この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校法人は私学事業団から借りられるか?

融資の種類・融資率・償還期間と、補助金との組み立て方

理事会で校舎の改修が決まったものの、自己資金だけでは足りない。補助金を申請する予定だが、交付されるのは工事が終わって実績報告を出したあとになる。その間の支払いをどうするか。学校法人の施設整備では、この資金繰りの穴が最初の関門になります。

銀行から借りるという選択肢もありますが、その前に検討すべき制度があります。日本私立学校振興・共済事業団、通称「私学事業団」の融資です。

私学事業団は、私立学校の振興を目的として設立された組織で、助成業務のひとつとして学校法人への貸付けを行っています。令和8年度の貸付計画額は600億円です。民間の金融機関とは条件の組み立て方が違い、償還期間が長く、利率は固定です。

専門学校や各種学校を設置する法人も対象に含まれます。ここを知らずに銀行融資だけで検討している学校法人は少なくありません。この記事では、貸付の種類、借りられる金額の決まり方、返済の条件を、根拠となる条文と公表資料にもとづいて整理します。

この記事の要点

私学事業団の融資は、日本私立学校振興・共済事業団法第22条第1項第2号を根拠とする貸付制度で、学校法人と準学校法人の双方が対象です。

貸付の種類は、一般施設費、教育環境整備費、特別施設費、公害対策費、災害復旧費の5つに分かれています。

融資率は建物の建築で対象事業費の80パーセント、建物の改修で75パーセントです。

貸付限度額は、事業査定額、純資産の部合計の30パーセント、担保となる土地の評価額の80パーセント以内という3つの査定額のうち、最も低い額になります。

償還期間は一般施設費と特別施設費で10億円以上なら30年以内、10億円未満なら20年以内。利率は貸付契約時の金利が償還完了まで変わらない固定金利です。

私学事業団の融資とは何か?

学校法人および準学校法人に対して、私立学校の施設整備その他経営のために必要な資金を貸し付ける制度です。

根拠は日本私立学校振興・共済事業団法(平成9年法律第48号)第22条第1項第2号です。条文は、学校法人または準学校法人に対し、その設置する私立学校、または職業に必要な技術の教授を目的とする私立の専修学校もしくは各種学校で政令で定めるものについて、施設の整備その他経営のため必要な資金を貸し付けると定めています。

同法第24条では、この貸付けを助成業務のひとつとして位置づけています。私学事業団には共済業務もありますが、融資は助成業務の側に属します。

専修学校・各種学校も対象になる

同法第2条は「学校法人」と「準学校法人」を別の用語として定義しています。準学校法人とは、私立学校法第64条第4項の法人、つまり専修学校または各種学校のみを設置する法人を指します。

第22条第1項第2号は、この両方を貸付の相手方として並記しています。専門学校を運営する法人が学校法人であっても準学校法人であっても、制度上は対象です。

大学や高校を持つ法人だけの制度だと思われがちですが、条文はそうなっていません。

貸付にはどんな種類があるか?

5つの費目に分かれており、何に使う資金かによって条件が変わります。

貸付の費目主な用途令和8年度の計画額
教育環境整備費設備、校教具、教育環境の充実404億円
特別施設費特定の政策目的に沿う施設整備111億円
一般施設費校舎などの建築・改修80億円
公害対策費公害防止のための施設整備4億円
災害復旧費災害で損壊した施設の復旧1億円

令和8年度の貸付計画額は合計600億円で、令和7年度と同額です。財源のうち財政融資が288億円を占めます。年度末の財政投融資計画残高は3,006億円を見込んでいます。

金額の配分を見ると、教育環境整備費が全体の3分の2を占めています。校舎そのものを建てる一般施設費は80億円で、思ったより小さい枠です。大規模な新築を計画する場合、この枠の中での位置づけを早めに確認しておく必要があります。

校舎の改修は一般施設費

既存校舎の改修工事は一般施設費の対象です。教育環境整備費は設備や校教具が中心なので、工事と設備を同時に行う場合は費目をまたぐ可能性があります。

なお教育環境整備費の「校教具」については、大学院・大学・短期大学・高等専門学校が平成15年度から、高等学校以下が平成19年度から、原則として対象外とされています。設備の更新を資金面で検討する際は、この区分に注意してください。

いくらまで借りられるのか?

