この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

介護施設の改修

特養・老健・GHの設備基準と進め方

「築30年を超えて、そろそろ大規模な改修に踏み切りたい」「多床室をユニット型に変えたいが、居室の面積はどの条文で確認すればよいのか」「スプリンクラーは275㎡以上と聞いたが、当施設は本当に対象外でよいのか」——特別養護老人ホームや介護老人保健施設、認知症高齢者グループホームを運営する社会福祉法人・介護事業者の施設担当の方から、こうしたお悩みをうかがう機会が増えています。

介護施設の改修が一般的な建物の改修と決定的に違うのは、居室の広さも、廊下の幅も、消防設備の要否も、法令の条文で数値が確定している点です。しかも介護保険法・老人福祉法系の厚生(労働)省令だけでなく、消防法、建築基準法、バリアフリー法が同時に効いてきます。図面を描き始める前に「どの条文が自施設に効いているのか」を押さえておかないと、設計が固まってから作り直しになります。

この記事では、介護施設の改修について、特別養護老人ホームの居室1人当たり10.65㎡、介護老人保健施設の療養室8㎡、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の居室7.43㎡といった面積基準を省令の条文で確認したうえで、共用部・浴室・トイレの要件、ユニット化改修、消防法施行令別表第一(6)項ロとスプリンクラーの正しい読み方、建築基準法の用途変更、運営しながらの工程設計、地域医療介護総合確保基金までを、一次情報にもとづいて実務目線で整理します。

私たち光建舎(KOKENSHA)は、内装仕上げ・改修を軸に、企画から設計・施工・アフターまで一貫対応する建設会社です(運営:株式会社ウイングスペース/一級建築士事務所)。学校・教育施設の改修や大規模修繕に強みがあり、在校中・営業中でも止めない安全・工程管理を前提に計画を組み立てています。方針が固まる前の粗い段階でも構いません。介護施設の改修方針を光建舎の無料相談で整理することができます。なお本記事の制度内容は2026年8月時点の公表情報にもとづきます。工事費は建物条件・工事範囲で大きく変わるため、金額の目安は記載していません。

介護施設の改修とは|省令の設備基準と消防法を同時に満たし直す工事

介護施設の改修とは、既存の介護施設の建物・設備を、施設種別ごとに定められた設備運営基準(省令および都道府県等の条例)と、消防法・建築基準法・バリアフリー法の要求に照らして適正な状態へ整え直す工事のことです。 傷んだ部位を直すだけの工事ではなく、居室面積・諸室構成・避難動線という「建物の骨格」を基準と突き合わせ直す点が、一般的な内装改修との違いになります。

制度の枠組みを整理します。特別養護老人ホームであれば「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第46号)、介護老人保健施設であれば「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成11年厚生省令第40号)、認知症対応型共同生活介護であれば「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)が国の基準です。これらを踏まえて都道府県・指定都市・中核市(地域密着型サービスは市町村)が条例で基準を定めるという二層構造になっています。したがって改修計画では、国の省令で全体像をつかんだうえで、必ず所在自治体の条例と指定権者の運用を確認する必要があります。

事業環境の面も押さえておきます。厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査」によれば、令和6年10月1日現在で介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は8,621施設・定員604,469人、介護老人保健施設は4,214施設・定員365,939人、介護医療院は917施設・定員52,837人、認知症対応型共同生活介護は14,341事業所となっています。開設主体別では、介護老人福祉施設の95.7%が社会福祉法人(社会福祉協議会以外)、介護老人保健施設の75.5%が医療法人です(出典:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」)。介護保険制度の創設から四半世紀が経過し、建物のストックが一斉に更新期に入りつつあることを踏まえると、今後は新設よりも既存施設をどう使い続けるかの判断が中心になっていくと考えられます。

