この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

廃校活用のサウンディング型市場調査とは?【2026年版】民間意向調査の設計と進め方

公募をかけて、応募がゼロだった。廃校活用でよくある話です。

原因はたいてい条件です。賃料が高い、契約期間が短い、用途の制限が厳しい、改修の負担が重い。どれも庁内では合理的に決めたつもりでも、民間から見ると事業が成り立たない水準になっていることがあります。

公募をかけてから条件を変えるのは簡単ではありません。一度不調になった案件には、次の公募でも事業者が慎重になります。

そこで先に聞く。それがサウンディング型市場調査です。公募の前に民間事業者と対話し、どういう条件なら参入できるかを確かめます。

この記事では、①サウンディングとは何か、②実施のタイミング、③実施要領の作り方、④対話の進め方、⑤結果の扱い、の5点を整理します。

この記事の要点

  • サウンディング型市場調査は、公募の前に民間の意向を聞いて条件を検証する手続き
  • 法令で定められた制度ではなく、自治体の裁量で実施する任意の調査
  • 参加した事業者が公募で有利になる仕組みではないことを明示する
  • 対話は事業者ごとに個別に行い、提案内容は秘密として扱う
  • 結果は概要を公表し、どう公募に反映したかを示す

サウンディング型市場調査とは何か?

公募の前に行う、民間との対話です。

自治体が保有する土地や建物の活用にあたって、事業者がどういう条件なら参入できるか、どんな用途を想定するか、どの程度の賃料や価格なら成立するかを、公募の前に聞き取ります。

法令で定められた制度ではありません。自治体が任意で行う調査です。そのぶん、やり方は自治体ごとに設計できます。

目的 内容
条件の検証 賃料、期間、用途制限が市場に合っているか
用途の発見 庁内で想定していなかった活用の可能性
参入障壁の把握 事業者が懸念している点は何か
事業者への周知 こういう物件が出るという情報を届ける

4つ目も軽視できません。廃校が出ることを知らない事業者は多く、サウンディングそのものが周知の機会になります。

廃校活用の全体像は廃校活用の事例と進め方は?にまとめています。

誰に聞くのか?

想定する用途から逆算します。

対話の相手は、公募に応募し得る事業者です。どういう事業者が応募し得るかは、建物の規模と立地で決まります。

事業者の類型 関心を持ちやすい条件
福祉・医療の法人 市街地、一定の人口規模、駐車場
教育・研修の事業者 交通の便、宿泊の可否
製造業・倉庫 床荷重、搬入動線、用途地域
宿泊・観光の事業者 観光資源との距離、景観
スポーツ・レジャー 体育館やグラウンドの状態
地域団体・NPO 地域との関係、賃料の水準
不動産・デベロッパー 敷地としての価値、更地化の可否

全部に声をかける必要はありません。建物の状態と立地から、現実的に成立しそうな類型を3つか4つ選び、そこに絞って案内するほうが対話の密度が上がります。

近隣の事例を見る

同じ県内や近隣の自治体で過去に廃校活用の公募があれば、そこに応募した事業者を調べてください。関心があることが実証されている相手です。

文部科学省が公表している活用事例も、事業者の類型を知る材料になります。

いつ実施するのか?

条件を固める前です。

段階 サウンディングの位置
1. 閉校の決定 —
2. 庁内での方針検討 公共利用の可能性を先に整理する
3. 施設の調査 耐震、石綿、設備の状態を把握する
4. サウンディング ここで民間の意向を聞く
5. 条件の決定 聞いた内容を反映する
6. 公募 —

3の施設の調査を先に済ませておく点が重要です。建物の状態が分からないまま対話しても、事業者は答えられません。耐震診断の結果、石綿の有無、設備の容量。これらを示したうえで聞くと、具体的な回答が返ってきます。

庁内の方針を先に整理する

公共施設として使う可能性を先に潰しておきます。サウンディングの後で「やはり庁内で使う」となると、参加した事業者の信頼を失います。

公共施設の再編の中での位置づけは公共施設の再編と学校はどう関わるか?で扱っています。

実施要領には何を書くのか?

事業者が判断するための材料と、ルールです。

項目 内容
対象施設の概要 所在地、敷地面積、延床面積、構造、建築年
施設の状態 耐震診断の結果、石綿の調査状況、設備の概要
法令上の制約 用途地域、用途変更の要否、消防法上の区分
想定する活用の方向性 自治体として期待する用途があれば示す
聞きたいこと 用途、事業規模、希望する条件、懸念点
参加の方法 申込期限、対話の日程、提出資料
秘密の取扱い 提案内容をどう扱うか
公募との関係 参加が公募で有利にならないこと

最後の2つを明記しないと、事業者はノウハウを出しません。提案した内容が他社に流れるのではないか、参加しないと不利になるのではないか。この不安を先に消します。

図面と調査結果を添付する

延床面積の数字だけでは判断できません。各階平面図、配置図、設備の系統図。これらを添付すると回答の質が上がります。

公開に支障がある情報は、参加申込者にのみ開示する形にできます。

「決まっていない」と書いてよい

用途を限定しないほうが、提案の幅は広がります。庁内で結論が出ていない項目は、出ていないと書いたうえで意見を聞くほうが有益です。

対話はどう進めるのか?

