目次
診療を止めない居ながら工事の進め方
病院の改修を検討するなかで、「診療を止めずに工事ができるのか」「感染対策はどこまでやればよいのか」「医療ガスや電源を止める調整をどう組めばよいのか」でお悩みではないでしょうか。病院の改修は、一般の建物改修に求められる建築基準法・消防法の要件に加えて、医療法が定める構造設備基準が重なります。しかも入院患者がいる以上、工事のために建物を空けるという選択肢が取りにくいという事情もあります。
この記事を読み終えると、病院改修に関わる法令の全体像、診療を止めない「居ながら工事」の進め方、感染対策としての仮設隔壁と粉じん・換気管理の考え方、医療ガス・電源の停止調整の組み立て方、病室・外来・手術室それぞれの改修上の要点、そして工事中の消防・避難と耐震補強の位置づけが整理できます。法令に関する記述はすべて条文にあたって確認し、原文で確認できない要件は書いていません。
工事のために診療をどこまで止める必要があるのか判断がつかない段階の方は、病院の居ながら改修の工程と区画計画について光建舎に無料で相談するところから始めていただくのが確実です。
※本記事の法令に関する記述は2026年8月時点の条文に基づきます。費用については施設規模・工事範囲・稼働条件で大きく変動するため、本記事では相場の数値を扱っていません。
病院の改修工事とは?医療法の基準を満たしたまま機能を回復・向上させる工事です
病院の改修工事とは、医療法が定める病院の構造設備基準を満たした状態を保ちながら、既存の病院建物の性能・機能を回復または向上させる工事のことです。 一般の建物改修との最大の違いは、「建物としての適法性」と「医療施設としての適法性」の両方を同時に成立させなければならない点にあります。
医療法第21条第1項は、病院が有しなければならない施設として、各科専門の診察室、手術室、処置室、臨床検査施設、エックス線装置、調剤所、給食施設、診療に関する諸記録などを列挙しています。産婦人科または産科を有する病院には分べん室および新生児の入浴施設、療養病床を有する病院には機能訓練室も求められます。改修でこれらの諸室を移設・縮小・一時閉鎖する場合、「工事中も基準を満たしているか」という論点が必ず発生します。
そしてもう一つ、病院改修の実務を決定づける条文があります。医療法第27条は、病院はその構造設備について都道府県知事の検査を受け、許可証の交付を受けた後でなければ使用してはならないと定めています。 改修した部分を診療に供するには、この使用許可の手続きが前提になるということです。工事の完成日ではなく「使用許可を得られる日」から逆算して工程を組む必要があるのは、このためです。
当社にも「工期は守れたが、行政手続きの調整が後手に回り、病棟の再稼働日が動いてしまった」というご相談が寄せられます。病院改修は、施工の巧拙より前に、法令手続きと診療スケジュールの噛み合わせで成否が決まる領域だと言えます。
病院改修に関わる法令の全体像|医療法・建築基準法・消防法の三層で考える
病院の改修では、医療法(施設としての基準)、建築基準法(建物としての基準)、消防法(防火対象物としての基準)の三層を同時に満たす必要があります。 どれか一つを先に固めてから他を検討すると、後戻りが発生します。基本計画の段階で三層を並べて整理するのが実務的です。
三層の関係を表に整理します。
| 法令 | 病院に関する主な規定 | 改修で論点になりやすい点 |
|---|---|---|
| 医療法 | 病院が有すべき施設(第21条第1項)/構造設備基準(第23条第1項に基づく施行規則第16条・第20条)/使用前の検査と許可(第27条)/病床数・病床の種別の変更許可(第7条第2項) | 病室面積・廊下幅・階段・換気などの基準を満たしたまま工区を切れるか。病床を減らす・種別を変えるなら許可が要るか |
| 建築基準法 | 特殊建築物の確認申請(第6条第1項第1号)/検査済証交付前の使用制限と仮使用認定(第7条の6)/工事中における安全上の措置等に関する計画の届出(第90条の3) | 大規模の修繕・模様替に当たるか。工事中に建物を使い続けられるか。仮使用の認定が要るか |
| 消防法 | 病院は令別表第一(六)項イ/特定防火対象物として既存不遡及の特例が適用されない(法第17条の2の5第2項第4号)/消防用設備等の着工届(法第17条の14) | スプリンクラー設備・自動火災報知設備の設置義務。改修に伴う設備更新と届出の時期 |