居室の面積基準を条文で確認する|特養10.65㎡・老健8㎡・グループホーム7.43㎡

改修計画の出発点は、居室(療養室)の面積基準です。ここを記憶や伝聞で処理すると、定員設定そのものが崩れます。 施設種別ごとの条文の数値を一覧にします。

施設種別 居室の定員 1人当たり床面積 根拠条文
特別養護老人ホーム(従来型) 1人(サービス提供上必要と認められる場合は2人) 10.65㎡以上 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 第11条第4項第1号
ユニット型特別養護老人ホーム 1人(同上により2人可) 10.65㎡以上(2人室は21.3㎡以上) 同 第35条第4項第1号イ
介護老人保健施設(療養室) 4人以下 8㎡以上 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 第3条第2項第1号
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 1人(利用者の処遇上必要と認められる場合は2人) 7.43㎡以上 指定地域密着型サービス基準 第93条第3項・第4項

(出典:e-Gov法令検索の各省令現行条文/2026年8月時点)

条文を読むときに落としやすい点を挙げます。

第一に、特別養護老人ホームの居室は「原則1人」です。 条文は「一の居室の定員は、一人とすること。ただし、入所者へのサービスの提供上必要と認められる場合は、二人とすることができる」と定めています。多床室を残したまま面積だけ広げる、という発想は条文上想定されていません。あわせて居室は地階に設けてはならないこと、1以上の出入口を避難上有効な空地・廊下・広間に直接面して設けること、床面積の14分の1以上に相当する面積を直接外気に面して開放できるようにすること、ブザーまたはこれに代わる設備を設けることも同条に定められています。改修で間仕切りを動かす際は、面積だけでなくこの開口条件が効いてきます。

第二に、認知症対応型共同生活介護は「住まいの単位」そのものが決まっています。 事業所が有する共同生活住居の数は1以上3以下(サテライト型は1または2)、共同生活住居の入居定員は5人以上9人以下とされ、居室・居間・食堂・台所・浴室・消火設備その他の非常災害に必要な設備等を設けることとされています。居間と食堂は同一の場所とすることができます。ユニットの規模を後から増やす、といった改修は基準上できません。

第三に、介護老人保健施設の療養室は定員4人以下・1人当たり8㎡以上で、特別養護老人ホームとは数値も考え方も異なります。同じ「入所系の介護施設」でも、居室(療養室)の要求は施設種別ごとに別物だと考えてください。

なお、面積基準は各自治体の条例で定まります。国の基準を上回る基準を条例で定めることは可能ですので、実務では必ず所在自治体の条例と指定権者の担当課で確認してください。

共用部・浴室・トイレの基準|改修で見落とされやすい数値

居室の面積は多くの担当者が把握していますが、改修で工事範囲を押し広げるのは、むしろ共用部の数値です。 廊下幅・食堂・浴室・便所・階数制限は、いずれも省令に明記されています。

項目 特別養護老人ホーム(従来型) ユニット型特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
廊下の幅 1.8m以上(中廊下2.7m以上) 1.8m以上(中廊下2.7m以上)。一部の幅を拡張して円滑な往来に支障がないと認められる場合は1.5m以上(中廊下1.8m以上)でも可 1.8m以上(中廊下2.7m以上)
食堂・機能訓練室 食堂と機能訓練室の合計面積が3㎡×入所定員以上(支障がなければ同一の場所も可) 共同生活室は2㎡×ユニット入居定員以上を標準 食堂は2㎡×入所定員以上、機能訓練室は1㎡×入所定員以上
洗面設備・便所 居室のある階ごとに設置(便所は居室に近接) 居室ごと、または共同生活室ごとに適当数 療養室のある階ごとに設置
浴室 介護を必要とする者が入浴するのに適したもの 同左 一般浴槽のほか、入浴に介助を必要とする者に適した特別浴槽を設置
階数の制限 居室・静養室・食堂・浴室・機能訓練室は原則3階以上に設けない(特別避難階段2以上等の要件を満たす場合を除く) ユニット・浴室は原則3階以上に設けない(同様の例外あり) 療養室等が2階以上なら屋内の直通階段とエレベーターを各1以上、3階以上なら避難階段2以上
その他 廊下・便所その他必要な場所に常夜灯、廊下と階段に手すり、階段の傾斜は緩やかに、居室等が2階以上なら傾斜路1以上(エレベーターがあれば不要) 同左(共同生活室にも常夜灯) 階段と廊下に手すり、廊下に常夜灯

(出典:特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 第11条・第35条、介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 第3条・第4条)

