直接の国庫補助はなく、地方財政措置が基本です。
大型提示装置は、電子黒板や大型のディスプレイ、プロジェクターを指します。実物投影機とあわせて整備の対象とされています。
学校のICT環境整備3か年計画(2025〜2027年度)では、各普通教室1台、加えて特別教室用として各学校に6台が整備水準です。
ただし端末のような補助金はありません。学校のICT環境整備3か年計画に基づく地方財政措置が財源になります。計画では必要な事業費を単年度1,464億円とし、所要の地方財政措置が講じられるとされています。
一方、設置に伴う工事については別の扱いがあります。壁の下地補強や電源の増設が校舎の大規模改造の対象経費に含まれる場合があり、その部分は学校施設環境改善交付金の対象になり得ます。
この記事では、①整備水準、②財源、③設置に伴う工事、④機器の選び方、⑤進め方、の5点を整理します。
目次
この記事の要点
- 大型提示装置に直接の国庫補助はなく、地方財政措置が基本の財源
- 整備水準は各普通教室1台、特別教室用として各学校に6台
- 普通教室が18ある学校なら18台+6台で24台になる
- 壁の下地補強や電源の増設は、校舎の大規模改造の対象経費に含まれる場合がある
- 学校施設環境改善交付金の大規模改造は算定割合3分の1から2分の1
整備水準はどうなっているのか?
各普通教室1台と特別教室用6台です。
| 項目 | 整備水準 |
|---|---|
| 大型提示装置・実物投影機 | 各普通教室1台、特別教室用として各学校に6台 |
| 学習者用端末 | 1人1台整備 |
| 指導者用端末 | 1人1台整備 |
| インターネット・無線LAN | 100パーセント整備 |
| ICT支援員 | 4校に1人配置 |
必要台数を計算する
普通教室が18ある学校なら、18台+6台で24台です。小中学校が20校ある市町村では、学校ごとの普通教室数を積み上げます。
普通教室の数を数え直すと、想定より多くなる学校が出ます。少人数指導用の教室を普通教室として数えるかで台数が変わります。
特別教室用は各学校に6台
理科室、音楽室、図工室、家庭科室、技術室、コンピュータ室。こうした特別教室用として各学校に6台という水準です。
教室数が6を超える学校では、可動式を併用して回す形になります。
実物投影機も対象
大型提示装置と実物投影機があわせて整備の対象とされています。実物投影機は、紙の教材や児童生徒の手元を映す機器です。
端末の画面を映すだけでなく、紙を映す需要があるため両方が必要になります。
整備率で現状を把握する
水準に対する整備率を学校ごとに出してください。全体の平均では、遅れている学校が見えません。
整備水準の全体像は学校のICT環境とは何か?で扱っています。
水準は義務ではない
整備水準は国が示す目標です。達成が義務づけられているわけではありません。
一方、この水準をもとに地方財政措置の額が算定されます。予算要求の根拠として使えます。
計画の内容
整備水準は学校のICT環境整備3か年計画(2025〜2027年度)で示されています。6文科初第2064号(令和7年1月24日)の通知によるものです。
内容は学校のICT環境整備3か年計画とは何か?で扱っています。
財源はどうなっているのか?
地方財政措置です。
| 対象 | 財源 |
|---|---|
| 機器本体 | 地方財政措置(直接の国庫補助はない) |
| 設置に伴う工事 | 校舎の大規模改造の対象経費に含まれる場合がある |
| 全体 | 3か年計画の事業費 単年度1,464億円に所要の地方財政措置 |
補助金がないことの意味
端末には公立学校情報機器整備事業費補助金があります。大型提示装置にはこれに相当する補助金がありません。
したがって申請して採択を受ける手続きはなく、一般財源として予算を要求します。
地方財政措置は現金ではない
地方財政措置は基準財政需要額への算入です。同額の現金が交付される仕組みではありません。
普通交付税の不交付団体では効果が現れません。財政の所管部署に確認してください。
予算要求では一般財源として扱う
補助金がないため、他の事業と同じ土俵で査定を受けます。したがって必要性の説明が予算の確保を左右します。
国の整備水準と自団体の整備率を並べ、不足台数に単価を掛けた額を示してください。
起債が使えるかを確認する
機器の購入は耐用年数が短いため、起債の対象になりにくい面があります。一方、建物に固定する形で設置する場合、施設整備として扱われる可能性があります。
工事の区分によって財源が変わります。設計の段階で財政の所管部署に確認してください。
リースという選択
購入ではなくリースにすれば、当年度の支出が平準化されます。更新のサイクルも契約で管理できます。
ただし総額は購入より高くなる傾向があります。両方で試算して比べてください。
更新の財源を先に考える
機器には寿命があります。整備した時点で、次の更新の財源をどうするかを決めておいてください。
更新が重なる年度に予算が組めないと、使えない教室が出ます。
設置に伴う工事はどうなるのか?