医療法上の構造設備基準は、医療法第23条第1項の委任を受けた医療法施行規則第16条が定めています。同条第1項第3号イは、病院の病室の床面積を、内法による測定で患者一人につき6.4平方メートル以上とすると規定しています。療養病床に係る一の病室の病床数は4床以下(同項第2号の2)、患者が使用する廊下の幅は病院の場合で内法1.8メートル以上、両側に居室がある廊下は内法2.1メートル以上(同項第11号ロ)です。精神病床および療養病床に係る病室に隣接する廊下は、内法1.8メートル以上、両側に居室がある場合は内法2.7メートル以上とされています(同号イ)。
なお、既存の病院については経過措置が設けられている場合があります。既存不適格の扱いになるのか、改修を機に現行基準に合わせる必要があるのかは、所管の保健所・都道府県の医療政策担当への事前照会で確定させてください。
建築基準法側では、別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものについて、大規模の修繕・大規模の模様替をする場合にも確認申請が必要とされています(同法第6条第1項第1号)。病院は同表の用途に含まれるため、規模の大きい改修では確認申請の要否判断が最初の関門になります。
居ながら工事の進め方|7ステップで組み立てる
居ながら工事とは、施設の運営を停止せず、利用を続けながら区画を区切って段階的に進める改修工事のことです。病院では「工区の切り方」と「引っ越しの回数」で工期と負担がほぼ決まります。 ここを設計段階で詰めきれるかどうかが分かれ目です。
進め方は次の7ステップで整理できます。
- 現況調査と法適合の棚卸し — 竣工図・確認済証・検査済証・消防設備の設置状況・既存不適格の有無を洗い出します。図面と現況の食い違いは病院で頻繁に見つかります。
- 石綿の事前調査 — 石綿障害予防規則第3条第1項により、建築物の解体または改修(封じ込め・囲い込みを含む)の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければなりません。同条第4項により、この事前調査は厚生労働大臣が定める知識を有する者に行わせる必要があります。
- 診療機能のゾーニングと工区分割 — 病棟単位・階単位・部門単位のどれで切るかを決めます。ここで病室面積・廊下幅・階段数といった医療法上の基準を工事中も満たせるかを検証します。
- 仮設計画(隔壁・動線・仮設室)の設計 — 患者動線と工事動線を完全に分離し、仮設隔壁の位置・構造・出入口を図面化します。
- 行政協議と手続き — 確認申請の要否、仮使用認定の要否、工事中における安全上の措置等に関する計画の届出の要否、消防用設備等の着工届、病床変更の許可の要否を、それぞれの窓口と並行して詰めます。
- 段階施工と切替(インフラの停止調整を含む) — 医療ガス・電源・給排水の停止は、診療への影響が最小になる時間帯に集約します。詳細は後述します。
- 完了検査・使用許可・引き渡し — 建築基準法上の完了検査に加え、医療法第27条の検査と許可証の交付を経て、はじめて改修部分を使用できます。
この7ステップのうち、外部に委託せず院内だけで完結できるのは実質的にステップ1と3の一部です。残りは設計・施工・行政協議が絡み合うため、調査から設計・施工まで一貫して担える体制のほうが手戻りが起きにくいと考えられます。当社は調査・設計・施工をワンストップで手掛けており、在校中の学校改修で培った「止めない工程管理」の考え方を医療施設の居ながら工事にも適用しています。
工区の切り方と引っ越し回数の最適解は、病院ごとの病床構成と診療科の配置で変わります。図面をお持ちの段階で構いませんので、病院の工区分割と仮設計画について光建舎に無料で相談することで、判断材料を早めに揃えていただけます。
感染対策|仮設隔壁・粉じん・換気を「工事の仕様」に落とし込む
病院改修の感染対策は、精神論ではなく「仮設隔壁の構造」「粉じんの封じ込め」「気流の向き」という3つの仕様に落とし込むのが基本です。 仮設隔壁とは、工事区域と診療区域を物理的に仕切り、粉じん・騒音・視線を遮断するために一時的に設ける間仕切りのことです。
