教室を塾や習い事の教室、企業の研修室として貸す例があります。学校法人の場合は、収益事業としての課税や固定資産税の扱いを確認する必要があります。時間貸しの場合は学校の駐車場・グラウンドを貸すと税金はどうなるか?、長期で貸す場合は空き校舎を貸すと税金はどうなる?を参照してください。
面積を減らす
余裕教室が特定の棟に集中しているなら、その棟を閉鎖したり除却したりして、面積そのものを減らす方法があります。将来の改修・更新費まで含めると、最も費用を下げられる選択肢です。少子化を前提にした校舎のダウンサイジングはどう進めるか?で扱っています。
使い道はどう選べばよいか?
3つの手順で絞り込みます。
1. 将来の児童生徒数を確かめる
余裕教室は今後5年間普通教室として使わない見込みの教室ですが、その先の見通しも重要です。10年程度先までの児童生徒数を推計し、教室が再び必要になる可能性があるかを確かめます。可能性があれば、元に戻しやすい使い方を選びます。
2. 配置を図面で確認する
余裕教室が校舎のどこにあるかを図面に落とします。1階の端にまとまっていれば学校外の用途に転用しやすく、各階に散らばっていれば学校内での活用が現実的です。一つの棟に集中していれば、面積を減らす選択肢も出てきます。
3. 地域の需要を聞く
放課後児童クラブの待機児童、地域の集会所や防災備蓄の不足など、地域の需要を首長部局や地域の団体から聞き取ります。需要がある用途に転用すれば、学校と地域の両方にとって効果が大きくなります。
公立学校で転用するときの手続きは何か?
国庫補助を受けて整備した施設を学校教育以外の用途に使う場合は、財産処分の手続きが必要です。
財産処分とは
公立学校施設整備費補助金などを受けて整備した施設を、処分制限期間内に学校教育以外の用途で活用する場合、地方公共団体は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づき、文部科学大臣の承認を得る必要があります。
報告で済む場合
文部科学省は、余裕教室や廃校施設の活用を進めるため、手続きを簡素化しています。
| 場合 | 手続き |
|---|---|
| 経過年数10年以上の無償での転用 | 大臣への報告で承認があったとみなされる |
| 10年未満でも、放課後児童クラブや社会教育施設などへの転用 | 報告で承認があったとみなされる |
| 有償での貸与・譲渡 | 国庫納付が必要(一定の場合は不要) |
有償の処分でも、国庫納付金相当額以上を基金に積み立てる場合や、地域再生計画の認定を受けた場合などは、国庫納付が不要とされています。
最新の通知は令和8年3月31日付けで出されています。具体的な要件は、文部科学省の財産処分手続ハンドブックで確認してください。
転用するときの設計の注意点は何か?
学校の中に別の用途が入るため、安全と法令の両面の確認が必要です。
動線とセキュリティ
学校外の利用者が校舎内に入る場合、児童生徒の動線と分けることが基本です。外部から直接出入りできる教室を選ぶ、専用の出入口を設ける、学校側との間に施錠できる扉を設けるなどの対策をとります。1階の端の教室は、この点で転用に向いています。
用途変更
建築基準法上、学校と放課後児童クラブや福祉施設は別の用途に当たる場合があります。転用する部分の床面積が200平方メートルを超えると、用途変更の確認申請が必要です。200平方メートル以下でも、法令への適合は必要です。
消防設備とバリアフリー
用途によって、必要な消防設備が変わります。高齢者や障害のある人が利用する施設に転用する場合は、段差の解消、手すり、多目的トイレなどのバリアフリー化も検討します。
設備の区分
光熱水費を学校と転用先で分けて負担するなら、メーターを分ける工事が必要です。空調やトイレも、学校と別に使えるようにしておくと、運用がしやすくなります。
よくある質問
Q. 余裕教室を放課後児童クラブにするとき、学校との調整で気をつけることは何ですか。
A. 利用時間、出入口、トイレや体育館の共用の範囲、緊急時の連絡体制を事前に決めておきます。学校と運営主体の役割分担を書面にしておくと、担当者が替わっても運用が続きます。
Q. 将来また教室が必要になったら戻せますか。
A. 転用先との取り決めや、改修の内容によります。将来の児童生徒数の推計を踏まえ、元に戻す可能性がある場合は、大きな改修を避け、契約や協定に期間を定めておきます。
Q. 私立学校の空き教室にも財産処分の手続きは必要ですか。
A. 国や地方公共団体の補助金を受けて整備した施設であれば、補助の交付条件に基づく手続きが必要になることがあります。整備時の交付条件を確認してください。
Q. 余裕教室を防災備蓄倉庫にする場合も手続きは必要ですか。
A. 学校教育以外の用途に使う場合は、財産処分の対象になり得ます。所管の教育委員会を通じて、報告で足りるかを確認してください。
Q. 余裕教室がいくつあれば、棟の除却を検討すべきですか。
A. 数よりも配置が重要です。余裕教室が一つの棟に集まっていて、残りの棟で必要な教室が確保できるなら、除却の検討に値します。
まとめ
余裕教室は、令和7年5月1日時点で全国74,138室にのぼり、その98.3%が活用されています。ただし大半は学校施設内での活用で、学校施設以外への転用は3,094室、その76.7%が放課後児童クラブです。
使い道は、学校内で使う、学校外の用途に転用する、外部に貸す、面積を減らすの4つの方向があります。公立学校で国庫補助を受けた施設を転用する場合は財産処分の手続きが必要ですが、経過年数10年以上の無償処分や、放課後児童クラブなどへの転用は報告で済む仕組みになっています。
学校外の用途に使う場合は、児童生徒の動線との分離、用途変更、消防設備を確認します。学校法人の遊休資産全体の整理は学校法人の遊休資産はどう活用するか?を参照してください。
参考・出典
- 文部科学省「令和7年度 余裕教室活用状況について」 https://www.mext.go.jp/content/20260410-mxt_sisetujo-000012748_1.pdf
- 文部科学省「廃校施設活用状況実態調査、余裕教室活用状況実態調査について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu_00002.htm
- 文部科学省「公立学校施設整備費補助金等に係る財産処分手続の概要について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu/03082701.htm
- 文部科学省「公立学校施設整備費補助金等に係る財産処分手続の概要」(令和8年3月) https://www.mext.go.jp/content/20260331-mxt_sisetujo-100003148_03.pdf
- 文部科学省「財産処分手続ハンドブック」(令和8年3月) https://www.mext.go.jp/content/20260331-mxt_sisetujo-100003148_05.pdf
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