この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

廃校の土壌調査はどこまで必要か?

土壌汚染対策法と跡地売却の実務

校舎を解体して跡地を売る。この計画で見落とされやすいのが土壌調査です。

学校の敷地は、工場跡のように汚染が疑われる場所ではありません。だから調査は不要だと考えてしまいがちです。しかし土壌汚染対策法は、汚染の疑いの有無だけでなく、一定面積以上の土地の形質を変更する行為そのものを届出の対象にしています。

校庭を含む校地は広く、小学校でも1万平方メートルを超えることがあります。解体して造成すれば、確実に面積要件を超えます。

そして調査で基準を超える物質が検出されれば、売却の条件も価格も変わります。買主が決まってから判明すると、契約が壊れます。

この記事では、①届出が必要になる条件、②調査の契機、③学校敷地で注意する点、④売却への影響、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 土壌汚染対策法第4条により、一定規模以上の土地の形質の変更は着手の30日前までに届出が必要
  • 一般的な土地では3,000平方メートル以上が対象
  • 現に有害物質使用特定施設が設置されている工場等の敷地では900平方メートル以上が対象
  • 届出を受けた都道府県知事が、汚染のおそれがあると認めるときは調査が命じられる
  • 調査の結果は売却の条件と価格に直結するため、公募の前に済ませる

土壌汚染対策法とはどういう法律か?

土壌の汚染状況を把握し、人の健康被害を防止するための法律です。

汚染されている土地を見つけて区域を指定し、そこでの行為を制限する仕組みになっています。調査が必要になる場面は、法で3つ定められています。

条文調査の契機
第3条使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の敷地であった土地
第4条一定規模以上の土地の形質の変更を行う場合
第5条都道府県知事が人の健康被害のおそれがあると認める場合

廃校の跡地で関わるのは、主に第4条です。

学校は有害物質使用特定施設ではない

第3条は、工場や事業場で有害物質を使っていた施設が廃止されたときの規定です。学校は通常これに当たりません。

ただし理科室や実験施設の排水設備が、過去に有害物質使用特定施設として届け出られている可能性はゼロではありません。大学や高等専門学校の研究施設では確認が必要です。小中学校では該当しないことがほとんどです。

届出が必要なのはどんな場合か?

一定規模以上の土地の形質を変更する場合です。

土地の区分面積要件
一般的な土地3,000平方メートル以上
現に有害物質使用特定施設が設置されている工場等の敷地900平方メートル以上

届出は、形質の変更に着手する30日前までに行います。

校舎の解体と跡地の造成は、土地の形質の変更に当たります。校地の面積を考えれば、3,000平方メートルの要件はほぼ確実に超えます。

形質の変更とは何か

土地の形を変える行為です。掘削、盛土、切土。建物の解体に伴う基礎の撤去も含まれます。

逆に、建物をそのまま残して内部を改修するだけなら、土地の形質は変わりません。この場合は第4条の届出の対象になりません。

つまり同じ廃校活用でも、建物を転用する場合と、解体して更地にする場合では手続きが変わります。

活用の方法第4条の届出
校舎を残して転用する対象外(土地の形質を変更しない場合)
校舎を解体して更地にする対象(面積要件を満たす場合)
一部を解体し、残りを転用する解体に伴う形質変更の面積で判断

売却を前提とするなら、この手続きは避けられません。売却と貸付の判断については廃校の売却・貸付と公募はどう進めるか?で扱っています。

届出をするとどうなるのか?

知事が判断します。

届出を受けた都道府県知事が、その土地に汚染のおそれがあると認めるときは、土地の所有者等に対して調査を命じます。汚染のおそれがないと判断されれば、調査は求められません。

知事の判断その後
汚染のおそれがないと認める調査は命じられない。届出のみで進む
汚染のおそれがあると認める指定調査機関による調査が命じられる

判断の材料は、その土地の過去の使われ方です。学校になる前が何だったか。周辺に工場があったか。地歴の調査が実質的な出発点になります。

地歴の確認が最初の仕事

校地になる前の用途を調べます。登記、航空写真、古地図、住宅地図。自治体であれば過去の公図や都市計画の資料も手元にあります。

戦後の学校建設では、埋立地や工場跡地が校地になった例があります。この場合は汚染のおそれありと判断される可能性が高くなります。

学校の敷地で注意する点は何か?