ここが補助の対象になり得ます。
| 工事 | 内容 |
|---|---|
| 壁の下地補強 | 大型ディスプレイを壁掛けする場合の補強 |
| 天井の補強 | 天吊り設置の場合 |
| 電源の増設 | コンセントの位置と容量 |
| 配線工事 | HDMIケーブル、ネットワーク配線 |
| 黒板・ホワイトボードの改修 | 提示装置との併設の調整 |
壁掛けには下地の補強が必要
大型のディスプレイは重量があります。ボード壁では支えられません。
したがって壁の下地に補強を入れる工事が必要です。この工事は建物の工事であり、機器の調達とは別です。
電源の位置と容量を確認する
提示装置を設置する位置に電源がなければ、コンセントの増設が必要です。教室の分電盤の容量も確認してください。
端末の充電と同時に使うと、容量を超える教室があります。
黒板との併設を設計する
既存の黒板の前に設置すると、黒板が使えなくなります。黒板の横に設置する、黒板をスライド式にする、ホワイトボードに替える。
教員の使い方に合わせた配置を決めてください。設置してから使いにくいと言われる例があります。
大規模改造の対象経費になる場合がある
壁の補強、電源の増設、配線工事が校舎の大規模改造の対象経費に含まれる場合があります。
学校施設環境改善交付金の大規模改造は算定割合3分の1から2分の1です。含まれれば補助の対象になります。制度の内容は学校施設環境改善交付金で扱っています。
改修と同時に行う方が効率的
改修工事と別に行うと、養生や仮設の費用が二重にかかります。教室を使えない期間も二重になります。
改修の計画がある学校では、提示装置の設置時期を合わせることを検討してください。
ネットワーク配線と同時に行う
提示装置をネットワークにつなぐ場合、配線が必要です。無線で接続する場合も、アクセスポイントの位置を確認します。
ネットワークの財源は学校の校内LAN・無線LAN整備に補助金は使えるのかで扱っています。
機器はどう選ぶのか?
教室の条件と使い方で決まります。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| 大型ディスプレイ(固定) | 明るい教室でも見やすい。重量があり補強が必要 |
| プロジェクター(短焦点) | 大きく映せる。明るい教室では見えにくい |
| 電子黒板 | 画面に直接書き込める。価格が高い |
| 可動式(スタンド) | 複数教室で共用できる。運搬の手間がある |
明るさが選択を左右する
南面の教室では、プロジェクターの投影が見えにくくなります。カーテンを閉めると今度は手元が暗くなります。
大型ディスプレイは明るい環境でも見やすいため、採光の良い教室に向きます。
書き込み機能が必要かを確認する
電子黒板は画面に直接書き込めます。一方、価格が高くなります。
教員が実際に書き込み機能を使うかを、導入前に確認してください。使われない機能に費用をかける例があります。
画面サイズと教室の奥行き
教室の後ろの席から文字が読めるサイズが必要です。一般的な普通教室の奥行きでは、65インチ以上が目安とされることがあります。
ただし実際の視認性は文字の大きさと照明によります。試用して確認してください。
可動式は共用できるが手間がかかる
可動式のスタンドなら複数教室で使い回せます。台数を減らせます。
一方、授業ごとに運ぶ手間がかかります。段差やエレベーターの有無で運搬が難しい校舎もあります。
機種を揃えると運用が楽になる
学校ごとに機種が違うと、教員の異動時に使い方を覚え直すことになります。障害対応も機種ごとに手順が変わります。
団体内で機種を揃えると運用の負担が下がります。
教員の意見を聞く
実際に使うのは教員です。設置位置、操作方法、書き込み機能の必要性。
導入前に意見を聞くと、使われない機器を買う失敗を避けられます。
進め方はどうするのか?
