この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

改修工事の業者の選び方

建設業許可と経審・体制で見極める7つの基準

校舎やオフィスビルの改修工事を控えて、「どの施工会社に任せればよいのか」「提案書と価格以外に、何を見て判断すればよいのか」でお悩みではないでしょうか。設計者の選び方は書籍や手引が充実している一方で、工事を実際に施工する会社の選び方は、意外なほど基準が示されていません。

全国の建設業許可業者数は483,823業者にのぼります(出典:国土交通省「全国の建設業許可業者数は3年連続で増加~令和7年度末の建設業許可業者数調査の結果~」令和8年5月15日発表/令和8年3月末時点)。この母集団から自施設の改修に適した1社を選ぶには、感覚ではなく「制度に紐づいた確認項目」が必要です。

この記事では、①建設業許可の一般と特定の違い・金額要件・有効期間、②国土交通省の検索システムを使った許可の確認手順、③経営事項審査(経審)の読み方、④配置技術者と施工体制の見方、⑤相見積もりの取り方と法定の見積期間、⑥安すぎる見積もりが危険な制度上の理由、⑦保証・アフターの確認ポイント——を、建設業法・建設業法施行令・同施行規則と国土交通省の資料という一次情報にあたって整理します。特定の会社を批判する意図はなく、あくまで発注者が使える判断軸をお示しします。

学校・教育施設の改修に特化し、調査・設計・施工までをワンストップで全国対応してきた光建舎の実務目線でまとめました。選定基準の組み立て方から相談したい場合は、改修工事の施工会社の選定基準づくりを光建舎に無料で相談するところから始めていただけます。

※本記事の制度・法令に関する記述は2026年8月時点の情報に基づきます。金額要件は改正が続いている領域のため、必ず最新の条文をご確認ください。なお本記事では、根拠のない費用相場は記載していません。

改修工事の業者の選び方とは|「許可・実績・体制・契約」を書面で確認する作業

改修工事の業者の選び方とは、価格の安さや提案書の見栄えではなく、「建設業許可」「実績」「施工体制と有資格者」「契約・保証」の4領域を、書面と公的データベースで一つずつ確認していく作業のことです。 結論から言えば、この4領域を確認できない相手は、どれほど印象がよくても改修工事では選びにくくなります。

なぜ書面と公的データにこだわるのでしょうか。改修工事は、新築と違って「既存建物という不確定要素」を抱えたまま進みます。解体してみて初めて分かる劣化、図面と現況の食い違い、供用しながらの工程制約——こうした事態が起きたときに頼りになるのは、営業担当者の熱意ではなく、会社としての許可・技術者・体制・契約条項です。逆に言えば、これらは選定の段階で客観的に確認できます。

評価軸を7つに整理しました。ヒアリングや資格審査の質問票に、そのまま落とし込める形にしています。

# 評価軸 確認する事実 確認先・方法
1 建設業許可の有無と区分 一般/特定の別、許可番号、許可年月日 建設業者・宅建業者等企業情報検索システム、許可通知書の写し
2 許可業種の適合 発注する工事の種類が許可業種に含まれるか(全29業種) 同上。建築一式か専門工事かを工事内容と照合
3 許可の有効期間 有効期間内か(許可は5年ごとに更新) 同上。更新中の場合は申請状況を確認
4 経営事項審査(経審) 公共工事を受注する会社か、経審の受審状況・審査結果 経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書の写し
5 同種・同規模の実績 用途・工事種別・規模・供用中施工の有無 工事経歴書、施設別の実績資料
6 配置技術者と施工体制 主任技術者/監理技術者は誰か、専任か、下請構成 配置予定技術者調書、施工体制台帳・施工体系図
7 契約・保証・アフター 契約書の記載事項、契約不適合責任の期間、定期点検の有無 契約書案、約款、保証書の様式

