この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校のブロック塀は何を確認すべきか?

法令の基準と点検・改修の進め方

平成30年6月の大阪府北部地震では、小学校のブロック塀が倒れ、児童が亡くなりました。この事故を受けて、全国の学校で点検と対策が進められてきました。

ただし、対策が完了していない学校はまだ残っています。また、対策済みとされた塀でも、経年で傾きやひび割れが生じることがあります。点検は一度で終わるものではありません。

ブロック塀は、校舎に比べて関心が向きにくい部分です。しかし倒れれば人命に関わり、通学路に面していれば地域の被害にもなります。

この記事では、①法令上の基準、②全国の対策状況、③点検の項目、④改修の選択肢、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 補強コンクリートブロック造の塀の基準は、建築基準法施行令第62条の8に定められている
  • 高さは2.2メートル以下、壁の厚さ、控壁、基礎、鉄筋の配置などの要件がある
  • 文部科学省の調査(令和2年9月1日現在)では、安全対策が完了した学校は46,797校で全体の91.6%、未完了は3,433校で6.7%
  • 外観の点検だけでなく、鉄筋の有無や基礎の状態を確かめる内部の点検が必要
  • 対策の選択肢は、撤去、撤去して別の構造の塀やフェンスに置き換え、基準に適合する塀への改修

法令ではどう定められているか?

建築基準法施行令第62条の8が、補強コンクリートブロック造の塀の基準を定めています。

項目基準の内容
高さ2.2メートル以下
壁の厚さ15センチメートル以上(高さ2メートル以下の塀は10センチメートル以上)
控壁高さ1.2メートルを超える塀では、3.4メートル以内ごとに、壁面から高さの5分の1以上突出したものを設ける
鉄筋径9ミリメートル以上の鉄筋を縦横に配置し、末端をかぎ状に折り曲げて定着させる
基礎丈は35センチメートル以上、根入れの深さは30センチメートル以上

このほか、コンクリートブロックの品質や、鉄筋のかぶり厚さについても定めがあります。既存の塀がこれらを満たしているかは、外から見ただけでは判断できません。

なお、この基準は補強コンクリートブロック造の塀についてのものです。組積造の塀には別の基準があり、万年塀のようなプレキャスト製品の塀も、製品と施工の状態で判断が変わります。

学校の改修に関わる建築基準法の全体像は学校の改修で関わる建築基準法の基礎にまとめています。

全国の対策はどこまで進んだか?

9割を超えましたが、完了していない学校が残っています。

文部科学省が公表した令和2年度の調査(令和2年9月1日現在)の結果は、次のとおりです。

区分学校数割合
安全対策が完了46,797校91.6%
うちブロック塀等がない38,477校75.3%
うち安全が確認された8,320校16.3%
未完了3,433校6.7%

未完了の内訳では、令和3年3月末までに完了予定が852校(1.7%)、令和3年4月以降に完了予定が1,391校(2.7%)、内部の点検が未完了が2,019校(4.0%)とされています。

注目すべきは、外観の点検では問題が見つからなくても、内部の点検が終わっていない学校が相当数あったことです。鉄筋の有無や基礎の状態は、外観からは確認できません。

この調査は令和2年度のものが最新の公表です。その後に対策が進んでいる学校も多いと考えられますが、自校の状況は、設置者の記録で確認する必要があります。

点検では何を見るのか?

外観と内部に分かれます。

外観の点検

項目見るところ
高さ地盤面からの高さが2.2メートルを超えていないか
厚さ壁の厚さが基準を満たしているか
控壁高さ1.2メートル超の塀に、3.4メートル以内ごとに控壁があるか
傾き・ひび割れ塀が傾いていないか、ひび割れや破損がないか
劣化鉄筋の露出、錆汁、風化がないか
基礎基礎が見えているか、傾いていないか

内部の点検

鉄筋が入っているか、その径と間隔が基準を満たしているか、基礎の形状と根入れが十分かを確かめます。鉄筋探査機による調査や、一部をはつって確認する方法、基礎の部分を掘って確認する方法があります。

外観に問題がなくても、鉄筋が入っていない塀は珍しくありません。古い塀では、この確認が欠かせません。調査の結果は、位置ごとに記録して残します。

通学路の塀も見る

学校の敷地内だけでなく、通学路に面した民有地の塀も、児童生徒の安全に関わります。学校が直接対策することはできませんが、危険な箇所を把握し、自治体の担当部署や地域と情報を共有しておきます。通学路の安全点検の機会に合わせて確認すると、負担が少なく済みます。

どう対策するのか?

3つの選択肢があります。

対策内容向いている場合
撤去塀をなくす目隠しや防犯の必要性が低い場所
撤去して置き換えフェンス、生け垣、軽量なパネルなどに変える敷地の区画や防犯上、区切りが必要な場所
基準に適合する塀への改修控壁の設置、高さの低減、鉄筋・基礎の補強塀としての機能を残したい場合

フェンスへの置き換え

最も多い選択肢です。倒壊の危険がなくなり、見通しが良くなるため、防犯上の効果もあります。一方、外からの視線が通るため、更衣室や低学年の教室に面した場所では、目隠しの必要性を検討します。

メッシュフェンス、縦格子、目隠し付きなど、種類によって見え方と価格が変わります。高さ、色、道路からの見通しを、周辺の景観も含めて決めます。

高さを下げる方法

既存の塀の上部を撤去して高さを下げ、その上にフェンスを設ける方法もあります。基礎を残せるため費用を抑えられますが、残す部分が基準を満たすかどうかの確認が必要です。フェンスの荷重を既存の塀が受けられるかも、設計者に確認します。

プールの目隠しは別に考える

プールサイドの目隠しとして高い塀が設けられている場合、撤去すると目隠しの機能が失われます。ネットやルーバーなど、軽量で倒壊しない方法に置き換えます。プールの使用期間だけ目隠しを設ける方法もあります。

なぜ危険な塀が残るのか?

