学校の食堂・厨房では、内装の劣化、配膳時の混雑、厨房内の暑さ、排水や臭気など、複数の問題が同時に表れます。
改修では、食堂と厨房を分けず、調理、配膳、食事、返却、洗浄までの流れと、給排水・換気などの建築設備を一体で検討します。
この記事では、学校施設の食堂・厨房改修で何を確認し、どのように工事範囲を判断するかを整理します。
目次
学校の食堂・厨房で求められている整備
文部科学省の施設整備指針では、食堂は利用方法や人数に応じた規模とし、調理室との位置関係や良好な環境に配慮する考え方が示されています。
厨房については、衛生管理を行いやすい面積・形状、ドライシステム、調理員用の更衣・休憩空間、専用トイレ、グリーストラップなどが主な検討事項です。
| 確認項目 | 改修計画で押さえる基準・考え方 | 改修時の判断 |
|---|---|---|
| 厨房内の温熱環境 | 温度25℃以下、湿度80%以下に保つよう努める | 換気設備だけでなく、空調、給気、厨房機器の発熱を一体で確認する |
| 衛生区画 | 汚染作業区域、非汚染作業区域、その他の区域を部屋単位で区分する | 食材、調理済み食品、使用済み食器の動線が交差しない平面計画とする |
| 床と排水 | ドライシステムを導入し、未導入の場合もドライ運用を図る | 床材だけでなく、排水方法、機器接続、清掃方法まで見直す |
| 調理員用トイレ | 食品取扱場所や洗浄室から直接出入りできない構造とし、3m以上離すよう努める | トイレの位置、更衣動線、前室の有無を平面図で確認する |
食堂改修で確認するポイント
利用人数と配膳・返却動線
食堂は、利用人数に応じて家具を配置できる面積と形状が必要です。座席数だけでなく、配膳を待つ列、着席する人、食器を返却する人の動線を重ねて確認します。
配膳口と返却口が近すぎる場合は、人の流れが交差します。開口位置の変更、カウンターの再配置、家具レイアウトの変更など、食堂と厨房の両側から検討します。
手洗いと清掃性
食堂の内部または近くには、利用者用の手洗い設備を設ける考え方が示されています。
改修では、手洗い器の位置だけでなく、給排水配管を通せるか、床や壁をどこまで解体するかを確認します。床材や壁材は、耐水性、耐久性、滑りにくさ、清掃方法を基準に選定します。
食事以外の利用
文部科学省の学校施設整備指針では、食堂やランチルームを「多目的かつ多機能な空間として、学習諸室と関連づけて計画することも有効」としています。交流や学習にも使う場合は、可動家具や電源の配置も検討します。
学習・交流空間としての整備については、学校のラーニングコモンズとは?計画と工事のポイント(K015)で解説しています。
厨房改修で確認するポイント
作業区域を部屋単位で分ける
厨房では、検収、保管、下処理、調理、配膳、洗浄の流れを整理します。
汚染作業区域と非汚染作業区域を床の色だけで分けても、食材や器具の動線が交差すれば衛生管理は難しくなります。間仕切り、出入口、シンク、冷蔵設備、作業台を含めた平面計画が必要です。
ドライシステムに合わせて床と設備を改修する
ドライシステムは、単に防滑性のある床材へ張り替える工事ではありません。
釜やシンクからの排水が床面へ流れない接続とし、排水溝は詰まりや逆流、飛散が起きにくい構造とします。厨房機器、床勾配、排水管、グリーストラップを一体で設計します。
温度・湿度を設備計画に反映する
厨房内の温度25℃以下、湿度80%以下を目指すには、排気フードの更新だけでは不十分な場合があります。
排気量を増やせば、その分の給気も必要です。空調能力、外気の取入れ、厨房機器の発熱、蒸気の発生位置を確認し、建築・空調・厨房機器の設計を調整します。
検討項目・課題・解決策
| 検討項目 | 課題・発生するリスク | 解決の方向 |
|---|---|---|
| 食堂と厨房の位置関係 | 配膳距離が長くなり、食堂側と厨房側の動線が交差する | 配膳口・返却口・カウンターを一体で再配置する |
| 厨房の衛生区画 | 下処理前の食材と調理済み食品、使用済み食器の動線が重なる | 汚染作業区域と非汚染作業区域を部屋単位で区分し、専用の出入口や作業台を設ける |