3つの査定額を計算し、そのうち最も低い額が貸付限度額になります。

査定の種類計算方法
事業査定額対象事業費 × 融資率(建物の建築80パーセント、建物の改修75パーセント)
資産査定額純資産の部合計 × 30パーセント
担保査定額提供する担保物件(土地のみ)の評価額 × 担保率(80パーセント以内)

実務で効いてくるのは2番目の資産査定額です。純資産の30パーセントという枠は、学校法人の規模によって上限が決まることを意味します。工事の規模がどれだけ大きくても、法人の体力を超える額は借りられません。

計画の初期段階で、直近の貸借対照表から純資産の部合計を確認し、その30パーセントを計算しておくと、資金計画の輪郭が早く見えます。

担保は土地のみ

3番目の担保査定額は、土地の評価額が基準になります。建物は担保として評価されません。借地に建つ校舎を改修する場合、担保として提供できる土地がないことになるため、この条件が制約になります。

融資率の経緯

特別施設費の融資率は平成15年度に85パーセントから80パーセントへ引き下げられました。次世代型学校施設整備事業も平成18年度に同様に引き下げられています。制度は固定ではなく、年度によって条件が動きます。申請の前に、その年度の条件を私学事業団に確認してください。

何年で返すのか?

費目と金額によって、償還期間と据置期間が決まっています。

融資費目返済期間据置期間
一般施設費・特別施設費(10億円以上)30年以内2年以内
一般施設費・特別施設費(10億円未満)20年以内2年以内
教育環境整備費(大型設備)8年以内2年以内
教育環境整備費(校教具等・教育環境充実資金)5年以内半年以内

返済方法は元金均等返済です。元利均等返済ではないため、返済当初の負担が重く、年を追って軽くなります。収支計画を作る際は、この点を織り込んでください。

据置期間が2年取れるのは実務上の利点です。工事期間中は返済が始まらないため、校舎が使えるようになって授業料収入が立ち上がってから元金の返済が始まる、という組み立てができます。

利率はどう決まるのか?

貸付契約時の金利が適用され、償還が完了するまで変わらない固定金利です。

金利は毎月1日に見直されています。貸付の費目と貸付期間によって異なる率が設定されており、具体的な率は私学事業団が公表する金利表で確認します。

費目ごとに基準金利への上乗せが設定されており、一般施設費は平成14年度に基準金利プラス0.1パーセントからプラス0.3パーセントへ、特別施設費は同年度にプラス0.3パーセントからプラス0.4パーセントへ引き上げられています。

固定金利であることの意味は、30年という長い償還期間で考えると小さくありません。契約時点で総返済額が確定するため、長期の収支計画が立てやすくなります。変動金利の民間融資と比較する際は、金利水準だけでなくこの性質も含めて検討してください。

震災復旧の特例

東日本大震災、平成28年熊本地震、令和6年能登半島地震で被災した私立学校については、5年間の無利子融資などの措置が設けられています。被災地での復旧工事を検討する場合は、通常の融資とは別の枠組みがあることを確認してください。

補助金とどう組み合わせるか?

補助金が後払いであることが、融資を使う最大の理由になります。

私立学校施設整備費補助金の全体像と対象事業で整理したとおり、国の補助金は交付決定を受けてから工事に着手し、完了後に実績報告を出して額の確定を受け、そのあとに交付されます。工事代金の支払いは先に発生します。

3億円の工事で補助率3分の1、補助金1億円という事業を考えてみます。工事業者への支払いは工期に応じて進みますが、補助金1億円が入金されるのは年度末以降です。その間、法人は3億円を自己資金で立て替えることになります。

ここで融資を使うと、立て替え分の資金を確保できます。補助金が入金された時点で繰上償還するか、そのまま償還を続けるかは、金利と資金繰りを見て判断します。

補助金が使えない工事

補助対象にならない工事もあります。既存設備の単純な更新、内装の模様替え、補助の下限額に届かない小規模な工事などです。

補助金が使えない工事の進め方と資金調達で扱っていますが、こうした工事こそ融資の出番です。補助金を待って工事を先送りするより、融資で実施したほうが結果的に安くつく場合があります。老朽化は待ってくれません。

全体の資金計画に落とす

補助金、融資、自己資金、寄附金をどう組み合わせるかは、補助金と税制を組み合わせた施設整備の資金計画で整理しています。融資は単独で検討するものではなく、この組み立ての一部として位置づけるものです。

申請の実務で気をつけることは?

