目次
進め方・費用・補助金
小中一貫校の校舎には、6歳から15歳までが通います。1年生と9年生では、体格も行動範囲も、使う施設も違います。
多くの小中一貫校は、学校統合や既存校舎の転用から生まれます。つまり、新築ではなく改修によって成立させる場面が大半です。既存の小学校の校舎に中学生を入れる、あるいはその逆。どちらの校舎を残すかという判断が、そのまま改修の内容を決めます。
この記事では、①施設形態の違い、②9年間の幅への対応、③改修で生じる課題、④補助制度、⑤進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 施設形態には、施設一体型、施設隣接型、施設分離型がある
- 公立の新増築は公立学校施設整備費負担金の対象で、負担率は原則2分の1
- 学校施設環境改善交付金では、学校統合に伴う既存施設の改修が補助率2分の1
- 長寿命化改良は3分の1、複合化・集約化の場合は2分の1
- 改築は3分の1、施設複合化等の場合は2分の1
施設形態はどう違うのか?
3つに分かれます。
| 形態 | 内容 | 改修の課題 |
|---|---|---|
| 施設一体型 | 小学校と中学校が同じ校舎を使う | 9年間の幅を1棟で受け止める |
| 施設隣接型 | 敷地が隣接し、別の校舎を使う | 移動の動線と共用施設の配置 |
| 施設分離型 | 離れた敷地で別々に運営する | 交流の機会と移動の方法 |
改修の負担が最も大きいのは施設一体型です。既存の校舎に、別の学校段階の生徒を受け入れるための工事が必要になります。隣接型や分離型では、移動の安全と時間が課題になります。
制度上の違いと複合化の要点は小中一貫校・義務教育学校の施設整備にまとめています。
9年間の幅にどう対応するのか?
寸法とゾーニングで分けます。
6歳と15歳では、身長差が40センチを超えることもあります。中学生の体格に合わせれば低学年には使えず、低学年に合わせれば中学生には窮屈になります。
| 部位 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 便器・手洗い | 学年のまとまりごとに高さを変える |
| 机と椅子 | 学年ごとに異なる寸法のものを配置する |
| 階段の手すり | 標準の高さに加え、低い位置にも設ける |
| 昇降口 | 学年で入口を分けると動線が整理される |
| 更衣 | 高学年以上は男女別の場所を確保する |
学年段階で区切る
9年間を、4年・3年・2年や5年・4年といった段階に区切って運営する学校があります。この区切りに合わせてフロアや棟を分けると、施設の計画も整理しやすくなります。
低学年のまとまりを1階に置き、高学年と中学生を上階に配置する。この配置であれば、フロアごとに仕上げと寸法を変えられます。全館を作り分けるより費用が抑えられ、避難の計画も立てやすくなります。
交流の場所を用意する
学年をまたいだ交流は、小中一貫校の目的のひとつです。ただし、交流する場所がなければ形になりません。
多目的スペース、ランチルーム、広めの昇降口。学年の違う児童生徒が自然に顔を合わせる場所を、改修の中で確保します。廊下の一部を広げるだけでも、立ち止まれる場所ができます。
運動場と体育館の同時使用
小学生と中学生が同じ時間に体育の授業を行うと、運動場も体育館も足りなくなります。時間割で調整できる範囲を、設計の前に確認します。
部活動が始まる時間帯には、小学生の下校と中学生の活動が重なります。動線が交差しない計画にしておきます。ボールが飛ぶ範囲と通学路の位置も確認します。
改修ではどんな課題が出るのか?