まず押さえておきたいのは、医療法施行規則が換気と遮断について明確な規定を置いていることです。同規則第16条第1項第5号は、機械換気設備について、感染症病室・結核病室・病理細菌検査室の空気が風道を通じて病院の他の部分へ流入しないようにすることを求めています。 また同項第7号は、感染症病室および結核病室について、病院の他の部分および外部に対して感染予防のために遮断その他必要な方法を講ずることを定めています。感染症病室・結核病室を有する病院には、必要な消毒設備を設けることも求められます(同項第12号)。
これらは平常時の設備基準ですが、「空気の流れを他区域へ流さない」「区画を遮断する」という考え方は、工事中の仮設計画にそのまま応用できます。具体的には次のような仕様が検討対象になります。
- 仮設隔壁を天井裏・床下まで含めて立ち上げ、隙間を塞ぐ(気密の確保)
- 工事区域を診療区域に対して相対的に負圧に保ち、粉じんを含む空気が診療側へ流れないようにする
- 工事区域の出入口に前室を設け、作業員の出入りによる粉じん持ち出しを抑える
- 既存の空調・換気系統のうち、工事区域と診療区域が共有している経路を事前に切り分ける
- 天井裏の点検口や配管貫通部を経路とした粉じん・気流の回り込みを図面上で潰す
感染対策の水準は、隣接区域が一般病棟か、手術室・集中治療室・造血幹細胞移植病棟などの高リスク区域かで変わります。院内感染対策については、医療法施行規則第1条の11第2項第1号が、院内感染対策のための指針の策定、委員会の開催、従業者への研修の実施、感染症の発生状況の報告その他の改善方策の実施を、病院等の管理者が講ずべき措置として定めています。工事の仮設計画は、この院内感染対策の体制のなかで、感染制御部門と合意した仕様として決めていくのが筋道です。施工者が単独で決める性質のものではありません。
現場では「隔壁は立てたが、天井裏でつながっていて粉じんが回った」「工事区域の扉が開けっ放しになり負圧が保てなかった」といった事例が語られます。仕様を決めることと、それが工事期間中ずっと維持されることは別問題です。日々の点検項目と記録の様式まで決めておくことをおすすめします。
騒音・振動・臭気の管理|時間帯計画と法令上の届出
病院の騒音対策は「音を小さくする」だけでは足りません。診療行為ごとに許容できる時間帯が違うため、作業種別を時間帯に割り付ける計画が要になります。 外来診療中に躯体はつりを行うのと、消灯後の病棟でそれを行うのでは、影響の性質がまったく異なります。
実務では、次のような割り付けが検討されます。
- 躯体はつり・アンカー打設・コア抜きなど衝撃音・振動を伴う作業:外来休診日、または病棟の日中活動時間帯に集約
- 内装解体・搬出:搬出経路が患者動線と交差しない時間帯
- 塗装・接着剤を使う作業(臭気):換気が確保でき、かつ在室者が少ない時間帯
- 精密検査(画像診断・生理検査等)の実施時間帯:振動を伴う作業を避ける
法令上の手続きも押さえておく必要があります。騒音規制法第14条第1項は、指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者に対し、当該特定建設作業の開始の日の7日前までに、氏名・名称、施設または工作物の種類、作業の場所および実施の期間、騒音の防止の方法などを市町村長に届け出ることを義務づけています。 災害その他非常の事態により緊急に行う必要がある場合を除き、この期限は動かせません。届出が必要な作業種別や指定地域は自治体ごとに定まるため、工程表を作る前に所管の環境部局に確認しておくと、後の調整が楽になります。
騒音は数値で管理する一方、患者からの申し出は「感じ方」で発生します。当社の経験では、工事の予定を病棟掲示・院内放送・入院時説明で事前に伝えておくと、同じ音量でも苦情の発生が変わります。工程表を院内向けに翻訳して共有する運用を、施工計画に組み込んでおくとよいでしょう。
医療ガス・電源・給排水の停止調整|「止める時間」を最小化する設計
医療ガスと電源の停止は、病院改修で最も慎重な調整を要する工程です。原則は「止める範囲を狭く、止める時間を短く、代替手段を用意する」の3点に尽きます。 設計段階で切替方法を決めておかないと、施工段階で工程が硬直します。