事業者ごとに個別に行います。

進め方 理由
個別形式 他社がいると事業者は本音を言わない
1社あたり1時間程度 条件の確認と質疑に必要な時間
庁内は複数部署で同席 教育委員会、財産管理、都市計画、消防
記録を取る 公表用の整理と、庁内での共有のため

庁内が複数部署で同席する点が効きます。事業者の質問は部署をまたぎます。用途地域のこと、消防のこと、財産処分のこと。その場で答えられないと、対話が進みません。

よく出る質問を先に用意する

想定される質問 準備しておくこと
賃料はいくらを想定しているか 算定の考え方。決まっていなければその旨
契約期間は何年か 上限と、延長の可否
改修費は誰が負担するか 原則と、例外の余地
原状回復はどこまで求めるか 範囲の考え方
固定資産税はかかるか 所有形態による違い
校庭や体育館も使えるか 一体か分離か

改修費の負担は、ほぼ必ず聞かれます。事業者が全額負担する前提なら、賃料は下げざるを得ません。この関係を庁内で整理しておかないと、対話が噛み合いません。

財産処分の手続きは廃校の財産処分手続きとは?で扱っています。

参加が集まらないときはどうするのか?

周知の仕方を疑ってください。

サウンディングに参加がない理由は、関心がないからとは限りません。そもそも情報が届いていないことがあります。自治体のウェブサイトに掲載しただけでは、関係する事業者には届きません。

届け方 対象
自治体のウェブサイト 基本。ただしこれだけでは足りない
文部科学省のみんなの廃校プロジェクト 全国の事業者が見る窓口
業界団体・商工会議所 地域の事業者
近隣自治体の事例に参加した事業者 関心が実証されている
直接の声かけ 想定する用途の事業者に個別に案内する

直接の声かけは、公平性を損なうのではないかと躊躇されがちですが、サウンディングは公募ではありません。広く案内することが目的なので、個別に案内したうえでその事実を公表すれば問題になりません。

期間を十分に取る

公表から対話まで3週間しかないと、事業者は社内で検討できません。1か月半から2か月を確保してください。

2回に分ける方法もある

1回目は広く用途の可能性を聞き、2回目は方向性を絞ったうえで条件を詰める。2段階にすると、1回目で出た意見を踏まえた具体的な対話ができます。

時間はかかりますが、公募で不調になってやり直すより早く済みます。

結果はどう扱うのか?

概要を公表します。

個別の事業者名や提案の詳細は伏せたうえで、どういう用途の関心があったか、どういう条件が課題として挙がったかをまとめて公表します。

公表する内容 公表しない内容
参加事業者数 事業者名
想定された用途の類型 個別の事業計画
条件に関する主な意見 事業者ごとの希望額
今後の進め方 対話の逐語記録

公表する理由は2つあります。参加しなかった事業者にも情報が届くこと。そして庁内と議会に対して、条件を変える根拠を示せることです。

条件をどう変えたかを示す

サウンディングをやったのに条件が何も変わらなければ、次の機会に誰も参加しません。

聞いた内容のうち、何を反映し、何を反映しなかったか。反映しなかった理由は何か。ここまで示すと、次のサウンディングでも事業者が集まります。

公募の設計については廃校の売却・貸付と公募はどう進めるか?で扱っています。

関心がゼロだった場合

それも結果です。条件の問題なのか、立地の問題なのか、建物の状態の問題なのか。対話の中で理由が見えていれば、次の判断につながります。

関心がないと分かった時点で、解体して敷地として活用する方針に切り替える判断もできます。公募をかけて不調になるより、傷は浅く済みます。

よくある質問

Q. サウンディングは法令で定められた制度ですか。

A. 違います。自治体が任意で行う調査で、やり方は自治体ごとに設計できます。

Q. 参加した事業者が公募で有利になりますか。

A. 有利にならないことを実施要領に明記します。これを書かないと、事業者はノウハウを出しません。

Q. いつ実施するのがよいですか。

A. 施設の調査を終え、条件を固める前です。建物の状態が分からないままでは事業者が答えられません。

Q. 対話は合同で行ってもよいですか。

A. 個別形式を勧めます。他社がいると本音が出ません。

Q. 結果は公表しますか。

A. 概要を公表します。事業者名や個別の事業計画は伏せ、用途の類型と条件に関する意見をまとめます。

Q. 関心がゼロだった場合はどうしますか。

A. それも結果です。理由が見えていれば、解体して敷地として活用する方針に切り替える判断ができます。

Q. 参加が集まらないときはどうしますか。

A. 周知の仕方を見直してください。自治体のウェブサイトだけでは届きません。文部科学省のみんなの廃校プロジェクトや業界団体、個別の案内を併用します。

Q. 特定の事業者に直接案内してよいですか。

A. サウンディングは公募ではないため問題ありません。広く案内することが目的なので、案内した事実を公表すれば公平性は保てます。

Q. 公表から対話までどれくらい空けますか。

A. 1か月半から2か月です。3週間では事業者が社内で検討できません。

まとめ

公募をかけて応募がゼロになる原因は、たいてい条件です。賃料、契約期間、用途制限、改修費の負担。庁内では合理的に決めたつもりでも、民間から見ると事業が成立しない水準になっていることがあります。

サウンディング型市場調査は、公募の前に民間と対話して条件を検証する手続きです。法令で定められた制度ではなく、自治体が任意で行います。

実施の前に、施設の調査を終えておいてください。耐震診断の結果、石綿の有無、設備の容量。建物の状態が分からないまま聞いても、事業者は具体的に答えられません。庁内で公共利用の可能性を潰しておくことも必要です。

実施要領には、参加が公募で有利にならないことと、提案内容を秘密として扱うことを明記します。これがないと事業者はノウハウを出しません。対話は個別形式で、庁内は複数部署で同席してください。事業者の質問は部署をまたぎます。

結果は概要を公表し、聞いた内容のうち何を公募に反映したかを示してください。サウンディングをやったのに条件が変わらなければ、次の機会に誰も参加しなくなります。

参考・出典

記載の内容は公表時点のものです。サウンディング型市場調査の実施方法および公表の範囲は自治体により異なります。個別の設計は所管部署および庁内の関係部署にご確認ください。

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