実務で影響が大きいのは、廊下幅と3階以上の制限です。既存の躯体で中廊下2.7mを確保しようとすると、間仕切りの移動だけでは収まらず、居室の奥行きや設備シャフトの位置まで見直すことになります。逆にユニット型では、廊下の一部を拡張して円滑な往来に支障が生じないと認められる場合の緩和が条文に明記されているため、「全長で2.7m」ではなく「拡張部を設ける計画」で成立させられる余地があります。ここは計画の自由度を左右する重要な条文です。

浴室については、特別養護老人ホームの条文は「介護を必要とする者が入浴するのに適したものとすること」という性能規定にとどまり、機械浴槽の設置台数などは書かれていません。一方、介護老人保健施設は一般浴槽に加えて特別浴槽を設けることが明記されています。入浴設備の更新は、給湯能力・排水勾配・防水・脱衣室の温熱環境まで連動する工事です。設備容量の再計算を伴うため、改修の中でも工程と費用の変動が大きい部位だと考えられます。

こうした共用部の数値は、図面上は小さな違いに見えても、工事範囲を数倍に広げることがあります。基準との差分がどこにあるかを早めに把握したい場合は、既存図面をもとに介護施設の基準適合と改修範囲を光建舎に相談することで、調査・設計・施工をワンストップで担う立場から実行可能性をご確認いただけます。

ユニット化改修で押さえること|共同生活室と「近接して一体的に」

多床室をユニット型へ改修する場合、面積を満たすだけでは足りません。ユニットの定義そのものが条文で決まっているためです。 ユニット型特別養護老人ホームの設備基準(第35条第4項)は、次のように定めています。

  1. 居室は、いずれかのユニットに属するものとし、当該ユニットの共同生活室に近接して一体的に設けること。
  2. 一のユニットの入居定員は、原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないものとする。
  3. 一の共同生活室の床面積は、2㎡に当該共同生活室が属するユニットの入居定員を乗じて得た面積以上を標準とすること。
  4. 共同生活室は、当該ユニットの入居者が交流し、共同で日常生活を営むための場所としてふさわしい形状を有すること。地階に設けてはならないこと。
  5. 洗面設備と便所は、居室ごとに設けるか、共同生活室ごとに適当数設けること。

つまりユニット化とは、「個室を並べる工事」ではなく、共同生活室を中心に居室群を再編成する工事です。既存の中廊下型の平面に共同生活室を挿入すると、廊下の連続性、採光の取り方、汚物処理室や洗濯室などのバックヤード動線が同時に組み替わります。ここが、ユニット化改修が単純な間仕切り工事で終わらない理由です。

なお、居室の出入口は「避難上有効な空地、廊下、共同生活室又は広間に直接面して設ける」ことができるとされており、従来型(共同生活室が選択肢に入らない)とは条文の書きぶりが異なります。この差は、ユニット内の平面計画の自由度に直結します。

消防設備の改修|(6)項ロとスプリンクラーの正しい読み方

介護施設の改修で最も誤解が多いのが、スプリンクラー設備の「275㎡」です。結論から言うと、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・認知症高齢者グループホームは、延べ面積によらず設置対象です。 275㎡という数値は、別の施設類型に係る要件であり、これらの施設の判断基準ではありません。条文で確認します。

まず用途区分です。消防法施行令別表第一(6)項ロ(1)には、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る)、有料老人ホーム(同)、介護老人保健施設、老人短期入所事業を行う施設、小規模多機能型居宅介護事業を行う施設(避難が困難な要介護者を主として宿泊させるものに限る)、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設などが掲げられています。認知症高齢者グループホームはこの最後の類型に当たります。ここでいう「避難が困難な要介護者」とは、消防法施行規則第5条第5項により、要介護認定等基準省令第1条第1項第3号から第5号までの区分、すなわち要介護3・4・5に相当する区分の者を指します。

一方、老人デイサービスセンター、老人デイサービス事業を行う施設、老人福祉センター、老人介護支援センター、(6)項ロ(1)に該当しない軽費老人ホーム・有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護事業所は(6)項ハ(1)に分類されます。通所系と入所系で扱いが変わるのは、この区分によるものです。