医療法施行規則第16条第1項第1号は、診療の用に供する電気、光線、熱、蒸気またはガスに関する構造設備について、危害防止上必要な方法を講ずることを求めています。医療ガス配管や医療用電源の改修は、この「危害防止上必要な方法」を工事中・工事後の双方で成立させる作業だと理解すると位置づけが明確になります。
実務的な組み立て方は次のとおりです。
- 系統図の実地確認 — どのバルブ・どの分電盤が、どの部屋の何を止めるのかを現地で追い、竣工図との差異を潰します。ここが曖昧なまま停止作業に入ると、想定外の区域が停止します。
- バイパス・仮設供給の設計 — 恒久配管を切り替える前に仮設で供給を確保できるか、可搬型の代替(ボンベ等)で賄うかを、部門ごとに決めます。
- 停止時間帯の合意形成 — 手術室・集中治療室・透析室・分べん室など、停止の影響が直接的な部門と個別に合意します。合意は口頭ではなく、停止日時・停止範囲・復旧確認手順を書面化します。
- 復旧確認と記録 — 医療ガスは復旧後の確認手順が特に重要です。医療機器の保守点検については、医療法施行規則第1条の11第2項第3号ロが、医療機器安全管理責任者に医療機器の保守点検に関する計画の策定と適切な実施を行わせることを定めています。工事に伴う停止・復旧を、この院内の管理体制と接続させておくことが望まれます。
停電・断水の調整では、非常用電源との関係も論点になります。改修で受変電設備や自家発電設備に手を入れる場合、消防用設備等に附置される非常電源の扱いも同時に検討する必要があります。設備系統の改修は、建築の工程よりも先に確定させておくのが安全です。
部門別に見る改修の要点|病室・外来・手術室で論点が変わる
病室・外来・手術室では、改修時に検証すべき法令要件も、工事中の運用制約も異なります。部門ごとに「何を確認するか」を決めておくと、設計の抜けが減ります。 主要な部門の要点を表に整理します。
| 部門 | 確認しておきたい法令上の要件(根拠) | 居ながら工事での主な制約 |
|---|---|---|
| 病室(一般病床) | 床面積は内法で患者一人につき6.4平方メートル以上(医療法施行規則第16条第1項第3号イ)/病室は地階または3階以上の階に設けない(同項第2号。放射線治療病室および特定主要構造部を耐火構造とする場合の例外あり) | 病床の一時移設先の確保。移設に伴い病床数・病床の種別が変わる場合は医療法第7条第2項の許可の要否確認 |
| 病室(療養病床) | 一の病室の病床数は4床以下(同項第2号の2)/隣接する廊下は内法1.8メートル以上、両側に居室がある場合は2.7メートル以上(同項第11号イ) | 廊下幅が仮設隔壁で圧迫されないこと。療養病床を有する病院の機能訓練室は内法40平方メートル以上(同規則第20条第11号) |
| 外来・診察室 | 各科専門の診察室(医療法第21条第1項第2号)。一人の医師が同時に二以上の診療科の診療に当たる場合等は同一の室を使用できる(同規則第20条第1号) | 診療科の一時的な集約・仮設診察室の設置。患者動線と工事動線の分離 |
| 手術室 | 外科・整形外科等の所定の診療科名を有する病院は手術室を有しなければならない(同規則第20条第2号)/なるべく準備室を附設しじんあいの入らないようにし、内壁全部を不浸透質のもので覆い、適当な暖房・照明の設備を有し、清潔な手洗いの設備を附属して有する(同条第3号) | 停止できる期間が短い。粉じん対策と気流管理の水準が最も高い。仕上げ材・気密の復旧確認に時間を要する |
| 給食施設 | 入院患者のすべてに給食できる施設とし、調理室の床は耐水材料で洗浄・排水・清掃に便利な構造とし、食器の消毒設備を設ける(同条第8号)。調理業務・洗浄業務を委託する場合は当該業務に係る設備を設けないことができる(同条第9号) | 給食を止められないため、仮設厨房または外部委託への一時切替の検討 |
| 臨床検査施設 | 喀痰・血液・尿・ふん便等について通常行われる臨床検査ができるものとする(同条第5号)。検体検査の業務を委託する場合は当該検査に係る設備を設けないことができる(同条第6号) | 検査機器の移設・再設置に伴う精度管理。振動を伴う作業の時間帯調整 |