7つのうち1〜4は公的な制度に紐づくため、主観の入りようがない客観情報です。まずここで足切りをし、残った候補を5〜7で比べる——この順番にすると、選定の議論が価格論に流れにくくなります。

なお、設計者(設計事務所)をどう選ぶかは論点が異なります。設計者選定については当サイト内の記事「学校の設計事務所の選び方|実績・体制・監理の見方と設計料の考え方【2026年版】」で整理していますので、あわせてご覧ください。本記事は工事を施工する会社の選定に絞っています。

建設業許可の確認①|一般建設業と特定建設業の違いと金額要件

まず押さえるべきは、建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2区分があり、その分かれ目は会社の規模ではなく“下請に出す金額”だという点です。 発注者から直接請け負う1件の工事について、下請代金の額(下請契約が2つ以上あるときはその総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとする者は、特定建設業の許可を受けなければなりません(建設業法第3条第1項第2号)。

その政令で定める金額は、建設業法施行令第2条により5,000万円、許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合は8,000万円と定められています。

ここは要注意です。この金額要件は改正されています。 建設業法施行令の一部改正により、第2条の改正規定は令和7年2月1日から施行されました(出典:建設業法施行令 附則)。改正前の金額を前提にした解説記事や社内資料が残っている場合は、そのまま使わないようご注意ください。

項目 現行の金額(建設業法施行令) 根拠
許可が不要な「軽微な建設工事」 1件の請負代金500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅) 施行令第1条の2
特定建設業の許可が必要となる下請代金の額 5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上) 施行令第2条(令和7年2月1日施行)
特定建設業の財産的基礎が問われる請負契約の額 8,000万円以上 施行令第5条の4(法第15条第3号)
主任技術者・監理技術者の専任が必要な工事(学校等を含む) 請負代金4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上) 施行令第27条第1項(令和7年2月1日施行)
施工体制台帳の作成義務が生じる下請代金の総額 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上) 施行令第7条の4(令和7年2月1日施行)

(2026年8月時点。金額はいずれも消費税等を含む請負代金の額として判断します)

発注者としての実務的な意味は明確です。規模の大きい改修工事を、多数の専門工事業者を下請として使いながら進めてもらう場合、元請となる会社には特定建設業の許可が必要になり得ます。 特定建設業の許可を受けていない者は、その金額以上の下請契約を締結できません(建設業法第16条)。したがって、想定する下請構成と元請の許可区分が整合しているかを、契約前に確認しておく必要があります。

なお、特定建設業の許可基準は一般より厳しく設定されています。営業所ごとに置く技術者(特定営業所技術者)の資格要件に加え、政令で定める金額(8,000万円)以上の請負契約を履行するに足りる財産的基礎を有することが求められます(建設業法第15条)。この点で、特定建設業の許可の有無は、財務面の一つの目安にもなります。

建設業許可の確認②|業種・有効期間5年・検索システムでの調べ方

許可の「有無」だけを見て安心してはいけません。確認すべきは、業種の適合と有効期間の2点です。 建設業の許可は、建設業法別表第一に掲げる建設工事の種類ごとに与えられます(同法第3条第2項)。土木一式工事・建築一式工事の2つの一式工事と、大工工事、内装仕上工事、防水工事、塗装工事、電気工事、管工事、解体工事などの専門工事を合わせた全29業種です。

つまり、「建設業許可を持っています」という説明だけでは不十分で、発注しようとする工事の種類に対応した業種の許可を持っているかまで見る必要があります。改修工事では、外壁・防水・内装・電気・空調が同時に動くことも多く、どこまでを一式工事として元請が請け、どこからを専門工事業者に下請させるのかで、必要な許可業種は変わります。

有効期間も見落としがちです。建設業の許可は5年ごとに更新を受けなければ、その期間の経過によって効力を失います(建設業法第3条第3項)。ただし、更新の申請があった場合において有効期間の満了日までに処分がされないときは、従前の許可は処分がされるまでの間なお効力を有するとされています(同条第4項)。「更新申請中」という回答が返ってきた場合は、この規定を前提に、申請状況を書面で確認しておくと確実です。