そのうえで、主な消防用設備の要件を整理します。

消防用設備 (6)項ロ(特養・老健・グループホーム等) (6)項ハ(デイサービス等) 根拠
スプリンクラー設備 延べ面積によらず設置対象(火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものを除く) 面積等の一般要件による(平屋建以外で床面積合計6,000㎡以上、地階を除く階数11以上、地階・無窓階1,000㎡以上、4〜10階1,500㎡以上 等) 消防法施行令第12条第1項第1号ロ、同項第3号・第4号・第11号
自動火災報知設備 延べ面積によらず設置対象 利用者を入居・宿泊させるものは面積によらず、それ以外は延べ面積300㎡以上 同令第21条第1項第1号イ・ロ、第3号ロ
消防機関へ通報する火災報知設備 延べ面積によらず設置対象(常時通報できる電話の設置による代替が認められない) 延べ面積500㎡以上 同令第23条第1項第1号・第2号、第3項

(出典:e-Gov法令検索「消防法施行令」「消防法施行規則」/2026年8月時点)

では275㎡はどこに出てくるのか。 消防法施行令第12条第1項第1号ハは、別表第一(6)項ロ(2)・(4)・(5)——すなわち救護施設、障害児入所施設、障害者支援施設等——について、「介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるもの以外のものにあつては、延べ面積が275平方メートル以上のものに限る」と定めています。つまり275㎡は障害福祉分野の一部施設に係る閾値であり、高齢者の入所系施設の基準ではありません。過去の制度を前提とした情報が今も流通しているため、改修計画では必ず現行条文で確認してください。

あわせて押さえたい論点が3つあります。

1つ目は、設置を要しない構造の存在です。 消防法施行規則第12条の2は、居室を準耐火構造(基準面積1,000㎡以上では耐火構造)の壁・床で区画し、内装の仕上げを主たる廊下等では準不燃材料・その他では難燃材料とし、開口部の面積や防火戸の構造、区画された部分の床面積などの要件をすべて満たす場合に、スプリンクラー設備の設置を要しない構造として認めています。改修の設計次第で設備計画が変わりうるということです。ただし要件は細かく、所轄消防との事前協議が前提になります。

2つ目は、特定施設水道連結型スプリンクラー設備です。 消防法施行令第12条第2項第3号の2により、防火上有効な措置が講じられた部分を除く床面積の合計が1,000㎡未満の場合に限って設置することができるとされています。小規模な施設の改修では、水源施設を要しないこの方式が選択肢になります。

3つ目は、既存施設への遡及適用です。 消防用設備等は原則として既存不遡及(従前の基準を適用)ですが、消防法第17条の2の5第2項第4号と消防法施行令第34条の4第2項により、(6)項を含む特定防火対象物は例外とされ、既存の建物であっても現行の技術基準に適合させる必要があります。「昔からこの設備で通っている」は、介護施設では通用しない、ということです。改修は、この適合状況をまとめて棚卸しできる数少ない機会でもあります。

建築基準法・バリアフリー法の論点|用途変更・採光・修繕の努力義務

介護施設の改修では、建築基準法上の手続きが必要になるかどうかを最初に判定します。判定軸は「用途変更」と「大規模の修繕・大規模の模様替」の2つです。

建築基準法第6条第1項第1号は、別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものを確認申請の対象としています。老人ホーム等の児童福祉施設等は、建築基準法施行令第115条の3第1号により別表第一(2)項の用途に類するものと位置づけられています。したがって200㎡超の介護施設は特殊建築物であり、大規模の修繕または大規模の模様替を行う場合には確認申請が必要です。主要構造部の一種以上について過半の修繕・模様替を行う工事が該当します。

用途変更については、同法第87条第1項が「建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)」に確認の規定を準用すると定めています。ここで重要なのが、建築基準法施行令第137条の18第3号です。同号は「診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等」を類似の用途として指定しており、令第19条第1項の定義により、この「児童福祉施設等」には老人福祉施設、有料老人ホーム、障害者支援施設などが含まれます。つまり、老人福祉施設どうしの用途変更のように類似の用途相互間に当たる場合は、確認申請を要しないケースがあるということです。ただし第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域内にある場合はこの除外が適用されません。個別判定は特定行政庁への確認が必須です。

