目次
臭気・排水・近隣対応
廃校を保護犬猫の施設やペットの関連施設にする提案は、各地で出ています。
郊外にあり、敷地が広く、屋外で運動させる場所がある。教室を飼育の部屋に分けられる。都市部では確保が難しい条件が揃っているように見えます。
しかし動物を飼う施設は、臭気と鳴き声で近隣との関係が決まります。学校は集落の中にあることが多く、周囲に住宅があります。ここで合意が取れないと、開業後に苦情が続きます。
そして制度です。営利で動物を取り扱うには登録が必要で、施設と人員の基準があります。
この記事では、①制度上の位置づけ、②用途と立地、③臭気、④排水と衛生、⑤近隣対応と運営、の5点を整理します。
この記事の要点
- 営利で動物を取り扱うには、動物の愛護及び管理に関する法律に基づく第一種動物取扱業の登録が必要
- 非営利で一定規模以上の飼養をする場合は、第二種動物取扱業として届出が必要
- 悪臭防止法に基づき、都道府県知事が規制地域を指定し、敷地境界線における規制基準などが定められる
- 学校は建築基準法施行令第137条の18の11区分に含まれないため、用途変更は類似の用途に当たらない
- 臭気と鳴き声で近隣との関係が決まるため、合意形成を建物の計画より先に進める
制度上はどう位置づけられるのか?
営利か非営利かで分かれます。
動物の愛護及び管理に関する法律は、動物の取扱いについて2つの区分を設けています。
| 区分 | 対象 | 手続き |
|---|---|---|
| 第一種動物取扱業 | 営利を目的として動物を取り扱う | 登録 |
| 第二種動物取扱業 | 営利を目的とせず一定規模以上で飼養・保管する | 届出 |
第一種動物取扱業には、販売、保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養といった業種があります。ペットホテル、トリミング、しつけ教室、譲渡を伴う事業は、この登録の対象になり得ます。
保護活動を営利としない形で行う場合は、第二種動物取扱業の届出の対象になります。
登録には基準がある
第一種動物取扱業の登録には、飼養施設の構造と規模、管理の方法、動物取扱責任者の選任などの基準があります。基準の詳細は省令で定められ、都道府県または指定都市等が所管します。
計画の段階で所管部署に相談してください。施設の基準が建物の計画を規定します。
業種を先に決める
譲渡、預かり、トリミング、しつけ、展示、保護。どの業種を行うかで登録の内容と施設の要件が変わります。
複数の業種を組み合わせる場合、それぞれについて登録が必要になることがあります。
用途変更の扱い
学校は建築基準法施行令第137条の18の11区分のいずれにも含まれていません。したがって用途を変更する部分の床面積が200平方メートルを超えれば、建築基準法第87条第1項により確認申請が必要になります。
既存不適格の扱いは廃校の既存不適格はどこまで遡るのか?で扱っています。
用途と立地はどう確認するのか?
用途地域と近隣の距離です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 用途地域 | 想定する用途が建築可能か |
| 市街化調整区域 | 都市計画法の開発許可の論点 |
| 近隣の住宅までの距離 | 臭気と鳴き声の到達 |
| 風向き | 卓越風の方向 |
| 近隣の施設 | 学校、福祉施設、飲食店の有無 |
| 水源との距離 | 排水の放流先 |
動物を飼う施設は、用途地域によって建築が制限される場合があります。想定する業種の建築基準法上の用途を確認してから、用途地域の制限に当てはめてください。
近隣の距離が成否を決める
学校は集落の中にあり、周囲に住宅があることが普通です。鳴き声は距離が離れても届きます。
計画地の周囲の住宅の位置と距離を地図で確認し、卓越風の方向も把握してください。この段階で成立しない立地であれば、別の用途を検討するほうが早くなります。
屋外の運動場
犬を運動させる屋外のスペースは、グラウンドを使えます。ただし鳴き声が屋外で直接拡散するため、近隣への影響が大きくなります。
フェンス、植栽、建物の配置で緩和できる範囲は限られます。
既存の施設への配慮
近隣に住宅以外の施設がある場合も確認が必要です。飲食店が近ければ臭気が問題になり、福祉施設が近ければ鳴き声が問題になります。
臭気はどう扱うのか?