3つの事情があります。

図面や記録が残っていない

古い塀は、いつ、誰が、どの仕様で造ったのかが分からないことがよくあります。校舎の建築と同時に造られたのか、後から増設されたのかも不明な場合があります。記録がないと、鉄筋や基礎の確認を実地で行うしかなく、その分の費用と時間がかかります。

敷地の境界に関わる

隣地との境界にある塀は、学校の所有か、隣地の所有か、共有かで対応が変わります。所有関係がはっきりしないと、撤去や改修の話が進みません。境界の確定が必要になることもあり、時間がかかります。危険な塀については、所有関係の確認と並行して、立入りの制限だけは先に行います。

費用と優先順位

校舎の耐震化や老朽化対策と比べると、塀の対策は後回しになりがちです。しかし、倒壊すれば人命に関わり、通学路に面していれば地域の被害にもつながります。金額としては大きくない工事が多いので、優先順位を上げて処理する価値があります。

塀以外の外構も点検するか?

します。倒れる、落ちるおそれのあるものは、塀だけではありません。敷地内を一通り見ておきます。

対象確認すること
門扉・門柱基礎の状態、傾き、固定の方法
擁壁ひび割れ、はらみ出し、水抜き穴の詰まり
フェンス支柱の腐食、基礎の沈下
屋外倉庫・自転車置場基礎への固定、屋根材の劣化
石碑・記念碑・銅像転倒防止の措置
樹木倒木のおそれ、枝の張り出し
屋外の設備受水槽、室外機、キュービクルの固定

地震で倒れる可能性があるものを、敷地図に落として一覧にします。点検の記録は建物ごとの台帳と合わせて管理すると、次の改修の計画に使えます。写真を添えておくと、経年の変化を追えます。

非構造部材の対策全体は特定天井の脱落対策はどう進めるか?も参照してください。定期報告の仕組みは学校は特殊建築物であるで扱っています。

どう進めればよいか?

4つの段階です。

1. 敷地内の塀を一覧にする

校地の外周、門扉のまわり、プール、体育館の裏、駐輪場の周囲など、塀がある場所を図面に落とします。構造(ブロック、コンクリート、組積造など)と、おおよその高さと延長を記録します。道路に面しているか、敷地内かも区別します。

2. 点検する

外観の点検を行い、問題がなければ内部の点検に進みます。点検の結果は、位置ごとに記録し、写真を添えて残します。判断に迷う箇所は、建築士や専門の業者に確認してもらいます。

3. 危険な箇所は直ちに立入りを制限する

倒壊のおそれがある塀については、対策が完了するまで近寄れないようにします。コーンや仮囲いで区画し、児童生徒と教職員に周知します。通学路に面している場合は、保護者と地域にも知らせます。

4. 対策を計画する

撤去、置き換え、改修のどれにするかを決め、費用と工程を組みます。外構の工事は、校舎の改修に比べて工期が短く、長期休業期間で終えられることが多くあります。通学路に面した塀は、工事中の歩行者の安全にも配慮します。

よくある質問

Q. 高さ2.2メートル以下なら問題ありませんか。

A. 高さだけでは判断できません。厚さ、控壁、鉄筋、基礎のすべてが基準を満たしている必要があります。傾きやひび割れがあれば、基準を満たしていても対策が要ります。

Q. 鉄筋が入っているかは外から分かりますか。

A. 分かりません。鉄筋探査機による調査や、一部をはつって確認する方法があります。図面や施工の記録が残っていれば、その確認も有効です。記録がなければ、実地の調査が必要になります。

Q. 塀を撤去すると防犯上の問題はありませんか。

A. 見通しが良くなることで、かえって防犯上有利になる場合もあります。必要な場所にはフェンスや植栽を設け、出入口の管理と合わせて検討します。

Q. 撤去した後、敷地の境界はどう示しますか。

A. フェンス、植栽、境界杭と標識の組み合わせで示します。隣地との関係では、撤去の前に所有関係と境界を確認しておきます。

Q. 対策に補助は使えますか。

A. 公立では学校施設環境改善交付金、私立では都道府県の補助が使える場合があります。年度ごとの制度を確認してください。自治体によっては、通学路沿いの民有地の塀に対する補助を設けている例もあります。

Q. 一度対策すれば、その後の点検は不要ですか。

A. 不要ではありません。フェンスの支柱の腐食、基礎の沈下、擁壁のひび割れなど、経年で生じる変化があります。定期的な点検の対象に含め、記録を残します。

まとめ

補強コンクリートブロック造の塀の基準は、建築基準法施行令第62条の8に定められています。高さ2.2メートル以下、壁の厚さ、控壁、鉄筋、基礎について要件があり、外から見ただけでは適合しているか判断できません。

文部科学省の調査(令和2年9月1日現在)では、安全対策が完了した学校は46,797校で全体の91.6%、未完了は3,433校で6.7%でした。内部の点検が終わっていない学校も相当数ありました。

対策の選択肢は、撤去、フェンスなどへの置き換え、基準に適合する塀への改修です。まず敷地内の塀を一覧にし、外観と内部の点検を行い、危険な箇所は直ちに立入りを制限したうえで、計画的に対策を進めます。一度対策した箇所も、定期的な点検の対象に含めておきます。

参考・出典

記載の制度・データは公表時点のものです。個別の適合の判断は、設計者を通じて所管行政庁にご確認ください。

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