既存の校舎をどちらに寄せるかで変わります。
小学校の校舎に中学生を入れる場合
- 天井の高さ、廊下の幅、階段の寸法が中学生には窮屈になる場合がある
- 理科室、技術室、音楽室など中学校の特別教室が不足する
- 更衣と部活動のための場所がない
- 便器と手洗いの高さが合わない
特別教室の新設が、工事の中心になります。設備を伴うため、費用も工期も大きくなります。既存の教室を転用するのか、増築するのかを早い段階で決めます。
中学校の校舎に小学生を入れる場合
- 便器と手洗いの高さが高すぎる
- 階段の段差が大きく、低学年には負担になる
- 低学年が屋外で遊ぶ場所と、安全な動線の確保が必要
- 教室の広さと収納が、小学校の使い方に合わない
低学年のフロアを設定し、そのフロアを集中的に改修する方法が現実的です。昇降口と運動場への動線も、あわせて整理します。
統合を伴う場合
複数の学校を統合して1つの小中一貫校にする場合、児童生徒数が増えます。教室の数、運動場の面積、駐車場と送迎の場所。既存の敷地で足りるかを先に確認します。足りなければ、増築か敷地の拡張が必要になります。
通学距離が伸びる児童生徒には、スクールバスの導入が必要になることがあります。乗降の場所と待機の空間を、外構の計画に含めます。雨天時に屋内で待てる場所も必要です。
統合か改修かの判断は学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。
補助制度はどうなっているのか?
事業の区分で補助率が変わります。
文部科学省の案内によれば、公立小中学校等の校舎・屋内運動場等を新築または増築する場合は、公立学校施設整備費負担金の対象となり、負担率は原則2分の1とされています。
学校施設環境改善交付金では、事業ごとに次の補助率が示されています。
| 事業 | 補助率 |
|---|---|
| 改築(危険建物、耐震不足等) | 3分の1 |
| 改築(施設複合化等の場合) | 2分の1 |
| 長寿命化改良 | 3分の1 |
| 長寿命化改良(複合化・集約化の場合) | 2分の1 |
| 学校統合に伴う既存施設の改修 | 2分の1 |
| 大規模改造(内装改修、空調、バリアフリー化等) | 3分の1 |
| 地震補強(Is値0.3以上0.7未満) | 2分の1 |
| 地震補強(Is値0.3未満) | 3分の2 |
小中一貫校の整備は、統合や複合化を伴うことが多くなります。その場合、補助率が2分の1に上がる区分に該当する可能性があります。地方債の充当や交付税措置とあわせて、実質の負担を試算します。
制度の全体像は公立学校施設整備費(国庫補助)の基礎知識を参照してください。複合化の考え方は学校施設の複合化とは?にまとめています。
どの区分で申請するかで金額が変わる
同じ工事でも、統合に伴う改修として申請するか、長寿命化改良として申請するかで補助率が変わります。事業の組み立て方が、自己負担の額を左右します。
設計の前に、どの区分を使うかを都道府県の担当課と協議します。要件を満たすために、工事の範囲や時期を調整する場合もあります。年度の枠と採択の見通しも、あわせて確認します。
教職員の空間はどうなるのか?
職員室の設計が、一貫校の要になります。
小中一貫校では、小学校と中学校の教員が同じ学校に所属します。教科担任と学級担任、指導の方法、勤務の時間帯。それぞれ違う文化を持った教員が一緒に働きます。
職員室を1つにするか、分けるか。一体型の学校では、1つの職員室にすることで日常的な情報の共有が進むとされます。一方、人数が多くなり、面積と座席の確保が課題になります。どちらにするかは、運営の方針から決めます。
| 検討項目 | 内容 |
|---|---|
| 職員室の広さ | 全教職員分の座席と、打合せができる場所 |
| 印刷・準備の場所 | 職員室と分ける方が動線は整理される |
| 相談の場所 | 保護者や児童生徒と個別に話せる部屋 |
| 休憩と更衣 | 人数が増える分、面積が必要になる |
| 教科の準備室 | 中学校側の教科ごとの場所をどう確保するか |
小学校の校舎を使う場合の不足
小学校の職員室は、中学校の教員を加えた人数を想定していません。面積が足りない場合、隣接する教室を取り込む改修が必要になります。配線と空調の容量も、人数に合わせて確認します。
保健室と相談室
9年間を通して同じ保健室を使います。小学生と中学生では、来室の理由も対応も違います。ベッドの数、仕切り、相談できる場所を確保します。思春期の生徒が落ち着いて話せる環境かどうかも見ます。
養護教諭の人数は学校規模によって変わるため、配置の見通しも確認しておきます。
工事はどう進めるのか?