もう一つ、改修で効いてくるのが居室の採光です。建築基準法施行令第19条第3項は、児童福祉施設等の寝室(入所する者が使用するもの)および児童福祉施設等の居室のうち保育・訓練・日常生活に必要な便宜の供与等に使用されるものについて、床面積に対して7分の1以上の採光に有効な開口部を求めています(談話・娯楽等の目的に使用される居室は10分の1)。同項ただし書により、国土交通大臣が定める基準に従って照明設備の設置や有効な採光方法の確保等の措置が講じられている場合は、10分の1までの範囲で別に定める割合とすることができます。多床室を個室に割る改修では、この採光条件が居室の割り方を実質的に決めます。

バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)も確認します。同法施行令第5条第9号は「老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(主として高齢者、障害者等が利用するものに限る。)」を、第10号は「老人福祉センター、児童厚生施設、身体障害者福祉センターその他これらに類するもの」を特別特定建築物としています。同法第14条第1項と施行令第9条により、床面積の合計2,000㎡以上の建築(用途の変更をして特別特定建築物にすることを含む。増築・改築・用途変更の場合は当該部分の床面積)については、建築物移動等円滑化基準への適合が義務づけられます。

改修の実務で見落とされやすいのが、同法第16条第2項です。同項は「建築主等は、特定建築物の建築物特定施設の修繕又は模様替をしようとするときは、当該建築物特定施設を建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。トイレ・廊下・階段・エレベーター等の修繕そのものが努力義務の対象だということです。さらに同法第14条第3項により、地方公共団体は条例で対象用途を追加し、規模要件を政令の規模未満に引き下げ、基準に必要な事項を付加できます。所在自治体の福祉のまちづくり条例の確認は必須です。

運営しながら改修する|止めない工程設計の考え方

入所系の介護施設は、学校や事務所と違って「夜間も休日も人が住んでいる建物」です。工事のために止められないという前提が、工程設計のすべてを規定します。 制度上の定めがあるわけではなく、各施設の条件次第ですが、実務では次のような組み立てが基本になります。

  1. 工区分けによるローリング工事:フロアやユニット単位で工区を切り、居室を順次空けながら回していく方法です。空き居室の確保数が工期を決めます。
  2. 一時的な集約・仮設スペースの設置:改修中の受け皿として、他フロアや仮設に一時集約します。ここで注意したいのは、工事期間中も居室の面積基準・定員・避難経路の要件が効き続ける点です。集約先が基準を満たすか、避難動線が確保されているかを数値で確認したうえで工程を組む必要があります。
  3. 動線分離:入居者・職員の動線と、資材搬入・廃材搬出の動線を物理的に分けます。エレベーターが1基しかない建物では、ここが最大の制約になります。
  4. 粉じん・騒音・振動・臭気への配慮:高齢者、とりわけ呼吸器に不安のある方や認知症のある方への影響は、一般の現場より慎重な管理が求められます。負圧養生、作業時間帯の限定、低騒音機械の選定などを組み合わせます。
  5. 給食・入浴・洗濯の継続:厨房や浴室、洗濯室を改修する場合は、代替手段(外部調理の受入、仮設浴室、外部委託等)を先に確定させてから工程に落とします。
  6. 消防用設備の機能停止時間の管理:自動火災報知設備やスプリンクラーの一時停止を伴う工事では、代替の監視体制と所轄消防への連絡手順をあらかじめ決めておきます。
  7. 指定基準に関わる変更の届出:定員や設備構成が変わる改修では、指定権者への変更届等の手続が伴います。工事の完了時期と手続の時期を合わせて逆算します。

これらは「工事が始まってから考える」と間に合いません。基本設計の段階から、工事中の運営継続方法を並行して詰めておくことが、工期・安全・入居者の生活の質のすべてを左右します。学校の改修で在校中施工の工程管理を積み重ねてきた立場から見ても、止めない現場は設計段階の作り込みで決まると考えています。