確認の手順を番号で整理します。

  1. 工事の種類を特定する:発注する改修工事が、別表第一のどの建設工事の種類に当たるかを、設計図書と工事内訳で整理します。ここが曖昧だと以降の確認がすべてぼやけます。
  2. 候補会社の商号・所在地を確定する:グループ会社や旧商号との取り違えを避けるため、登記上の商号で確認します。
  3. 国土交通省のシステムで検索する:国土交通省が提供する「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/ )で、許可の状況を常時確認できます。国土交通省も、建設業許可業者に係る許可の状況を常時確認できるシステムとしてこのシステムの利用を案内しています(出典:国土交通省「建設業許可業者一覧 及び 建設業許可業者数」)。
  4. 許可番号・区分・業種・年月日を照合する:一般か特定か、必要な業種が含まれるか、有効期間内かを、この4点で確認します。
  5. 許可通知書の写しを提出してもらう:システムの表示と会社が提出する書面が一致しているかを突き合わせます。相違があれば、その理由を確認します。
  6. 現場の標識で最終確認する:建設業者は、店舗および発注者から直接請け負った建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、許可を受けた建設業の名称や一般・特定の別などを記載した標識を掲げなければならないと定められています(建設業法第40条)。着工後、現場でも確認できます。

手順3〜4は、担当者1人でも数分で終わります。公的データで確認できることを、相手の説明だけで済ませない——これが選定の第一歩です。

経営事項審査(経審)の読み方|P点の構成と「1年7月」ルール

経営事項審査(経審)とは、公共性のある施設または工作物に関する建設工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない、経営に関する客観的事項の審査のことです(建設業法第27条の23第1項/出典:国土交通省「経営事項審査及び総合評定値の請求について」)。公共工事の入札参加資格審査における「客観的事項」の審査がこれにあたります。

審査は「経営状況」と「経営規模、技術的能力その他の客観的事項(経営規模等評価)」について、数値による評価を行うものです。このうち経営状況の分析は、国土交通大臣が登録した経営状況分析機関が行います。

発注者が最も使いやすいのは、総合評定値(いわゆるP点)の構成です。建設業法施行規則第21条の3は、総合評定値を次の式で算出すると定めています。

P=0.25X₁+0.15X₂+0.2Y+0.25Z+0.15W

  • X₁:完成工事高に係る数値
  • X₂:自己資本額および利益額に係る数値
  • Y:経営状況分析の結果に係る数値
  • Z:技術職員数および元請完成工事高に係る数値
  • W:上記以外に係る数値

ここから読み取れることがあります。P点は「規模」だけの指標ではありません。 ZとWの合計で0.40のウェイトを占めており、Zには技術職員数と元請完成工事高が、Wには建設工事の担い手の育成・確保に関する取組の状況、建設業の営業継続の状況、法令遵守の状況、建設業の経理に関する状況、研究開発の状況、防災活動への貢献の状況、建設機械の保有状況、国または国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況が含まれます(建設業法施行規則第18条の3)。

つまり、P点の総合値だけを見るのではなく、内訳のどこで点数を取っている会社かを見ると、その会社の性格が分かります。完成工事高で稼いでいるのか、技術職員と元請比率で稼いでいるのか、担い手育成や法令遵守で稼いでいるのか。改修工事を任せるなら、Z(技術職員数・元請完成工事高)とW(体制・遵法性)の中身は特に参考になります。

もう一つ、実務で効くルールがあります。経審の結果は「いつの審査か」が問われます。 建設業法施行規則第18条の2は、公共工事の発注者と請負契約を締結する日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならないと定めています。提出された通知書の審査基準日が古すぎないかを確認しておきましょう。