必要台数の積算から入ります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 学校ごとの普通教室数と特別教室数を数える |
| 2 | 現在の設置台数と設置年を調べる |
| 3 | 水準との差を台数で出す |
| 4 | 教室ごとの条件(採光、壁の構造、電源)を確認する |
| 5 | 機器の方式を決める |
| 6 | 設置に伴う工事の有無と費用を見積もる |
| 7 | 改修計画との調整を行い、年度ごとの予算に落とす |
普通教室の数を正確に数える
少人数指導用の教室、空き教室、特別支援学級の教室。これらを普通教室として数えるかで台数が変わります。
数え方を団体内で統一してください。
設置年を記録する
既存の機器がいつ設置されたかを記録してください。更新の時期を見通すために必要です。
第1期の整備から年数が経っている学校では、更新が近づいています。
教室の条件を学校ごとに確認する
採光、壁の構造、電源の位置。同じ機器でも、学校によって必要な工事が変わります。
一律に積算すると、工事が必要な学校で予算が足りなくなります。
工事費を分けて積算する
機器の費用と工事の費用を分けてください。工事の部分は校舎の改修の対象経費に含まれる可能性があります。
分けておかないと、補助の申請で整理できません。
試用してから決める
数校で試用してから全校に展開する形が安全です。使い勝手の問題は、実際に使ってみないと分かりません。
一括で全校に入れてから問題が出ると、修正に費用がかかります。
研修を同時に計画する
機器を入れても使われなければ投資が活きません。操作の研修を導入と同時に計画してください。
ICT支援員が研修を担う形があります。
よくある質問
Q. 大型提示装置の整備に補助金はありますか。
A. 直接の国庫補助はありません。学校のICT環境整備3か年計画に基づく地方財政措置が基本の財源です。
Q. 整備水準は何台ですか。
A. 各普通教室1台、加えて特別教室用として各学校に6台です。普通教室が18ある学校なら18台+6台で24台になります。
Q. 設置に伴う工事は補助の対象になりますか。
A. なる場合があります。壁の下地補強、電源の増設、配線工事が校舎の大規模改造の対象経費に含まれれば、学校施設環境改善交付金の対象になり得ます。算定割合は3分の1から2分の1です。
Q. 電子黒板とディスプレイのどちらがよいですか。
A. 教室の条件と使い方で決まります。電子黒板は画面に直接書き込めますが価格が高くなります。教員が書き込み機能を実際に使うかを導入前に確認してください。
Q. プロジェクターでも水準を満たしますか。
A. 大型提示装置の方式は指定されていません。ただし明るい教室ではプロジェクターの投影が見えにくくなります。教室の採光を確認してください。
Q. リースと購入のどちらがよいですか。
A. リースは当年度の支出が平準化され、更新のサイクルを契約で管理できます。一方、総額は購入より高くなる傾向があります。両方で試算して比べてください。
まとめ
大型提示装置の整備に直接の国庫補助はありません。端末には公立学校情報機器整備事業費補助金がありますが、提示装置にはこれに相当する補助金がなく、学校のICT環境整備3か年計画に基づく地方財政措置が基本の財源です。したがって申請して採択を受ける手続きはなく、一般財源として予算を要求します。
整備水準は各普通教室1台、加えて特別教室用として各学校に6台です。普通教室が18ある学校なら24台になります。普通教室の数を数え直すと想定より多くなる学校が出るため、少人数指導用の教室などを普通教室として数えるかを団体内で統一してください。
設置に伴う工事には別の扱いがあります。大型のディスプレイを壁掛けするには壁の下地の補強が必要で、電源の増設や配線工事も発生します。これらが校舎の大規模改造の対象経費に含まれれば、学校施設環境改善交付金の対象になり得ます。算定割合は3分の1から2分の1です。したがって機器の費用と工事の費用は分けて積算してください。
改修工事と別に設置すると、養生や仮設の費用が二重にかかり、教室を使えない期間も二重になります。大規模改造や長寿命化改良の計画がある学校では、提示装置の設置時期を合わせることを検討してください。
機器の選択は教室の条件と使い方で決まります。南面の明るい教室ではプロジェクターの投影が見えにくく、大型ディスプレイが向きます。電子黒板は画面に直接書き込めますが価格が高いため、教員が実際にその機能を使うかを導入前に確認してください。数校で試用してから全校に展開する形が安全です。
参考・出典
- 文部科学省「学校のICT環境整備3か年計画(2025〜2027年度)」 https://www.mext.go.jp/content/20250128-mxt_shuukyo01-000011648_01.pdf
- 文部科学省「令和7年度以降の学校におけるICT環境の整備方針及び学校のICT環境整備3か年計画(2025〜2027年度)について(通知)」(6文科初第2064号、令和7年1月24日) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_02994.html
- 文部科学省「学校のICT環境整備に係る地方財政措置」 https://www.mext.go.jp/content/20240722-mxt_jogai02-000037105_6.pdf
- 文部科学省「学校施設環境改善交付金」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1413024.htm
- 文部科学省「学校におけるICT環境の整備・運用について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1421443_00002.htm
記載の整備水準および財源の制度は公表時点のものです。対象経費の範囲および地方財政措置の扱いは所管部署の運用により異なります。個別の適用は文部科学省および都道府県・市町村の所管部署にご確認ください。
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