いくつか固有の論点があります。

項目内容
地歴校地になる前の用途。埋立地、工場跡、水田、墓地
焼却炉の跡校内焼却炉が設置されていた時期がある
理科室の排水排水系統と処理の方法
プールの薬品保管場所と取扱いの記録
用務員室・倉庫塗料、薬品、燃料の保管
盛土・造成の履歴校庭の整備で搬入された土の出所

校内焼却炉は、かつて多くの学校に設置されていました。設置されていた場所の周辺については、確認の対象として挙がることがあります。

校庭の造成土

校庭を整備するときに外部から土を搬入している場合、その土の出所が問題になることがあります。古い記録が残っていないことも多く、確認が難しい部分です。

地歴の調査で分からない場合は、知事の判断に委ねられます。

条例の上乗せはあるのか?

あります。自治体ごとに確認が必要です。

土壌汚染対策法とは別に、都道府県や政令市が独自の条例で調査や届出を求めている場合があります。法の面積要件より小さい規模を対象にしていたり、法が対象としない物質を加えていたりします。

確認する先内容
都道府県の環境部局条例による上乗せの有無、対象となる規模と物質
市の環境部局政令市・中核市では市が所管する場合がある
都市計画担当開発許可との関係

自治体が自ら所有する土地を処分する場合でも、条例の手続きは同じように適用されます。庁内の別部署が所管していることが多いため、早い段階で声をかけてください。

自主調査という方法

法や条例で義務づけられていなくても、売主が自主的に調査を行うことができます。

売却の場面では、これが有効に働くことがあります。調査をして基準に適合していることを示せば、買主の不安が消え、価格の交渉材料にもなりません。逆に調査をしないまま売ると、買主が自ら調査する前提で価格を下げてくることがあります。

調査費と、価格に反映される額を比べて判断してください。

売却にどう影響するのか?

条件と価格の両方に効きます。

調査の結果売却への影響
汚染のおそれなしと判断通常どおり進められる
調査で基準に適合調査の記録が買主への説明資料になる
基準を超過し区域指定土地の形質変更に制限がかかる。売却価格が下がる

区域に指定されると、その土地での形質変更が制限されます。買主が建物を建てる計画であれば、その計画自体に影響します。

契約前に判明させる

一番避けたいのは、売買契約を結んだ後に汚染が判明することです。契約不適合の責任が生じ、解除や損害賠償の問題になります。

自治体が売主の場合、契約書で責任の範囲を限定することはできますが、それでも紛争の火種は残ります。公募をかける前に調査を済ませ、結果を公表するほうが安全です。

跡地の売却と資産の組替えについては校地・校舎の売却と資産組替えはどう考えるか?も参考になります。

貸付なら調査は要らないのか?

形質を変更しないなら、第4条の対象にはなりません。

校舎を残して民間に貸す方式であれば、土地の形を変えません。基礎を撤去することもなく、造成もしない。この場合、第4条の届出は生じません。

ただし注意すべき点があります。借りた事業者が、駐車場の造成や増築のために土地を掘削すれば、その時点で形質の変更が発生します。誰が届出を行い、調査が命じられた場合に誰が費用を負担するのか。これを契約で決めていないと、後で揉めます。

想定される場面決めておくこと
事業者が駐車場を造成する届出の主体、調査費の負担
事業者が建物を増築する同上。基礎工事を伴う
契約期間の満了で原状回復する解体に伴う形質変更の扱い
将来、自治体が売却に切り替えるその時点で調査が必要になる

貸付の段階では調査が不要でも、先送りしているだけという見方もできます。長期の貸付であれば、契約の前に地歴の調査だけでも済ませておくと、将来の判断が早くなります。

どう進めるのか?