表のとおり、改修範囲が病床数や病床の種別に触れる場合は、建築の手続きとは別に医療法第7条第2項の変更許可の要否を確認する必要があります。同項は、病院を開設した者が病床数、病床の種別その他厚生労働省令で定める事項を変更しようとするときは、厚生労働省令で定める場合を除き、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。工事の都合で一時的に病床を減らす場合の取扱いを含め、早い段階で所管に確認しておくことをおすすめします。
消防・避難|病院は「既存不遡及」が効かない防火対象物です
病院は消防法令上、特定防火対象物に位置づけられており、消防用設備等について既存不遡及の特例が適用されません。基準が改正されれば、既存の病院も現行基準に適合させる必要があります。 この点は、事務長・施設担当が改修計画を組むうえで最も影響の大きい前提条件です。
順を追って確認します。まず用途区分です。消防法施行令別表第一(六)項イが病院・診療所・助産所を掲げており、その内訳は次の4区分です。
- (1)診療科名中に特定診療科名(内科、整形外科、リハビリテーション科その他の総務省令で定める診療科名)を有し、かつ医療法第7条第2項第4号の療養病床または同項第5号の一般病床を有する病院(総務省令で定める構造を有するものを除く)
- (2)診療科名中に特定診療科名を有し、かつ4人以上の患者を入院させるための施設を有する診療所
- (3)(1)に掲げるものを除く病院、(2)に掲げるものを除く患者を入院させるための施設を有する診療所、または入所施設を有する助産所
- (4)患者を入院させるための施設を有しない診療所または入所施設を有しない助産所
次に遡及の問題です。消防法第17条の2の5第2項第4号は、病院を「特定防火対象物」として明記し、既存の防火対象物における消防用設備等に従前の基準を適用する第1項の規定を適用しないと定めています。 一般の建物では「既存不適格のまま使える」場面でも、病院ではそれが通らないということです。
主要な設備の設置基準も確認しておきましょう。
- 自動火災報知設備:消防法施行令第21条第1項第1号イは、別表第一(六)項イ(1)から(3)までに掲げる防火対象物を掲げています。延べ面積の要件が付されていないため、該当する病院は規模にかかわらず設置対象です。
- スプリンクラー設備:同令第12条第1項第1号イは、別表第一(六)項イ(1)および(2)に掲げる防火対象物のうち、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のものを設置対象としています。さらに同項第4号は、(六)項イ(1)から(3)までについて、平屋建以外の防火対象物で総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が3,000平方メートル以上のものを対象としています。
工事の届出も忘れられません。消防法第17条の14は、甲種消防設備士が政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の10日前までに、工事整備対象設備等の種類・工事の場所その他必要な事項を消防長または消防署長に届け出なければならないと定めています。 消防設備工事を含む改修では、この10日前という期限が工程のクリティカルパスに乗ることがあります。
避難については、医療法施行規則第16条第1項も具体的に規定しています。2階以上の階に病室を有するものは患者の使用する屋内の直通階段を2以上設けること(同項第8号。エレベーター設置時等の例外あり)、その直通階段は階段および踊場の幅を内法1.2メートル以上、けあげ0.2メートル以下、踏面0.24メートル以上とし適当な手すりを設けること(同項第9号)、3階以上の階に病室を有するものは避難に支障がないよう避難階段を2以上設けること(同項第10号)とされています。工区分割で階段が一時的に使えなくなる計画は、この規定に照らして成立するかを必ず検証してください。
さらに、工事中に建物を使い続ける場合の手続きがあります。建築基準法第90条の3は、同法別表第一(い)欄の(一)項・(二)項・(四)項に掲げる用途に供する建築物等で政令で定めるものについて、新築工事または避難施設等に関する工事の施工中に当該建築物を使用し、または使用させる場合には、建築主があらかじめ工事中の安全上・防火上・避難上の措置に関する計画を作成して特定行政庁に届け出なければならないと定めています。 政令で定める建築物は建築基準法施行令第147条の2に規定されており、同条第1号から第4号までのうち、第2号が「病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)又は児童福祉施設等の用途に供する建築物で五階以上の階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が千五百平方メートルを超えるもの」を掲げています。まさに居ながら工事のための手続きです。