補助制度|地域医療介護総合確保基金の枠組みを条件から読む

介護施設の整備・改修の主な財源は、地域医療介護総合確保基金です。ただし「改修に使える補助」ではなく、条件付きのメニューの集合体だと理解しておく必要があります。

制度の骨格はこうです。地域医療介護総合確保基金は、消費税増収分等を活用した財政支援制度として平成26年度に創設され、各都道府県に設置されています。国と都道府県の負担割合は2/3、1/3(事業区分Ⅰ-2は国10/10)で、都道府県が都道府県計画を作成し、当該計画に基づいて事業を実施します。対象事業は6区分+新区分に分かれ、介護施設の整備は事業区分Ⅲ「介護施設等の整備に関する事業(地域密着型サービス等)」が該当します。令和8年度予算案は公費ベースで1,390億円(医療分960億円、介護分430億円)とされています(出典:厚生労働省「令和8年度地域医療介護総合確保基金の予算案等について」)。

改修に関わる主なメニューを、交付要綱の記載から整理します(出典:厚生労働省「医療介護提供体制改革推進交付金、地域医療対策支援臨時特例交付金及び地域介護対策支援臨時特例交付金の運営について」の令和8年度一部改正)。

1つ目は、介護施設等の創設を条件に行う広域型施設の大規模修繕・耐震化整備事業です。 これは「改修単独では使えない」ことがポイントです。都道府県計画・市町村計画に定める介護施設等(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護の指定を受けるケアハウス、認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護事業所 等)を1施設創設することを条件に、定員30人以上の広域型施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホーム、軽費老人ホーム)1施設の大規模修繕または耐震化を行う事業が対象とされています。創設する施設と大規模修繕を行う施設は同一法人である必要がありますが、場所は同一敷地内や近接に限定されず、1年から4年程度の範囲内を期間とする整備計画を定めれば、実施順序は問わないとされています。

対象となる「大規模修繕」の整備区分は10区分が示されており、本体の躯体工事に及ぶかどうかは問わないとされています。要点を抜き出すと次のとおりです。

  • 施設の一部改修(一定年数を経過して使用に堪えなくなり改修が必要となった浴室・食堂等の改修工事、外壁・屋上等の防水工事等)
  • 施設の付帯設備の改造(給排水設備、電気設備、ガス設備、消防用設備等)
  • 施設の冷暖房設備の設置等
  • 避難経路等の整備(居室と避難通路(バルコニー)等との段差解消、自力避難が困難な者の居室を避難階へ移すための改修等)
  • 環境上の条件等により必要となった施設の一部改修(降灰地域の換気設備整備、アスベストの処理工事及びその後の復旧等関連する改修工事)
  • 消防法及び建築基準法等関係法令の改正により新たにその規定に適合させるために必要となる改修(ただし消防法設備等のうちスプリンクラー設備等は除く)
  • 消融雪設備整備、土砂災害等に備えた施設の一部改修等
  • 施設の改修整備(バリアフリー化工事等、耐震改修(付随して実施する天井等の非構造部材の落下防止対策等を含む)、照明設備の更新等)
  • その他施設における大規模な修繕等

なお「一定年数」はおおむね10年とされています。スプリンクラー設備等がこのメニューの対象から明示的に除かれている点は、資金計画上の重要な前提です。

2つ目は、既存の特別養護老人ホーム等のユニット化改修等支援事業です。 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院のユニット化が対象で、「個室→ユニット化」改修、「多床室(ユニット型個室的多床室を含む)→ユニット化」改修、多床室のプライバシー保護のための改修といった区分ごとに、整備床数を単位とする配分基礎単価が定められ、その範囲で都道府県知事が額を定める仕組みになっています。

3つ目は、介護施設等の大規模修繕の際にあわせて行う介護テクノロジー導入支援事業です。 前掲の整備区分のうち「施設の一部改修」または「施設の付帯設備の改造」に該当する大規模修繕を実施する際に(当該修繕について助成を受けているかは問わないとされています)、介護テクノロジーの機器等を導入するために必要な経費を支援する事業です。改修のタイミングは、配線・電源・ネットワークを同時に整備できる数少ない機会でもあります。

いずれも都道府県計画に基づく事業であるため、公募時期・優先順位・上乗せ要件は都道府県ごとに異なります。実務では、国の要綱で全体像をつかんだうえで、必ず所在都道府県の担当課と公募要領を確認してください。制度の要件と工事の要件は、早い段階で突き合わせるほど手戻りが減ります。