なお、経審は「公共工事の元請となる場合」の制度です。民間発注の改修工事では受審義務がないため、経審を受けていないことをもって直ちに評価を下げるのは適切ではありません。公共工事の実績を重視する案件では有力な材料になる、という位置づけで使うのが妥当だと考えられます。

実績・体制・有資格者の見極め方|配置技術者と施工体制を確認する

実績は件数ではなく「分解して」確認します。体制は「誰が現場に立つか」を書面で確認します。 この2点を押さえるだけで、選定の精度は大きく変わります。

実績の確認は、次の5つに分解するのが実務的です。

  1. 用途:学校・教育施設か、オフィス・テナントビルか、集合住宅か。用途が違えば法規制も運用制約も変わります。
  2. 工事種別:外壁・屋上防水・内装・設備・耐震補強など、今回と同じ種別の実績があるか。
  3. 規模:延べ面積、工区数、工期。桁が違う実績は参考になりにくいものです。
  4. 供用中施工の有無:在校中・営業中に施工した経験があるか。改修工事では最重要級の論点です。
  5. 元請か下請か:元請として発注者と直接向き合った経験か、下請としての施工経験か。

体制については、建設業法が定める配置技術者の枠組みを理解しておくと質問が的確になります。建設業者は、請け負った建設工事を施工するときは工事現場に主任技術者を置かなければなりません(第26条第1項)。発注者から直接請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の総額が施行令第2条の金額以上になる工事を施工する場合は、主任技術者に代えて監理技術者を置く必要があります(同条第2項)。

さらに、公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する重要な建設工事については、これらの技術者は工事現場ごとに専任でなければならないとされています(第26条第3項)。建設業法施行令第27条第1項は、国または地方公共団体が注文者である施設の工事、および学校、図書館・美術館・博物館、病院・診療所、事務所、共同住宅などに関する工事で、請負代金の額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上のものをこれに該当するとしています。学校は条文に明記された対象です。

技術者の職務も条文にあります。主任技術者および監理技術者は、施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理と、施工に従事する者の技術上の指導監督を誠実に行わなければならないとされています(第26条の4第1項)。「名前だけの配置」になっていないかは、この職務の中身に沿って質問すると見えてきます。

下請構成の透明性も確認しましょう。特定建設業者は、発注者から直接請け負った工事で下請代金の総額が政令で定める金額(5,000万円、建築一式工事は8,000万円)以上になるとき、施工体制台帳を作成して工事現場ごとに備え置き、発注者から請求があったときは閲覧に供しなければなりません(第24条の8第1項・第3項)。あわせて、各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を工事現場の見やすい場所に掲げる義務もあります(同条第4項)。この「請求すれば見られる」という権利は、発注者側があまり使っていない有効な確認手段です。

体制の確認項目をどこまで求めるべきか迷われる場合は、改修工事の配置技術者と施工体制の確認項目を光建舎に相談することで、自施設の規模に見合った質問票に落とし込みやすくなります。

相見積もりの取り方|法定の見積期間と「条件をそろえる」技術

相見積もりで失敗する最大の原因は、価格差ではなく「前提条件の違い」です。条件をそろえずに金額だけを並べると、比較にならない表ができあがります。 そしてもう一つ、見積りに与える期間は法律で定められています。

建設業法第20条第3項は、建設工事の注文者は、随意契約の場合は契約を締結するまでに、入札の方法により競争に付する場合は入札を行うまでに、第19条第1項各号(第2号を除く)に掲げる事項についてできる限り具体的な内容を提示し、かつ、その提示から契約締結または入札までの間に、建設業者が見積りをするために必要な期間として政令で定める期間を設けなければならないと定めています。その期間は建設業法施行令第5条の9により次のとおりです。

工事1件の予定価格 設けるべき見積期間
500万円に満たない工事 1日以上
500万円以上5,000万円に満たない工事 10日以上
5,000万円以上の工事 15日以上