あわせて、建築基準法第7条の6は、検査済証の交付を受けた後でなければ当該建築物または部分を使用してはならないとしつつ、特定行政庁が安全上・防火上・避難上支障がないと認めたときなど所定の場合には、仮に使用できるとしています(仮使用認定)。段階的に部分開院していく計画では、この仮使用認定の要否と時期が工程の要になります。
耐震補強を改修にどう組み込むか
内装や設備の改修を計画するなら、耐震補強を同じ工事に組み込めないかを必ず一度検討してください。仮設・養生・工区分割といった「止めないための費用」を二重に払わずに済むためです。 別々に実施すると、患者・職員の負担も二重になります。
法令上の位置づけも確認しておきましょう。建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令第6条第2項第3号は、法第14条第1号の「多数の者が利用する建築物」の規模について、病院を含む区分で「階数三及び床面積の合計千平方メートル」と定めています。これに該当し、かつ現行の耐震関係規定に適合しない建築物は、同法上の特定既存耐震不適格建築物として、耐震診断・必要に応じた耐震改修の努力義務の対象となります。多くの中規模以上の病院がこの規模に該当します。
耐震補強を居ながらで進める場合の主な選択肢は、外付けフレーム等により外部から補強する方法、内部にブレース・耐震壁を設ける方法、制振部材を用いる方法などです。どれを選ぶかは、病室・外来・手術室のどこを止められるか、という運用側の条件で決まります。構造的に最適な案が、運用上は成立しないということが珍しくありません。構造設計者と施設運用側が同じテーブルで検討する場を、基本計画の段階で設けることをおすすめします。
耐震補強の進め方そのものについては、当サイト内の記事「耐震補強工事の進め方|工法の選び方と居ながら施工の工程管理【2026年版】」で工法別に整理する予定です。設備の老朽化状況を先に把握したい場合は「建築設備調査とは?調査項目・タイミングと更新計画への活かし方」もあわせてご覧ください。
発注方式と体制づくり|「調査・設計・施工の分断」が手戻りを生みます
病院改修で手戻りが起きる原因の多くは、調査・設計・施工が別々に発注され、前工程の前提が後工程に引き継がれないことにあります。 現況調査で見つかった図面との相違が設計に反映されない、設計で想定した仮設計画が施工段階で成立しない、といった形で表面化します。
体制を組むうえで、発注者側があらかじめ決めておきたい事項は次のとおりです。
- 誰が院内の合意形成を担うか — 感染制御部門、手術部、看護部、放射線部門、給食部門など、停止調整の相手は多岐にわたります。窓口を一本化しないと、合意が個別最適に流れます。
- 止められない機能は何か — 「止められない」と「止めたくない」を分けて整理します。この整理があると、工区分割の選択肢が広がります。
- どの段階で行政と協議を始めるか — 確認申請・仮使用認定・工事中の安全計画の届出・消防の着工届・医療法上の使用許可は、それぞれ窓口も所要期間も異なります。基本計画の段階で一覧化しておくことをおすすめします。
- 図面と現況の差異を誰が確認するか — 増改築を重ねた病院ほど、竣工図と現況がずれています。設計着手前の実地調査に予算と時間を確保してください。
当社は内装仕上げ・改修を軸に、企画から設計・施工・アフターまで一貫して対応しています。学校・教育施設の改修で培った「在校中・営業中でも止めない安全・工程管理」の考え方は、診療を継続しながら進める病院の改修とも共通する部分が多くあります。調査・設計・施工をワンストップで受託できる体制のため、前工程の情報が後工程に引き継がれない、という構造的な問題が起きにくいのが特徴です。
よくある質問
Q1. 診療を完全に止めずに病院の改修はできますか。