介護施設の改修を進める手順

改修は設計から入るのではなく、「基準との差分を数値で出すこと」から始めます。 一般的な進め方を番号で示します。

  1. 図面・確認済証・検査済証・改修履歴の収集:竣工図、確認申請関係書類、過去の耐震補強・増改築・設備更新の記録を集めます。ここが揃うかどうかで後工程の負荷が大きく変わります。
  2. 基準との差分の洗い出し:居室面積、廊下幅、諸室構成、階数制限、採光を、省令と所在自治体の条例に照らして一つずつ確認し、適合・不適合を数値で整理します。
  3. 現況調査:外壁・屋上防水・躯体の劣化、給排水・電気・空調の設備容量と残存性能、アスベスト含有建材の事前調査などを実施します。
  4. 耐震性能の確認:昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建てられた建物では、耐震診断で現状を数値化し、補強の要否と規模を把握します。
  5. 消防用設備等の棚卸し:スプリンクラー、自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備等について、現行基準への適合状況を所轄消防と確認します。
  6. 改修方針の決定:ユニット化するのか、機能更新にとどめるのか、建替えと比較するのかを、基準適合・運営継続・資金計画の3軸で判断します。
  7. 行政協議:建築部局(特定行政庁)、所轄消防、介護保険の指定権者(都道府県・市町村)と並行して協議します。建築の要件と指定基準の要件を突き合わせるのがこの段階です。
  8. 基本設計・実施設計と工事中の運営計画:設計と同時に、工区割り・仮設・動線分離・給食や入浴の継続方法を詰めます。
  9. 補助制度の要件確認と申請:地域医療介護総合確保基金等のメニューと、所在都道府県の公募要領・スケジュールを確認し、設計内容と整合させます。
  10. 確認申請(該当する場合)・施工・完了手続:確認済証の交付後に着工し、アスベスト除去等を先行させ、構造・防火・設備・内装の順で進めます。完了後は指定権者への変更届等の手続を行います。

この10ステップのうち、1から5までが「調査・診断」、6から7が「意思決定」、8以降が「実行」です。実務でつまずくのは、ほぼ例外なく1から5を飛ばしたケースだと考えられます。既存の建物を相手にする以上、図面と現況の食い違いは前提として計画を組む必要があります。

よくある質問

Q. 特別養護老人ホームの多床室を残したまま改修することはできますか。

A. 既存施設の改修において、条例上の経過措置や既存施設の取扱いは自治体ごとに定められています。国の基準(特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 第11条第4項第1号)は「一の居室の定員は、一人とすること。ただし、入所者へのサービスの提供上必要と認められる場合は、二人とすることができる」と定めており、多床室を新たに整備する前提にはなっていません。地域医療介護総合確保基金には、多床室のプライバシー保護のための改修を対象とするメニューも設けられています。実際にどこまで可能かは、所在自治体の条例と指定権者の運用によりますので、方針決定の前にご確認ください。

Q. スプリンクラーは275㎡以上の施設だけが対象と聞きましたが、本当ですか。

A. 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・認知症高齢者グループホーム等(消防法施行令別表第一(6)項ロ(1))については、延べ面積によらず設置対象です(同令第12条第1項第1号ロ)。275㎡は、同項第1号ハに定められた(6)項ロ(2)・(4)・(5)——救護施設、障害児入所施設、障害者支援施設等——のうち、介助がなければ避難できない者を主として入所させるもの以外に係る閾値です。なお、消防法施行規則第12条の2に定める区画等の要件をすべて満たす構造であれば設置を要しないとされていますので、個別の判定は所轄消防にご確認ください。

Q. 改修に建築確認申請は必要ですか。

A. 200㎡を超える介護施設は建築基準法上の特殊建築物に当たるため、大規模の修繕または大規模の模様替を行う場合は確認申請が必要です(同法第6条第1項第1号)。用途変更については、老人福祉施設どうしのように建築基準法施行令第137条の18第3号の「類似の用途」相互間に当たる場合は確認申請を要しないケースがありますが、第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域内にある場合はこの除外が適用されません。手続が不要な場合でも、建築基準法・消防法への適合は引き続き求められます。個別判定は特定行政庁にご確認ください。