地歴の調査から始めます。

段階内容
1. 地歴の調査校地になる前の用途。登記、航空写真、古地図、庁内の資料
2. 校内の履歴の確認焼却炉、理科室の排水、薬品の保管場所、造成の記録
3. 所管への事前相談届出の要否、汚染のおそれの判断の見通し
4. 届出形質の変更に着手する30日前まで
5. 調査命じられた場合、指定調査機関が実施
6. 結果の公表公募要項に調査結果を添付する

3の事前相談を飛ばすと、届出後に調査を命じられて工程が延びます。解体の発注前に見通しを立ててください。

解体の調査とまとめて進める

石綿やPCBの調査も、解体前に必要になります。土壌の地歴調査と並行して進めると、全体の工程が短くなります。

有害物質の調査は廃校のアスベスト・PCB調査はどう進めるのか?で扱っています。解体前に必要な調査と届出の全体像は学校の解体前調査は何をするのか?にまとめています。

よくある質問

Q. 学校の跡地でも土壌調査は必要ですか。

A. 土壌汚染対策法第4条は一定規模以上の土地の形質の変更を届出の対象としています。汚染の疑いの有無にかかわらず、届出は必要です。

Q. 面積の要件は何平方メートルですか。

A. 一般的な土地では3,000平方メートル以上です。現に有害物質使用特定施設が設置されている工場等の敷地では900平方メートル以上です。

Q. 届出はいつまでに行いますか。

A. 形質の変更に着手する30日前までです。

Q. 校舎を残して転用する場合も必要ですか。

A. 土地の形質を変更しないのであれば、第4条の届出の対象にはなりません。基礎の撤去を伴う場合は対象になります。

Q. 届出をすると必ず調査が必要になりますか。

A. なりません。知事が汚染のおそれがあると認める場合に調査が命じられます。

Q. 公募の前に調査すべきですか。

A. 勧めます。契約後に汚染が判明すると紛争になります。結果を公表したほうが提案の精度も上がります。

Q. 条例による上乗せはありますか。

A. 自治体によってあります。法より小さい規模を対象にしていたり、対象物質を加えていたりします。都道府県または市の環境部局に確認してください。

Q. 義務がなくても調査する意味はありますか。

A. あります。基準に適合していることを示せば、買主の不安が消え、価格の交渉材料になりません。調査費と価格への影響を比べて判断してください。

Q. 貸付なら調査は不要ですか。

A. 形質を変更しなければ第4条の対象になりません。ただし借主が造成や増築をすれば発生するため、届出の主体と費用負担を契約で決めてください。

まとめ

廃校の跡地を売却する計画では、土壌汚染対策法第4条の届出が避けられません。一定規模以上の土地の形質の変更が対象で、一般的な土地では3,000平方メートル以上、現に有害物質使用特定施設が設置されている工場等の敷地では900平方メートル以上です。校地の面積を考えれば、解体と造成はこの要件を超えます。

届出は形質の変更に着手する30日前までに行います。届出を受けた都道府県知事が汚染のおそれがあると認めるときに、調査が命じられます。判断の材料は、その土地の過去の使われ方です。

学校固有の論点として、校内焼却炉の跡、理科室の排水、プールの薬品の保管、校庭の造成土があります。校地になる前が埋立地や工場跡であれば、汚染のおそれありと判断される可能性が高くなります。

校舎を残して転用するだけなら、土地の形質を変更しないため第4条の対象にはなりません。活用の方法によって手続きが変わるという点が、判断の分かれ目になります。

公募の前に地歴の調査と事前相談を済ませてください。契約後に汚染が判明すると紛争になります。石綿やPCBの調査と並行して進めれば、全体の工程を短くできます。

参考・出典

記載の制度・基準は公表時点のものです。届出の要否、汚染のおそれの判断および条例による上乗せの規定は所管の自治体により異なります。個別の適用は所管の都道府県等にご確認ください。

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