開校の日から逆算します。
小中一貫校は、開校の年度が先に決まることが多くなります。4月の開校に間に合わせるには、前年度中に工事を終える必要があります。日付は動かせないため、工程の遅れがそのまま問題になります。
- 開校の日を確定する
- そこから、検査、引渡し、備品の搬入、移転の期間を引く
- 工事の期間を置く
- 設計と確認申請の期間を置く
- 逆算して、いつ設計に着手すべきかを決める
在校生がいる状態での工事
統合前の学校で工事を行う場合、在校生が通いながらの施工になります。区画の分離、騒音の時間帯、動線の確保。通常の改修と同じ配慮が必要です。
一方、統合により空く校舎で工事ができる場合は、条件が良くなります。工期も短くなり、安全面の負担も減ります。どちらの校舎を使うかの判断に、工事のしやすさも材料として加えます。
保護者と地域への説明
学校統合を伴う場合、施設の話と統合の話が同時に進みます。通学距離、校名、制服、行事。施設はその一部です。
改修によって何がどう良くなるのかを、図と写真で示します。工事の前に完成の姿を共有しておくと、開校後の受け止めが変わります。統合で校舎がなくなる側の地域にも、同じ説明を行います。
よくある質問
Q. 小中一貫校の施設形態にはどんな種類がありますか。
A. 施設一体型、施設隣接型、施設分離型があります。改修の負担が最も大きいのは施設一体型です。
Q. 新増築の補助率はどれくらいですか。
A. 公立学校施設整備費負担金の対象で、負担率は原則2分の1とされています。
Q. 統合に伴う改修の補助率は。
A. 学校施設環境改善交付金では、学校統合に伴う既存施設の改修が2分の1とされています。
Q. 長寿命化改良との違いは何ですか。
A. 長寿命化改良は3分の1ですが、複合化・集約化の場合は2分の1とされています。どの区分で申請するかで金額が変わります。
Q. 小学校の校舎に中学生を入れる場合、何が必要ですか。
A. 中学校の特別教室の整備が中心になります。更衣と部活動のための場所も必要です。
Q. 便器の高さはどう調整しますか。
A. 学年のまとまりごとにフロアを分け、そのフロアの仕様を揃える方法が現実的です。
Q. 職員室は1つにすべきですか。
A. 一体型では1つにする例が多くなります。人数分の座席と打合せの場所を確保できるかが判断の前提です。
Q. 運動場が足りない場合はどうしますか。
A. 時間割での調整が可能な範囲を先に確認します。面積の基準に関わる部分は所管に確認します。
Q. 開校までにどれくらいの期間が必要ですか。
A. 設計、確認申請、工事、備品搬入、移転を積み上げて逆算します。統合を伴う場合は合意形成の期間も加わります。
まとめ
小中一貫校の施設形態には、施設一体型、施設隣接型、施設分離型があります。改修の負担が最も大きいのは施設一体型で、既存の校舎に別の学校段階の生徒を受け入れる工事が必要になります。
6歳と15歳が同じ校舎を使う前提で、寸法とゾーニングを決めます。学年段階の区切りに合わせてフロアや棟を分ければ、全館を作り分けるより費用を抑えられます。
補助制度では、新増築が公立学校施設整備費負担金の対象で負担率は原則2分の1、学校施設環境改善交付金では学校統合に伴う既存施設の改修が2分の1、長寿命化改良は3分の1で複合化・集約化の場合は2分の1とされています。どの区分で申請するかによって自己負担の額が変わるため、設計の前に都道府県の担当課と協議します。
開校の日は先に決まります。そこから逆算して、設計の着手時期を決めること。これが、計画どおりに開校するための最初の作業です。
参考・出典
- 文部科学省「国庫補助事業について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/zitumu.htm
- 文部科学省「公立学校の施設整備」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/main11_a2.htm
- 文部科学省「小中一貫教育の導入状況調査について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/1395183.htm
- 義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律、学校教育法
記載の制度は公表時点のものです。補助の対象と補助率は年度により変わるため、最新の内容は所管省庁および都道府県の公表資料でご確認ください。
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