| 床と排水 | 床面に水が広がり、滑りやすくなるほか、清掃後も乾きにくい | ドライシステム、機器直結排水、飛散しにくい排水溝を組み合わせる |
| 換気と空調 | 排気だけを増やすと給気が不足し、扉が開きにくい、空調が効かないなどの問題が起きる | 排気フード、給気、空調を同時に設計し、温度計・湿度計を適切な位置に設ける |
| 排水と油脂 | 油脂や残渣が排水管へ流れ、詰まりや臭気が発生する | バスケットを備えたグリーストラップを設け、清掃可能な排水経路とする |
| 搬入・廃棄物動線 | 食材搬入、廃棄物搬出、児童・生徒の動線が重なり、衛生管理と安全管理が難しくなる | サービス用車両の進入経路、検収室、食品庫、廃棄物保管場所をまとめて見直す |
実務の勘所
厨房機器を決める前に建築と設備を調査する
厨房機器の配置を先に確定すると、床下の排水管、給水・給湯、換気経路と合わないことがあります。
既存床の高さ、排水方向、天井内のダクト経路、搬入開口を調査したうえで、機器配置を決めます。内装、給排水、空調、厨房機器を別々に発注する場合も、同じ平面図で調整しなければなりません。
食堂だけ、厨房だけに工事範囲を分けない
食堂の配膳口を変更すると、厨房側の盛付け台や配膳動線にも影響します。厨房の床を解体すれば、隣接する配膳室や廊下の床高さにも影響することがあります。
改修範囲は室名で区切るのではなく、食材の搬入から食器返却までの流れで判断します。
設計段階で運用者の意見を入れる
学校給食衛生管理基準では、設計段階で保健所や学校薬剤師等の助言を受け、栄養教諭等の関係者の意見を取り入れることが示されています。
図面上では成立していても、実際の献立や作業手順に合わない配置は使いにくくなります。設計初期に作業動線図を作成し、調理員と確認することが有効です。
学校の食堂・厨房改修を進めるには
学校の食堂・厨房改修では、内装や厨房機器だけを更新しても十分とはいえません。
配膳・返却動線、衛生区画、給排水、換気、厨房機器などは互いに影響するため、一つの変更が建築や設備全体に影響することがあります。
そのため、食堂と厨房を一体の施設として現状を調査し、建築・設備・厨房機器をまとめて計画することが重要です。
学校ごとに建物の構造や給食方式、運用方法は異なるため、改修範囲を判断するには教育施設の改修実績がある専門会社へ早い段階で相談することをおすすめします。
なお、改修全体の進め方については、学校改修の進め方ガイド(K296)をご覧ください。
関連記事
- 学校のラーニングコモンズとは?計画と工事のポイント(K015)
- 学校の改修で関わる建築基準法の基礎(K202)
- 学校改修の進め方ガイド(K296)
- 失敗しない施工会社の選び方(K297)
参考・出典
- 文部科学省「小学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_02.pdf
- 文部科学省「中学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_03.pdf
- 文部科学省「高等学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_04.pdf
- 文部科学省「別紙1 学校給食衛生管理基準(平成21年文部科学省告示第64号)」平成21年3月31日告示、平成21年4月1日施行。https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/__icsFiles/afieldfile/2009/09/10/1283821_1.pdf
- 文部科学省「別紙 学校給食実施基準(平成21年文部科学省告示第61号)」平成21年3月31日告示、平成21年4月1日施行。https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/__icsFiles/afieldfile/2009/09/10/1283812_1.pdf
※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。
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