やむを得ない事情があるときは、10日以上・15日以上の期間は5日以内に限り短縮することができるとされています(同条ただし書)。逆に言えば、「3日で見積もってください」という依頼の仕方は、発注者側が制度に反する行為になり得ます。

「提示すべき事項」の中身も重要です。建設業法第19条第1項は、請負契約の当事者が書面に記載すべき事項として、工事内容、請負代金の額、工事着手・完成の時期、工事を施工しない日または時間帯の定め、前金払・出来形払の定め、設計変更や工事中止の場合の工期・請負代金の変更や損害負担の算定方法、天災その他不可抗力による工期変更・損害負担、価格等の変動に基づく工事内容・請負代金の変更、第三者に損害が生じた場合の賠償金の負担、注文者が資材を提供する場合の内容と方法、検査の時期・方法と引渡しの時期、工事完成後の支払の時期・方法、契約不適合を担保すべき責任に関する定め、遅延利息・違約金等、紛争の解決方法など、16の事項を挙げています。見積依頼の段階でこれらを具体的に示すほど、返ってくる見積書はそろいます。

実務での進め方を番号でまとめます。

  1. 共通の見積条件書をつくる:工事範囲、施工時間帯(夜間・休日・長期休業期間の可否)、仮設計画の前提、養生・搬入経路、既存図面の有無、想定される制約を1枚に整理します。
  2. 内訳の粒度を指定する:「一式」を許さず、工種別・数量・単価で提出してもらう様式を指定します。
  3. 法定の見積期間を確保する:上表の日数を前提に、逆算してスケジュールを組みます。
  4. 現地説明会を同条件で実施する:質問と回答は全社に共有し、情報の非対称をなくします。
  5. 同じフォーマットで比較する:金額だけでなく、数量の差・工法の差・仮設の差がどこから生じているかを追います。
  6. 差の理由を各社に確認する:安い理由・高い理由の説明が具体的かどうかが、そのまま技術力の判断材料になります。

見積書の読み方そのものは論点が多いため、別記事「改修工事の相見積もりと見積書の見方」で詳しく扱う予定です。本記事では、見積依頼の設計こそが比較可能性を決めるという点を押さえてください。

安すぎる見積もりはなぜ危険か|建設業法が定める3つの歯止め

「他社より大幅に安い」見積もりを歓迎しにくいのは、精神論ではなく制度上の理由があります。建設業法は、低すぎる請負代金と短すぎる工期に、明確な歯止めを置いています。 しかも、その歯止めの一部は発注者側にも向けられています。

歯止めは大きく3つです。

第一に、不当に低い請負代金の禁止(第19条の3)。 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならないとされています(同条第1項)。さらに、建設業者の側も、自らが保有する低廉な資材を用いることができる等の正当な理由がある場合を除き、通常必要と認められる原価に満たない金額での請負契約を締結してはならないとされています(同条第2項)。「安く受けたい側」も規制の対象になったという点は、選定の見方を変えます。

第二に、著しく短い工期の禁止(第19条の5)。 注文者も建設業者も、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないとされています。改修工事では「夏休みの間に終わらせたい」といった要請が出やすいため、工期の妥当性は価格と同じ重みで検討する必要があります。

第三に、見積りにおける労務費等の保護(第20条)。 建設業者は、工事の種別ごとの材料費、労務費、適正な施工を確保するために不可欠な経費(国土交通省令で定めるもの)などの内訳と、工事の工程ごとの作業および準備に必要な日数を記載した見積書(材料費等記載見積書)を作成するよう努めなければならず、そこに記載する材料費等の額は、当該工事を施工するために通常必要と認められる額を著しく下回るものであってはならないとされています(同条第1項・第2項)。そして、注文者は、材料費等の額について通常必要と認められる額を著しく下回ることとなるような変更を求めてはなりません(同条第6項)。