A. 建物や工事の内容によりますが、工区を分割して段階的に施工する居ながら工事で対応できる場合が多くあります。ただし、階段や廊下が一時的に使えなくなる計画は、医療法施行規則第16条第1項が定める直通階段・避難階段・廊下幅の要件に照らして成立するかを検証する必要があります。また、避難施設等に関する工事の施工中に建物を使用する場合、建築基準法施行令第147条の2第2号に該当する規模の病院では、建築基準法第90条の3に基づく工事中の安全上の措置等に関する計画の届出が必要です。
Q2. 改修した病棟はいつから使えますか。
A. 建築基準法上の完了検査に加え、医療法第27条により、病院はその構造設備について都道府県知事の検査を受け、許可証の交付を受けた後でなければ使用できません。工事の完成日と使用開始日は一致しないため、行政の検査日程を織り込んだ工程管理が必要です。なお、検査済証の交付前に部分的に使用したい場合は、建築基準法第7条の6第1項各号に該当すれば仮使用が可能です。
Q3. 工事中の感染対策はどこまでやればよいのでしょうか。
A. 隣接する区域のリスクによって水準が変わります。医療法施行規則第16条第1項第5号・第7号は、感染症病室等の空気が他の部分へ流入しないようにすること、他の部分および外部に対して感染予防のための遮断その他必要な方法を講ずることを求めています。この「気流を流さない」「区画を遮断する」という考え方を仮設隔壁の仕様に反映させるのが基本です。具体的な水準は、医療法施行規則第1条の11第2項第1号に基づく院内感染対策の体制のなかで、感染制御部門と合意して決めることをおすすめします。
Q4. 古い病院なので、消防設備を今の基準に合わせる必要がありますか。
A. 病院は消防法第17条の2の5第2項第4号により特定防火対象物とされており、既存の消防用設備等に従前の基準を適用する同条第1項の規定が適用されません。したがって、現行基準への適合が求められます。自動火災報知設備は消防法施行令第21条第1項第1号イ、スプリンクラー設備は同令第12条第1項第1号イおよび第4号に設置基準が定められています。個別の判断は所轄消防署への確認が確実です。
Q5. 改修に伴って病床を減らす場合、手続きは必要ですか。
A. 医療法第7条第2項は、病院を開設した者が病床数、病床の種別その他厚生労働省令で定める事項を変更しようとするときは、厚生労働省令で定める場合を除き、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。工事に伴う一時的な変更の取扱いを含め、計画の早い段階で所管の都道府県に確認してください。医療に関する個別の判断は、行政窓口および専門家にご相談いただくことをおすすめします。
まとめ|「止めない」は工程ではなく設計で決まります
病院の改修工事は、医療法・建築基準法・消防法の三層を同時に満たしながら、診療を継続するという条件の下で行う工事です。そして「止めずに進められるかどうか」は、施工段階の頑張りではなく、工区分割と仮設計画という設計段階の判断でほぼ決まります。
本記事で確認した要点を振り返ります。病室の床面積は内法で患者一人につき6.4平方メートル以上、病院の廊下幅は内法1.8メートル以上(両側に居室がある場合は2.1メートル以上)といった医療法施行規則第16条の基準は、工事中も満たす必要があります。病院は消防法上の特定防火対象物であり、消防用設備等に既存不遡及の特例が適用されません。避難施設等に関する工事の施工中に建物を使用する場合、一定規模の病院では建築基準法第90条の3に基づく届出が必要です。そして改修部分は、医療法第27条の検査と許可証の交付を経てはじめて使用できます。
これらを工程表の上で矛盾なく並べるには、現況調査・法適合の棚卸しから始めて、行政協議の所要期間まで含めた逆算が欠かせません。先に工期を決めてから手続きを当てはめると、必ずどこかで無理が出ます。
病院の改修をどう進めるべきか、工区の切り方から手続きの段取りまでを整理したい段階でしたら、病院の改修工事の進め方について光建舎に無料で相談することをご検討ください。全国対応で、企画・調査から設計・施工・アフターまで一貫してお手伝いします。
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