悪臭防止法の規制基準が関わります。
悪臭防止法に基づき、都道府県知事は規制地域を指定し、敷地境界線における規制基準などを定めます。規制地域内では、この基準に適合させる必要があります。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 排気の位置と高さ | 近隣への到達を抑える |
| 換気量 | 室内に臭気をためない |
| 脱臭装置 | 排気の処理 |
| 清掃の頻度 | 発生源を減らす |
| 排泄物の保管 | 密閉した保管場所 |
| 搬出の頻度 | 保管期間を短くする |
臭気の対策は、発生源を減らすことと、排気の処理の2つです。清掃の頻度と排泄物の保管方法で、発生する臭気の量が大きく変わります。
排気の位置を先に決める
学校の校舎は、窓を開けて自然換気する前提です。動物の飼育室では、窓を閉じて機械換気にする構成が基本になります。
排気の位置は、近隣の方向を避けて決めます。計画の初期に、どこから排気するかを決めてください。後から変更すると、ダクトの経路を引き直すことになります。
排泄物の保管場所
排泄物を保管する場所は、密閉でき、搬出しやすい位置に置きます。校舎から離れた屋外に設ける構成が取られます。
搬出の頻度を上げれば臭気は減りますが、処理の費用が増えます。
窓を閉じる影響
窓を閉じて機械換気にすると、自然換気ができなくなり、避難上有効な開口部の算定にも関わります。
換気設備の容量は、臭気の対策と室内環境の両方から決まります。設備の考え方は廃校の設備更新はどこから手をつけるのか?で扱っています。
排水と衛生はどうするのか?
洗浄の排水と、床の仕様です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 床の防水 | 水を流して洗う前提 |
| 排水溝と勾配 | 床に勾配をつけて導く |
| 排水の負荷 | 有機物を含む |
| 固形物の分離 | 排水に流さない仕組み |
| 放流先 | 公共下水道か、河川等か |
| 浄化槽の場合 | 人槽と能力の確認 |
| 消毒 | 洗浄と消毒の手順 |
飼育室の床は、水を流して洗う前提になります。教室の床は平らで排水口がないため、全面やり直しになります。これが工事費の柱です。
排泄物を排水に流さない
排泄物を排水に流すと、排水の負荷が高くなり、処理の能力を超えます。固形物は回収して廃棄物として処理する運用にします。
この運用があれば、排水の負荷は洗浄水の範囲に収まります。
浄化槽の能力を確認する
郊外の校舎は浄化槽で処理していることがあります。人槽は在校していた児童生徒数で決まっており、洗浄の排水を前提にしていません。
能力を超える場合、浄化槽の更新または排水の前処理が必要です。
感染症への対応
動物の施設では、感染症の予防が運営の要になります。隔離できる室、消毒の設備、器具の洗浄。これらを室の計画に含めてください。
空調と室温
動物を飼育する室では、室温の管理が必要です。壁に断熱材のない校舎で室温を保とうとすると、空調が高負荷で動きます。
窓を塞げば断熱が改善するため、臭気対策と断熱が同じ方向に働きます。
近隣対応と運営はどう組むのか?