これらには実効性の担保もあります。建設業法第19条の6は、注文者が不当に低い請負代金の禁止等に違反した場合において特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣または都道府県知事が、当該発注者に対して必要な勧告をすることができると定めています。著しく短い工期についても、請負代金の額が政令で定める金額(500万円、建築一式工事は1,500万円)以上の契約について同様の勧告の対象となります(同条第2項、施行令第5条の8)。第20条第7項にも、著しく下回る変更を求めた発注者に対する勧告の規定が置かれています。

なお、第20条の改正規定(材料費等記載見積書に関する部分)は、建設業法および公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴い、令和7年12月12日から施行されています(出典:建設業法施行令 附則)。

発注者としての実務的な結論はシンプルです。安すぎる見積もりは「得」ではなく「リスク」です。 労務費や安全経費が削られた見積もりは、追加請求・工程遅延・品質不良・下請へのしわ寄せという形で、結局は発注者に返ってきます。当社にも「安い見積もりで契約したが、追加工事の協議が絶えず、結果的に工期も費用も膨らんだ」というご相談は少なくありません。金額差を見つけたら、値切る前にその差がどの項目から生じているかを説明してもらう——これが最も実務的な自衛策です。

保証・アフターの確認|契約不適合責任の期間と契約書の書き方

改修工事の保証は、「何年保証」という言葉ではなく、契約書と約款の条文で確認します。 民法の請負契約の規定だけでは解釈が不十分になりやすいため、中央建設業審議会が標準請負契約約款を作成し、その実施を当事者に勧告する仕組みが置かれています(建設業法第34条第2項/出典:国土交通省「建設工事標準請負契約約款について」)。

公共工事標準請負契約約款の「契約不適合責任期間等」の条項は、発注者が引渡しを受けた日から一定の年数以内でなければ、契約不適合を理由とした履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求または契約の解除をすることができないとし、その年数を原則として2年と注記しています。設備機器本体等の契約不適合については、引渡しの時に発注者が検査して直ちに追完を請求しなければ受注者は責任を負わないとしつつ、検査において一般的な注意の下で発見できなかった契約不適合については引渡しを受けた日から原則として1年が経過する日まで請求等ができるとしています。

実務で効くのは、この先の規定です。契約不適合責任期間内に契約不適合を知り、その旨を受注者に通知した場合、発注者が通知から1年が経過する日までに請求等をしたときは、期間内に請求等をしたものとみなされます。 また、契約不適合が受注者の故意または重過失により生じたものであるときは、これらの期間の規定は適用されず、責任については民法の定めるところによるとされています。国土交通省も、令和元年12月13日改正の概要として「引渡しから2年(設備機器等1年)の期間内に通知をすれば、通知から1年間は当該期間を過ぎても請求可能」と説明しています。

なお、標準請負契約約款は、第三次・担い手3法の全面施行を踏まえて令和7年12月2日に改正され、令和7年12月12日から施行されています(出典:同上)。契約書案を受け取ったら、どの版の約款に準拠しているかを確認しておくと安心です。

確認しておきたい項目を整理します。

  • 契約不適合責任の期間:引渡しから何年か。設備機器等は別扱いか。数字が空欄のまま押印しないこと。
  • 通知の方法:不適合を知ったときの通知先・様式・記録の残し方。約款は、請求等は具体的な契約不適合の内容や損害額の算定根拠等を示して行うとしています。
  • 契約書の記載事項:建設業法第19条第1項の16事項が漏れなく記載されているか。特に、設計変更・工期変更・価格等の変動に伴う請負代金の変更の算定方法は、改修工事では発動しやすい条項です。
  • 定期点検・メンテナンスの取り決め:法定の責任とは別に、任意のアフターサービスをどう約束するか。約束するなら書面に落とすこと。
  • 保証保険等の措置:契約不適合を担保すべき責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置について定めをするときは、その内容が契約書の記載事項に含まれます(第19条第1項第13号)。