Q. バリアフリー改修は義務ですか。

A. 老人ホーム等は特別特定建築物であり、床面積の合計2,000㎡以上の建築(用途変更を含む)については建築物移動等円滑化基準への適合義務があります(バリアフリー法第14条第1項、同法施行令第5条第9号・第9条)。2,000㎡未満や既存建築物は努力義務ですが、同法第16条第2項により、廊下・階段・トイレ・エレベーター等の修繕や模様替そのものが基準適合の努力義務の対象とされています。さらに同法第14条第3項に基づき、地方公共団体が条例で対象や規模要件を上乗せしている場合がありますので、所在自治体の条例をご確認ください。

Q. 施設を開けたまま工事はできますか。

A. 制度上の定めがあるわけではなく、各施設の条件次第です。実務では、工区分けによるローリング工事、一時的な集約、仮設スペースの設置、時間帯を限定した作業などを組み合わせます。注意したいのは、工事期間中も居室の面積基準や避難経路の要件が効き続ける点です。集約先の面積が基準を満たすか、避難動線が確保されているかを数値で確認したうえで工程を組む必要があります。自動火災報知設備等の機能を一時停止する工事では、代替の監視体制と所轄消防への連絡手順もあらかじめ決めておきます。基本設計の段階から、工事中の運営継続方法を並行して詰めておくことをおすすめします。

まとめ:介護施設の改修は「条文との差分」を数値で出すところから

介護施設の改修は、傷んだ部位を直す工事ではなく、設備運営基準・消防法・建築基準法・バリアフリー法の要求を、既存建物の制約のなかでどこまで実現するかを決める工事です。要点を整理します。

  • 居室は、特別養護老人ホーム(従来型・ユニット型とも)1人当たり10.65㎡以上、介護老人保健施設の療養室は定員4人以下・8㎡以上、認知症対応型共同生活介護は7.43㎡以上。いずれも国の省令の数値であり、実際の基準は自治体の条例で定まります
  • 共用部では、廊下幅1.8m(中廊下2.7m)、食堂・機能訓練室の合計3㎡×入所定員(特養)、居室のある階ごとの洗面設備・便所、3階以上の階数制限が工事範囲を押し広げます
  • ユニット化は「個室を並べる工事」ではなく、共同生活室(2㎡×ユニット入居定員以上を標準)を中心に居室群を再編成する工事です
  • 特養・老健・グループホームは消防法施行令別表第一(6)項ロ(1)に当たり、スプリンクラー・自動火災報知設備・消防機関へ通報する火災報知設備が延べ面積によらず設置対象。275㎡は障害福祉分野の一部施設の閾値であって、これらの施設の基準ではありません
  • (6)項は特定防火対象物であるため、消防用設備等は既存の建物であっても現行基準への適合が求められます
  • 建築基準法では、200㎡超の特殊建築物の大規模の修繕・模様替が確認申請の対象。類似の用途相互間の用途変更は除外されますが、低層住居専用地域等では除外が適用されません
  • 財源は地域医療介護総合確保基金が中心。大規模修繕・耐震化のメニューは介護施設等の創設を条件とし、スプリンクラー設備等は対象から除かれています。ユニット化改修支援や、大規模修繕にあわせた介護テクノロジー導入支援も用意されています

そして実行段階では、運営を止めない工程設計が成否を分けます。工区分け、仮設、動線分離、給食と入浴の継続、消防設備の機能停止時間の管理——ここを設計の初期から織り込めるかどうかで、工期も安全も大きく変わります。

光建舎は、内装仕上げ・改修を軸に、企画から設計・施工・アフターまで一貫して対応する建設会社です。学校・教育施設の改修と大規模修繕に強みがあり、在校中・営業中でも止めない安全・工程管理、補助金・交付金の活用支援まで、調査・設計・施工をワンストップで全国対応しています。基準との差分がまだ見えていない段階でも構いません。介護施設の現況調査から改修計画の立案までを光建舎に無料で相談することで、基準適合・運営継続・資金計画の3つの面から、実行できる計画に落とし込めます。

※本記事の法令・制度・基準に関する記載は2026年8月時点の情報にもとづきます。設備基準は都道府県・市町村の条例で定められ、個別の判定は所在地の特定行政庁・所轄消防・指定権者にご確認ください。

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