合意形成を建物の計画より先に進めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 説明の時期 | 計画の初期に行う |
| 説明の相手 | 近隣の住宅、自治会、関係する施設 |
| 示す内容 | 飼育する頭数、臭気と鳴き声の対策、運営の時間 |
| 苦情の窓口 | 連絡先と対応の手順 |
| 継続的な報告 | 開業後の状況の共有 |
| 中止の条件 | 基準を超えた場合の対応 |
動物の施設は、計画が公表された段階で反対の声が出ることがあります。工事に入ってから説明すると、関係の修復が難しくなります。
頭数と時間を具体的に示す
「適切に管理します」という説明では納得が得られません。飼育する頭数の上限、屋外に出す時間帯、清掃の頻度、排気の位置。具体的に示してください。
苦情の窓口を1つにする
開業後に苦情が入ったとき、どこに連絡すればよいかが分かる状態にしてください。窓口が不明確だと、苦情が大きくなってから自治体に届きます。
担い手の体制を確認する
保護活動を行う団体に運営を任せる場合、中心になる人が何人いるかを確認してください。1人の熱意で動いている場合、その人が退いたときに動物が残ります。
失敗の型は廃校活用が失敗する原因は何か?で整理しています。担い手が続かない型が、この用途では特に重い結果になります。
撤退時の動物の扱いを契約に書く
事業が続かなくなった場合、動物をどうするかを契約に書いてください。施設と設備の原状回復より先に決めるべき項目です。
| 契約に書くこと | 内容 |
|---|---|
| 撤退時の動物の扱い | 引取り先の確保 |
| 頭数の上限 | 施設の能力に応じた上限 |
| 原状回復の範囲 | 床の防水、換気設備 |
| 費用の担保 | 保証金、保険 |
| 報告の義務 | 頭数と飼育状況 |
収支の前提
寄付や譲渡の手数料に依存する運営では、収入が不安定になります。収支の立て方は廃校活用の収支計画はどう立てるのか?で扱っています。
餌代、医療費、人件費、光熱費。頭数が増えるほど費用が増える構造を、計画の前提に置いてください。
よくある質問
Q. 動物を扱うのに手続きは必要ですか。
A. 営利を目的とする場合は第一種動物取扱業の登録、営利を目的とせず一定規模以上で飼養・保管する場合は第二種動物取扱業の届出が必要です。
Q. 臭気の規制はありますか。
A. 悪臭防止法に基づき、都道府県知事が規制地域を指定し、敷地境界線における規制基準などを定めます。規制地域内ではこの基準に適合させる必要があります。
Q. 教室の床はそのまま使えますか。
A. 使えません。飼育室の床は水を流して洗う前提で、勾配をつけて排水口へ導きます。床の全面やり直しが工事費の柱になります。
Q. 排水で注意する点は何ですか。
A. 排泄物を排水に流さず、固形物は回収して廃棄物として処理してください。浄化槽の校舎では能力を超えることがあります。
Q. 近隣への説明はいつ行いますか。
A. 計画の初期です。工事に入ってから説明すると関係の修復が難しくなります。頭数の上限、屋外に出す時間帯、清掃の頻度、排気の位置を具体的に示してください。
Q. 撤退に備えて何を決めますか。
A. 動物の引取り先です。施設と設備の原状回復より先に決める項目です。頭数の上限と報告の義務も契約に書いてください。
まとめ
廃校を動物関連施設にする構想は、郊外の広い敷地と屋外の運動場という条件が魅力的に見えます。ただし学校は集落の中にあることが多く、臭気と鳴き声で近隣との関係が決まります。
制度上は、営利を目的とする場合は第一種動物取扱業の登録、営利を目的とせず一定規模以上で飼養・保管する場合は第二種動物取扱業の届出が必要です。登録には飼養施設の構造と規模、管理の方法、動物取扱責任者の選任などの基準があり、これが建物の計画を規定します。
臭気については、悪臭防止法に基づき都道府県知事が規制地域を指定し、敷地境界線における規制基準などを定めます。対策は発生源を減らすことと排気の処理の2つで、排気の位置は近隣の方向を避けて計画の初期に決めてください。
排水と床では、飼育室の床を水を流して洗う前提に作り替えることになります。教室の床は平らで排水口がなく、全面やり直しが工事費の柱です。排泄物は排水に流さず回収して廃棄物として処理し、浄化槽の校舎では能力を確認してください。
そして合意形成を建物の計画より先に進めることです。頭数の上限、屋外に出す時間帯、清掃の頻度、排気の位置を具体的に示す。苦情の窓口を1つにする。担い手が1人の熱意で動いている場合、その人が退いたときに動物が残ります。撤退時の動物の引取り先を、原状回復より先に契約に書いてください。
参考・出典
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/348AC1000000105
- 環境省「動物の愛護と適切な管理」 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/
- e-Gov法令検索「悪臭防止法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/346AC0000000091
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- e-Gov法令検索「水質汚濁防止法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000138
- e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137
記載の法令および制度は公表時点のものです。登録および届出の基準、悪臭の規制基準は所管部署および規制地域の指定により異なります。個別の適用は都道府県または指定都市等の動物愛護所管部署、環境所管部署、所管行政庁および設計者にご確認ください。
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