「アフターも万全です」という口頭の説明は、条文に落ちて初めて意味を持ちます。選定の段階で契約書案と約款を提出してもらうことをおすすめします。

改修工事ならではの落とし穴|「開けてみないと分からない」への備え

改修工事の選定で見落とされがちなのが、「想定外が起きたときにどう協議するか」という設計です。ここは会社選びの一部です。 新築と違い、改修は既存建物の情報が不完全な状態で契約に入ります。だからこそ、想定外が起きた後の振る舞いが会社によって大きく分かれます。

制度面では、令和6年改正の建設業法に、この論点を扱う規定が新設されています。建設業法第20条の2は、注文者は工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象(地盤の沈下その他、国土交通省令で定めるもの)が発生するおそれがあると認めるときは、契約締結までに建設業者へ通知しなければならないとし(同条第1項)、建設業者の側も、主要な資材の供給の著しい減少や資材価格の高騰その他の事象が発生するおそれがあると認めるときは、契約締結までに注文者へ通知しなければならないと定めています(同条第2項)。

そして、通知をした建設業者は、契約締結後にその事象が発生した場合、注文者に対して工期の変更・工事内容の変更・請負代金の額の変更についての協議を申し出ることができ(同条第3項)、協議の申出を受けた注文者は、申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に協議に応ずるよう努めなければならないとされています(同条第4項)。

この枠組みを踏まえると、選定時の質問は具体化できます。

  • 契約前の段階で、想定されるリスク事象をどこまで洗い出して提示してくれるか
  • 既存図面がない・現況と違う場合に、着工前調査をどこまで提案するか
  • 想定外が判明したときの報告・協議・記録のフローを、どう運用しているか
  • 供用しながらの施工で、騒音・粉じん・動線・安全確保をどう計画するか

学校であれば在校生、オフィスビルであれば入居テナント、マンションであれば居住者が、工事期間中もその場所を使い続けます。「止めない」ための工程計画と安全計画を具体的に語れるかどうかは、書面に現れにくい実力差が最も出るところです。

株式会社光建舎は、一級建築士事務所を運営する体制(運営:株式会社ウイングスペース)のもと、調査・設計・施工までをワンストップで対応し、在校中・営業中でも止めない安全・工程管理を強みとしています。全国対応で、学校・教育施設の改修に特化した実績とノウハウを積み重ねてきました。補助金・交付金の活用支援も含めて、上流から一貫してお手伝いできる体制です。

工事監理の視点から施工者をどう確認するかについては、当サイト内の記事「学校の工事監理とは?施工管理との違いと監理者の役割【2026年版】」もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q1. 建設業許可を持っていない会社に改修工事を発注してはいけないのですか。

A. 建設業法第3条第1項ただし書により、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可が不要とされています。軽微な建設工事とは、1件の請負代金が500万円未満(建築一式工事の場合は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅の建設工事)の工事です(建設業法施行令第1条の2)。これを超える規模の改修工事では、許可を受けた建設業者に発注する必要があります。なお、同条第2項は、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは各契約の請負代金の額の合計額で判断するとしており(正当な理由に基づいて分割した場合を除く)、分割して金額基準を回避することはできません。

Q2. 一般建設業の許可しか持たない会社は、大きな改修工事を請けられないのですか。

A. そうとは限りません。区分の分かれ目は工事の規模そのものではなく、発注者から直接請け負った工事について下請に出す金額です。下請代金の額(総額)が5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上となる下請契約を締結して施工しようとする場合に、特定建設業の許可が必要になります(建設業法第3条第1項第2号、施行令第2条)。自社施工の比率が高い会社であれば、一般建設業の許可でも相応の規模の工事を施工できる場合があります。想定する施工体制とあわせて確認するのが実務的です。