純資産の30パーセントという枠を、計画の最初に確認することです。

工事の内容が固まってから資金計画を作ると、借りられる額が足りないことが後から判明します。基本計画の段階で枠を把握し、その範囲に収まる規模で設計を進めるほうが、手戻りがありません。

担保となる土地の評価も同様です。校地が借地である、あるいは抵当権が設定されているといった事情があると、担保査定額が想定を下回ります。登記の状況を早めに確認してください。

貸付業務の委託

同法第26条では、認可を受けたうえで、銀行などの金融機関に貸付業務の一部を委託できると定められています。窓口が金融機関になる場合がありますが、制度としては私学事業団の融資です。

問い合わせ先

条件の詳細や、自法人が対象になるかどうかは、私学事業団の融資課に直接確認するのが確実です。融資第一係および融資第二係が窓口になっています。

工事の規模や内容によって適用される費目が変わるため、設計が固まる前に相談しておくと、計画の作り直しを避けられます。

専門学校の改修では何に使えるか?

校舎の改修であれば一般施設費、実習設備の更新であれば教育環境整備費が基本の対応になります。

専門学校は実習室や工房を持つことが多く、設備と工事が一体になった案件が発生します。厨房、美容実習室、スタジオ、歯科技工室といった用途では、給排水や電気容量の増設が工事側に、機器そのものが設備側に分かれます。

専門学校の校舎改修|実習室整備と用途変更の進め方で扱っているとおり、こうした工事では建築基準法上の用途変更が絡むこともあります。資金の費目と法令の手続きを並行して確認する必要があります。

設備と工事で費目が分かれると、償還期間も変わります。教育環境整備費の大型設備は8年以内、一般施設費は20年または30年以内です。同じ案件の中で返済のスケジュールが二本立てになることを、収支計画に反映してください。

よくある質問

Q. 補助金と融資は併用できますか。

A. 併用の可否は制度と事業の内容によります。補助金の交付を受けた部分について重複して融資を受けられるかは、補助金の交付要綱と私学事業団の条件の双方を確認する必要があります。計画の段階で両方の窓口に確認してください。

Q. 専門学校だけを設置している法人でも借りられますか。

A. 日本私立学校振興・共済事業団法第22条第1項第2号は、学校法人と準学校法人の双方を貸付の相手方としています。準学校法人は専修学校または各種学校のみを設置する法人を指します。ただし条文には「政令で定めるもの」という限定があるため、自法人が該当するかは私学事業団に確認してください。

Q. 借地に建つ校舎でも融資を受けられますか。

A. 担保査定額は提供する担保物件の評価額を基準としており、担保の対象は土地です。自己所有の土地がない場合、この査定額が制約になる可能性があります。他に提供できる土地があるかを含めて、事前に相談してください。

Q. 利率は申請時に分かりますか。

A. 金利は毎月1日に見直され、貸付契約時の金利が適用されます。申請の時点と契約の時点で水準が動く可能性があります。資金計画では一定の幅を見ておくのが安全です。

Q. 工事が年度をまたぐ場合はどうなりますか。

A. 補助金は原則として年度内の完了が求められますが、融資は償還期間の設定が長く、工事の期間とは別に設計されています。ただし貸付の実行時期と工事代金の支払時期を合わせる必要があるため、工程と資金のスケジュールを突き合わせてください。

Q. 繰上償還はできますか。

A. 繰上償還の可否と手数料の有無は条件によります。補助金の入金後に繰り上げる前提で計画する場合は、契約前に条件を確認してください。

まとめ

私学事業団の融資は、日本私立学校振興・共済事業団法第22条第1項第2号にもとづく貸付制度で、学校法人と準学校法人の双方が対象です。専門学校や各種学校を設置する法人も含まれます。

貸付の費目は5つあり、令和8年度の計画額は合計600億円です。内訳は教育環境整備費404億円、特別施設費111億円、一般施設費80億円、公害対策費4億円、災害復旧費1億円となっています。

融資率は建物の建築で80パーセント、改修で75パーセント。ただし実際の貸付限度額は、事業査定額、純資産の30パーセント、担保となる土地の評価額の80パーセント以内という3つの査定のうち最も低い額です。

償還期間は一般施設費と特別施設費で最長30年、据置期間は2年以内。返済方法は元金均等で、利率は契約時に確定する固定金利です。

補助金が後払いである以上、工事期間中の資金をどう確保するかは必ず問題になります。融資はその答えのひとつですが、純資産の30パーセントという枠がある以上、計画の初期に上限を把握しておくことが前提になります。設計が固まってから資金を考えるのでは順序が逆です。

参考・出典

本記事は公表時点の制度にもとづいて作成しています。貸付条件および金利は見直されることがあるため、実際の申請にあたっては日本私立学校振興・共済事業団にご確認ください。

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