Q3. 経営事項審査の点数(P点)が高い会社ほど、改修工事に向いていると考えてよいですか。

A. 一概には言えません。総合評定値はP=0.25X₁+0.15X₂+0.2Y+0.25Z+0.15Wという式で算出され(建設業法施行規則第21条の3)、完成工事高(X₁)のウェイトが最も大きい要素の一つです。会社の規模が大きいほど有利に働く面があります。一方で、Z(技術職員数・元請完成工事高)やW(担い手育成、法令遵守、経理、防災貢献など)の内訳は、体制や遵法性を反映します。総合点だけでなく内訳を見ること、そして経審は公共工事の元請となる場合の制度であることを踏まえて、他の評価軸と組み合わせて使うことをおすすめします。

Q4. 見積依頼から提出まで、どのくらいの期間を設ければよいのでしょうか。

A. 建設業法施行令第5条の9が定める見積期間は、予定価格500万円未満の工事は1日以上、500万円以上5,000万円未満は10日以上、5,000万円以上は15日以上です。やむを得ない事情があるときは、10日以上・15日以上の期間を5日以内に限り短縮できます。これは最低限の日数であり、条件が複雑な改修工事ではより余裕を持った設定が望ましいと考えられます。あわせて、建設業法第19条第1項各号(請負代金の額を除く)に掲げる事項について、できる限り具体的な内容を提示することが求められます(同法第20条第3項)。

Q5. 「他社より2割安い」という見積もりが出てきました。どう判断すべきですか。

A. まず、値引きを歓迎する前に、差額がどの項目から生じているかを工種別・数量・単価のレベルで説明してもらってください。建設業法は、通常必要と認められる原価に満たない金額での請負契約を、注文者側にも建設業者側にも禁じています(第19条の3)。また、見積書に記載する材料費・労務費等の額は、通常必要と認められる額を著しく下回ってはならないとされ、注文者がそのような変更を求めることも禁じられています(第20条第2項・第6項)。数量の拾い漏れ、必要な仮設の省略、労務費の圧縮が原因であれば、その差は工事中に追加や品質の問題として表面化する可能性があります。差の理由を説明できるかどうかが、判断の分かれ目です。

まとめ|「制度で確認できることを、制度で確認する」

改修工事の業者の選び方は、印象や価格ではなく、制度に紐づいた客観情報を一つずつ潰していく作業です。要点を整理します。

  • 建設業許可:一般か特定か(分かれ目は下請代金5,000万円/建築工事業8,000万円、令和7年2月1日施行)、業種が適合しているか、有効期間内か(5年ごとの更新)。国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。
  • 経営事項審査:P=0.25X₁+0.15X₂+0.2Y+0.25Z+0.15Wの内訳を見る。審査基準日が古すぎないか(1年7月ルール)も確認する。
  • 体制と有資格者:主任技術者・監理技術者は誰か、専任要件(学校等は4,500万円/建築一式9,000万円以上)に該当するか、施工体制台帳の閲覧を請求できるか。
  • 相見積もり:法定の見積期間(1日/10日/15日以上)を確保し、条件書と内訳の粒度をそろえてから比較する。
  • 安すぎる見積もり:不当に低い請負代金・著しく短い工期・労務費等の圧縮には、建設業法上の禁止規定と発注者への勧告制度がある。
  • 保証・アフター:契約不適合責任の期間(標準約款では原則2年、設備機器等は原則1年)と、期間内通知後1年ルールを契約書で確認する。

どの項目も、契約前であれば発注者の側から確認できます。逆に、契約後に確認しようとしても、選び直しはできません。選定の質は、質問の質で決まります。

自施設の規模や工事内容に合わせて、どの評価軸をどう重み付けするか——ここで迷われる発注者は少なくありません。判断軸の整理から一緒に進めたい場合は、改修工事の施工会社選定と見積比較の進め方を光建舎に無料で相談するところから始めてみてください。全国対応で、学校・教育施設をはじめとする改修の現場に携わってきた担当者が、実務の論点整理からお手伝いします。

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